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戦乙女 その2

 リビングで友理の作ってくれたケーキを食べつつ寛いでいると、バンッっと勢いよく廊下との境のドアが開かれる。

 みんながドアの方に注目すると、そこにはハァハァと肩を上下させてるルディアさん。

 すごいなーロボット(?)のくせに肩で息するとか芸が細かいね。


『・・・・・本当の事なのですカ?姉上』


『「「「・・・・・・?」」」」』

 

 ボクたち3人と一匹は頭に疑問符を浮かべる。ちなみにまだノワはアニマのままで、さすがにケーキを食べさせるわけにいかないので(本人は食べたがったけど)猫まんま(塩分控えめ)を食べている。


『嘘を言ってもしょうがないでしょう』


 唐突にエレスが答えた。


 すっかり寛いでさっきのやり取りを忘れてたボクたちは、ああ、とみんな合点がいった。

 先程、ルディアが聞いてきた『竜騎士様』(光一に一瞬だけ戻ったボク)の正体がボクだとエレスに言われたのだった。

 まあそのショックで約一時間程フリーズしてしまい、精巧なフィギアとして玄関に立っていたのだけど。


 エレスに再度確認したルディアは、ボクの事をスキャンでもしているかのように、頭の先から足の先まで舐めるように見ている。


「あ、あのーそんなにじっくり見られると恥ずかしいんだけどな・・・」


 視線に耐えきれずボクが思わず言うと、ルディアはブツブツと何か言い始める。


『信じられなイ・・・コレだけ生物として完成されているの二、骨格かラ筋肉内臓に至るまデ、殆ど有機的な部分がナいってどういうこトなのヨ。同じ金属でできていたトしても、私とまるでコンセプトがチがうってこトなノ?』


 と、軽く握った右手を口元にあて、しきりに考えている。こういうとこ妙に人間臭いね、この子。


「え?ヒカルちゃんって生き物じゃないの?サイボーグ?」


 友理もそれを聞いてビックリした様子で聞いてくる。


「ああ、ほら。海で分解されちゃったでしょ?その時ゼロから構築するなら丁度いいからって、骨の材質とか筋肉も強い剛性を持った金属やカーボンに近い素材に変えちゃったからね。お陰で基本値100倍でリミッターがかかっていたのが、今のとこ300倍くらいまで生身でも出せるようになったからね。強かったでしょ?再生した後のボク。ふふー」


「確かに強くて・・・凄かった・・・」


 って言いながらなんで下半身見るの!?


「ねぇ、ヒカルちゃん。もしかして復活した時ってあの時と同じように素っ裸だったのかしら?」


 ビクッっとなりつつも、嘘は良くないと思いコクリと頷く。


「で?友理はソレ見ちゃったんだ?」


「あ、あたしだけじゃなくて真弓と薫子も・・・」


「見ちゃったんだ??光ちゃんのピーー??」


「う、ううん。見てない見てないよ!すぐに眼を逸らしたもん!他の二人も手で顔を覆ってたし!うんなーんにも見てないし、覚えていません!スミマセン!!」


「そ、ならいいわ。ウフフフフフフフ」


 こっわー、久しぶりに見た優の嫉妬モードこっわー。


『まあ、構造的にアナタと竜騎士様が同一人物だト仮定しましょウ。話から察する二、アナタとそこの女性は婚姻関係だト思われるのですが、であれバ元々のアナタは男性のはずよネ?ソレが何故に女性体になっているのヨ?しかも1度は男性体二戻りながラ、また女性体二なっていル・・・まさカそういう趣味ノ変態さんなノ!?』


 色々ひどいな、ボク泣きそう。


「まあこの姿は気に入ってないこともないけどね・・・変態さんって言われたのは初めてだなぁ・・・みんなそう思ってるのかなぁ・・・やっぱり」


 ボクは膝を抱えて、髪の毛を伸ばして、久しぶりに銀マリモになりかける。


『まあ、ご主人様の隠れた趣味はおいとくとして』


 置いちゃうんだ!?フォローしてくれないんだ??


『全てはお母様の仕業です。男性体に戻った時も、お母様に気づかれた瞬間に女性体に戻されましたからね・・・しかもご丁寧に改良はしたままで。その後、ご主人様と何度か再び男性体に戻せるか挑んでみましたが、ロックがかけられているのか、一ミリも変化する様子無しです。お母様のご主人様好き(ヒカルモード)にはホトホト困ったものです』


 そうなんだよねー他の外骨格とかはいくらでも出来るのに、そこだけは一切いじれないと言うね・・・お母様パネェ。


『エ・・・そ、ソレじゃあ竜騎士様に再ビお会いすル事は・・・』


『不可能ですね』


 ボクはちらりと他の二人をちらりとと見る。ちなみにアニマはボクの毛の中に入ってきてくつろいでる。


 視線に気づいたのか優がニコッと笑う。


「まあ元々ウチの旦那様はソッチの気があったのよね。だからレズッ気のある私も好きになれたわけだし。まあ少しだけ、ほんとーに少しだけ残念ではあるけれど、ヒカルちゃんの可愛さが在ればむしろプラスだから、私は今のままでも全然問題ナッシングよ」


「わ、わたしだって、ママに負けないくらいヒカルちゃんの事好きだもん。結婚だってしなくていいもん!」


 徳田家の血は友理で終わるのね・・・まああの親父が色んなとこに種蒔きまくってるから絶えないとは思うけどね、ホンと兄弟100人とかいそうだし・・・。


『ソウ・・・ソウですか。私は女性ノ事は愛せませんのでガッカリですガ・・・』


 二人の言葉でちょっと元気になったボクはマリモ解除して立ち上がると、ルディアに向き直る。


「あれ?でもひょっとしてルディアってあの姿が好きなんだよね?中身じゃなくて?」


『エ・・・?ソレはどういうコトなノ?』


「いや、どういうこともナニも、なれるよ?あの姿なら、ホラ」


 そう言うとボクは外骨格を身体に纏って、空の精霊を付与させる。すると、恐らくエレスが見ていたであろう映像と殆ど変わりない姿になる。まあ身長はブーツで上げてるので若干胴体と足の比率が変わってるかもだけど、多分この子はそういう部分じゃないと思う。


『ハ、ハアアアアアアァァァァァァー、コノ滑らかなフォルム!、継ぎ目ノ解らなイ関節部分!自然の精霊によっテカラーリングされタこのグラデーション!外骨格ナノに筋肉の躍動を感じラれるコノ生物的な触感!ハアァたまらないワァ!!』


 世の中にはいるのだ、様々な趣味の人が。足フェチや、胸フェチもそうだが、中にはメカフェチなんて機械が好きで堪らない人だっている。

 恐らくルディアは材質フェチとでも言えばいいのかな?多分自分が金属とかに融合する能力だからか、そういった部分に強い拘りがあるのかも知れない。


 今だボクの身体を撫で回しつつ、ハァハァ言ってるルディアを見てるとそうなんだろう、そうだと思いたい。


『よ、よかったですね、ルディア望みが叶って。貴女がそんな重度のフェチだとは思いもよりませんでした。もう様は済んだでしょう?箱になりなさい送り返してあげますから』

 

 エレスがちょっと引きぎみにそう言うと、ルディアはイヤイヤと首を振り


『嫌ヨ!!私もココで暮らすワ!そしたら毎日竜騎士様に触れルじゃなイ!』


「いやいやいや?ボクだってこの姿でずっといないよ?むしろ戦う時しかならないよ?」


『ウ、ウソでしょ・・・こんナ機能的なの二・・・?』


「機能的かも知れないけど日常生活には、まるでいらない機能だからね!?仕事にもいけなくなっちゃうよ」


『ひどすギるわ・・・空輸されテ何日も箱二擬態しテやっとお会いデキたの二・・・』


 そんなこと言われてもなぁ・・・あ、そうだ。


「じゃあコレあげるよ」


 ボクはそう言うと、外骨格の背中から脱皮するかのように、抜け出して外骨格を丸ごと残す。


『エ?』


「え?」


「カニ?」


『その手がありましたか・・・』


『ムニャムニャ・・・もう食べられニャいニャ・・・』


 アニマ、ナチュラルに語尾ニャになってるよ?


「これ持ってけば寂しくないでしょ?金属じゃない部分もあるから融合は出来ないかもだけど・・・」


『イ、いいんでスか?いただいちゃってモ?』


「いいよー外骨格は毎回構築するから、分解しちゃうだけだし」


『あ、ありがとウございまス!一生の宝物二しまス!!』


 そう言うとルディアは外骨格にギュウッとしがみつくのだった。もう一生離れないとでもいうかのように。


 そのあと、ルディアはどうやってるのか謎だけど、小脇に抱えた外骨格ごと変形して元より少し大きくなった60センチ四方の箱になったので、そのまま空輸で送り返した。


 ふー台風みたいな子だったなぁ・・・





『ご主人様、よろしかったのですか?』


「え?外骨格のこと?いいんじゃない?あんなに喜んでくれたんだし。かわいかったねー」


『いえ、そう言うことではなく』


「ん?まだなんかあった?あ、エレスってばヤキモチ妬いてるの?確かにエレスは一緒にいるから贈り物とかしたことないけどさー」


『いえ、私はご主人様と一心同体ですからこれ以上何を望むこともないのですが・・・』


 なんだろう?なんか見落としてる?


「じゃあなぁに?ハッキリ言ってよ」


『いえ・・・私も失念していたのでアレなのですが、ご主人様が造り出したモノは、確か1日ご主人様から離れてしまうと消えて無くなってしまうのではありませんでしたっけ・・・?』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


「・・・あ」




 遥か遠い異国の上空で、飛行機の格納庫からこの世の終わりかのような絶叫が響いたとか響かなかったとか・・・


べ、別にルディアの台詞がめんどくさくて早目に還したわけじゃないデスよ?

感想、ブクマなどしていただけると小躍りします。

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