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災厄の種

侵略者の説明回です。多分。

 オレは目覚めた、妙に白い部屋で。


 目が覚めると、のっぺりとした顔に感覚器官やら発声器官やらがくっついた生物に囲まれた。

 此方に転移して敵のまっただ中で憑依してしまうとはついてない。いきなり使命が果たせなくなる、と少しばかりの無念を感じながらも、それも仕方あるまいと受け入れる自分がいる。

 我々はすでに破滅に向かいつつある世界にいたせいか、感情の起伏があまり無いらしい。らしいというのは産まれてから今まで見てきた同族達が、皆感情というものがあるように見えなかったからだ。

 行き過ぎた文明がそうさせてしまったのか、滅び行く世界が我々の感情を奪ったのかは解らない。


 高度に発展した文明は我々の寿命を延ばし、死の枷から解き放ったかに見えた。しかし世界とは良くできているのか、そんな魂の飽和状態を良しとしなかった。

 死に逝く魂と、生まれ行く魂の総量のバランスがとれることによって、保たれていた世界が一方に傾くことによって、崩壊が始まったのだ。

 崩壊は真綿で首を絞めるように、ゆっくりと進み始めた。

 崩壊に抗うすべも、止める手だてもなく、絶望に打ちひしがれているときだった。

 ある学者が言い出したのだ。


「この世界が滅ぶなら違う世界に行けばいい」


 最初は皆、学者の言葉を馬鹿にした。だが学者は別の次元に渡る方法を作り出してしまったのだ。


 今ある肉体を捨て去り、魂を宝玉に移し替え、渡った先の生物に憑依して生きる。例えどんな生物に憑依したとしても、その次元で死ねば此方の輪廻から外れて、再び生まれ変わることが出来るのではないかと。


 なんて行き当たりばったりの計画なんだ、と誰もが思った。


 だが、感情の乏しい我々も、ただ死に逝くのは受け入れ難かったらしく、大勢の希望者が志願したのだった。


 魂が抜かれた肉体は、塵となって消えていった。その代わり魂が移った宝玉は黒く闇色に染まっていた。

 自分達の世界を捨て、他の次元の世界を汚しに行く我々にはお似合いの色だと思った。

 こうして世界に溢れていた我々の大移動が始まったのだ。

 その数は数千万。それだけの魂が別の次元に送り込まれていった。そして此方の世界にも変化が現れた。

 魂の総量のバランスが若干ではあるが減ったために、崩壊が緩やかになったのだ。これは学者も予想外だったらしく、嬉しい誤算と言えただろう。

 ただし、まだ崩壊が止まった訳ではない。恐らく計算ではバランスを取るためには、まだまだ別次元に魂を送らねばならない。

 自分達の世界が滅びから免れる方法が分かったとなると、今度は志願者が居なくなった。現金なものである。

 なので送り出す魂を今度は志願ではなく、追放といった形を取ることにした。つまり罪人を送るのである。

 自分の世界を救う為に、罪人や凶悪なものを別次元に送り出す。それによって、我々の世界には悪人も居なくなり清浄化が進むだろうと。

 結局自分達の世界の汚物を他の次元に捨ててるのである。


 まったくヘドが出る、こんな世界はいずれ滅ぶだろう。



 だったらオレはこんな世界自分から出てってやる。


 オレは久しく居なかった志願者になった。オレはオレ自身の意思で他の世界に行き、自由を勝ち取ってやる。


 そうして、オレの魂は身体から宝玉に移されたのだった。


 眼と言う感覚器官がこの状態であるかと言われたら無いのだが、不思議と外の情報は感じることが出来た。

 皆がオレの宝玉を見つめている、何故そんなに見つめているのか?今更珍しくも無いだろうに・・・・。

 しかし、よく見るとオレを見つめる奴等の眼が、何故か紅く見えるのだ。それは奴等の眼が紅いのではなく、そこに映っているオレが紅かったのだ。

 今までの宝玉は例外なく黒く濁った宝玉だったのに・・・。


 オレは紅く輝きながら、次元の裂け目をくぐった。


 


 光の方へと進うちに、再び次元の裂け目を見つけた。オレは迷うことなくソレに飛び込んだ。するとそこには何やら色んな管の様な物に雁字搦めにされている生物が横たわっていた。


 オレは迷うことなく、目の前にあったその生物に憑依したのだった。

 

 そして、次に目覚めたときには、奴等に囲まれていた。


 しかし不思議なことに、コイツらはまったくオレに攻撃をしてこないのだ。それどころか此方を気遣っているかのような感じすらする。

 オレは一体何に憑依したんだ・・・?


 横を見ると、此方の動きに合わせるかのように、此方を振り向く存在が目にはいった。


 髪は伸びて胸の辺りまであるだろうか、透き通るような肌は、周りにいる奴等に比べて全く赤みがないが、その顔はまるで作り物のように整っていた。

 下を見るとほっそりとした五本の指を備えた手がみえる。


 どうやらこれがオレが憑依したものらしい。説明では高次の魂には憑依しにくいと言われていたが、多分この身体の持ち主は、すでに心が死んでいたのだろう。何故ならなんの抵抗も無く憑依出来たから。


 オレはついてる。攻撃をされることなく此方のことを学べるのだ、やはり宝玉が紅かったことが何か関係するのだろうか?

 それも此方に来てしまった今となっては誰も答えてはくれない。


 まあいい。取り合えず学ぶのだ、気づかれないように・・・溶け込むように・・・。



 自由を勝ち取るその日まで。

敵の心理とか書くの難しいです。

感想、ブクマなどしていただけると小躍りします。

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