謎のヒーロー参上?
久しぶりに連日です。
さーってと、とりあえずさりげない(?)登場シーンを考える。
エレスも動員して、いくつかのパターンを参考にしてみて……よし取り合えずいってみよっかー。
ちなみに今回のボディスーツ、前回よりもちょっと腰回りとかにパーツ多め。だってみんながエロイって言ってたからさ……。
ちょっと体の線が出ないようにしてみたよ、もちろんオッパーツも付けた。
プロテクターみたいなのね、ちょっと武装なんちゃらみたいな感じになったけど。
ボクは軽い感じで飛び上がる。軽そうにみえてもあっさりと100mくらいは飛び上がってるんだけど。
翼は出さずに風の精霊を体に纏わせて、バランスと落下速度の調整をする。
上から見ると重機が普通に横から見るのと変わんない感じで見えるから、ちょっと不思議な感じ。(笑)
おっと笑っちゃいけない、社長さんたちにとってはデカい損失だった。
まあほんとはウチにとっては売り上げが上がるだけなんだけど、そんな事故で足元見るような稼ぎ方してもよく思われないしね。
きっと鷹村もそういうはずだし、たまに情をかけすぎな時もあるけど、そういうのは嫌いじゃない。
重機の近くでしゃべってる若社長さんと運ちゃんと操縦士さん、そしてキム公の後ろに、ふんわり音をたてないように降り立つ。
みんなボクに気づいてない。
難しい顔してウンウン唸っている。
ボクはエレスに心の中でしゃべるかける。
『エレス、ボクの言葉ボクっ娘以外の喋り方にできる?』
『なぜですか?そんなにかわいらしい喋り方に不満があったのですか?』
なんか泣きそうな声で答えてくるエレス。
『いやいや違うよ?不満が無い訳じゃないけど、とりあえずこの姿にはあってると思うよ?そうじゃなくてさ、ボクっ娘喋りだと一発でバレちゃうかもしれないでしょ?だから他の喋り方できるかなぁって』
『不満が無い訳じゃないんですね……まあそこは流すとして』
流しちゃうんだ?そこ。
『できますよ?もちろん。ちなみにお任せでいいんでしょうか?』
『うん、いいよお任せで。よほど変なのじゃなきゃいいよ。こればっかりはエレスにお願いしないとさ』
『わかりました!全て私にお任せください』
ノリノリなのがちょっと怖いけど基本エレスはボクに不利益なことはしないからダイジョブだね。
エレスと話がついたボクはみんなに驚かさないように声を掛ける。頼むよ!エレス。
「ちょっとよろしいかしら。みなさま」
ブッッッ!!お嬢様かい!確かにキャラかぶりないけども!ないけども!!
呼びかけに気づいてみんなが一斉に振り向く、そして目が点になる。
キム公まで点になってるのは、やっぱりさっきのアイコンタクトを理解してなかったんだね……。
しばらくすると、キム公の奴が「ああ!」みたいに気づいた感じの表情になる。
今か?今気づいたんだな?じゃあなんでコクコク頷いた?デートの誘いだとでも思ったのかな……まあ後で〆るか。
「な、なんだい?君は?」
若社長さんがボクの事を上から下まで眺めながら聞いてくる。
目がちょっとエロイ感じになってる気がするけど、気のせいだと思いたい。
だってこれ以上プロテクター付けちゃうと、フルアーマーガ○ダ○かって言うくらい位になっちゃうもの。
キム公を見るとこの前の姿を知ってるだけに、ちょっと残念そうな顔してるしー、後で殴ろうそうしよう。
「私は通りすがりの正義の味方ですわ」
人前に出るのはよかったけど名前決めるの忘れてたわー。
登場の仕方でいっぱいいっぱいになってたわー。
「と、通りすがりですか??その正義の味方?さんがなんで?」
「いえ、見たところ大変お困りになっておいででしたので、私のセンサーに引っかかったのですわ」
「せ、センサーですか?」
「はい♪困った人を助けるためのセンサーですわ」
もちろんそんなものはないけどね!
「しかし……そんな華奢な身体でどう助けてくれるんだい?ヒーローったってこんな重いものどうしようもないだろうに」
ちょっとなんかヒーローの部分に悪意を感じた物言いだけど、怪しさ満点だものねーいきなり都合よく現れてるしね。
「大丈夫ですわ、こう見えても結構力には自信がありますのよ?」
と、細腕をで力こぶを作って見せるけど、うん!ほとんどできないねコブが。
不安そうに眉間に皺を寄せる男たち。
おいおいなんでキム公までそんな不安そうな顔?キミこないだ見てたよね?あ、でも飛んでるとこと頑丈なところだけで、力持ちなとこ見てないわ。
「ひょっとしたら超能力とかいうのじゃないかい?こんなお嬢ちゃんだし。俺がよく見てるアメコミヒーローものだと、重機くらい念力とかで持ち上げてるしよ」
おお、この運ちゃんそういうの見るんだ?ボクも見るし好きだから話合いそうだなぁ。
今度時間あったらお話ししようねー。
でも違うんだー、バリバリ腕力オンリーなんだーごめんねー。
「まあ、とりあえずやってみますわね、見たところそんなに時間の余裕もなんでしょう?」
チラリとキム公に聞くと
「ああ、後30分もしたらオイルが回り始めてしまうから急がないと」
「わかりましたわ、速攻で起こして見せます。離れててくださいまし。あと車も前に出して移動してくださいな。起こした時にぶつかってしまいますわ」
運ちゃんが「本気で起こせる気なのかよ・・・」などと呟きながらトレーラーを移動させる。
信じてないなぁー、よーしみてろよー。
今ボクが平均女子の体力だとして、持ち上げられる重さを30キロくらいだとする。
そこから10倍の倍化で3000キロつまり3トンの物が持ち上げれる計算だ。この重機の重さが約10トン、だったらあと5倍、つまり50倍の倍化で15トンまで持ち上げれるから余裕だね。
その計算で合ってるよね?エレス。
『ええ、計算ではその通りでございますね』
なんか引っかかる言い方だけど、とりあえず重機に近づく。
こういう場合はアームの部分を持ったほうがいいはず。アームだけでも本体を支えることが出来るはずだからね。
ボクはなるべく傷がつきにくそうな場所に手を添える。そして少しづつ力を込めていく、ゆっくりゆっくりと。
ギシギシ……重機が軋みを立てて動き始める。
周りから「おいおい、うそだろ……?」と呟きが漏れる。
少しづつ浮上がり始める重機本体。
みんながどよめく中重機が、ボクの掴んでいる腕を支点にして完全に持ち上がった。
傍から見たら重機が浮いてるような、異常な光景だろうねー。
後はもう少し腕を回して、ちゃんとした位置にして降ろせばだいじょうぶ。
その時だった、一陣の風が吹き抜けた。風に吹かれてボクの髪がフェイスガードの中で踊り、そしてボクの鼻をくすぐった。
「ふぇ、へっくち!」
可愛らしいくしゃみをした。
しかし起きた現象は、そんな可愛らしいくしゃみとは裏腹にとんでもなかった。
くしゃみをした拍子に、ボクは思いっきり重機を放り投げてしまっていたのだ。
みんな唖然として上を見ている。
まるでその重量を感じさせないような軽やかさで浮かび上がる重機。
なんて幻想的な光景なんだーなんだーなんだー………(エコー)
いやいやそんな場合じゃないよ?なんでこんな事に?エレス?エレースさーーーん??
『何でしょうかご主人様』
「なんであんな高いとこまで飛んでっちゃったの??おかしいよね?
いくら放り投げたってあんなとこまでいかないよね?普通は」
『それはですね、ご主人様が盛大な勘違いをなさっているからです』
なになに?どゆこと??
『ご主人様は計算するときに、一般女子の腕力で計算しましたよね?』
え?それが何か?だめなの?
『自分が普通の女子とお思いで?ちなみにご主人様は普通の状態でもそこらの男どもよりも力持ちですよ?』
え?え?じゃあ30キロ×50倍は間違ってるってこと??
『ええ、少なくとも100キロくらいは余裕で持ち上がると思われますよ?』
え?ってことは100キロ×50倍=50トン??重機の重さの5倍くらい余裕があったって事?
『そうなりますね。あ、そろそろ落ちてきますよ?重機。ちなみに落下してくる際の重さは100トン超えてしまうと思うので、落ち切る前に支えたほうが賢明かと』
ふえぇぇ??慌てて上を見ると重機は軽やかな放物線の頂点に達したのかゆっくりと落下運動を始めていた。
周りの男達は、我に返ったのか一斉に「にげろぉぉぉぉ!!」とその場から一目散に離れていった。
ボクは翼を出すと一気に重機まで飛び上がる。落下が始まっていた重機はそれなりの重さになっている。
飛んで足場が無い状態だとお~~も~~い~~~!!
いくら50トンまで持ち上げられるっていっても、踏ん張る場所が無いってのはダメだ!
エレス!さっきは不満があるなんて言ってごめんなさい!うまい事釣り合うとこまで出力調整してぇ!!
『まったくご主人様は世話が焼けますね。もうボクっ娘がイヤだなんて言っちゃだめですよ?』
こいつやっぱり根に持ってた!!さっき引っかかる言い方が気になったの気のせいじゃなかった!!
「エレス、ワザと言わなかったでしょ?」
『なんの事でしょうか?私には解りかねますが。とりあえずバランス取りますよ?』
っち………うまい事はぐらかされたよ。
しょうがない藪をつつくと蛇が出そうだから、とりあえず放っておいてこっちに集中しよう。
『出力を78倍に設定、慣性制御最大、停止します』
空中で面白いくらいピタッと停まり、そしてゆっくりと下降し始めて重機をちゃんとした向きで降ろす。
音も立てずに降ろされる重機。
特に壊れた様子はないみたいだね、よかったー。
あー、ほんとに疲れたー。これだったらまだ侵略者と戦ってたほうがマシかも……。
だって壊しても怒られないもの、侵略者は。
みんなが近づいてくる。
若社長さんもホッとしたような顔で見てる。
よかったね、一瞬全損の危機だったけどね。
「あ、ありがとうございます。ほんとになんて言っていいか」
あれれ?なんか敬語になってるよ?さっきまで胡散臭そうに接してたのにー、現金だなぁ。
「いえ、よろしくってよ。少しばかりアクシデントがありましたけど、無事に降ろせてよかったですわ」
重機の方をチェックしていたキム公も、戻ってきた。
「社長。エンジンも無事でしたよ、倒れた時に下になっていた部分も大した破損じゃなかったんで、少し塗装するだけで大丈夫ですよ」
「ほんとかい?それはよかった。いやほんとにありがとうござい……ます?」
若社長が振り返った時にはすでにボクの姿はなかった。
なんせまた上空100mまで気づかれないように飛び上がったからね。
ボクはそのまま翼を広げて身体を覆うと、光学迷彩を使って透明化して、事務所の裏側に降りる。
そしてくるりんと事務所の方を向いた時には一瞬で元の姿に戻る。
ふぅーと溜息をつくと、空を見上げて思った。
正義の味方は疲れるー無理だー。
『ご主人様は、ご家族の味方というスタンスで十分だと思いますよ?キャラ的に』
うん、今日ますます実感したね、そしてエレスは怒らせちゃいけないって実感したね、マジで。
でもいいの?それで、お母様とかエレス的にはいいの?
『かまいませんよ?だって私ですら1000年以上も戦い続けて何にも変化が無かったんですよ?今更ですよ、それに人類の味方=正義の味方じゃありませんしね』
んーなんだかちょっと、エレス達のスタンスも垣間見えちゃったけど、まあ人間だって地球を汚しちゃってたりしてたら、滅ぼされる立場って事だもんねぇ。
まあ、ボクはお仕事を一生懸命するだけだけどね、会社の仕事と、侵略者を滅ぼすことと。
どちらも家族を守ることにつながるのだから。
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