エレスちゃんに折檻♪
不定期ですみません。頑張りますのでよろしくお願いします。m(_ _)m
なんてことだ。
エレスは、なんでもない事のように言った。
『さっき、他次元からの干渉がありましたのでぇー、間違いないと思いますよぉ』
「タジゲン?ねぇねぇエレスちゃん、侵略者って結局なんなの?どこから来るの?」
私が呆然としているうちに、友里がエレスに話しかける。
『えっとですねぇー他次元っていうのはぁー、今ワタシ達がいるこの世界と別のルートを辿ったぁ並行宇宙というかなんからしいんですよぉー、ワタシもよくわかんないんですけどぉ』
「ふぅーん…エレスちゃんも良くわかってないのね。でもそいつらが、なんでコッチに来るのかはわかるの?」
『あ、それはわかりますぅ、なんかぁ向こうの宇宙というか世界がパンク寸前らしんですよぉ、文明が発達し過ぎたのかエネルギーを使いすぎたのか理由は色々あるらしぃんですけどぉ、一応文明はコッチよりも上らしいんですけどねー、次元航っちゃう位ですしぃ』
「文明がコッチよりも上なのにどうにもならなかったの?アッチの世界は」
『もう、気がついた時には手遅れってヤツだったんじゃないですかねぇ、今コッチの人間は、それなりにこのままじゃヤバイなぁーとかぁ、考えるようになったじゃないですかぁ。じゃなかったら、ワタシ自身がおそらく人間の敵になってぇ、文明を滅ぼす為にお母様にお使いに出されてたと思うんですぅー』
さらっとエレスは言ったけど、立場が違えばこの子は敵だったのかもしれないってこと?
確かに人間だけがこの地球でいきる上で特別なんてことはないんだ。
そこに気付けたかどうかが、この先滅びに向かっていくか、そしてエレスのような存在に滅ぼされるかの分岐点なのかもしれない。
でも地球って、思春期なのにお母様なんだ、なんだか大変そうね…。
「ところで、アイツらってなんでカニとかコッチの生物みたいな形してるの?」
と、友里が質問した。そう言えばなんでなんだろうね、さすが若いと着眼点が違うわねー。
『そうなんですよぉー、そこがアイツらの一番ムカつくとこなんですよぉー。さすがに次元を航るって言うのは大変らしくてぇーちっちゃな穴しか開かないんですよぉ。だから、アイツらはそこから自分達の魂と精神を封入した塊魂って形態でくるんですぅー。でもそのままじゃ身体がないから何も出来ないじゃないですかぁ。だからコッチの生物の器を借りるんですよぉ。ムカつくでしょぉ?』
「つまり、身体ごと来ちゃうと容量オーバーになっちゃうから、データだけ送り込んでコッチの生き物にインストールしてるってことでいいのかな?」
『ですですぅー』
言わんとしたことが伝わって嬉しいのかエレスははしゃいでる。
ごめん・・・私はあんまり良くわかってないんだけど。
だってパソコンとか苦手なんだもの。
話の腰折るのもなんだし、あとで有里に教えてもらおう・・・。
「お、おいっ!!」
と、突然声をかけられる。声のした方に目を向けると中年の男性が、エレスを指差して立っていた。
「そいつは何なんだ!最近ニュースでやってるやつじゃないのか?!」
どうやら隣の焼却炉の遺族の方らしいが、騒ぎが気になっていた覗いたらしい。確かにエレスはちょっと見た目怪しいしなぁ・・・。
どうしたもんかと、考えてると友里が機転を効かせて男性に言った。
「おじ様、これは最近売り出した介護ロボットですよ!すごいでしょ!」
すると、エレスもそれに合わせて演技をした。
『オクサマ、ダイジョブデスカ?タテマスカ」
なんてわざとらしくロボットっぽい口調でへたり込んだままの私に手を差し伸べる。
しかもご丁寧にさっきまで滑らかに動いてたくせに、少しぎこちない感じで。
私は笑っちゃいそうなのを堪えながら、エレスの手を借りて立ち上がる。そして男性に向かって頭を下げて言う。
「お騒がせして申し訳ありません…。ウチの人が未確認生物の事件に巻き込まれて亡くなったので、私が取り乱してしまったんです…。そんな私達のところに、ニュースに出てくるような危ない物がいると思いますか?いるわけないですよね?ええ、いませんとも。この子は介護ロボットですので!」
そう言うと唖然とした男性は、微妙な表情のまま自分の場所に戻っていった。
あっぶなかったー、今はみんなピリピリしてるから、こんな怪しい石人形いたら、そら疑いたくもなるわ。
そしてふと思い出す、この場にもう一人すっかり手持ちぶさたになった係員さんがいたことに。
自分が私達の注目を浴びると、申し訳なさそうに係員さんは言った。
「あのー大変恐縮なのですが、旦那様の御遺灰のほうなんですが…」
と、言いながらチラリトレイの方に目を向ける。私達もつられて目を向ける。
「なっ!」
私は絶句してしまった。何故ならそこに先程まであった彼の骨が無くなっていたのだから。
ギギギ…と、首をエレスの方に向ける私と友里。するとエレスは、いっけねーみたいな感じに自分の頭をコツンとしながら悪びれもせずにいった。
『さっき一緒に巻き込んじゃったみたいですぅー、これでご主人様と身もココロもいっしょですぅー』
何かが私のなかでプチッと音を立てた。ゆらーりとエレスに近づきその肩をガシッィと掴むとエレスがビクッとする。
『あ、あのぉー、オクサマ?何か怒ってらっしゃいます?結構そのがっくんがっくんされるの地味にダメージあるので、勘弁してほしいのですけども…』
ほう…思わず口調がちゃんとしちゃうくらい効くんだな。
「出せ…」
『え?え?!』
「わぁたしぃのぉーだぁんなぁのぉーほぉねぇをー…」
エレスが首をふるふるしてイヤイヤしてるが、勘弁してやらない。
「だぁああああああせぇええええええええぇ!!!」
再びがっくんがっくんされるエレス。
『ちょっっ…だめっ…くびっ…もげっ…ちゃいっ…』
そんな途切れとぎれの抗議の声を聞き流して、私は無言でがっくんがっくんし続ける。
今度は泣いてないから止まらないぞこの野郎。
『ゆるしてぇぇぇええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
エレスの絶叫が響きわたる。ッチ、また隣のおっさんが来ても面倒だし勘弁してやるか。
プルプルしながらうずくまるエレスを見下ろしながら苛立ちを隠さず聞く。
「で?出すの?出さないの?」
エレスは涙声でふるふるしながら答えた。
『取り込んじゃったから出せないんですよぅー。だってどうせご主人様の身体作るときに素材いるんですもんー』
もはや半泣きになっちゃってる。この世界を守るためにやって来たのに散々な目に合っているが、しつけはちゃんとしないとね。人様のモノに手を出すとどうなるか、カラダに教え込まないとね。
「ねぇエレスちゃん、パパってまた元に戻るの」
と、友里が聞く。エレスは首をさすりつつ答える。
『ええ、とりあえず起きてくれさえすれば再構築されるはずなんでけどねぇー・・・』
と、そこで不意にエレスは、エントランスの窓の外に視線を向けた。
『来ますよ』
ズゥウン・・・ッ・・・!!
建物の近くに何か巨大なモノが落ちたような振動が、エントランスの大きなガラスをビリビリと震わせた。
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