ヒカルと防衛隊 その2
プルルルル・・・
『はい、こちらマシンサポートタカムラです』
朝から無駄にイケメンボイス出しちゃって・・・。
「あーもしもし、正臣ー?ボクだけど」
『ん?ヒカルちゃんか、どしたまた未確認生物でも出たか?』
「んーいやそういうんじゃないんだけどさ、朝からへんな奴に絡まれちゃってさー」
『なに!?だいじょぶなのか?変なことされてないか?どこの変質者だそいつは!』
「んーいや、多分国営の変質者かなー」
『こくえい・・・?それでいま何処にいるんだ?』
「えーっと上空300mかな?追いかけられてるーいま丁度会社の上通りすぎるんだけどね」
『え?』
ジェットのギィィィィンという音が、スマホのスピーカー越しに聴こえた。
『今、通りすぎたの防衛隊じゃねえか!?お前何追っかけられてんだよ!』
「しらないよーぅ、ボクだって会社に行こうと思ってジャンプしたら、周り取り囲まれてたんだもの。
こっちが聞きたいよー」
『お前の姿見えないのに追っかけてきてるのか?』
「どうもエレスが言うには熱感知レーダーで見てるんじゃないかって」
『それで朝からこの辺りにもヘリが飛んでたのか・・・』
ああ、彼等の言ってたB地点のファルコン隊ってそれのことか。でもなんでボクの出発地点と、終点が解るんだろ?
「なんでボクの行き先とか知ってるんだろうね?」
『・・・お前知らなかったのか?』
「何を?」
『お前の通勤で通った後ってな、飛行機雲が出来てるんだよ』
「え?ホンとに!?すぐに家入ったり事務所入っちゃうから知らなかったよ」
『なんか新聞に「神渡り」とかいって、この街の名物みたいになってるぞ?』
「へぇー、じゃあボクって言うよりはその不思議現象の正体を確かめようと思ったのかな?」
『まあその辺はわからんけどな、まあ事情はわかったから怪我させないように気を付けろよ』
「むぅ、失礼な、ボクは怪我なんかさせたことないもん」
『ははは、分かってるよ。まあゆっくりと撒いてこい』
「はぁーい、お昼までには頑張るよ」
ふぅ、と溜め息をついて通話を切って周りを見ると、並走してるジェット機が何やら喚いている。
『おおぉーい!止まれって!別にとって食おうってわけじゃないんだっ!ちょっと、お話ししてちょっとだけ調べさせてくれたらいいんだって!!な?ちょっとだけだから!!』
誰だ、この人を交渉役にしたの。ああ、でもパイロットが喋ってるから別に交渉得意じゃないのか、ただ必死なんだな・・・きっと。
でも『ちょっとだけ』はないわー、今時ギャルでも怪しんで喋ってくれないよ?たぶん。
『金か?金が欲しいのか!?10万でどうだ?10万で1時間付き合ってくれ!!』
おいおい、今度は買収してきたよ?しかもどこのAVに出すんだっていうような金額だし。ホンとに必死だなぁ・・・。
あ、話し合いしてもいいけど、その前にボクのトップスピードとどっちが速いか試してみよっと。
ボクは光学迷彩を解除して、普通に見える状態になる。
まだバイザーだけで服はツナギのままだったので、スーツに換えると、パイロット達がぎょっとした顔をしてるのが見えた。
少し速度を落としてしばらく並走を楽しんでると、向こうも少し緊張が解れたのかチラチラこっちを見ている。
なんかお尻とか見てない?ひょっとして。今のスーツは外骨格を着けてないので、ピッタリと身体のラインが出てる最初の頃よく着ていたタイプだ。キム公たちに言わせると、コレを着て目の前に出られたら、見るなっていう方が無理らしい。そんなにエロいかな・・・コレ。
まあ、こっち見てくれてるなら丁度いいけどね。そろそろいってみましょーかね?
ボクは両側のパイロット達に見えるように、手を開いて見せる。そしてゆっくりと小指から折り曲げてカウントダウンを始める。
ボクの考えてること気づいてるかなー?カウントを進めながら段々と力場を速度重視で形を変えていく。
カウントが残り2になった辺りでボクに意図に気づいたのか、また何か喋りかけてこようとしていたが、お構いなしに最後の人差し指を折ると、ボクは再び加速を始めた。
喋りかけてる場合じゃないと気づいたのか4機ともジェットエンジンを唸らせて加速し始める。
「さーて、時速なんキロまで出るのかなー」
ぐんぐんと流れる景色、途端に空気抵抗がグッとかかってくるが、さらに加速すると空気の壁を突き抜ける。
くぅ~~~~っコレ気持ちいいんだよねぇー。まあコレのせいで今回めんどくさい事になってるんだけど・・・。
横を見ると、まだなんとかついてきてるけど、こんな速度あまり出したことが無いのか顔がちょっとひきつってる。
ふふーまだまだ加速するよ?ダイジョブ?ボクはクルクル回転しながら楽しげに飛んで見せる。
あれ?パイロット二人くらい若い子がちょっと戻しちゃいそうな顔してるけど・・・まだいくよ?
身体の強化を200倍に上げて、速度を上げ始めるとパイロット達の顔が凍りつく。一体いま速度がどのくらい出てるのかわからないけど、周りの速度がイヤにゆっくりした感じに見えて少し薄暗くなった感じがする。
あれ?コレってこの前使った加速状態とおんなじ?飛行状態でもなるんだ?ってことはもうジェット機でもついてこれないねー。等と思ってるとジェット機があっという間に後ろに消えてしまった。
「あーあ、さすがにこの状態じゃついてこれなかったかー」
『加速状態は時間の流れ自体が変わってしまいますからね・・・この状態のご主人様に付き合えるのは、同じ守護者でも加速機能を持った者じゃないと無理ですね』
「速度的にはどのくらい出てるのコレ」
『恐らくマッハ20とかその位ではないでしょうか』
「はーそんなに出てちゃそりゃ追い付けないね」
『ですね。ちょっと大人げ無かったですね』
「う・・・いいの!これで戻って少し相手してあげるんだから」
ボクは180度その場で回転して、元の場所を目指すのだった。
「あそこからまだ加速したぞ・・・信じられん」
「大体アレは何を推進力にしてるんですか!?それになんであの格好で飛んでて平気なんですか!おかしいことだらけでしょう!?普通ならもう空気の壁にぶつかった時点でバラバラですよ?あり得ないですよ」
「まあ、あの守護者っていうのは信じられないような存在ばかりらしいからな・・・しかし、いい尻してたなぁ」
「ああ、あのスーツはいいな、堪らんな身体のラインが出てて素晴らしいな!!」
「ああ!まあ追い付けなかったのは悔しいけどアレが見れただけでもヨシとしよう!取り合えず帰るぞ!」
「「「らじゃー♪」」」
帰る途中で、戻りジェット機とすれ違う。ゆっくりと飛んでるように見えるけど、実際は結構な速度が出てるんだよねー。取り合えずリーダーっぽい機体に近づいてコックピットの後ろにちょこんと座ってみる。
直接触ると何やら喋ってる内容が聴こえてくるんだけど、なんかセクハラ紛いのことしか喋ってないこの人たち。
やっぱり身体見てエロいことと考えてた!!まあ、自分も元々男だからね・・・気持ちは解るから怒らないであげよう。
パイロットたちはボクに気づいて無いのか、帰投することにしたらしい。
しょうがないので、キャノピーをコンココンと軽くノックする。
リーダーがちょっとビクッとした後、恐る恐るこちらを振り向く。
ボクがやっほーと軽く手を振って挨拶すると、しばらく固まっていた。
あれ?そんなにビックリさせちゃった?おーいダイジョブー?心配になって顔を近づけると、なんかクタッと身体の力が抜けたように見える。
途端に乱れ始める機体。
ひょっとして、気絶しちゃったの!?
ボクはちょっと慌てるのだった。
実際のジェット機のパイロットは簡単に気絶なんてしないとは思いますけどね。
お話しなので大目に見てください。
(´▽`;)ゞ
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