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友里、修学旅行にいく

 今日も一仕事を終えて、ひとっ飛びで家に帰り、お風呂上がりに(今日は一人で入れた)冷たい飲み物を求めて、リビングに行くと、優と友里がプリントを見ながらなにやらチェックをしている。

 

 「えーっと洗面用具はいいでしょ、生理用品もおっけー。替えの下着も4セットはいってるしー、水着もある。ああ、洗濯物入れる袋がないや。一応折り畳み傘も入れてくかなー。あとなんだろ?」


 「お小遣いっていくらまで持っていっていいの?ちゃんとお土産買ってきてね。ママ『ちんすこう』好きなんだから。あとお隣の後藤さんとこも去年娘さんがお菓子買ってきてくれたから、お隣さんにもなんか買ってきてね」


 そう言えば明日から友里は修学旅行なんだっけ?いまの高校って凄いねー、沖縄とか行くんだもんねー。

 ボクらの頃なんて、普通に広島長崎だったよ?まあ、あれはあれで良かったけどね。

 なんか普通の旅行だもんね、バカンス?みたいな感じ。

一体何を修学するんだろう?別にうらやましくて言ってるんじゃないからね?

 それにボク飛行機とか乗ったことないんだよねー、自力で飛べるようになっちゃったけど。

 優が高所恐怖症だから、新婚旅行も国内で済ませちゃったし……。

 でもなぜか優は看護学校の旅行で、中国まで飛行機に乗ってるんだよねぇ。

 自分でもその時の記憶が無いって言ってるくらいだから、アレかな、某特攻野郎のメカフェチゴリラみたいに気絶させられたのかな?

 

 そんなこと考えてたら、用意する物のチェックが終わったらしく、友里がでっかいキャリーバックを納戸から出してきた。

 何故か二つ。


「なんで二つも出してきたのー?」


 とボクが聞くと


「もしかしたら入りきらないかも知れないから、なるべく小さいのにしたいけど、お土産とかのスペース考えたらおっきいほうがいいかなーって」


 言いながらせっせと荷物を小さい方に詰め込んでいく。


「まあ、最悪入りそうにないお菓子とかはひとまとめにして、宅急便とかで送っちゃえば良いんじゃない」


 と、優が助け船を出すと


「あーそういえばそうだねー。じゃあアクセサリー系以外はそうしちゃおーっと」


 無事に小さい方に全部入ったらしく、チャックを閉めてロックをしていた。


「大きい方、せっかく出したのに無駄になっちゃったなぁ……」


 何故かボクを見る。

 そしてまた大きい方のキャリーバックを見て、交互に何度か見たあと友里は言った。


「ヒカルちゃんおっきい方なら入れそうだよね?」


 友里それダメなやつだから!ボク向こうについたら恐らく冷たくなってるから!?


「ダメに決まってるでしょ!!」


 と、優に後頭部にチョップを入れられて、友里は蹲っていた。

 たまに、猟奇的なこと言うのは思春期のせいなのかなぁ。

 我が娘ながら少し不安になる今日この頃。


 「はぁーやーだなぁー・・・」

 

 友里が盛大なため息をついた。明日から旅行じゃないの?なにがイヤなんだろ?


「どうしたの?明日から旅行なんだから、そんなため息ついてたら面白くなくなっちゃうわよ?」


 うんうん、その通りだよねーせっかく沖縄行けるんだからねえ、別にひがんでないよ?


「だってさー、あたし旅行行ってる間ヒカルちゃんに会えないんだよー?それにさ、ママとヒカルちゃん二人っきりになったら、絶対ラブラブするでしょ?おいしいもの二人っきりで食べに行くでしょ?ぜっっっったいあたしがいない間楽しみまくるもん!!それがいや!!」


 ……ボクと優は心当たりがありすぎて何にも言えず、目をそらすことしかできなかった。

 だってしょうがないじゃんね?いくら夫婦でも恋人気分は忘れちゃいけないと思うんだ、うん。


 友里はボクの座っているソファーの隣にボスンと腰を下ろすと、悪戯っぽい笑みを浮かべながらすり寄ってくる。


「ま、しょうがないか。やだって言っても楽しみは楽しみだしね。ところでヒカルちゃん、お土産のリクエストはなんかある?リクエスト用とお楽しみ用は別に買うからさ。一応希望があるなら聞いとくよん?」


 言いながらにじり寄ってくる。

 あんまり前かがみになると、おムネが見えちゃうよ?って言っても自分にもおんなじのついてるからあんまりドキドキはしないんだけどね?


「んー特にこれと言ってないんだけど、普段使いが出来るようなアクセサリーなんかがいいかも。あんまり邪魔にならないけど、丈夫で可愛いヤツ」


 ボクは今の姿になったから可愛いものが好きになったんじゃないよ?元々可愛いものとか、やわらかい素材のぬいぐるみみたいの好きなんだよねー。


「ふーん、アクセサリーかなんかだねー。わかった、ヒカルちゃんに似合いそうな可愛いの買ってくるね」


「うん、ありがとね」

  

 ニコニコと見つめあって笑いあうボクと友里。


「ふーーーん、私には聞いてくれないのね?お金出すの私なのに」


「あ、いっけね・・・」


「ふふ、うそよ。無事に帰ってきてくれればいいわよ。まあ、ちんすこうは買ってきてほしいけどね」


 と、笑いながら友里の頭をなでるのだった。


 

********************************************


 ボクが朝起きると、すでにリビングに人の気配は無く、テーブルの上にメモ用紙がおいてあった。


『友里送ってきます。ヒカルちゃんが出てくまでには帰ってこれると思います』


 ん、どうやらまだバスが出てないから集合場所の学校に送っていったみたいだね。

 朝ごはんはテーブルの上に置いてあったので、冷蔵庫から出した牛乳をコップに注いで半分ほど飲むと、ご飯をもっきゅもっきゅ食べ始める。

 んーおいしいーちなみに今日のご飯は小倉トーストに厚焼きベーコンとスクランブルエッグ、レタスとトマトのサラダ。

 今更ながらに思うけど優の作るご飯って結構なボリュームだよね。

 おいしいから、ペロっと食べれちゃうんだけどね。

 食べながらテレビを点けると、ちょうど朝のニュースが天気予報を流していた。


『三日ほど前から発生した台風2号は、勢力を増しながら明日には沖縄を通過する予定で・・・』


 あちゃー、友里ってば直撃じゃないの?これ。だいじょぶかなぁ、どうせならお天気の方がいいよね。

 まあ自然相手だからどうしようもないとは思うんだけどさ。


 そんなこと考えながらテレビを消すと、玄関の鍵が「ガチャリ」と開く音がした。

「ただいまー」と優が言いながら入ってきた。どうやら送り終えて帰ってきたらしい。

 

「あら、起きれたの?えらいわねー」


 と言いながらボクの頭をナデナデする。

 たまに子供みたいに扱われるけど、これも生まれ変わる前からの行動なんだよねー。

 ボクのがおっきかったのにねー、撫でたいだけなのかも?


「私もご飯たーべよーっと」


 言いながら自分のプレートを出してきてボクの横に座る。

 そしてテレビのリモコンに手を伸ばしてスイッチを入れながら、テレビに目をやると、ふとその横にあるものに気が付く。


「あーーーーーーっ!あの子忘れてった~~~~!!」


 え?なになに?何忘れてったの?そんなに大事なもの?


「ほら!アレよアレ!ハンディカメラ!!昨日画像チェックしてこないだのヒカルちゃんの天使画見て満足しちゃったのねー。いっぱい写真と動画撮るって張り切ってたのに・・・どうしましょ?」


 ありゃりゃ、それは可哀想だなぁ。確か羽田空港から那覇まで行く予定だから、今の時間はまだ高速バスで移動中だよね。

 っていうか、さっき送っていったからちょうど高速に乗ったとこらへんかなぁ?


「今、メール送ったら、めっちゃ落ち込んでた・・・もう高速乗っちゃったって」


 やっぱりねー、って事は談合坂SA辺りで一回休憩取るはずだね、よし届けてあげよう、そうしよう。

   

 ボクはスマホを取り出すと、鷹村に電話をかける。


「おう!おはよう!どうした?こんな早くに珍しいな」


 こいつ朝から無駄に爽やかだなぁ、まあいいんだけど。


「ごめん鷹村。ちょっと会社遅れちゃうんだけどいいかな?」


「お、どうした?また未確認でも出たのか?」


「ううん、そんな大層な話じゃないんだけどね」


 そういうと、ボクは友里の事を説明した。


「ほうほう、そっかー。まあ今日はそんなに忙しくもないし少しくらい遅れてもいいぞ。せっかくの旅行だ、楽しいほうがいいよな。早く届けて帰って来いよ」


「うん、ありがと。談合坂で渡せる予定だから、そんなに遅くはならないと思う」

 

 さすが、鷹村話が分かるわー、ボクじゃなかったら惚れちゃってるかもね。ボクは惚れないよ?絶対に。


 ボクは電話を切ると優に向き直る。


「そういう訳だから、会社に行く前にちょっと渡してくるよ」

 

 優にそう言うと、とてもうれしそうな笑顔でボクをギュウっと抱きしめてくるのだった。

感想、ブクマなどしていただけると小躍りします。

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