友里、修学旅行に行く その8
ギリギリ今日に間に合いました。(汗)
じわりじわりと変色していく力場を見ながら考える。
『腕の修復が完了しました。力場消滅まであと4分ちょい』
なんでこのサポートシステムはたまにアバウトなんだろう?普通4分何十秒とかいうよね?なんだよ「ちょい」って、普通言わないよね?
『少しでもご主人様の気を紛らわそうと思いまして』
「勝手に人の思考読まないで欲しいんですけど!?あと紛らわすくらいなら一緒に考えてよ!」
『でわとりあえず発熱してみては如何でしょうか?蒸発させてしまえば脱出できるかもしれませんよ?』
ふむ、それは考えつかなかった・・・相手が大きすぎて蒸発させるなんて思わなかったよ。そうとなれば急いで試してみなきゃ。
『あと3分です』
おっふ、カップ麺作る時間しかないだと!!
ボクは久しぶりに火の精霊力をイメージした。力場内の温度がどんどん上がり始めて力場自体も赤熱化していく。心なしか力場の侵食が収まったような気がする。
『それは気のせいです。赤熱化してるので見えなくなってるだけで侵食はされてます。しかし境目で奴らが蒸発し始めましたのでうまい事脱出も可能なのではないでしょうか?』
なんだろうーエレスがちょっと冷たい気がするんですけどー。またなんか怒ってるのかなぁ?
「ねぇ、なんか怒ってるの?なんかちょっと冷たいよ?喋り方」
『いいえ、怒ってなんかいませんよ?だってご主人様は私が忠告しても聞かないだけで、別に怒られるようなことしてませんよね?確かにコイツをやっつけなきゃいけないのはわかりますけど、少しは私の意見も聞いてくれてもいいんじゃないでしょうか?怒ってるわけじゃないですけど?』
拗ねてるじゃん・・・おもっくそ拗ねまくってるじゃん・・・。
「ま、まあ悪かったよ、でもさーやっつけなきゃいけないのは確かだよね・・・それにさエレスが封印しかできなかった相手だから仇とりたいじゃんね?」
『・・・か、仇ですか?私の??』
お?いける?いけちゃう感じ?
「うんうん、エレスだって悔しかったでしょ?だからボクが仇を取りたいんだ!」
『しょ、しょうがないですねっ!じゃあ力合わせて私の仇打ちしてもらいましょうか!』
「うん!じゃあもっと温度あげるよぉ!!」
エレスって扱いやすいなぁ・・・
力場は赤熱を通り越して白く輝き始めてる。おそらく数千度に達してるだろうね。力場と奴らの接触面が泡立ち始めた。
心なしか奴らが消滅していく叫び声みたいなものが響き渡る。
いけるかも!!はっ!!いけない、こんなこと言うと負けフラグが立つ!口に出してないからセーフかな??
『ご主人様!イケますよ!!奴ら表面で蒸発し始めてます!!』
のぉぉぉおおおおぉ!!なんで言っちゃうかな!エレスってば!!
しばらくすると、泡立っていた表面が少しづつ収まってくる・・・ほらぁ!!口に出しちゃうから!!ボクは心の中で思っただけだもん!
『ご主人様大変です!!奴ら対流して温度が一定以上に上がらないように海水で冷やして循環してます!』
そういうカラクリなのか・・・奴らほんとに頭いいなぁ、そりゃ何百体って魂が集まってるんだもんね、文殊の知恵どころじゃないわ。
ボクは陽炎を解除して無駄なエネルギー消費を抑えた。
『奴らが蒸発してる間に力場の修復が出来ました、もうしばらくは持ちそうですがそれでも数分です』
うぅ・・・振り出しに戻ったー。風の精霊でも呼んでみようかなー。
ボクは風の精霊力を使ってみる。力場ごと包み込む感じで・・・だめだー周りの対流が循環から横回転の渦巻きに変わっただけだった。
むしろ、なんだか渦巻きに吸われて沈み込んだ気がする・・・。
その時だった、巨人級の外側に何かがぶつかったのか、ボヨーンというような振動が伝わってきた。
「なに?なにがあったの?まさかまた航空部隊が攻撃してきてるの?」
『いえ、どうやら友里様に渡した精霊数珠の風の精霊珠が、先程の呼びかけに答えて飛んで来たようですね。どうやら先程解き放たれた後に、奴らの攻撃で吹き飛ばされていたようですね』
再び繰り返されるボヨーンという体当たり。どうやらつむじ風をドリル状にして突っ込んでるらしい。がんばるなぁ・・・。
なんて見てたら徐々に小さな空洞がボクの方に向かって進んできた。
『どうやら此処まで辿りついたようですね、ナイスガッツです。さすが私の造った珠です』
うん確かにナイスガッツだねぇ、っと力場にぶつかって止まってる!ガリガリしないでぇ!!脆くなってるからー!
ボクは少しだけ力場に穴を開けて風の精霊珠を入れてあげる。するとつむじ風を解除してキュルキュルル・・・と回転が停止する。
薄緑のヴェールのようなドレスを翻した小さな妖精みたいな少女が、ドレスの裾をヒョイと持ち上げながら頭を下げて挨拶してくる。
正直いってかわいいー、なんだこれ、エレスこんなん造れたんだ!
「エレス!この子かわいいね!今度ボクにも造ってよ!」
『ダメです』
「なんでさー、なんで友里には造れてボクはダメなのさー欲しいなーボクがかわいいの好きなの知ってるでしょー?」
『ダメなものはダメです。何故ならご主人様には私がいるからです!私だって可愛いでしょ?可愛いって言ってください。じゃないともう喋りませんよ?』
やばい、かなりヤキモチ妬いてらっしゃる??変なスイッチ入っちゃったかも?
「う、うん可愛いよ!エレス可愛い!もうエレスがいれば十分かなぁ!」
ボクは冷や汗をダラダラと流しながら必死にエレスのご機嫌をとりまくる。
『ふふ、ふふふ・・・そうですよね?ご主人様は私がいればいいですよね?』
もうボクは高速でコクコクと頷くしかなかった。
『ところでご主人様、もう力場が持ちそうにないのですが・・・』
なんですとー!足元を見るとすでに奴らが入り込み始めてる。一か八か・・・突き破ってみようかな・・・上を見ながら拳を握りしめる。
『ご主人様、チャンスは一度だけですよ、失敗たら奴らに食べられますよ?』
「しょうがないよ、このままじゃどのみち食べられちゃうしね、いくよっ!」
握りしめた拳の上に精霊珠がフワッと降り立って風のガードを作ってくれた。ありがとう、心強いねこんな小さい子なのに。
「つらぬけ!!昇龍〇破!!」
ボクは某ゲーム会社に怒られそうな技名を言いながら上空に向かって拳を繰り出す。らせん状に体の周りに力場の残りカスを纏ってガードしながらさらに風の精霊によって上昇していく。グングンと加速しながら奴の身体の中を突き進む。
あと少し・・・もう少しで・・・突き抜ける・・・とおもった瞬間、突き上げた拳がぞぶりと奴に沈み込む。
一瞬で風の精霊珠が消え去るのを感じる、嗚呼あんなにかわいかったのに・・・。しかしそんな呑気なことを言ってる場合じゃなかった。
「熱っつ!!」
とたんにボクの右腕がジワリとした感じで包み込まれた。急いで力場を形成しなおして、腕を引っこ抜く。
恐る恐る腕を見ると、ほとんど肉をそがれて筋肉と骨がむき出しになっていた。手の平には珠の残骸が残っていたけど、すでに精霊は消えちゃってた。
『痛覚を遮断しましたが、再生には時間がかかります』
「それにしても、一瞬でこの有様とは・・・なんて分解能力なんだ・・・ん?分解?そういえばボクって分解能力あったよね?」
『あ!』
どうやらエレスも忘れちゃってたみたいだ、ボクも忘れてた。(そして作者も少し忘れてた)
よし!ちょっと希望が見えてきたぞ!こうなったら分解勝負だ!ボクは気合と共に周囲の原子操作を始める。
すると周りの壁がどんどん塵になって崩れ去っていき、奴の焦る感情が悲鳴となって流れ込んでくる。よっし!分解勝負でボクに敵うと思うなよ!
ボクの周りに一定の空間が出来上がったので、一瞬翼を消して、また綺麗な翼を出して滞空する。よし後はこのまま奴を分解しながら上昇だね。
奴の中を分解して掘り進みながら上昇する。思ったよりエネルギー消費が激しいのかおなかが空いてきた。
そして薄く空が見えたかと思うとついに奴の体内から出ることに成功した。
『エネルギーを補給しないと不味いかもしれません。今のでだいぶ消費してしまいました』
ボクは飛びながら奴から少し距離を取る。外に出てみてわかったけど、心なしか小さくなったような気がする。
『おそらく、体内で暴れたことが少なからず奴の塊魂を損耗させたようです。奴も不死身ではないということです』
「そうだね!もう少しがんば・・・」
言いかけたボクの視界が一気に流れる。
バッシィィィィン!!
奴の触手がボクの身体を打ち据えたらしい。
「ぐぅっ!!」
グングン近づいてくる砂浜にボクは墜落した。
「いててて・・・油断したなぁ・・・」
ボクは砂をぺっぺっと吐き出しながらつぶやく。よく見るとさっき食べられかけた右腕が無くなってる。
『修復中の右腕がちぎれ飛んでしまいました。安心してくださいご主人様の身体は、コアの部分から離れると自動で分解消滅しますのでエコです』
それってエコなのかなぁ・・・?
ボクは無いはずの右腕を振るように動くと次の瞬間には、綺麗な右腕が元通り生えていた。うん、修復するよりも生やしたほうが早いね、おなか空くけど・・・。
奴をみると触手をひゅんひゅん鞭のように動かしていた。ボクの鞭見て真似したな・・・アレ。
とりあえず奴から距離が取れたから、なんか食べないと力が持たないなぁ。
周りを見渡すと、砂浜だけにお店が何店か見えた。すでに店の人は避難しちゃってるみたいだけど、なんかないかなーって無銭飲食じゃないよ?緊急事態だしね!
お店に入って冷蔵庫を開けてみると、まだ調理されてない焼きそば麺やハムのような肉の塊があった。
らっきー♪ハム丸ごと食べとけばしばらく大丈夫かなー。
お肉の塊を両手で持って、手の温度を上げていくとお肉からじゅーじゅーと音がしていい匂いがし始める。おおー超おいしそうー油が滴り落ちて手がぬるぬるするけど気にしちゃいられない。
ボクはあんぐとお肉にかぶりついてかじりとる。んまーぃい!結構いいお肉なのかなぁ?調味料とかつけてないのに、肉の甘みが口の中に広がっていく。エネルギーが充填されてく感じー。
(ただおなかがいっぱいになっただけなんだけどね)
ボクはお肉の塊(推定2キロ)を食べきると巨人級を睨み付ける
「よっし!第二ラウンドといきますか!!」
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