ヒカル偶像化計画 その2
下の騒ぎに気が付いてみんな起きてきてリビングに集まった。
優は遅めの朝昼兼用のご飯を作ってる。
友里と薫子ちゃんはリビングのソファーでテレビを見ながら、昨日のイベントの話で盛り上がりながら、買ってきたグッズやお土産の整理をしてる。
どうも午後には真弓ちゃんも家に遊びに来るらしい。また姦しいんだろうなぁ、女の子率が100%だね、まあボク含めると微妙なところなんだけど。
ボクはダイニングの椅子に座って足をプラプラさせて優のご飯待ち。その正面にはメイクでなんとか目の下のクマを誤魔化した真理ちゃんも一緒になってご飯を待ってる。
「真理ちゃん朝ごはん食べてないの?」
「ええ、昨日の朝から10秒チャージ的なモノしかおなかに入れてませんね・・・。そんな暇無かったですから」
なんか申し訳ない、ほんとに。
「それにしてもまさか動画配信されちゃってたなんて・・・大変だったでしょ?真理さん」
優がおなかに優しそうなコーンスープをマグカップに入れて、ボクと真理ちゃんの前に置きながら聞く。
ちなみにこのコーンスープはインスタントのじゃなくて、優の手作りなのでめっちゃ美味しい。決してインスタントのが不味い訳じゃないんだけど、やっぱりこっちのが美味しい。
「実はまだ過去形じゃないんですよね・・・。現在進行形で大変なんです。」
おっとまだ終わってなかったんだ、でもでもこんなとこに来てていいのかな?
「もうね・・・収集つかないんですよ。色々が拡散しすぎちゃってて。もう諦めかけてみんな幽体離脱し始めたところに、ヒカルちゃんたちが家に帰ってきたって情報が入ったので、朝駆けで来たわけです」
っていうか、なんでウチの留守とか帰宅したとかわかってるの?まさか監視されてるってこと?
「ねぇ・・・真理ちゃん?まさかとは思うけど、ウチ防衛軍に監視とかされてないよねぇ?」
ちょっと声のトーンを低くして聞いてみた。威圧とかじゃないよ?ぜーんぜん違うよ?ボクの声のトーンが低くなったのでちょっとビクっとした真理ちゃんは全力でブンブンと首を振った。
「と、とんでもないですよ!そんなことする訳ないじゃないですか!私お友達は売りませんよ、絶対に!ましてやヒカルちゃんはお友達以上のゴニョゴニョ・・・なのに、売るわけありません!」
なんだか途中のゴニョゴニョ言ってたのが気になるけど、あまりの迫力にちょっと気おされながらも、もう少し詳しく聞きたかった。
「じゃあ、なんでボク達が帰宅したとかわかるの?」
「それはですね・・・言っても怒らないですか?」
「まあ、場合によるけど・・・」
「まあ、怒られるようなことでもないんですけどね、普通にお隣の原沢さんの奥さんと仲良くなりました」
「おばちゃんネットワークかい!!」
「失礼な!私はまだおばちゃんじゃないですぅー!ちょっと人付き合いと交渉が上手いだけですぅー!」
うわ、ちょっと子供みたいになって可愛いけど、まあお隣さん情報じゃ怒れないなぁ・・・。
「まあ、それは置いといて。ちょっとご飯食べちゃいましょう、ふふ」
そう言いながら優が、ウィンナーが山盛りに乗ったお皿と、丸パンが山積みになったお皿と、ポテトサラダが山盛りになったお皿をテーブルの上に置き始めた。
友里達も手を洗ってテーブルについて、いただきますと手を合わせてご飯を食べ始める。
「いつ食べてもお母様のご飯は美味しいですなぁ、私もここの子になりたいくらいですぞ」
「ほんと、優さんのご飯は美味しいですね。友里ちゃんお姉ちゃん欲しいですよね?私はかまいませんよ?」
「あらあら、娘ばっかり増えちゃってどうしましょ。ヒカルちゃんも元に戻りそうもないし、友里がお婿さんもらったら肩身せまくて大変そうねぇ」
実際ボクが男に戻ったとしても、ちょっと居心地悪そうだ。まあボクがこんな風にならなければ真理ちゃんとかも知り合いになってないから、その辺はなんとも言えないんだけどね。
「っていうかわたし結婚しないし、ずっとヒカルちゃんと一緒にいるし」
「それじゃ徳田家は友里の代でおわっちゃうわねぇ・・・」
そんなことを話しながらもあれだけあった食べ物は、綺麗さっぱりみんなのおなかの中に消えていった。
食後に入れてくれたコーヒーを飲みながら、今度は優も含めて真理ちゃんと話し始める。
「で、結局なんでウチにきたの?まだ拡散抑え切れてないんでしょ?」
「ええ、もうそれについては抑えきれないので諦める感じなのでよいのですけど、問題は国外です」
「ああ、さっき言って秘密兵器がどうとかってやつ?」
「はい、一応各国の認識としては守護者は国の保有物でなく、たまたまいるだけの存在という認識になっています。まあルディアさんのように一つの国にほとんど所属してるような守護者もいますけど、アレは所属先が大国なので他の国は口出しが出来なくなってるので例外としましょう」
「ふむ・・・でもこの国は例外にはならないわけだ。ボクの存在が」
「はい、恐らく日本の近隣国家はヒカルちゃんの事を共有しろとか、自分の国に引き入れる、もしくは拉致する考えを持っているかもしれませんね・・・」
「引き入れるのはともかく、拉致って・・・そんなことできると思ってるのかな?」
「まあ見た目は小柄な美少女ですからね・・・隙を突けばとか思ってるかもしれませんね。まあとにかくそんな他所の国が動き出す前に、この事態をなんとかしたいと思って相談に来たんですよ」
「なるほどねー。でもほんとにどうするの?」
「それなんですけどね、本当にさっきの話やってみませんか?」
「へ?さっきのって?」
「ヒカルちゃんをアイドルにして、普通の一般映像で流しちゃうってやつですよ」
ああ、あれ冗談じゃなかったんだ・・・。
「アイドルにしたからってなんか変わるの?ネットの拡散が無くなるわけじゃないよね?」
「ええ、先程も言いましたけど、それはもう諦める方向です。アイドルになって一般化されると色々とできることがあるわけですよ。国外に対してですけど」
「そなの?」
「ええ、国内では情報がありすぎてウソかどうかなんてわかっちゃいますけど、国外は日本の文化レベルやそう言う事に疎い部分もあります。なんでこんなアイドルがいるって事が一般の情報で出回れば、あの怪獣退治の映像さえもプロモーションビデオかなんかだと思われます。むしろアレに似せてちゃんとしたPV作っちゃえばむしろこちらが本物になるでしょう」
「ふーん、それで偶像化計画なのね・・・、ヒカルちゃんの可愛さが世に広まるのはやぶさかじゃないけど、忙しすぎて過労死とかしない?あとプロデューサーとかに枕営業とかさせられない?」
枕営業って、なかなかシュールだなぁ・・・、絶対やだけど。
「ああ、その辺は大丈夫ですよ。どちらかというと、私達防衛軍の所属アイドルとして売り出そうと思ってるので、国の管轄になりますから。それに私たちのPVなら怪獣退治してても違和感ないでしょう?」
「結構ちゃんと考えてたんだね・・・ボク冗談のつもりだったのに・・・」
「まあホントのこと言ってしまうと、偶像化計画は実はすでに上がってたんですよ。今日ヒカルちゃんに言われるまでもなく。なので朝のヒカルちゃんの台詞は冗談でも渡りに船だったんです」
なるほどね・・・しかしアイドルかー目立つのあんまり好きじゃないけど、まあ元の原因作ったのボクだしなぁ・・・。
そう思いながらリビングのテレビに目を向けると、なにやらこちらの話を耳ダンボで聞いてた友里達と眼が合った。
「まあ、会場の中も実際ヒカルちゃんの話題で結構みんな盛り上がってたよ」
「ですなー、むしろ本物の変身とか見ちゃった後だと、やっぱり作り物は若干味気ないというか。面白い事は面白かったんですけど、本物の迫力には敵わないということでしょうなぁ」
「ええ、恐らく映像の拡散が早かった理由も同じだと思われます。それだけあの動画は魅力的だったんだと思われます。だからこその偶像化計画なのです。ひょっとしたら防衛軍に入ってくれる人も増えるかもしれないですし・・・」
最後のはちょっと違うんじゃ・・・と、思いながらも一応口に出さないようにしといた。
ボク一人でやるって言うのがなぁ・・・と天井を仰ぎ見た時、みんなのスマホが一斉にけたたましい音を鳴らし始めた。
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