でーと いん こくーん
ただいまです。完調じゃないけど大分楽になりました。
楽になりすぎて楽しく書いたら今までで一番長い話になっちゃいました。
( ´゜д゜`)アチャー
とりあえず怪獣騒ぎはあったものの、まだ開演前だったのと、奇跡的に被害が出る前に怪獣らしきものが倒されてしまった事もあって、イベントは無事に予定時刻に開催された。
ちなみに、唯一の被害は怪獣が出現した時に、足元に駐車中だった車が凹んだとかなんとか。車の持ち主には申し訳ないけど、無いに等しかったね。
会場が開くと行列はあっという間に建物に飲み込まれていった。その際大半の人がボクに手を振りながら入場していった。ボクたちは列の最後が入場するまで手を振り続ける羽目になったんだけどね。
だって友里達が入場したとこで、さぁ買い物行こうかと移動しようとしたら、めっちゃ悲しげな叫び声がそこらじゅうからするんだもの。やめるにやめられないよ。
会場に入るためのゲートはまだ入ってくる人がいるからか、スタッフが立って開いたままになってる。どうやら出入りは自由みたいね。まだ後から来る人もいるんだろう。
「さーて行きましょうか?ヒカルちゃん」
そう言いながら優が腕を絡めてくる。んーなんだろう、このカマキリとかに捕食されたような感覚。
優をチラッと見ると舌なめずりしてる!?
ボクの怯えたような視線に気が付いたのか、優もハッとなり慌てて口許を拭う。
そして二人は顔を見合わせると
「ふ、ふふふー」「う、うふふー」
とぎこちなく誤魔化すように笑う。
「なんか変なこと考えてないよね?」
ボクが牽制するように聞くと
「あ、当たり前じゃない、ヒカルちゃんとのデートが楽しみすぎてちょっと色々アレになっただけよ。気にしないで?」
「う、うん」
とりあえずボクらは、アリーナからの渡り廊下を通って朝の駐車場まで戻り、車で建物の近くまで移動して、超おっきいショッピングモールに向かう。
まだちょっと早い時間のせいか、本館が開店するまでは1時間ほどある。
開店してるのは駐車場の近くにある、雑貨店みたいなお店と、何件かの喫茶店のようなお店だった。
お腹が空いてるわけじゃなかったので、とりあえず雑貨店でも見てようかと、お店に入ってみた。
おほー結構色んなもの売ってるねー所狭しと、なんか人とすれ違うのがやっとなくらいの棚と棚の間なんですけど。
でもって売ってるものの偏りがスゴイ。
イベントで使うからよく売れるのか、ポキッと折ると光る棒とか、光る腕輪みたいなのがコーナーの一角を占めてる。
友里もこういうの買ってかなくて良かったのかな?
お、これいいなー何回も使える電池式のやつ。しかも色が七色に変化するなんて、ヤバイちょっとボクが欲しいかも。
なんに使うんだって言われちゃうと困っちゃうけどね。
「あらー、行く前にこのお店に寄れば良かったわねー、中にもあるって言ってたけど、これだけの種類があるんならここで買ってあげれば良かったわね」
「今から買って届ける?」
「まあ、途中で出てくるのも大変でしょうし終わったときにまだお店開いてたらつれてくれば良いわよ。どうせまた来るでしょうしね」
「ふふーそだねー、じゃあ、コレも後で買おうっと」
「あら、ヒカルちゃんが欲しいの?その電池式のヤツ。なんに使うの?」
「うっ・・・別に何かに使う訳じゃないけど何となく欲しくなっちゃうじゃん?こういうのってさ」
「ふふ、そうね。てっきり夜の間接照明に使うのかと思ってドキドキしちゃったわ」
「無理矢理エロい方に持ってった!?いや逆にその発想スゴイよね!間接照明とか。どんだけチカチカしちゃってるのさ」
「なんかトランスできていいかもよー、そうと決まれば買いね、コレは!」
電池式のキラキラミトン(3000円位)を握りしめてレジに向かおうとする優を慌てて止めた。
「や、やっぱりそんなに欲しくないいかなぁー、中にもっと欲しくなるようなフィギアとかあるかもだから、ここで買うのは止めとこうかなぁー」
ボクはチラチラと優を見ながら早口でまくし立てる。
そんなボクを優はキョトンとした顔で見ると
「そう?じゃあ今買うのは止めましょうかね」
と言いながら、棚に戻したのだった。
あぶなかったー最近夜の攻めが半端ないんだよね・・・、寝室に入ってアレがチカチカしてたら、なんとなく恐怖を覚えるようになっちゃうからやめよう、うんそれがいい。
『ご主人様、この間私のスイッチ切りましたよね?何かあったんですか?』
まあ、いろいろとね、あったんだよ・・・。
ちょっと本館に入る前から無駄にMP(精神力)が削られたよ。侮りがたし大型ショッピングモール。
そんなことしてるうちに、あっという間に1時間経ってたらしく、本館がオープンしたらしい。
雑貨屋から外に出ると、ガラガラだった駐車場も、半分くらいがすでに埋まっていた。
「すごいわねーもう人が並んでるお店があるわよ?」
「ホントだー、あれなに屋さんだろ?」
「あれは・・・パン屋さんみたいね。きっと並ばないと売り切れちゃうパンとか売ってるのかもね。並んでみる?」
ボクはフルフルと首を横に振って
「ボク優が焼いてくれるパンが好きだから別に要らないよー。それにあの行列に並ぶと時間潰れちゃうしね。他のとこ回ってみよ?」
「ふふ、ありがと、そうね中に入ってみましょ」
そう言いながら行列の横をすり抜け建物の方に向かった。行列の横を抜ける際、何人もの人がボクたちのこと見てたけどなんかあったのかな?スマホの画面とボクのこと見比べてたけど・・・。
建物のひとつに入ってみると、そこは飲食店のブースになっていて色んな食べ物屋さんがひしめき合ってた。
「あ、優!あれ!あの天丼屋さん!こないだテレビでやってたよ!スゴイ美味しそうだったの。お昼あそこで食べようよ」
「ああ、こないだ見てたアレね。確かに美味しそうだったわねー、特にあのタレたっぷりかけてくれるのとか。じゃあお昼はココに戻ってきましょうね」
「うんうん!うれしぃーなぁー、まさかこんなとこで食べれるなんて。ふふー」
「うふふ、よかったわね。じゃあ二階に行ってみましょうか」
二階にいくと、そこは色んな服屋さんが並んでた。
「ほえーここは服まみれだねー、どうする?なんか見たいものある?」
と、優の方を振り向くと、それよりも早くガッと腕を捕まれグングンとボクは引っ張られ、何やらとある服屋さんに向かわされる。
「ちょっちょっと優!?どしたの??そんな慌てて」
「うふふーちょっとヒカルちゃんに似合うかなーと思って」
そう言って引っ張る優の顔が見えない、なんか怖いんですけど!?
「だいじょーぶよー、ちょおっと着てみるだけ。着てみるだけだからー」
そう言いながら連れ込まれたお店の服を見てボクはぎょっとなる。
なんだろう、なんかミニスカ率が妙に高いんですけど!?
「いらっしゃいませー」
と、これまた可愛らしい感じの店員さんが出てきてくれたけど、やっぱりミニスカ。
「すいませんーちょっと試着させてもらってもいいですか?」
「あ、ダイジョブですよー。こちらお使いくださーい」
そう言うと四つほど壁で仕切られた試着室が並んだ場所に案内される。
「ちょ、ちょっと、優ってば!なんかミニスカおおいよ?このお店!」
「え?そうかしら、気のせいよー気のせい。ちょっと持ってくるからヒカルちゃんは待っててね。逃げちゃダメよ?」
えー超心配なんですけどー、ボクスカート履くのは慣れたけど、まだちょっとミニスカートは慣れないんだよねー。友里の学校の制服着たときも下に何か履こうとして、エレスに止められたんだっけなー、と遠い昔を懐かしむように現実逃避をしてみる。
しばらくすると、何着か抱えるように服を持った優が帰ってきた。ちょっと眼が血走ってるのは気のせいだと思いたい、勘弁してください、マヂで。
「ヒカルちゃん、これとこれとこれ!着てみて!可愛いから」
どうせ逃げられないし試着するだけならと思って、ボクはカーテンを閉めると服を脱いで着替えていく。
どれも間違いなくミニスカだった・・・ふわー防御力布一枚しかないとか、あり得ないんですけどー。
着替える度に優はカーテンを開いてパッシャパッシャと写真を撮っていた。
「ちょちょちょぉお!!ローアングルは止めてー!!」
「えーいいじゃないー脚綺麗よーヒカルちゃーん。まるでエステに行ったばかりのようにキラキラしちゃって、ちょっとムカつくわー、って位に綺麗よー」
「誉められてんの?それって?」
「もちろんよー、一般的な意見としてよ?私はヒカルちゃんの所有者だからそんなことは思わないわ」
優のその台詞が聞こえちゃったのか店員さんは、二人がただならぬ関係だと勘違いしたらしく、少し顔を赤らめてそそくさと離れていってしまう。店員さーん、戻ってきてー見えないかもだけど、夫婦ですからー!!
「んーじゃあこれ着てみて終わりにしましょうね。時間もなくなっちゃうしねー、他の服持ってくわねー」
そう言いながら、優は足元にあった脱いだ服をまとめて持っていった。
ボクは、最後に渡された服を見てみる。
ミニ○カポ○ス?そんな懐かしい単語がボクの頭によぎった。それでも着替えないと終わらないしなーと思いながら着替えてみると、以外と可愛かった。
タイトな感じなんだけど、そこまでエロさのない色合い、少しデニムっぽい布のせいか以外と防御力高そう。今まで履いたミニスカの中では一番いい感じだねー、ヒラヒラしてないからパンツ見えにくいし。
「ヒカルちゃん、着替え終わったー?」
カーテンの向こうから優が聞いてくる。
「あ、うん。着替えたよー」
「じゃあ開けるわねー、・・・あら、可愛いじゃない」
「うん、今日着た中で一番良いかも♪」
「うんうん、やっぱりこれが一番似合ったわねー、じゃあコレも履いてね」
と、優は黒くて長い薄手のソックスを渡してくる。
「え?え?どゆこと?」
まだちょっと混乱してるボクに優はさも当然のように言う。
「そのスカートにはこのニーソが必要なのよ。絶対領域を作らなきゃ、萌えが足りないわ♪」
「ま、まさかこのまま買っちゃうなんて言わないよね?」
ボクは嫌な予感を覚えつつも一応聞いてみる。優の中に残っているであろう良心に問いかけるかのように。
しかし、それに答えたのは優じゃなかった。
「お客様ー今までお召しになられてた服はこちらに入れておきましたのでー♪ありがとうございましたー♪」
足元をよく見ると今日着てきたはずの、黒いロングスカートが無くなっている。いつの間に!!?
ボクは思い返す。
・・・・・・持ってかれてる!約三十行前位に根こそぎ回収されてるじゃん!!
完全にハメられたー、全てがこの服を違和感無く着せるための布石だったんだー、逆に感心するわ!
「ヒカルちゃん、騙そうとしてたわけじゃないのよ?せっかく綺麗な脚してるのに勿体ないなあって思ってたのよ。一寸ずつ慣れるより一気にやっちゃう方がいいかなって。本当に嫌なら元の服に着替えてもいいけど・・・できればその格好の方が可愛いからそのままでいてほしいかしら」
なーんてことを頬に手を当てて物憂げな表情で言ってくる。
・・・・・・ズルイ。そんな顔でそんなこと言われたら着替えますなんて言えるわけないじゃんー、うちの奥さんズルすぎるー。
「ううーわかったよぅ、これなら割りと平気だったしこのままでいるよぅ」
「あら、本当に?無理しなくていいのよ?」
「べっ別に無理じゃないもん!少しは可愛いかもって思ったから平気だもんっ!」
「そ、よかったわー。じゃあソレ履いたらそろそろお昼になるし、さっきのとこでご飯にしましょ」
そう言ってボクの手にあるニーソを指差しながら言うのだった。たまに嫁さんが怖くなります。
無事に(?)ニーソを装着したボクはちょっと防御力が増したような気がしてホッとしながら一階のフードコートに戻っていく。
ちなみに、髪型もポニーテールからサイドテールに変えられてる。さすがにツインテールは優が自分の理性が持ちそうにないからという、とんでもない理由でやめたらしいんだけどね。
「て○やーてん○ー♪」とボクは勝手にテーマソングを作って鼻唄混じりに天丼の専門店に向かって歩いていた。
「ふふ、本当に楽しみだったのねー」
「うん♪だってテレビで見たときからレポーターさん達が美味しそうに食べるの見てたからさーもうイメージだけ膨らんじゃって大変なことになってるよ」
「まだ、今なら空いてそうね。良かったわね、すぐ座れて」
「うん、あ、ちょっと席とっといてー、ボクこれロッカーに預けてくる」
そう言ってさっきまで着てた服が入った手提げ袋を見せると入り口付近にあるであろう貸しロッカーを探しに優と別れた。
「大体この辺にあると思うんだけどなぁ」
と、キョロキョロしていると変な気配が近付いて来るのを感じとる。
「キミなんか探してるの?よかったら案内するよ?」
お、以外と紳士的な口振りで優しそうだ。振り向いてそちらを見ると、おお結構イケメンじゃないの。
「うわ、可愛いねキミ。この辺じゃ見かけないけどどこから来たの?」
なんで初対面の君にそんなこと教えなきゃいけないんだよ。ボクはお昼食べたいんだからさっさと戻りたいんですけど。
「えっとね、貸しロッカー探してるの。キミ知ってる?」
「ああ、ソレなら知ってるよ。こっちだよ」
そう言ってイケメン君はボクの手をなれた手つきで引いて入り口付近に連れてくる。
「ここにあるからどうぞ」
あれ、ちゃんと案内してくれた。なんか変なとこに連れ込まれるかもとか思ってたのに意外とちゃんとしてた。
「ありがと」
と、ボクが素直にお礼を言うと
「どういたしまして」
と、ニッコリと爽やかに微笑んで返してくる。
まあ普通の女子ならこれできゅんきゅん来ちゃうかもだけど、こちとら中身はおっさんだからね。しかも毎日のように職場でタラシキングの正臣に鍛えられてるからね。べっ別に正臣にきゅんきゅんさせられてた訳じゃないけどねっ。
ボクはロッカーに荷物を預けるとカギをポケットに入れながらイケメン君に頭を下げる。
「ありがと、助かったよ。じゃあ連れとご飯食べるからボクはこれで」
と言いながら優のとこに戻ろうとするとイケメン君がちょっと慌てた感じになる。
「あれー、連れの人がいるんだー。てっきりこの後僕がご飯に誘おうと思ったのになー」
「うん、ごめんねー、ホンとに助かったよ。じゃあね」
と脇をすり抜けようとするとボクの二の腕を掴んで止めてくる。
「ちょちょ、ちょっと待って。このままお別れなんて寂しいよ。一緒にご飯食べてもいいかな?」
えーっと思ったけど、そこまで悪いヤツじゃ無さそうだし、助けてもらったのは確かだしなぁ、まあ一緒にご飯食べるくらいはいいかな、なんかこのままズルズルやってても面倒だし。
「別に好きにすればいいと思うよ。あそこの天丼屋さんだし」
お店に戻ると優がここーと手を振ってきた。それに釣られてボクを見た男性客が何人かぽーっとしてるのはご愛嬌。
「ごめんねー意外と分かりにくくてさー待たせちゃった?」
「ううん大丈夫よ、メニュー見ながら待ってたから。ところでそちらの彼は誰?」
と、イケメン君をチラリと一瞥して優が聞いてくる。
「ああ、いま貸しロッカー探してウロウロしてたら、教えてくれた親切なイケメン君。名前は知らない」
「その親切なイケメン君がなんで一緒に店まで付いてきちゃったの?」
「なんかねーもう少し一緒にいたいから、ご飯一緒しても良いって聞かれたから、好きにすればって言ったら付いてきたの」
「ふーん。まあ座ったら?お礼にここのでよければ好きなの頼んでいいわよ?」
「あ、ハイ」
彼もまさか一緒にご飯食べるのが妙齢の美人さんだとは思わなかったらしく、少し緊張した面持ちになっている。
「ん?どうかしたの?イケメン君?っていうか名前は?」
「あ、ハルトです。斎王寺 晴斗です」
「なんか緊張してる?ちなみに私は徳田 優でそっちの美少女ちゃんはヒカルちゃんよ」
「よろしく?まあご飯食べるだけなんだけどね」
とりあえず店員さんを呼んで、ボクは特盛かき揚げ丼、優は大穴子丼、晴斗君はキャンペーン中の色んなのが乗ったヤツを頼んだ。
少し時間が経ったせいか晴斗君も若干落ち着いてきたらしい。
「それにしてもちょっとビックリしたよ」
「んーなんで?」
「いや、ヒカルちゃんみたいな可愛い子が連れって言うから、てっきり彼氏さんだと思ったんだけど、美人な女性だったからさ」
その理屈でいくと、逆に彼氏さんがいたらどうするつもりだったの?キミは。
「あら、美人だなんてこんなおばさん誉めても何も出ないわよ?」
「いえいえ、ご飯奢ってもらえましたし美人と美少女に相席出来るなら充分ですよ」
なかなか嫌み無く爽やかに答えるなぁ、まあ悪い子じゃ無いんだろうね。
「お二人はどういったご関係なんですか?親子にはちょっと見えないし・・・」
一応高校生の娘さんがいるので親子でも通るんですけどね。ここは優に任せとこう。
「じゃあ、晴斗君にはどう見えるのかしら?」
「うーん・・・難しいなぁ、イベントがそこでやってるから売り出し始めたアイドルと、美人マネージャーさんとかでもいけそうな気がするんですけど、まあ普通に考えたら叔母さんと姪っ子さんってとこですかね?」
おお、うちの設定ドンピシャじゃないかー素晴らしい。まあ、無理ないようにそういう設定だからね、ちょっと考えたらわかるかもだけどね。
「うふふ、後者が正解かな」
「おおーやった。じゃあそんな二人が何してるんですか?」
「私の娘がそこのアリーナのイベントに来てるのよ。私達はその付き添い。終わるまで時間を潰してるのよ」
「へぇーそうなんですか。あ、って言うことは今日は二人ともフリーなんですか?」
「んーフリーではないかなー。二人でデートしてるんだし」
「え?ええ?」
優のデート発言に晴斗君が目を白黒させてるとご飯が来た。
「おまたせしましたー、ご注文の品は以上でしょうか?ごゆっくりどうぞー」
ボクたちは暫しの間、丼の世界に没頭することになる。
「これおいしーー」
「そうねー、かき揚げちょっと頂戴」
優はそう言いながらボクのかき揚げを少し持っていくと、穴子の半分を換わりにボクの丼に移していく。
そんな優とボクのやり取りを見ていた晴斗君はポツリと言った。
「・・・なんか二人とも本当に恋人みたいですね、雰囲気が」
ボクがモグモグしながらきょとんとしてると、代わりに優が答えた。
「だからさっき言ったじゃない。デートしてるんだって。愛にはね、いろーんな形があるのよ♪ハルトくん?」
晴斗君は今更ながらに自分がお邪魔虫ということに気づいたのか、顔を赤くして俯いてしまう。
「ご、ごめんなさい!僕邪魔するつもりなんてなかったんです。下心というか、ヒカルちゃんがあんまりにも可愛かったからつい一緒にいたくって・・・」
「ふふ、いいのよ、別に可愛すぎるヒカルちゃんがいけないんだもの。それに一緒に暮らしてるから別に今日邪魔されてもどうってことないわよ」
「でも二人とも地元じゃないんですよね?」
「そうよ、長野から来てるのよ。娘のイベントが終わったら大急ぎで帰るんだから」
「え?長野なんですか?」
「どうかしたの?」
「いや、ついこの前までウチの妹が長野で療養してて、お見舞いと様子見がてらに何度か行ったんですよ」
「妹さん、どこか具合悪かったの?」
「うん、悪かったっていうか、何年も意識が無くて寝たきりだったんだけどね。ある日突然意識が戻ったと思ったらすごい元気になってさ。実は今日も妹に付き合ってここに来たんだけど、はぐれちゃってさ。それなのに怪獣騒ぎはあるし、もうビックリだよ」
か、怪獣ねーそうねーびっくりだよねー?
「あら?はぐれちゃったなら捜さなくていいの?妹さん」
「ああ、向こうは付き添いの大人が何人か付いてるから大丈夫ですよ。さっき連絡も取れましたし。むしろ僕がまいごになってるみたいで怒られましたよ」
「ぷっ、迷子なのにナンパとか余裕だねぇ~」
「むっ、ふらふらして危なっかしい誰かさんに言われたくないし」
「別に危なっかしくないしー。さーてじゃあそろそろボクたちは行こうかな。席も混み合ってきたしね」
「そうね、じゃあ晴斗君、縁があったらまたね」
「あ・・・はい、ご馳走さまでした。また・・・会えますか?」
ボクは人差し指を唇に当てて、んーと考え込む。
「まあ、また会うような気はするけどね、なんとなく。まあこれあげるよ」
そう言ってボクはポケットから出すふりをして、緑色の精霊珠を1つ彼に向かって放る。
晴斗君はソレを珍しそうに光に透かしたりして見つめてる。
「これは・・・なに?見たことない水晶だけど」
「今日親切にしてくれたお礼だよ。何かピンチになったらその珠にお願いして空に向かってかざしたらいいよ。ただし会いたくなったからとかそんな理由で使ったら、もう使えなくなると思ってね」
「う、うん、わかったよ。大事にする、ありがとう」
「ん、じゃあね。割りと楽しかったよ」
そう言って優と手を繋ぎ名残惜しそうな彼を残して買い物に行くのだった。
そのあとは、地元じゃないようなおもちゃ屋さんがあったので寄って、心がときめいたフィギュアを買ったり、歌いながらアイスを混ぜ混ぜしてくれるお店で店員さんと仲良くなったりして遊んだのだった。
まだ友里たちが終わるまで時間があるけど、優も少し仮眠取らないといけないので、時間まで車のなかで寝ることにしたのだった。
「お兄様、それはなんですか?」
妹の香澄がまじまじと僕の手の中の緑色の珠を覗きこむ。
「んーこれはね、今日あった素敵な女の子がくれたのさ」
「なんだか不思議な色合いね?」
「うん、緑色だけどなんか色が動いてるような気もするしね、耳に近づけるとなんか風の音みたいなのが聞こえるしね。僕の宝物かな」
「ふーん、その子のこと好きなんですか?」
「まだよくわかんないけどね。でもこんなにドキドキしたのは初めてかもしれないね」
「まあ、迷子なのに呑気でしたのね。葵、車を出して帰るわよ」
「はい、お嬢様」
最近妹の治療により目を覚まして、そのまま妹の専属メイドになった女性が、静かに車を発進させた。
僕は遠ざかるショッピングモールを見ながら
「また、逢いたいな・・・」
と、呟くのだった。
感想、お気に入りなどしていただけるとステップ踏むかも。