エレスちゃんとお話
すみません、なんかしっくり来てなかった題名を変えました。読んでくださってる皆様ありがとうございます。
場所が場所だけに静けさが漂う場内に、場違いな声が響く。
『あのぉーすいません、どうなってるのか教えて欲しいのですけどぉー』
少し間延びしたような口調で、石人形は私たちに話しかけてきた。
見た目は私とそう変わらない背格好、ちなみに私は割りとコンパクトな150センチ。
髪(?)と言っていいのだろうか、おかっぱのような感じのものが、頭とおぼしき場所に乗っている。
顔はつるんとした茹で玉子を逆さまにした感じで、パッチリと猫のような眼だけがついてる。
鼻や口と言ったものは見当たらないが、どうやってしゃべっているんだろう。
体つきは中学生位の少女のような、少しづつ出るとこは出ているような成長期特有のなだらかな曲線を描いている。
ちなみに服は着てない、あたりまえだけど。だけど気にならないのはその肌が、石の質感を持っているからか、良くできた彫刻のように見える。まあ、可愛らしいといえば可愛らしいのだけど・・・。
さて、どうしたもんかと思いつつこれ以上場内の注目を集める前に、この状況をどうにかしないとね・・・。
まあ、その前に私と有里が騒いでいたのも原因のひとつと言えなくもないんだけど。
「えっと・・・どっちかっていうと、こっちが教えて欲しいんだけど・・・あなたは、なんなの?」
口調から判断するに、彼ではないので何者なのかとりあえず聞いてみた。
雰囲気からして敵意みたいのもないようだし。娘も話しかけたそうにウズウズしていたがとりあえず押さえ付けている。
『ワタシ?ワタシがなんだって聞いちゃいました~?』
そう言いながら少し照れたように、そこはかとなく受かれた感じでクネクネしてる。
その仕草に少しイラッっとしながらも、話が出来ることに少し安堵する。
「そ、そうそう、あなたは名前とかあるの?どこからきたの?」
まあ、今ここで生まれたてなような気もするのだけど、一応質問を重ねてみた。
『ふふー、ワタシはぁー「エレス」っていうんですぅー。ご主人様がつけてくれたんですぅー』
そう答えながらよりいっそう、体をクネクネさせる。我慢だー我慢だよ、がんばれ私。
「そ、それでエレスちゃんは、一体何者でどこからきたの来たのかなー?」
少し頬をヒクつかせながら、小さな子供に話しかけるように問い掛ける。頑張れ私!ヒッヒッフー。
『えっとぉーエレスわぁー、地球の意識を分けたものなんですぅー、いわゆる精神生命体?ちゃんとした名前は「エレメンタル・スフィア」って言うんですけどー、ご主人様に言ったら長いって怒られてー、「エレス」って名前をくださったんですー』
そう言うと、両手を頬に当ててキャッっと乙女のような仕草でイヤンイヤンするエレス。
っていうか、この子名前付けてもらったって喜んでるけど、略されただけじゃね?言うと落ち込んじゃいそうだから言わないけど…、って言うかその名前の付け方の感性にすごく心当たりがありすぎる。
「エレスちゃんは、地球の意識って言ってたけどそんなものがあるの?」
エレスは少しムッとしたような感じでフンッと鼻を鳴らすと
『なに言ってるんですかぁ、あるに決まってるじゃないですかぁ!ちゃんと生きてるし心があるんですよぉ!人間達が一生懸命いじってる部分なんて、皮膚の薄皮の部分だから気にもしてませんが痛みだってあるし、チョーーーーー長い思春期とかだってありますよぉ!ちなみに火山の噴火とかは人間で言えばニキビみたいなもんですぅ』
私は唖然とした、地球って今思春期だったんだー…、ってちがうちがう。
「心があるのは、まあ何となくわかったけど、それはそれでどうしてエレスちゃんが出てきたの」
『それはですねぇー「侵略者」達が来はじめたからですよぉー。』
侵略者?それは、まさか未確認生物の事なのだろうか。
いやそれしかいないだろう、侵略者って…何を侵略するというのだ…まさか地球?いやそれしかないわね…、地球は奇跡の星って言われるくらいなのだから。
よく昔からある映画とかでも、青くてきれいだからとか、生命力溢れているからとか言う理由で狙われてるものねぇ。
「じゃあ、エレスちゃんはその侵略者をやっつけるために出てきた白血球みたいなものってこと?」
『まあ、簡単に言っちゃえばそんな感じですぅー。』
えらく簡単に言っちゃったもんである。
そしてさっきから気になっていた事を質問してみることにした。
「ちなみに・・・エレスちゃんに名前を付けてくれたご主人様って誰?」
『ワタシがぁー侵略者が憑依した、カニちゃんと戦ってですねー相討ちになって吹っ飛ばされちゃったときにぃー優しく抱き止めてくれたんですよぉー、ワタシ結構な勢いで飛び込んじゃったんだけどぉー、怒ることなく微笑んでくれたんですぅー♪』
「ちょっ、ちょっと待って?その時ってエレスちゃんは木人だった?」
『もくじん?って言うのがなんなのかわかりませんけどぉー、近くにあった樹木に融合しましたねー。ワタシは自然物にしか融合できないのでぇー』
やっぱりこの子が戦ってたんだ、彼を殺したアイツと。
ん?でも変だな・・・受け止めて微笑んだってことは、相討ちになった時には生きてたってことよね?彼はいつ死んだの?まさか…ね?
「ね、ねえエレスちゃん…その受け止めてくれた人って、そのあとどーなったのかなー?」
『それがですねぇーご主人様ってばワタシを受け止めてくれたあとぉー動かなくなっちゃったんですよぉーしかもドンドン冷たくなっちゃったんでワタシあせっちゃいましたぁー、アハ♪』
私は、エレスの肩をガッシィっと掴むとがっくんがっくんと揺さぶった。
「おまえかぁあああぁぁぁ!ウチの旦那を殺したのわぁあああああああああ!!!」
エレスの首がもげちゃうんじゃないかと思うくらいにがっくんがっくんしてる。
エレスが何やら『ちょっ・・・』とか『やめッ・・・』とか言ってるがその勢いは止まらない。
やがて、嗚咽混じりに揺さぶりもおさまり、肩を掴んだままその場にへたりこむ。
「なんでよぅ・・・なんでウチの人に突っ込んだのよぅ・・・なんで殺したのよぅ・・・」
エレスはキョトンとした感じで私を見ながら
『え?ご主人様死んでませんよ』
なんとも言えない空気が場を満たしていく。
「え?だ、だって冷たくなっちゃったって…彼の胸に開いてた穴ってあんたが突っ込んだ跡でしょ?それにもう灰になっちゃったじゃない…どういうことよぅ…」
エレスは人差し指をアゴに当てて、しばらく何かを考えたあと、なにか閃いたようにパンッっと掌を打ち合わせた。
友里が後ろで「まさか錬成してパパが出てくるの?」とか言ってるがとりあえずスルーしておこう。
『すみませんー、ワタシの感覚で話しちゃったから混乱させちゃいましたねぇー。ごめんなさいですぅ。体は無くなっちゃいましたけど魂と精神はワタシが保護したんですよぉー、っていうか契約者ですしー』
なんてこと…彼が生きてると言うのだ、この石人形は。
やっぱり冗談みたいにふざけた生き方が彼の方針らしい。
でもなんか契約とかなんとか不穏なワードが聞こえたんだけど・・・。
「ウチの人はどうして出て来ないの?それに契約ってどう言うことなの?」
『それがですねぇーまだ起きないんですよー、だけどとりあえずアナタの魂に反応したんでー、きっとこの人のためにアタシと契約してくれたんだなって思って。…ついでに遺伝子情報いただきましたけど…ボソッ」
なるほど…きっと死ぬ間際で何らかの取引をしたってことなのかな…名前つけたってのもそれなら辻褄が合うしね…。なんか最後の方ボソボソ言ってて良くわかんなかったけど…。
「じゃあ、今は寝てるだけで、そのうち起きたら生き返るってこと?あの人は帰ってくるの?」
『はぁい、そうなりますねぇー本来ワタシもぉー表層に出てくるモノじゃないんですよぉー』
「え?そうなの?」
『ええ、ワタシ契約者が出来たら本来サポートする役目なのでぇー、ぶっちゃけ役に立たないんですぅー。融合してもこの程度大きさにしかなれませんしぃー。』
ぶっちゃけた!この子自分で役に立たないってぶっちゃけちゃった!!
「じゃあなんで、ウチの人が起きるの待たないで表に出てきちゃったの?」
すると、首を少し傾げて当たり前のように
『そんなの決まってるじゃないですかぁー』
嫌な予感が止まらない。
『侵略者が近くに出るからですよぅー』
と、予感通りの言葉を言いはなったのだった。
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