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ぬこ生超らいぶ♪ その3裏側

侵略者側のお話です。

 次元を超えた私の目の前にいたのは小柄でつるっとした感じの原生生物だった。


 その生物はこちらに手を伸ばしてくると私の事を捕まえた。


 そして何事かつぶやいた。


『ようこそ、我が元へ。お前は幸運だったな、我に見つかって』


 何故だ?何故こいつは私たちの言語を喋っているのだ!?


『お前の考えてることは解っているぞ?安心しろ、我はお前の先達だ、少々特殊だがな』


 先達?と言う事はコイツ・・・いやこの方は私よりも先にこちらに渡ってきた同族なのか?


『そうだ、あと先に言っておくが我は罪人ではないぞ?自分から志願したのだ』


 志願?では計画初期の移住者なのか?それにしてはおかしい。このような高度な肉体に憑依することは不可能と説明を受けたはずだ。何故だ?そして何故私はこの方に見つかり捕獲されているのだ??


『納得がいかないようだな?我は特異な存在だったからな、いうなればお前らはこのように黒魂なのだが』


 そういうと私を鏡の前に差し出すように映しこむ。そこに鏡に映る私は黒かった。これが魂の色だとしたら罪人たる私にはお似合いの色と言ってもいいだろう。


『たぶん今お前は自分が罪人だから黒い色だと思っているのだろうが、安心しろ。大概の魂はお前と同じ黒い色だ。いや大概というより我以外の者はおそらく黒いだろうな」


 今の言い方だとこの方は黒では無かったと言う事だろうか?一体何色だったのだろうか?


『知りたいか?我の色が?そらこの瞳の奥に見える色だ、しかと見るがいい』


 そう言って今度は自分の顔の前まで私を持ち上げ、その大きな瞳を見せつけてくる。


 そこには茶色の瞳が見え、その奥の方にゆらりっと紅い炎のように煌めいていた。


『見えたか?それが私の魂の色だ。我はお前らの王になるべくしてこの身体に憑依したのだ。我はこの身体を用いて王国を作る。次元を渡ってきたもの国をな。お前らにはその国民になってもらうぞ?嫌でもな』


 私は正直その言葉を聞いて、そして先程の魂の煌めきを見て、この方に心酔し始めていた。私は罪人としてこちらに送り込まれたが本当は無実の罪で投獄されていたのだ。私を陥れたやつらにも、滅びかけたあちらの世界にもなんの未練も無かったが、このまま朽ちていくのはまっぴらだった。

 

 そう思った時、何か魂が奮えた気がした。


『・・・ほう?どうやらお前は罪人ではないな?ほら見てみろ』


 そう言うと王は再び私を鏡の前にかざした。


 そこに映る私は、もう黒では無く淡い蒼色に輝いていた。


『お前の魂が進化したのだぞ?喜べ。お前は我のそばに置いてやろう』


 王は私を持ったまま部屋のテーブルまで移動すると、ちりりんと鈴を鳴らす。


 しばらくすると部屋に誰かが来たようだ。


「お嬢様、お呼びでしょうか?」


「爺、次の被験者は見つかっているの?」


「は、既に意識の無い植物状態の身寄りのない患者を何人か引き取っております」


「そうね、ではメイド服が似合いそうな女の子とかはその中にいるの?」


「は、一人そのような方がいらしたかと思われますので、生命維持装置ごとお連れします」


「ありがとう」


 その人物は王に一礼すると、静かに部屋を出ていった。


『よかったな、ちょうどいい身体があったようだぞ?』


 私も王と同じように高度な器に憑依させていただけるのですか?


『うむ、まあ我もこの身体はまだ幼体なのでな、手伝いが欲しいのだよ。それは黒の魂ではだめなのだ。私と同じ色付きでなければな』


 光栄でございます。私は今、王に出会えた事に心から感謝しております。


『ふむ、勘違いしてるようだが、我のところに来たのは偶然ではないぞ?我はお前らが出現する場所が我の近くならなんとなくわかるのだ。だからお前の事は我が迎えに行ったのだぞ?変なものに憑依する前にな」


 おおお、まさに王のお力。素晴らしい、そのお力があればすぐに国が作れるのでは・・・。


『ふっ、それがなかなかそうもいかなくてな・・・。こちらには守護者ガーディアンなる者が何体かいるのだ、それが我らの同胞を駆除しておるのだ。故に我は強き者を創り出さねばならんのだ』

 

 わかりました。王よ私のような者でもいくらかのお力添えはできましょう、お仕えさせてください。


『うむ。ん?来たな?』


 再びドアが開き先程の人物が部屋に現れる。


「お嬢様こちらの方なのですが、よろしいでしょうか?」


「ええ、ありがとう。じゃあしばらく作業に集中したいから一人にしてもらえる?」


「はい、しかしお嬢様もまだご無理はくれぐれもなされぬようお願いいたします」


「ふふ、ありがとう、わかっているわ。心配かけないように気を付けるわね」


「では」


 そう言ってカプセルのようなモノを部屋に置いて出ていった。


『どうだ?これがお前の器だ。なかなかの器量良しではないか、よかったな』


 私はカプセルの中の生物を見る。胸こそ上下して呼吸しているがたくさんの器具を付けられて身動き一つしないが、確かに王と同じ特徴を備えていた。さすがにまだ美醜の区別はつかないが、王を基準とするなら、王よりは見劣りするが良いほうだとは思えるし、その分体の大きさは王よりも大きい。


 王はおもむろにカプセルの蓋を開ける。シューっという音がして少しひんやりとした空気が流れでる。


『この者はすでに魂が無い状態だ、憑依自体は簡単に済むだろうが、なにせこの器は神経節が多くてな、動けるようになるまでが一苦労だからな、我も通った道だ精進するがいい』


 そう言って私を無造作に横たわる器の上に放り投げる。


 私の魂はすぅっと溶け込むように器の中に入り込み、器の中に拡散する。


 身体の隅々まで私が行き渡ったのを確認すると、目をゆっくりと開けてみる、部屋は薄暗かったはずなのに、とても眩しく感じられて、眼の奥に痛みを感じるほどだった。


『まだ無理せぬほうがいいぞ、その身体とて久しぶりに見る光だからな、視神経を刺激されるのだ。こちらの言語は一応その身体の脳と言われる部位に収められてるはずだ。神経節をつなぎ合わせながら、学ぶがいい。そのうち自発呼吸もできるようになるだろう』


 再び鈴をちりんちりんちりんと今度は三回鳴らした。


「お嬢様、およびですか?」


 今度は先程と違いこの器と同じような容姿をした人物が現れた。


「被験者が目を覚ましたの。しばらく世話をお願い」


「かしこまりました。お嬢様」



***************************


 約2ヶ月が経ち私はメイド服に身を包んでいた。


「ずいぶんと早く動けるようになったものね」


「はい、お嬢様のおかげでございます。お嬢様にお仕えしたい一心で頑張ることができました」


「そう?それはよかったわ。それにしても2か月で働けるようになるとは思わなかったわ」


 そういうと王は一つの水槽に近づいていく。


「今度はこの子で試してみようと思うのだけど、どうかしら?」


 水槽の中には少し大きめのトカゲが入っていた。


「こちらの生物に憑依させるのですか?まだ意識があるようなのですが」


「だからこうするのよ」


 王は一本の細長い針を出すとトカゲの脳髄に突き刺す。


 ビクリと体を震せて動かなくなるトカゲ。


「こういう生物ってね、すごい死ににくいのよ。でも脳髄を破壊してあげると、脳死と言われる状態になるのよね。心とか魂って一体なんなのかしらね?」


 そういうと、掌から一つ黒い魂を生み出すと、動かなくなったトカゲに埋め込む。


 しばらくすると微動だにしなかった目をパチクリとさせて、再びトカゲが動き出すが、明らかにその動きは本来のトカゲのそれでは無かった。


 トカゲは王の方に向き直ると、恭しく頭を垂れたのだ。


「どうやらうまく憑依できたようね?でわ、これからお前をある程度の都市に連れていく。まだ変質はお預けよ。後で思う存分暴れるがいいわ」


 私は少し小さめのプラケースの蓋を開け、トカゲに入った同胞を迎え入れる。


 同胞は私の顔をチラと見ると、会釈するかのように少し頭を下げた。

 

 彼、もしくは彼女は、これから敵と戦わなければいけないことを知っているのだろうか?




 私は心の中で、同胞が無事に帰ってきてくれることを祈りつつ蓋を閉めた。 



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