友里vsストーカー(?)
一人称に書き直しました。
まだ少し肌寒いけど、雲ひとつない青空が拡がっている。
結局昨日は、暴走気味の壮太くんに、ヤキモチを妬いて壮太くんを追い返した後も、友里が僕から離れてくれなかったもんだから、八房山行くのは今日にもち越したんだ。
優は、頭を切り換えたのか、ちゃんとしたピクニックにしようと昨日の夕方から、唐揚げの下ごしらえをしたりしてた。我が家の唐揚げは、タッパー容器にいれた鶏肉を、某既製品の金色焼肉だれ(甘口)に一晩漬け込み、それ片栗粉をまぶして揚げると、何とも言えない甘味が出るのだ。
優は今まで、その味を越えようと、醤油に生姜、ニンニク、すりおろしたリンゴ等、配分を色々変えて試していた。
でも結果的に、美味しいけどなんか違う、というボクらの意見に打ちのめされ、美味しければいいじゃないと割りきって、金色唐揚げが、我が家の伝統の味になっている。
その他には定番の甘い卵焼き、餃子の皮でチーズを巻いて揚げたもの、サンドイッチ等、朝からバスケットいっぱいに作っていた。
フンフン鼻歌を歌いながら右に左に忙しく動き回る優の後ろ姿を、ボクはダイニングの椅子に座って、足をプラプラさせながら、楽しげに見ていた。
こういう何気ない風景を見て幸せに浸っていると、生き返ってほんとによかったと思うんだよね。
そんなこと考えてニヨニヨしてると、友里も起きてきたので、余分に作ったサンドイッチで軽く朝御飯をすませて出かけることにした。
ビニールシートやら何やらも、一通り大きめのトートバッグに詰め込み、準備完了だ。
るんるん気分で友里が玄関の扉を開いた。そして、顔は笑顔のままなにも言わずパタンとまた閉める。
変に思って「どしたの?」と聞くと、「いた」無感情に答える友里。
なんだかプルプルしてるけどナニがいたの?と思いつつ、ドアを開こうとボクはノブに手をかけた。
その手をガッシとつかんで友里が開けさせない。ボクも優も、頭に「???」と浮かべる。
そんな二人の顔を見て友里が衝撃的な事を言った。
「門のとこにストーカーがいるっ!」
しばらく意味がわからず「………」となるボクと優。
そして、二人同時に「はぁあああぁっ!?」と声をあげる。
「ストーカーって、そんなのいるわけないでしょー、いても怖くないしだいじょぶだよー」
と言いながら、友里を後ろに庇いながらボクはドアを開ける。
庇われた友里は少しうれしそう。
「ガチャ」っと勢いよくドアを開けるとそこには確かに人がいた。
昨日友里に、強制退去させられた壮太くんが・・・。
ボクに気づくと壮太くんはパァっと顔を輝かせて、
「あ、あのっおは『パタム』」
ボクは思わずドアをしめた。滝のような汗がダラダラと流れて止まらない。
「うわぁ・・・どうしたらいい?」と二人を見る。
「だから言ったじゃん。ヒカルちゃんはもう少し自分が美少女がだって、自覚した方がいいと思うよ?」
と、友里にちょっとジト目で言われると、ボクは涙目で訴える。
「だっ、だってえ中身おっさんだよぉ!?」
友里は、はぁーっとため息をつきながら言う。
「中身がおっさんだとしても、それを無いことにしてもいいくらい可愛いんだってば!それに壮ちゃんはそんなこと知らないし」
言われてみれば、その通りだったー。
昨日壮太くんは、ボクの手をぎゅっと握ってテンションアゲアゲのところを、友里に邪魔されて挙げ句追い出されれちゃったんだよね。
きっとあの年頃の男子ならドキドキしちゃって眠れなかったかもしれない。
ボクもそうゆうことあったもん、確か!……すっごい昔のことのような気がするけど。
「そりゃ、思わず朝駆けしちゃうくらい好きになっちゃってもも、おかしくないかもねぇ」
と、優が他人事のように笑ってる!ひどいな!まあ他人事だけどさ。
頭を抱えてうずくまりそうになるボク、心なしか髪の毛がサワサワ伸び始めてマリモ化し始めてた。
友里はそんなボクの頭をポンポンと撫でて言った。あれ・・・ちょっと気持ちいい。
「わかった。ヒカルちゃんあたしが何とかするから任せといて!」
ボクはマリモ化を止めて、ちょっと涙目になりながら上目遣いに友里を見上げた。
「だいじょぶなの?ちゃんと事情話したほうがいいんじゃ・・・」
自分で蒔いた種なので、娘に頼るのがなんとなく情けなくなって思わず聞いてしまった。
しかしそんなボクの事をを、友里はギンっと人睨みする。
「いい?ヒカルちゃん。さっきも言ったけど中身がパパってわかってもチャラにしちゃうくらいなの。そんなヒカルちゃんがホントのこと言ったって、自分の都合いいように聞いちゃうに決まってるでしょ!だからいい?あたしがちゃんと話つけるから、絶対に口出さないでね!」
あまりの友里の迫力に、ボクはコクコクと頷くことしかできなかった。
そして再び友里がドアを開く。
するとそこにはどうしてよいかわからず茫然と立ち尽くす壮太くんがいた。
「あっ、オッス友里、ヒカルさんは??」
この間まで友里友里うるさかったくせに、昨日会ったばかりのヒカルちゃんにもう夢中かい、と額に青筋を浮かべながら目が笑っていない笑顔を浮かべつつ答える友里。コワイよー(泣)
「ヒカルさんなら後ろにいるでしょ。こんな朝早くからどうしたの?壮ちゃん」
そんな友里の様子にはまったく気づかない壮太くん。
思春期の男子ってある意味最強かもしれない。
「俺さ、ヒカルさんに言いたい「壮ちゃんその前にあたしの話聞いてくれるカナ?」
壮太くんの言葉をさえぎって、友里がしゃべる。
「壮ちゃん、昨日会ったばかりのヒカルちゃんにずいぶんご執心のようだけどサ。なんでカナ?」
言葉の端々が少し病んでいるキャラの喋り方に似てきてる気がして、ボクと優は抱き合ってプルプル震えて事の成り行きを見守るしかなかった。
「えっと・・・なんか初恋っていうか・・・衝動が抑えられないっていうか・・・」
初恋は友里じゃなかったのかな?という周囲の空気を無視して何やらごにょごにょとしゃべる壮太。
っていうか、抑えられない衝動ってなに?友里がいなかったらボクなにされちゃうの?マヂでコワイ思春期の男子!ボク思春期のときこんなじゃなかったよ??
体の震えがプルプルからガクブルに移行し始めてる。そんなボクを見てますます青筋が増える友里。
めっさ怒ってる・・・。
「壮ちゃんさ・・・ヒカルちゃんみたいな素敵な人に付き合ってる人がいないと思うのカナ?」
「そ、それは当たって砕けろ的な・・・もしかしたらワンチャンあるかもだし・・・」
はぁ・・・と自分の怒りをなだめるようにため息をつき、友里は壮太くんをジロリと睨む。
「知ってるカナ?そういうのストーカーっていうんだよ?無理やり自分の気持ち押し付けようとしてサ。相手の気持ち考えないで付きまとうのはダメなんダヨ?知ってたカナ?」
そこまで言われると、思春期男子もさすがに「俺やらかしちゃった?」と思い始めたのか黙り込む。
「それにね、ヒカルちゃんはもう相思相愛の相手がいるんだからね!」
ウンウン、そうだねーボクには優っていう最愛の奥さんがいるものねー。
ガーンと、わかりやすいくらいにショックを受ける壮太くん。
「そ・・・それは、そんな・・・」
ちょっと可哀想になってきてしまい、「そのへんでいいんじゃ…」とボクは友里の肩に手を伸ばしかけたんだけど、友里の爆弾発言はまだ終わっていなかった。
「ヒカルちゃんはあたしと付き合ってるんだからっ!!!」
その場にいた、全員が凍り付いた・・・。
「「「ええええええぇぇぇぇぇぇっ?!!」」」
なかなかお出かけできません・・・
次回こそお出かけするつもりです。
感想、ブクマなどしていただけると小躍りします。