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ヒカル偶像化計画

 昨日の夜遅く、むしろ日付が変わっちゃう頃ボクたちは家に到着した。


 まあ日曜だから寝坊しても全然問題ないんだけどね。


 さすがに優も運転しっぱなしだから疲れたのか、まだボクの隣でぐっすりと眠ってる。


 ボクは目が覚めたんだけど、気配で誰も起きてないのがわかったので、優の寝顔を見ながら二度寝する準備に入った。


 ぴんぽーん。


 寝床を整えてもぞもぞしてたら呼び鈴が鳴った。


 時間は朝の9時。あ、ヒーロータイム終わってる、地味にショックだ。


 ぴんぽーん。


 再び鳴らされる呼び鈴。まあ、もうだれか来てもおかしくない時間だものね。優はよほど疲れてるのか、二度目の呼び鈴でも起きる気配がまるでない。

 優が起きちゃう前に出るかー、でもめんどくさいなーと思いながらちょっとダラダラしてると


 ぴんぽぴんぽぴんぽーん


 おおう!まるでいるのはわかってるぞ!みたいな感じの鳴らし方だ。早く出なきゃ。でも誰だろ?


 ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴんぽーーん


 連射し始めた!誰だよぅ、優が起きちゃうじゃん!!


「んー・・・」と身じろぎし始めた優を見てボクは慌てる。


 ボクは寝室のドアを開けて、廊下にあるインターホンのボタンを慌てて押す。


「はいはいはーい!どちら様ですかー?」


 二階のインターホンには画面がついてないので、画像から誰が来てるのか判断できないのだ。スピーカーの向こうから、地の底から呪うかのような女の人の低い声が聞こえてきた。


「・・・おはようございます・・・」


 ん?だれだ?聞き覚えのあるようなないような・・・よくわかんないな。


「すぐ行くので待っててくださいねー」


「・・・・・・・はい」


 ほんと誰だろ?と思いながらトントンと階段を下りて玄関のドアをガチャリと開ける。

 

 そこには俯いていて顔がよく見えないけど、真理ちゃんだろうと思われる人物が立っていた。っていうか真理ちゃんだよね?このスーツの着こなしっぷりは?ちょっと不安に思いつつも声を掛ける。


「真理ちゃん・・・?だよね。どうしたのこんな早くに?いつも夕食の時に遊びに来るのに珍しいね?」


 そう最近の田所女史こと真理ちゃんは、「友達」になったのをいいことに、よく仕事が終わった後に遊びに来てご飯を食べるのだ。まあ何かどうかおかずみたいなのとかお酒みたいなのとか買ってきてくれるからいいんだけどね。

 なんでも、最近一人でいるのがさみしいんだそうな。わかるわかるーこういう一家の団欒みたいなのに触れちゃうと、今まで平気だった一人の時間が急に寂しくなったりするんだよねー。

 どうも正臣はその辺を警戒して、あんまり遊びに来ないらしいけど。

 何回か遊びに来てた時に、真理ちゃんに友里が冗談半分で


「真理ちゃんもウチの子になっちゃえばいいのにーわたしお姉ちゃん欲しかったんだー」


 と言った時に、口では


「そんなことできるわけないじゃないですかーあはははは」


 なーんて言って笑ってたんだけど、眼が少しも笑ってなかったのをボクは見逃さなかったよ。


 アレはあわよくば・・・って感じの眼だった。その後ウチの間取りとか、余ってる部屋とか色々聞いてきたしね。まあ真理ちゃん一人くらい増えても別に構わないんだけどね。


 そんな真理ちゃんが立ったままで俯いて何も言わない。怖いんですけど?


「あのーま、真理ちゃんだいじょぶ?なんかあったの?」


 と、恐る恐る声を掛けると俯いだまま近づいてきてボクごと家の中に入ってくる。ちょちょちょ!なんか言ってよ怖いってば!

 

「真理ちゃんってば!どうしたのさ、なんか怖いよ!」


 さすがにそこまで言われたからかピクッと肩を震わせて、顔を上げてボクの顔を見る。


 なんだか目の下にクマが出来ちゃってるんですけど・・・、お疲れモード?


「ヒカルちゃん・・・」と呟きながらボクの肩をガッシと掴んでくる。


「な、なんですか?」思わず敬語になっちゃうボク。


「・・・やらかしてくれましたね?」


 ん?なんのことだろ?昨日の怪獣トカゲ退治は、被害はほとんど無かったし、瞬殺だったからニュースでもあんまり大きくは取り上げなかったと思うんだけど・・・?


「なんかボクやったっけ?昨日トカゲは瞬殺したけど・・・そのこと?」


 真理ちゃんはボクの肩をつかんだまま、はぁ~っと深いため息をつく。


「そのことに関しては、人的な被害をゼロに抑えてくれたので、感謝の言葉しかありません」


「いやぁ、感謝されるほどの事でもないよ?当り前のことだしねー」


 ちょっと照れながらボクはそういうと真理ちゃんが肩をつかむ手に力を入れる、まるで逃がさないとでもいうように。


「ええ、それ自体はいいんですよ、それ自体は。ヒカルちゃん昨日から動画配信とか見てますか?」


 ボクは首をんーんと横に振りつつ答える。


「夜遅くに帰ってきたし、ずっと外に出てたしね、なんも見てないよー?」


「そうですか・・・ではこれを見てください」


 そう言いながらボクの肩から手を放して、ショルダーバックからタブレットを取り出して操作する。


「こちらをご覧ください」


 そこには誰が撮ったかわからないけど、ボクが歩きながら変身していく様子や、またアングルが変わったかと思うと嫌にローアングルな動画や、巨大なトカゲに向かって電磁砲レールガンをぶっ放してるシーンやら、それはそれはもう、ものすごい数の動画がアップされていた。


 しかも、その動画の再生数がどれもこれも100万回以上は再生されてる。


 わぁーーーお。


 しかも中にはボクの顔なんかがばっちりと映ってるモノもあったりして「竜騎士の正体は女神だった!!」みたいなタイトルまでついてたりする。


「これってまずいかな?」


「まあ、まずいですね・・・、昨日の午前中から拡散が始まって、一晩中抑えようとしたんですがもう気が付いた時には後の祭りでしたね・・・。まあ今のところ敵意を持ったアップが無いからいいんですが、海外の人が見た時にどんな反応してくるかと思うと、もう胃が痛いですよ・・・ほんと」


 なんで海外の人が見るとダメなのかな?


「海外の人が見るとなんか不味い事でもあるの?」


「ヒカルちゃん・・・例えばの話ですよ?電磁砲レールガンって実装されてると思います?」


「ふえ?んー・・・あるんじゃないの?」


「まあ開発はされてるんですけどね、その電力量などからまだまだ持ち運びがスムーズなものとか実用化はできてないんですよね。小型なものなら多少ありますが、威力的には普通の火薬式の銃に毛が生えた程度です」


「そうなんだ・・・で、それがなんかあったの?」


「・・・ヒカルちゃん、単体で撃ってますよね?電磁砲レールガンしかもあの短時間で」


「あ」


 そうだね、ボク普通に撃っちゃってる。しかもあんな普通の大砲の弾よりもでっかいの撃ってる!


「海外の軍が見たら、完全に日本は秘密兵器を隠し持ってるって言われちゃいますよ・・・」


「でもでも、各国にも守護者ガーディアンの存在はあるんだから、これは日本の守護者ガーディアンですって言えばいいじゃん。ダメなの?」


「それはアメリカとか、その他の守護者ガーディアンがいる国はまだいいですけどね、元々12体くらいしかいなんでしょ?ヒカルちゃんもいれて」


「そ、そっか・・・持たざる者が圧倒的大多数なんだね・・・」


「ええ、だからもう手遅れなんですけど、かなりまずい事態になってるんですよ」


「ごめんなさい・・・」


「いえ、ヒカルちゃんはみんなを守ってくれたんですよね・・・しょうがないです。しょうがないですけど・・・もう少し正体隠してほしかった・・・私なんて隊のみんなにも内緒にしてるのに・・・もう意味がないじゃないですか」


「ボクのこと内緒にしててくれたの?」


「いえ、友達になったことは内緒にはしてませんよ?」


「え?じゃあ何を内緒にしてたの?」


「ヒカルちゃんがどんな顔してるかですよ。みんな聞いてくるんですよね、身体はエロい感じだけど、顔はどんなだ?かわいいのか?って」


 こんな人たちに守られてる日本って平和だなぁ・・・。


「ま、まあもうこんだけ流出しちゃったらしょうがないよね、いっそアイドルでもしてどんどん顔出ししちゃおうか!こんな動画が価値無くなるくらいに」


 顎に手をやってしばらく何かを考える真理ちゃん。


「それ・・・アリかもですね」


 ……うそでしょ?

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