ぬこ生超らいぶ♪ その3
ざわざわ・・・
人が集まると仲間同士が集まって普通にしゃべってるだけでも、結構なざわめきがうまれる。
それがイベント前の行列ともなれば尚更だよね。
でもこのざわめきはちょっと違うと思う。
「いいわねえーヒカルちゃんそこで背筋伸ばしてコッチに少し目線ちょーだい!あっそそ、そのままー・・・ハイッいい画いただきましたー。じゃあ次わねー・・・」
カメラ片手におおはしゃぎして、ここぞとばかりにボクの立ち絵をカメラに納めている優。
友里達が入場するまで付き合うとは言ったものの、やることがなくて暇だったボクらは、せめて陽が当たる場所にいたいと言うことで、会場から駅の方に行く為の階段の踊り場に移動した。
そこで陽に当たって、髪をキラキラさせたボクを見たとたんにインスピレーションが湧いてしまったのか、優の頭も沸いてしまったようなのだ。
そこからはもう止まることなく、次から次へとボクにポーズを要求してシャッターを切り続けている。
当然こんなイベント会場でそんな撮影してれば、周りがざわめくのも当然だろうね、だってここにいる人たちの8割方が、こういうの大好物な人種なのだから。
「あんなレイヤーさんいたっけ?」
「わかんないけどめっちゃ可愛いじゃん、どっかのアイドルとかじゃないの?」
「ばっかアイドルだってあんな綺麗な子いないぞ?」
「さっきからヒカルちゃんって呼ばれてるけど検索してもでてこないよ?」
「なんかさっき付き添いっていってなかったっけ?」
「ママー!それわたしにもちょーだいねー」
「ちょっとだけ撮ってきていい?私もー我慢できない!」
「列から離れると実行委員の人に怒られるよ!」
「イベントに出てくれるのかなぁー出ない人だったらどうしようー」
などと、コッチを見てざわついてるのだ。なんか友里が叫んでたような気もするけど・・・。
遠くのほうからも「すいませーん、コッチにも目線くださーい」などと言われるので、そちらに流し目を送ると、周辺からスマホのシャッター音が
「カシャッ」「ピローン」「ばきゅーん」「撮るよぉ」「カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ」
などと一斉に鳴り響く。
「うふふーヒカルちゃんの魅力にみんなテンション上がりっぱなしねぇ」
上げたのは優だけどね。と心の中でつっこんでおいた。
しばらくそんなプチ撮影会をしていると、さらにカメコのような、いやカメコ達が10人程騒ぎながらやって来る。
「こっここか!天使が降臨したのは!!」
「こんな被写体がいるって言うのに並んでなんかいられるかぁっ!!」
「すっすいません!写真撮らせてもらってもいいですかッ?」
なんだか物凄い熱気が迸っている。どうやらこの行列の中の誰かがさっき撮った写真をインスタか何かで拡散したらしく、それを見てカメコが集まってきたらしい。
「あらあら、すっごい集まってきたわねぇ、はいはい、ここ!この踊り場の線からあっちに入らないでく
ださいねー、ポーズのリクエストは一人づつお願いしますねー。あとセクハラ紛いのポーズを要求した場合、撮影自体中止しますのであしからずー」
なんでか優が仕切り出しちゃったよ!?まあやたらと寄ってこられるよりはいいんだけど。
そこからは、色々なポーズを要求される。まあ胸つきだしてーとかないからいいんだけどね。以外とみんな紳士的で無茶ぶりはしてこない。コッチがちゃんとポーズをとるまで待っててくれるし。
少し鼻息荒くしながら「もう普通のレイヤーさんじゃオレ満足出来ないかも」などと言ってるのはご愛敬。
その中のちょっと若い感じ、言うなればカメコになったばかりですッみたいな感じの子がこんな要求をしてきた。
「こう・・・キラキラッと天使みたいな感じを出してもらっていいですかッ!」
普通に聞けば無茶ぶりもいいとこだろう、アバウト過ぎるし。他のカメコの人達も「おいおいなんて要求してんだ?」みたいな目で男の子を睨んでる。
そんな視線に萎縮して小さくなってしまう男の子。
でも天は君を見放さなかったよ。眼鏡をかけてたことが幸運だったね。何故ならばボクも優も『眼鏡男子』が大好物だからだっ!!
叶えて見せよう!眼鏡男子の願いならばッ!!
後で冷静になってみるとボクも知らず知らずのうちにテンション上がっちゃってたのかもしれない。
チラリと優の方を見ると、コクりと頷き返された。
よぉーっしっやってやんよぉーーー!!
ボクは腕を胸の前でクロスさせると、髪の毛を伸ばし始める。薄茶色だった髪の毛は銀色に変化していき、それにともなって陽の光を反射してキラキラし始める。
おおおおおっ!!っというカメコたちの驚く声。
遠間の行列から聞こえる「あれどうやってんの!?」というどよめきの声。
フッフッフフ、まだ終わらんよっ!天使と言えばコレだろうっ!!
ボクはクロスさせてた腕をバッと左右に開く。それと一緒にバサアッ!!と背中から勢いよく拡がる光翼。
もう太陽の下で目映いばかりに輝くボクを見て
「天使じゃない・・・これは女神だ・・・女神が御光臨なされた・・・」
と言って、涙を溢れさせながら祈るようにシャッターを切り続けるカメコたち。
思い返せば返すほど恥ずかしい。
少し離れたところで優はしたり顔でウンウン頷いてるし。
もう、友里達の行列がボクの方に来ようと崩壊しかけた時だった。
ズッゥウウゥゥゥゥゥン・・・・
腹のそこに響くような、ナニか重いものが落下したような音が、遠くの方から聞こえた。
しばらくすると、アリーナにもその振動が走る。
ギャオオオオオオオオオオォォォォォゥ・・・・・
そして雄叫びのようにナニかが発したであろう声。
アリーナからかなり離れているだろう場所なのにハッキリと見えてる巨大なシルエットは・・・・
「・・・・・・ゴ○ラ・・・・・・?」
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