ヒカル偶像化計画 その5
上空2000mでボクからの提案を聞いたルディアは、器用に手足を生やした飛行機で判りやすく項垂れていた。
『なんデ私がそんナ事をしなきゃいけナイのかしラ』
「えーだって今回の救援は貸しでしょ?早速返してもらおうかなって思って」
『ちょっ!貸しっテここドコだと思ってるのヨ!日本の上空ヨ!?貸しはコッチにあると思わないノ?』
ボクは少し考えてから小首を傾げて聞く。
「ルディアは誰からの依頼でミサイルを捕まえにきたの?」
『そっそれハ・・・』
「日本政府じゃ無いよね?それなら真理ちゃん経由でボクに話が来るかもしれないし。アレでしょ?大きい棟梁さんに『ギャフンといわしてやれ!』とかって言われて来たんじゃないの?その機体だって大国の最新鋭機でしょ?」
『うゥーふだンぽやぽやしてルくせに何でこんナ時は鋭いのヨ!』
「ふっふーん。と言うわけで日本の要請じゃ無いならボクの借りじゃないねー」
『デッでも日本に落っこちてたかも』
「あの距離であの高度・・・エレス軌道計算できる?」
『ハイご主人様、すでに終わっています。あの時点の高度と速度、並びに角度から日本に落ちることは100%ありません。その事はそこの愚妹にも解っていることと思うのですが』
「だってー?ルディア。つまりただ単にミサイルを元の場所に撃ち返すために追っかけてたんだよね?じゃあ呼び出されたボクの貸しって事で合ってるよねぇ?」
『ふうぅゥーがっでむですわネ・・・そうヨ!あのやたらと好戦的な大統領が撃ち返せって言ったのよ!しょうがないじゃナイ!今のトコロ一応世話になってルんだし!機械いっぱいアルし!いい男も結構イルし!!』
「姉さんーもう俺らの負けですってー大体あんな速度に追いつくような化け物に勝てるとは思えねえっす」
『クッこれだかラ男って言うのハ・・・ちょっト負けたダケですぐなびくンだかラ・・・』
「じゃあそう言う事でボクのお願い聞いてくれるよね?いいよね?ね?」
『っていうカなんでそんな事になってるのヨ!なんでアイドルなのヨ!!』
「えーだから言ったじゃんーちょっとはっちゃけすぎちゃって動画が流出しちゃったんだってば。ソレを現実で塗り替えるためにアイドル活動しちゃおうかって話になってるんだよね。だけどさーなんか一人で出るのヤじゃない?かといって家族(友里)とか友達(真理ちゃん)とかは犠牲にできないでしょ?」
『だっダカラってなんデ私なのヨ!全然関係ないジャないのヨ!』
「えー、関係あるよぅ。だって・・・姉妹でしょ?人型で美少女だし?」
なんかルディアが口をパクパクさせてなんか言いたげにしてるけど、なんか変なこと言ったかな?
『ご主人様、たぶんあの子は照れてるんではないかと・・・ツンデレってやつではないですかね?』
「ああー初めて生もののツンデレ見たねー」
「俺もこんな取り乱した姉さんの姿初めて見たぜ」
「とりあえずルディアはボクの家にいこうか?色々話もあるし?パイロットさん自分で帰れる?」
「ええっ!俺は行っちゃダメなのかよ!そりゃないぜ、俺だって本場のアニメとか見たいってばよ!」
「微妙に語尾の使い方がオタクっぽくないんだよなぁ・・・なんだろう外人さんのせいかな?」
『ダメに決まってるでショ!こんな機体デ日本にはいったラ怒られるわヨ。今度お忍びデ連れていってあげるカラ、今日は大人しク帰っておきなさイ』
「絶対だぞ!絶対連れてってくれよ!?じゃなきゃもう俺の後ろに乗せてやんないからな!?」
『ハイハイ、わかったってバ。いいこネ』
「なんかいい大人なのに必死だねぇ・・・、まあそう言う事だからルディアはこっちおいで力場に入っちゃえば浮かぶからさ」
ボクがそういうと、ルディアは身体から生やしてたコードみたいなのを収納していく。すると変形していた部分は徐々に元の形に戻っていく。ほんとにどうなってるんだろ?あれって。
高度を900mまで落として、キャノピーを開けてルディアはこっちに飛び移ろうとしてる。
『ほっホントに受け止めてヨ?落ちたラ死なないマデもバラバラになっちゃうンだからね?死なないケド復活するまでに時間かかっちゃウんだからネ!?』
「だいじょうぶだよーちゃんと受け止めるからおいでよ」
ボクはおいでおいでして待ち受ける。
恐る恐るコクピットの縁に手をかけて立ち上がったルディアは
つるっっ
足を滑らせた。
「「『えええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」」』
『あァーーーーーーーーーーーーーッ!!』
「あ、あねさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「なんで?なんであの距離で落ちたの!?」
「知らないのか?姉さんはとんでもなく運動音痴なんだぞ?合体した時はいいけどぶっちゃけ驚異的だぞ?」
『ご主人様、早く助けないと後数分で地上に激突してしまいます』
「おお、いけないいけない、じゃあ気を付けて帰ってねー」
「おっおぃ・・・」
何か言いかけてたみたいだけど加速した瞬間に聞こえなくなった。
いくら数分で落ちるって言ってもただの自由落下してるだけのルディアに追いつくのは訳もないんだけどね。ボクはルディアに追いつくと力場を展開して中にルディアを取り込む。
力場に取り込まれたことによって、ルディアもボクと同じ時間軸に入ってくる。
『やっパりこれが姉さんノ加速の正体だったのネ。早すぎルと思ったのよネ』
「ん?その言い方だと気づいてたの?」
『えエいくらなんデモ速すぎるとおもっタのよネ。私なりに考えてみたのヨ。どうやったラあなたみたいニなれるか。まさかクロックアップだったとワ・・・』
「ルディアだって似たようなことできるでしょ?」
『私は恐らク単体では無理ネ。何かに融合シテ推力を得るかしないと』
「そっか、でもそのうちできるよ君なら。じゃあウチで真理ちゃんも待ってるから行こうか」
『はぁ・・・モウどうにでもしてヨ』
「ふふーこうやって一緒に飛んでるとなんだかホントの姉妹みたいだねー」
『フ、ふんっ別に嬉しくナンテないわヨ!』
『わかりやすいデレですね・・・妹よ』
なんのかんのと言いながら仲良く自宅を目指すのだった。