邂逅しちゃった その4
アリンコはジャブの様に細かく更新です
石切場の西側の現場に向かって、ボクと真理ちゃんは飛んでいた。
まあ、真理ちゃんはボクにお姫様抱っこされてるんだけどね。ちょっと高いとこで怖いのか、ぎゅうってしがみついてくるもんだから、割りとおっきなお胸が当たってくる。
べ、別にドキドキなんてしてないよ?しかもこういうときに分かりやすく主張するものも無くなってるしね・・・。
たださっきからしがみついてくるから、顔が近いのは少しドキッとする。優は女の子相手なら浮気じゃないって言ってたけどねー。
真理ちゃんを抱えてたのでゆっくり飛んだけど、それでも50キロ位は出てるので、直線で現場に向かえば10分位でついちゃう。
下を見るとそこかしこで隊員たちが作業をしてるのが見える。その側にはガソリンをかけられて死んだのか、丸くなって死んでいる蟻の姿がちらほら見える。
「本当に効くんですね・・・ガソリンって」
「え?嘘だと思ってたの?ひどいー。さすがに命かかってるときくらいまともなこと言うもん」
「いえいえ、嘘だとは思ってませんよ?だけどこれは色んなものに使えるなぁと思いまして」
「まあ、虫系の侵略者には効くかもね。でもあいつらって憑依したときに変質してるっぽいから、どうなんだろうね?」
「それはコレから見つけるであろう女王蟻に試してみればわかるからいいんです」
そうなのだ、実はさっきまでいた現場では女王蟻が見つからなかったんだよね。まだ仮定だけど、とりあえずこの大きなアリンコ軍団作ったのは間違いないから、確実に殺っとかないとね・・・。
「とりあえず、私は隊と合流しますのであの辺りに下ろしてもらってもよいですか?」
そういうと真理ちゃんは、山裾と市街地の間にある平坦な野原のような場所を指差した。
そこには幾張りもの迷彩柄のテントが鎮座していて、その入り口からはひっきりなしに隊員の人たちが出入りしている。
ボクは足を前に向けて、逆噴射してゆっくりと停まりながら降下していく。
下から見上げてる隊員さんたちは、珍しいものを見るかのようにお姫様抱っこされてる真理ちゃんを見ている。
真理ちゃんは耳まで真っ赤になりながら「クッ・・・いっそ殺して・・・」等とどこぞの女騎士様のような台詞を吐いてる。
テントの側に降りて、真理ちゃんを地面に立たせると深呼吸して心を落ち着けてるようだった。
「それでは報告お願いします」
先程までとはまるでうって変わったような、キリッとした態度で隊員の一人から報告内容を聞いている。
「えー、巨大な蟻に対してのガソリン噴射はとても有効で、かなりの数の蟻を殺傷することができました。しかし今だ女王蟻と思われる個体は発見できておりません。ちなみに戦闘の際多少の負傷者は出ましたが、重体及び死亡者は出ておりません。以上です」
「ありがとうございます。では各自交代で休憩をとりつつ哨戒に当たってください。とりあえず、このままここをベースに活動してください」
「了解しました!」
そう言ってテントの外に出ていった隊員さんは大きな声で各班長と思われる人たちに指示を出していた。
しかし女王蟻はどこに行ったんだろう・・・ボクが見たことある女王蟻って確か卵産み出すためにお腹が大きくて、素早く動ける様な身体の造りじゃ無かったような気がするんだけどな・・・。
そう思いながらパトロールを兼ねてゆっくりと10m位の高さで飛んでいた。
何かが視界のすみで動いた気がする。気配があった方に視線を向けると、小さめの何かが木々の間を移動してる。
まさかあれが女王蟻?それにしちゃ小さすぎる、まるで小学生位の大きさだし、よく見るとシルエットも人間のそれだ。
「とりあえず、追いかけた方がいいよね?人間だとしたら、それはそれで危ないし」
『はい、ご主人様どのみち女王蟻があの大きさと言うことはないですから、それが賢明かと思われます』
ボクは小さなシルエットを追いかけるために、森の中に突っ込んでいった。
例え相手が小柄だろうと、ボクの今の機動力とスピードで追い付けない訳がない。二人の距離がどんどん近づいていく。向こうもボクが迫ってることに気がついたのか、少しだけ焦ったような気配がする。それでも相手は小柄な人間だし、ボクとの差が開くわけはないんだけどね。
小柄な人影の姿がハッキリと見えるようになってきた。
腰くらいまである髪の毛をなびかせて、一生懸命走っている。どう見ても人間の女の子だ。試しに声かけてみよう。
「おーい、怖がらなくていいよー。ボクは怪しい人じゃないからさー」
と、深緑の外骨格に身を包んで、宙を滑るように走って追いかけるボク。
メチャクチャあやしいわ!!
そりゃ、ますますスピードアップするわ!幼女も!!
まあこのままじゃ埒が明かないしね。ボクは一気に回り込むように距離を詰めた。
もう少しで捕まえられる!と思った瞬間だった。
狙い済ましたかの様なタイミングで、ボクの左右の地面が割れて、そこから大きな黒いギザギザと尖ったものが、ボクを挟み込むように起き上がってきた。