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光一、魂の叫び

ギリギリ間に合いました。今日二話目です。

 海の底に引きずり込まれていくような感覚。


 嗚呼、死ぬってこういう感覚なんだな…と思いながら体の力が抜けていくのに抗えないでいる。

 一度助かりかけただけに、すげえ悔しいが棒人間様だって頑張ってくれたんだ…しょうがない。

 俺だって死にたかったわけじゃないが、人間いつか死ぬ時は死ぬんだ。

 俺は人の寿命というのは、事故で死のうが病気で死のうがそれが天命だとおもっている。

 天命じゃなければ、それがどんな大病であろうともきっと生き残れると思ってる。

 俺の爺さんみたいに、戦争で死にかけ、事故で死にかけ、病気で死にかけ、他数度の死ぬ目にあっても結局110歳まで生きたような人がいるのだ。


 だから今回の俺のこの状態が俺の天命に違いないと思う。


 思うけど…悔しいな…やっぱり。


 妻の優や友里のことを考えると、やるせない気持ちでいっぱいになる。

 もっと色んなとこ行ったり楽しませてやりたかったなぁ、と意識が暗闇に完全に沈み込みかけた時。



『きゃあああああぁぁぁぁ、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぃい』



 少女とも子供とも言えない絶叫が聞こえたかと思うと、俺の意識は一気に暗闇から引き揚げられた。



 …なんだ…ここは?



 周りをやわらかな光が満たしている気がする。


 なんだろうここは?さっきまでの寒さがウソのようだ。


 ゆっくりと眼を開けると周りに五色の光が渦巻いていた。


 綺麗だ…素直にそう思えた。


 ゆっくり視線を巡らせる・・・でもなんだかおかしな感覚だ。自分の体があるようなないような、フワフワとしたなんとも言えない感覚。


 それにしてもさっきの声の主は・・・?


 そう思いながら気配を探ると、なんだか空間がビクッっとするような気配がした。


『あ、あーあー聞こえますか?だいじょぶですか?痛いとこないですか?』


 なんだろう…すごくビクビクした気配がこっちに伝わってくるんだけど…。


「ああ、聞こえるけど…ここはどこだ?俺は一体どうなった?なんか破片みたいなのが飛んできたとこまでは覚えてるんだけどさ」


 しばらく相手から考えるような気配が伝わってきた。


『え、ええ、ここは私の中だ。…すまない私の力が及ばずあなたを死なせてしまったんだ』


 ひょっとしてさっきの少女のような声の主か…?それにしては少し大人になった感じもするけれど。


「君の中って…どういうことだ?俺の身体はどうなっているんだ?なんかフワフワするんだ」


『あなたの生物としての活動は終わってしまったのだ、私…私たちの戦闘に巻き込んでしまったせいで、重症を負ってしまってな…』

 

 なんか今怪しい言い回しがあったような気がするが、とりあえず後回しだ。


「じゃあ、俺はやっぱり死んだってことになるのか?じゃあここで話してる俺はなんなんだ?」


 まあラノベ的な展開だと、魂とかそういう類のものなんじゃないかと思うが、一応念のために聞いてみる。


『…あなたは、あまり慌てないのだな?ほぼ自分が死んだと言われたようなものなのに』


「いや…まあ、慌ててもしょうがないしね、俺は目の前のことを処理してるだけだよ」


『では私も包み隠さず話したほうがよさそうだな。正確に言うとあなたは死んでいない。もちろん生物上の活動は停止したのだが、それはあくまで生物としてだ。まだ消滅や転生をしてないのであなたはあなたのままなのだ。あなたの器たる「身体」が機能しなくなった瞬間に、「魂」と「精神」を私の中に取り込んだのだ。それによってあなたという「個人」の死は回避されたと言っていいだろう』


「そうか…それで君の中なのか…。というか君はなんなんだ?さっきの棒人間様と関係があるのか?」


『ボーニンゲンサマとはあれか?私が融合した樹木のことなのか…?』


「ああ、やっぱり君が助けてくれたのか。棒人間様なんて勝手に呼んでごめんな、相討ちになったとこは見たから、やられちゃったのかと思って心配したんだ。」


『え、ええ大丈夫だ、私は絶対に壊れることがないのだ。私は地球という母なる存在より生み出された『エレメント・スフィア』という精神生命他体だ。この世の中で最大の「原子」となるのだ。なので私を破壊することは物理上不可能。奴と相討ちになったせいで、融合していた樹木よりはじき出されてしまったのだがが、奴も核となる部分が壊れたのであれ以上の活動はありえないだろう』


「そっかそっかぁ、じゃああの後誰かが殺されたりとかはなかったんだな。よかったよ、改めてお礼したかったしな、助けてくれてありがとうな、まあ結局死んじまったけどさ。またこうして一応助けてもらったみたいだし…」


『い、いえいえ礼には及ばぬよ。ところで話は変わるのだけれども、あなた私と契約しませんか?』


「は?突然なんなんですか?」


 いきなり契約なんて言葉が飛び出したので警戒心Maxで思わず敬語になってしまった。


 なんなんだ?契約って…怪しさ満点だな。


『い、いやあぁ、あなたの魂と精神を私の中に取り込んじゃったんで、あなたと私はもう離れられない事になってしまったんですよね?事後報告みたいになって申し訳ないのだが…、それにいいこともあるのだぞ?器たる身体の再構築もできるだろうし。な?な?悪い話じゃないだろう?』


 怪しさ三割増しである。


「っていうか契約っていうからには、何か条件があるんだろ?俺も色んな経験してきたからな、こちらもなにかしなきゃならないんだろ?」


『そうだな…正直に言おうじゃないか。私のパートナーとなって奴らと戦ってほしいのだ!』


 誘い方がもう長寿特撮のM78星雲から問答無用でやって来た、彼らのそれとほぼ一緒じゃないか。


「戦う?奴らってあのでっかいカニのことか?」


『ああ、奴らは他の次元よりこちらに渡り、こちらの生物に憑依して魂の輪廻から外そうとしているのだ。それに心を痛めた母上様が私という存在を生み出したのだ。私もかれこれ百年ほど戦っているのだがな、奴らは一向にこちらに渡ってくることをやめようとしないのだ。それどころか年々その力が強くなってくる一方なので…もうギリギリな感じなのだ』


「そうか…だから相討ちなのか。でも、契約したところでどうなるっていうんだ?俺が融合して力を使って戦うのか?それとも変身したらでっかい銀色に赤い模様が付いた巨人にでもなれるのか?」


『いや・・・融合の力は私の固有能力だからな、恐らくあなたは使えないだろう。それに私の能力を使えたところで、奴らの力も増してる、大した戦力強化にはならないだろう…。もちろん訳のわからん巨人になんてならないだろうし』


「じゃあ、なんのために契約するんだよ」


 少しイラついて語気が強くなってしまう。


『い、今まで契約を成功させたものがいないのでわからないのだが、契約を成功させたものは、新しい能力が解放されるらしいのだ。私「エレメント・スフィア」はその時こそもう一段上の階位になるらしいのだが…、まあ未だに契約成功させた姉妹がいないので何とも言えないな』


「なんか行き当たりばったりだなぁ…しかしよく俺の死に際に間に合ったよね?」


 怪しすぎるのでちょっとカマかけしてみる。


 途端に慌てたような気配がエレメント・スフィアから漂う。それにしても、名前長げえな。


『しょっ、しょれはだな!ちょうど死ぬ瞬間が目に入ったというかなんというかだなっ』


 動揺しすぎて噛み噛みじゃないか…。


「それは、タイミングよかったなぁ、俺は助かったけどさ。ちなみに最後の攻撃ではじき出されてドコに飛んで行ったんだ?エレメント・スフィアさん?」


 冷や汗がだらだらと流れていそうな雰囲気だ。


 しばらくの沈黙の後、意を決したような感じでエレメント・スフィアががばちょ!と土下座でもしそうな勢いで言った。


『ごっごめんなさい!!ワザとじゃないんですっ、偶々飛ばされたのが、あなたの胸ど真ん中撃ち抜いちゃっただけで、殺す気はなかったんです!!』


やっぱりなーなんかおかしいと思ってたけど、あの破片はこいつだったのか…。


「やっぱりかー、なんか挙動不審だしおかしいと思ったんだよなぁーいきなり契約とか言い出すし」


『す、すみません、だますつもりはなかったんです!人間のような高次元の魂を減らしたら母上様に折檻されるとか、そんなこと考えて慌てて取り込んだんじゃないんです!!」


 ヲイ…なんか自分が怒られるのイヤで助けたみたいに聞こえたんだが?


「ちょっと待てや!じゃあ何か?偶然とはいえ俺の胸に穴開けちゃって死にそうになっちゃったから、怒られる前に助けたってことか?」


『そそそそんなことはないぞ!元々私も最近の戦いに限界を感じていたのでパートナーを探さなきゃなーなんて思ってたりなかったり?!けして怒られるのがイヤなんて事が理由ではないぞ!』


 キャラブレブレやんけ!!


「大体な!「エレメント・スフィア」なんて名前がなげえんだよ!お前なんかそんな大層な名前じゃなくていいわ!!『エレス』で十分だ!!」



キュウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥンン



 ん?なんか変な音がしたぞ??


《契約者としての『名付け』を確認しました。固有名『エレス』を承認しました》


 は?なに?契約者って、まさかやらかした?俺。


《これより契約者との融合および階位の引き上げを行います》


『え?え?ひょっとして契約完了?名前もらうことが契約ってことなのか??母上様教えてくれなかったし!!』


 ひょっとしてコイツも知らなかったのか契約の方法を!どうやってするつもりだったんだ??しかも名前つけるのが契約とか、某転生スライム系のスキル様よりもチョロインじゃねぇか!


《主:『光一』の魂と精神に、固有名『エレス』の魂の一部を融合させます。同時にサポートシステム『エレス』の構築をスタート、『精霊球』より『精神球』への階位移行を開始します。これよりしばらくの間一切の活動が不能となります。》


 一切の活動って…しばらくっていつまでだよぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

 と、俺の叫びもむなしくなんだかでっかいミキサーに放り込まれたような感覚と共に、再び意識が薄れていくのだった…。

 



 なんかでっかいミキサーにかけられたようなガリゴリした音と、エレスの叫び声みたいなのが、遠くで響いてたような気がするけど、気にしたら負けなんだろうなぁ…。



感想、ブクマなどしていただけると小躍りします。

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