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ヒカル偶像化計画 その4

「・・・・・・・・・・・・・」


 すでに操縦席のパイロットは声すら発することができなくなっていた。

 それだけ今の飛行速度は恐らく人が乗った戦闘機では、未到達の速度で飛んでいるのだろう。

 だけどその速度を持ってしても、軽量化と再燃焼しているミサイルには追い付けないのだ。追い付くどころか徐々にだが離されてさえいる。

 

『まだ生きテる?まあ一応バイタル取ってるカラわかっテるけどネ。声も出せナイんでしょ?』


「・・・・・・カヒュゥー・・・」


 息をするだけで精一杯のようである。尤も生きてるだけでも大したものなのだけれど。


『潮時かしラ・・・これ以上はムダネ・・・』


 そう言うとルディアは少しづつだが速度を落としていく。先程よりも目に見えてミサイルとの距離は離れていく。ピーという着信を知らせる音が響き無線に基地局からの通信が入る。


『ベースから「マッドネス プラス ヴァルキリー」聞こえますか?』


 勿論パイロットは答えられないので、ルディアが代わりに答える。


『コチラ、ヴァルキリーどうゾ』


『ミサイルとの距離が開き始めてるがどうかしたのか?』


 フンッと荒く鼻を鳴らしてルディアが答える。


『どうもコウも無いでショ。あんナの有人の飛行機で追い付くワケないでショ。時速8000キロも出てルじゃないの!』


『いや、しかしその機体は計算上では追い付けるはずだが』


『バッカじゃないの?追い付けたとしテモ、彼が血袋にナッちゃうわよ。それでもヨケれば追いかけるけド?まあそんなコトを容認すルような国に私がいつマデもいると思わナイでよね』


『了解した。でわ本作戦の中止とともに帰艦を・・・』


『まア待ちなさいよ、追い付ける助っ人ヲ呼んだカラ』


『・・・は?日本にそんな速く飛べる飛行機なんて・・・まさか!?』


『ええ、姉さんヨ。どうセこの国にイルんだもの働いてもらワなきゃネ』


『いつのまに連絡を取ったんだ!?こっちにはそんなログのこってないぞ!』


『そんナの残るわけナイでしょ。姉妹シスターズ専用の通信ヨ。五分ほど前二連絡したのヨ』


『五分前って・・・どこから来るか知らんがそんなもの間に合うわけ無いだろ!!』


 そんな無線機の向こう側の叫び声を聞きながら、ルディアはハァ~っと妙に人間臭い溜め息をつく。


『アナタ、私たち、イエ姉さんのコト舐めてるでショ』


『は?べ、別に舐めてはいないが、距離的に無理だろ!常識的に考えたって!』


『まア私はともかくとしテ、アレはホンとに常識外の存在ヨ。ホラ、来たわよ』


 ルディアがそう告げた瞬間、無線にノイズがはしる。


『クッ!相変わらずのバケモノっぷりネ!』


 とてつもない速度で後ろから迫ってきたものが、周辺の空気を押し出したために乱気流が生まれる。当然その煽りを受けたルディアも機体が揉みくちゃにされたので、その制御で精一杯になる。


「やっほー、お待たせー。とりあえずアレに追い付くね」


 とても、マッハ6で飛んでるモノとは思えない軽いノリで、ルディアの機体に手を振りつつ加速する物体は、勿論尖りまくって極限まで空気抵抗を減らしたような力場フィールドに、全身を包み込んで飛行するヒカルちゃんだった。


『マヂかよ・・・本当に来やがった・・・』


『だから言っタでショ。しかもモウ追い付くワ、ムカつくわネ』


『信じられん・・・マッハ8以上出てるのか・・・?』


『アレはもうそういう次元じゃナイわネ。恐らくだけど同じ時間軸で動いテいないわネ』


『・・・ザ・フ○ッシュみたいなもんか・・・?』


 そんな話をしてる間にもヒカルはミサイルに追い付き、力場フィールドで包み込み、慣性制御により停止させている。


「ルディアーこれ捕まえたけどどうするのー?」


『ああ、ありガと。こうすルのヨ』


 そう言うとルディアが乗った飛行機がガシャガシャンと変形を始めて、戦闘機から腕と足が生えた状態になった。


「ルディア・・・能力に関してとやかくは言わないけど、その形はナイわー、某タツ○コプロにお金払わなきゃいけないレベルだよ?それは」


『なんノことかしラ?私はマ○ロスなんて知らないし、ましテやガー○ォー○形態なんてマッタク記憶にナイわネ!』


「それ絶対知ってるよね!?完全にアウトなヤツだよね!?」


 勿論人型形態(バト○イド)にもなれるのだが、あえてそれは黙っていルディアなのだった。


「うぅ・・・なんだここは天国か?なんか可愛い子ちゃんがミサイルに乗って飛んでるのが見えるんだが」


『アラ、目が覚めたノ?驚異的な体力ネ。残念だけド天国でも夢でもナイわよ。だってアナタ、顔のアナ全部から血が出てるわヨ。死にかけテタンだかラ。ちなみにアレは私の姉ヨ。まあ一番上ノ姉さんダカラ、1000年位離れてるンだけどネ』


『ルディア、むやみに女性の歳をばらすものではないですよ』


「あと、まるでボクまで1000年生きてるみたいになるからね。ボク40年しか生きてないからね」


 それでも見た目はどう見ても20歳くらいにしかみえないのだけど。

 ちなみに、パイロットくんは日本文化が好きなので(なのでルディアと気が合う)一応エレスとヒカルの言ってることは理解しているのだけど、見た目と今起こってることと、死にかけから生還したことも相まって微妙な反応しか返すことが出来なかった。


『さて、じゃア始めようかしラ』


 ルディアはそう言うとおもむろにミサイルに手を伸ばして、手のひらをかざした。すると指先から無数のケーブルが、触手のように伸びてミサイルの各部に這い回る。


「何するの?」


『このまま海に落とすワケにいかないシ、まだ燃料も余っテルみたいだかラ元の場所に還しテあげようと思っテ。もちロン弾頭は無効化してだけどネ。っていうカこれ弾頭起動するのかしラ、システム動いてナイんだけド』


「じゃあ、ただのでっかいロケット花火じゃん。はぁー本当に何がしたいんだろうね」


『まア自分のトコロに自分のモノが還ってきたラ、文句も言えナイし怖くモなるでショ。フフフ、さあ終わったワ。もう離してもいいわヨ』


 ヒカルは頷いて力場フィールドからミサイルを解放する。するとミサイルは再び推力を得て、元来た方向に飛び去っていった。


「気を付けて帰るんだよー」


 捕まえてるあいだ乗っていたヒカルはちょっと愛着が湧いちゃったらしく、まるで保護した動物を自然に還したときのような心境になっているらしい。


『罠に捕まったタヌキじゃナイんだから・・・』


 そんなヒカルをルディアは呆れたように見つめるのだった。ヒカルもそんなルディアの視線に気付くと照れたように笑っていた。

 そしてなにか思い付いたのかポンと両手を合わせて今度は一転ニヤリと笑う。


「ねえ、ルディア」


 その粘りつくような猫撫で声に、嫌な予感を覚えつつも、どうせ逃げたところで逃げ切れないかと思い嫌々ながらも返事をする。


『な、なにかしラ?』


「ふふーあのね・・・」


 この後のヒカルの台詞を聞いて、大人しく聞くんじゃ無かったと後悔するルディアだった。

感想とかブクマとかしていただけるとコサックダンスを踊るかもです。見せられませんがね。

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