表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/113

邂逅しちゃった その5

 挟み込むように迫り来るナニかを見ながらもボクは慌てることは無かった。


「加速」


 瞬間的に思考力を含めた身体能力を200倍まで上げる。


 すると周りが少しだけ暗くなった様な風景に変化して、ほとんど止まっているのと変わらないくらいの速度に変化する。その中でボクは普段に比べたら遅いけど、明らかに周りとは違う速度で自分だけ動き出す。

 迫り来てたものをよく見てみると、それは昆虫の、いや蟻の顎らしかった。それも今まで見てきたどの蟻よりも、大きくて立派なもの。まさかこの下にいるのが女王蟻?などと思いながら、次に追いかけてた幼女を見てみる。

 正面から見た彼女は、少し色が白すぎるが整った顔をしてる、かなり可愛いんだけど、その肌の白さが不健康な感じと陶器で作られたようなお人形さんみたいな感じを受けてしまった。

 ああ、丁度ルディアみたいな感じなのかな。でも表情自体はちゃんとあって、回り込んだボクに驚いたのか、ボクを挟み込もうとせり上がってきた蟻の顎に驚いたのかはわからないけど、目を真ん丸にして驚きの表情で固まっている。

 髪は黒色、それもかなりの良キューティクル具合で、シャンプーかリンスの宣伝に出れちゃうんじゃないかって言うくらいの真っ直ぐな髪質。前髪は目のすぐ上辺りで横一直線にまっすぐ揃えられている。その前髪の下から覗く眼は少し紅みがかった茶色の瞳。ハーフかなんかなのかな?

 まあ何にしても将来が楽しみな美少女さんなのは間違いない。どのみちこのままじゃ危ないから、そーっと移動しなきゃね。


 ボクはいまだにボクを挟もうとしたままジリジリと迫りつつある顎の間から、スルリと抜け出して幼女の後ろに回り込む。

 そして200倍から100倍までギアを下げていく。周りの景色が明るくなるにつれ、ゆっくりと動いてたボク以外のものが、徐々に元のスピードに戻り始める。

 幼女は驚いて後ろにひっくり返りかけてたらしく、後ろに回り込んでいたボクの胸のなかに、ポスンと後ろから倒れこみ、あれ?と不思議そうな表情でこちらを見上げる。

 うはー間近で見るとめっちゃかわいいー、しかも上目使いになってるからさらに可愛い!ウチにもって帰りたいくらい。

 そんな事を考えてたら前の方から『ガッキィィィン』と固いもんを打ち合わせたような音が鳴り響く。

 先程せり上がってた、顎が閉じた音だった。コレ挟み込むどころか、チョンパする気満々じゃないか!?あっぶなー。

 ボクは幼女を抱えたまま後ろにスライドして距離をとる。


 必殺の顎を避けられたのが不満だったのか、顎の持ち主はヘッドバンキングさながらに、頭を前後に振って地面から這い出てくる。

 その姿は少し蟻のフォルムを残しているものの、おおよそ蟻とは呼び難い造形をしている。

 さっきボクをチョンパしに来てた顎みたいなものは、両手の先に付いていてカマキリみたいになってるし、顔は一応蟻の様な感じだけど、人の顔に蟻の皮膚をくっつけたような、できの悪いエイリアンのようなものになってる。

 さらにそこから続く首、胸については、シルエットだけ見ればグラマラスな女性のように胸が隆起しているのだけど、表面は黒光りした甲殻の鎧。

 そこからキュッと細くなってその付け根からは、4本のがっしりとした脚が、大地を踏みしめ身体を支えている。

 問題の腹の部分は他の蟻よりも少し大きめだけど、黒くて先細った蟻の腹だった。

 ただし何かから引っこ抜いたような数本の神経のような管が垂れ下がっていて、そこからは乳白色のドロドロしたものが滴り落ちてる。

 

・・・・・・・完全にあれだ。ク○ーンエイ○アン。

 なんとなく想像はしてたけど、やっぱり卵巣引っこ抜いてるし。


 まあこんだけの変質してたら間違いなくこいつが侵略者なんだろうねー。しかし、どうにも腑に落ちない。

 今まで何体か虫系の侵略者と戦ってきたんだけど、ここまで変質したヤツは見たことがない。

 部分的には特徴を残してるけど、これを写真なり絵にしてなにも知らない人に見せたら、間違いなく蟻とは言われないだろうね。


『私もかなりの数の侵略者てきを見てきましたけど、こんなに元の姿から変わってしまった個体は初めて見ます。いっそ向こう側の生物がこちらに来たと言われた方が、まだ納得できるのではないでしょうか』


 また何かしらの進化が奴等にも起こり始めてるのかなぁ。この前のクラゲといい、エレスだけだったらもう倒すことはできなかったかもしれないね。


『ご主人様と出逢えたことは僥幸と言わざるおえません』


「まあボクだってあのまま何も知らないまま死んじゃってたかもしれないからね、お互い様だよ」


『ご、ご主人様がデレました・・・もう死んでもいいです』


 こんなんで昇天されても困るんですけどね?


 でも戦うにしても、この幼女何処かに預けないといけないな・・・かといってベースまで戻ってる間に、女王蟻に逃げられても嫌だしなぁ。


『ご主人様、いっそ挑発して追いかけさせて、逃げながらベースのある方まで逃げたらどうですか?』


 おおー、それいいかもー。エレスは時々出来る子だねー。


『時々じゃないですもん・・・』


 お、ちょっと拗ねた、珍しい。珍しいエレスは可愛いね。


『では、ずっと拗ね続けます・・・可愛いと言って貰えるなら』


 それはそれでうっとおしいからね?やめてね?


 しかし挑発かーどうやったらいいかな?言葉なんて通じないしねぇ。女王蟻はこちらを警戒しつつギチギチ言ってるけどどうしたもんか。と、ふと横に結構いい大きさの杉の樹があるのに気がつく。

 ふむ・・・これならアイツに届くかな?ボクは杉の樹に向かって視認出来ないほどの速さで右腕を一振りする。

 そして幼女を抱えたままのボクは、そっと杉の樹の後ろに回り込み、その幹をグッと女王蟻に向かって押す。

 すると杉の樹は、今ごろ斬られたのに気づいたかのように、ゆっくりと女王蟻の方角に向かって倒れ始める。

 女王蟻も、上の方が少しだけ他の木に触れてバサバサいってるだけなので、何が起きているのか解らず首を傾げてボクの方を見て警戒してる。

 やがて少しづつ倒れる速度を増した杉の樹は、女王蟻のほぼ真上まで迫りつつあった。

 さすがにそこまでいけば気づいたらしく、女王蟻はさっきボクを挟もうとした要領で、両腕をクロスさせて鋏のようにして幹を挟み込んだ。

 杉の樹は直径で60センチもあったので切れることなく、女王蟻を潰しにかかる。

 ギリギリ潰されなかったけど、4本の脚を踏ん張りまくって動けない女王蟻。もちろん腕も木を挟み込んで支えてるので、ボディーはがら空きである。

 ボクはニンマリと小悪魔的な笑みを浮かべ、女王蟻に向かって真空刃をいくつも投げつける。

 身体の何ヵ所かを切られて、そこからは黄緑色の液体が滲み出す。


 しばらく木を支えたままブルブルと震えていた女王蟻。


 黒かったその複眼が、赤く変わっていく。お?オコなの?ぷんぷん丸なの??

 多分オコでプンプン丸なのだろう。腕にグッと力がこもったと思ったら『ズバァァアン!!』という音と共に挟んでいた杉の樹が切れてしまった。

 もうギチギチ言うこともなく、此方を怒りに満ちた眼で睨み付け、ゆっくりと脚を踏み出した。


 ボクは幼女を抱えたまま、くるーりとベースの方に向きをかえて、一言言ってやった。


「あ~ばよぅとっつぁーん、ここまでおいでぇーだ!!」


 言葉が通じたとは思えないけど、バカにされたのはわかったんだろうね。

 ちょっとやり過ぎたって思っちゃうほど鬼気迫る勢いで、女王蟻はボクを追いかけ始めた。


 にっげろーーーっ!!

感想、ブクマなどしていただけると小躍りします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ