雷人荒ぶる
俺はどうしたら強くなるか必死で考えていた。
外の世界では何やらエレスが、友里達と騒いでるがとりあえずまだ出てかなくても大丈夫そうだ。
いやはやそれにしても参ったなぁ、あの身体でも簡単に分解されちまうとは・・・もっと強い身体にしなければ。
奴と戦ってるときにも、あの質量に勝つには今の段階のフルパワー、つまり基本値100倍の能力をずっと使っていたんだけど、多分奴があの質量で触手振り回すと10ton以上のパワーがあったんだろうなぁ、打ち負けてたし。
だけど、殴りあってるときホンの少しだけど、確実に100倍以上のパワーが出てたときがあったんだよなぁ。
そこで俺は思ったんだ。実はエレスが100倍しか出せなかったから100倍と思ってただけで、実はまだ上げることが出来るんじゃないかって。
それには恐らく、身体自体の構成も変えないとダメなんじゃないかって、何となく感じた。
あーこれ以上力を上げると、自分のパワーで肉体が崩壊するなぁーとか、何となく解った。だからこそまだ上があるのも解ったんだけどな。
前に復活したときは、嫁さんが襲われたの見て頭に来たせいで、勢いで身体を造っちゃったからなぁ・・・。
どうせ上手いこと分解されたし、今度は素材から考えて、フレーム(骨)の材質からちゃんと考えようと思う。
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よぉーし!いい感じじゃないの?前よりも断然強そうな身体だ!しかも男性の身体。すばらしい!いや、前の身体が嫌だった訳じゃないんだけどね、アレはアレでよかったよ?朝起きて鏡に写る顔が、美少女とかね、そりゃーすばらしいよ?じゃなきゃゲームのアバターだって、女の子にするわけないでしょ?
だけどさ・・・たまーに寂しくなるんだよねーなんていうのかなぁ、なんか付いてるものが付いてないというか、まあ無いものが増えてたりもして、さらにそれが凶悪な柔らかさだったりもするんだけどさ・・・。
ハァー、嫁さんも友里もずいぶんとヒカルちゃんのこと気に入ってたもんなー、今更俺の身体に戻っても怒られるかなぁ・・・ガッカリとかされたらそれだけでもう一回死ねそうなんだけど・・・。
やっぱりヒカルちゃんの方で、身体作ったほうがいいのかなぁ・・・まあ、素材変わる訳じゃないから強さは変わんないと思うんだけどなぁ、リーチとかね・・・言い訳だけどね。
おっと?何やら外が騒がしいね、そろそろピンチかな?
『ご主人様、起きてらっしゃいますか?そろそろ起きないと後悔しますよ?』
なんだよ、後悔って。
『あら、起きてるじゃありませんか。今現在友里様達が屋上で食べられかけてますよ?』
なんですと!?それはダメじゃない!でもどうしよう・・・どっちで復活したらいいと思う?
『私的に言わせていただきますと、男の身体でも全然構いませんよ?むしろ最初に私を抱き止めてくださったのは男の身体の時ですしね。ただ・・・お母様がなんと仰るか・・・』
そういやいたわー、すっかり忘れてたけど俺の身体をヒカルで造った張本人。なんか普通に男でいいんじゃないかと思い始めちゃったよ。
ん?いまなんて?友里今何て言った?
「・・・・・・けて・・・ぱ・・・・助けて!ぱぱぁ!!」
ぱ、パパって言った!久しぶりに呼ばれた!!くぅーたぎるぜ!
待ってろ!今いくからなっ!!
俺はさっきまで一生懸命考えていた構造で、身体を再構築させる。眩い光の中で一瞬で体が出来上がっていく。
そして、俺は復活した。んーなんか視点が高くて落ち着かないなぁ、今までこんな高かったんだなー。ヒカルの背丈からいきなり高くなったものだから、ちょっと恐い。
髪はやっぱ銀髪なのね。今度の身体はなんか自分で細かく調整したので、結構いい感じだな。
なんか、体内のエネルギーの巡りがいいというか、なんというか。
目の前の視界の下の方に、友里の頭が見える。ちっちゃ!!あれ?こんなに小さかったっけ?俺背丈の設定間違ってないよね?
なんか俺が、身体造るときに発生した光を見ちゃったのか、みんな目を擦ってる。
俺は友里の頭に手を置いて安心させるようにポンポンした。
「よくがんばったな。後は任せとけ」
友里はボンヤリとした表情で俺を見上げてくる。
「ぱぱ・・・?ぱぱなの?」
ああ、正真正銘のパパだよ、だからその後に絶対に「なんでヒカルちゃんじゃないの?」とか言わないでね、パパ死んじゃうから。
「ああ、俺、復活だ!」
言われる前に俺復活言っちゃえばいいじゃんね!俺はキメ顔で笑いかける。
とりあえず、お友達二人も無事だし・・・ってなんでみんな目線が下なの?俺が上から見てるからそう見えるだけ?
「ね、ねえパパ?」
「ん?なんだ?どっか怪我でもしたのか?」
「ううん、怪我はしてないよ?してない・・・けどさ、なんで・・・」
あ、やだその先言っちゃダメ!
思わずゴクリと喉が鳴ってしまう。
「なんで・・・
・・・何も着てないの?」
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へ?
よく見たらお友達二人も顔を手で隠してるけど、指の隙間から完全に見てる、キャーとか言いながらバッチリ見てる。
俺は何事も無かったかのように、くるーりとターンして、その一瞬でスーツを構築する。
「え?着てるよ?見間違いじゃね?」
「「「誤魔化せるかぁぁぁぁぁぁあ!!!」」」
女子高生に全力でツッコまれた・・・・。
『ご主人様、お戯れもその辺りになさって、真剣に倒しましょうか、奴らを』
エレスがみんなに聞こえるように喋りかけてきた。
さすがエレスナイスサポート!
『そ、そんな風に誉めてもなんにも出ませんよ。あ、これ「空」の精霊のデータです』
出たじゃん、なんかすごい欲しいの出てきたじゃん。
それにしても凄いな空の精霊の能力は・・・雷落とすって・・・そんなん聞いたら、ワクワクしちまうぞ?
「ね、ねえパパ、なんかすごい楽しそうなとこ悪いんだけど、触手が迫ってきてるんだってばっ」
友里が落ち着かない感じで、辺りを見ている。おお、ほんとだ。ウネウネに完全に包囲されてるじゃん。
「だいじょぶだよ、パパがすぐにやっつけちゃうからね」
と言いながら見上げてくる友里の頭をポンポンする。
「さーって、じゃあ試運転しますかね」
俺はさっき構築した服をスーツに作り替えて、各部に武器や装甲を着けていく。ヒカルの時は攻撃部位に集中的に着けてたが、今度は全体的に薄く装甲がついてたりする。
フェイスガードが出来上がると俺はナックルをガインッっと打ち鳴らす。
そして空の精霊力を全身の装甲に付与させた。
すると、精霊力に影響されたのか、装甲の形がさらに変化し始めた。
『ご主人様・・・これは一体?』
エレスが驚きの声をあげる。
「ん?いやね、さっき戦ってた時さナックルとかに火の力を付与させてたじゃん?アレ見てもっと精霊そのものに近い戦い方が出来るんじゃないかって。その答えがコレだな」
装甲は紫色に染まり、所々放電によるスパークが起きて光っている。ブレードが消え、代わりに籠手みたいなものが、腕につき、踵のブレードは短くなって二本に増えてる。
「なるほど、こうなったか。かなり理想に近い感じになったな」
俺は奴らに向かって一歩踏み出す。
「俺の娘をよくも苛めてくれたなぁ!楽に逝けると思うなよ!魂ごと消し飛ばしてやるぜ!!」
俺は天を衝くかのように拳を上に向かって突き上げた。
「雷鳴拳!!!」
俺を中心にドーム状に雷の檻が拡がって、屋上にあった奴らの触手を、一瞬で焼き尽くす。
「す、すごいですな、一瞬で触手が消えましたぞ」
「友里パパすごいですけど、この間亡くなったんじゃ・・・」
「そのことについては後で説明する。とりあえずやっつけて来るから、ここで大人しくしててくれよ」
「う、うんわかった!気を付けてね!」
「ああ、同じやつに三回も負けたりしないさ」
俺はニッっと笑うとしたに向かって飛び降りた。そこにはさっきの雷鳴に触手を焼かれた余波を食らって、動けなくなってる奴らがひしめいていた。
両手の掌を頭に上で合わせて、一気に降り下ろす。
「雷光斬!!!」
振った腕の軌跡に沿って雷が叩きつけられる。当たった奴らは個体の大小に関わらず、一瞬で蒸発していく。さすが殆ど水分で出来てるだけあるなぁ、電気が通りやすい。
直接当たらなかった個体も、雷が拡がり走っていくので、同様に蒸発していく。やっぱり空の精霊はこいつらに一番効く攻撃ができる、
『まさか、こんな風に能力を使うとは・・・さすがご主人様です』
「それでも、お前のデータが役にたってるんだぞ?サンキューな」
『はうっそっそんな、私はサポートシステムとして当然の事をしただけでしゅ』
俺はそんなモジモジとした様子のエレスを見てフフっと笑う。
地上に降りて周りを見回すと、殆どのやつがここに集まっていたのか、さっきの技で全て蒸発してしまったらしい。
「さて、じゃあ本体もサクッと倒しに行こうかね」
俺はそう言うと翼を広げて飛び立った。
技名はツッコマナイデ(*ノωノ)
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