戦乙女襲来
微妙に短いのは区切りが悪かったせいです。
「ル、ルディアが乗っ取られたってこと?」
「そうだにゃ!さっきからそう言ってるにゃ!守護者にあるまじき事態だってお母様が激おこにゃ!!」
「まさかの予感的中・・・あは、あはは」
「真理ちゃん気をしっかり持って!カレーでも飲んで落ち着く?」
優が何やら具を足してグルグルかき混ぜてるカレーを、スープ用のカップに注ぐ用意をしながら真理ちゃんに勧めようとしてる。
「いえ、流石にもう入りません。あとカレーは飲み物じゃありませんよ?」
真理ちゃんの中では飲み物じゃないらしい。さすが大人の女性だ、友里とはちがうね。
「しかしルディアはそんな心配ないんじゃなかったの?エレス」
『流石のどじっこ属性ですね・・・本体部分は私と同じような構成なので、乗っ取ることはできませんが、そのボディーはご主人様と違って、金属の集合体ですから当然隙間が出来ます。恐らく身体だけ乗っ取られて本人は動かせない身体から脱出することも出来ずに、今頃相当焦ってるんじゃないでしょうかね』
机の上に置かれた瓶の中の金属片を見る。
確かにこれルディアの部品に紛れてても、わかんないかもしれないね。
「どちらにしても、厄介な相手が敵に回ったと言う事ですね・・・はぁ」
「まあまあ、真理ちゃんそんなに気に病むことないよ」
「・・・なんでですか?」
「まあ大国があんな状態になった以上、ルディアが乗っ取られることも想定してたじゃない。ボクが乗っ取られたって言うなら話は別だけど、所詮ルディアだしね、負ける気が全くしないよ」
まあ、こっちに攻めに来る前に大国がえらいことになっちゃいそうだけど。
「それにしても次から次へと、色んなトラブルが起きるわねぇ。ここのところ平和だったしわ寄せかしら?」
「そんなしわ寄せはやだなぁ。でも今回の敵が侵略者かどうかはわかんないけど、明らかに今ままでと違って、知能的なものを感じるよね」
「ですね。このサンプルからは一応今までの侵略者と同じような成分の物質も検出されたんですけど、どうもまるで同じ物質ではないらしんですよ」
「へえ、そうなの?」
「はい。何か人のDNAに近いものが混じりこんでるんですが、染色体は人間のそれじゃ無いらしくて、研究班も頭を抱えてました」
「人間じゃないけど、それに近いって・・・サル?」
「いえ・・・どちらかというと、新人類のほうがしっくり来るかもしれません」
「えー、それって進化した人類が、すでに地上にいてそいつらが後ろで手引きしてるってこと?」
「ええ、今回の敵の攻め方から考察すると、まだそう考えたほうがしっくりくるらしいです」
新人類・・・それってなんか頭はよさそうだけど、すごい貧弱なイメージしかない。でもそいつらがこの金属片みたいなのを操って、そこら中に潜入しちゃってるとなると厄介だなぁ。
だってもしこの場所とかがバレたら直接攻めてくるかも・・・とそんなことを思いながら、もう一度瓶の中の金属片を見る。
「ねえ、真理ちゃん。コイツってホントに死んでるっていうかもう動いてないよね?」
「ええ、その個体は高圧電流流したり、塩酸に漬けたり、電子レンジでチンしてみたり、液体窒素の中に漬けたりしてみて、完全に沈黙してから2日ほど経過して1ミクロンも動いてないの持ってきましたから大丈夫ですよ。流石に私もココが相手に知られたらと思うとぞっとしませんからね。その瓶もただの瓶に見えるかもですけど、中からは外が見えないようになってますし、電波も完全に遮断する物質で出来てますので安心してください」
ずいぶんとエグイ実験してるなぁ、そんな環境で生きていられるのはクマムシくらいなものだろうね。
「ちなみに私はどんな環境でも生き残れるように、クマムシにも寄生してるにゃ!世界が滅んでも生き残れるにゃ!」
突然、猫缶を夢中になって食べてたアニマが自慢げに言った。まさかの身内に不死身生物いました。
「とりあえず、ボクひとっとびしてルディアのとこ行ってこようかなぁ」
「一応国家公務員の前なので、堂々と不法入国宣言はしちゃダメですよ?黙って行くのはもっとダメですけど」
「確かにルディアが被害出す前にスクラップにしちゃったほうがいいかもねー、だってあの子が暴れたら守護者の風当たり強くならない?せっかくアイドル化でみんなから好印象なのに、やっぱり人類の味方ってわけじゃないんだ!とか言いそうじゃない?」
「あー確かにそれはあるかもですねぇ。そうなると早急に許可を取って、乗り込んだほうがいいのかもしれませんね」
着々とルディアのスクラップ計画が進んでるような気がする。ルディアってば自力でなんとかしないと、ホントに壊されるよ?ボクにだけど。
「ところで、ニュースでルディアが暴れてるとか、やってないの?」
そう言いながら、友里がリモコンでテレビを点ける。
そこには人がごった返す都会の大きな交差点のビルの上で、珍妙な二人組が映っていた。
一人はちょっとゴスロリとボンテージを合わせたような恰好をしていて、髪の毛は燃えるように赤く、顔部分には舞踏会に出るようなマスクをした女性が「オーーッホッホッホッホッホ!」と高笑いをしている。もう一人は青みがかった髪の毛でメイド服に身を包み、同じく顔部分は銀色の少し大人しめのマスクをした少女が、女の傍らに付き従っていた。
なんだかカメラに向かって何か言ってるようだ。
「我々は、新たにこの世界に君臨すべき現れた!我らの事は『真』の侵略者の意味で『真略貴族』と呼ぶがいいぞ!!オーーーッホッホッホッホッホ!!」
テレビを見ながらボクらはポツリとおんなじことを言ってしまった。
「「「「名前だっさ・・・・・・」」」」
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「まずイ事になったわネ・・・」
私は自由を奪われた身体の中で、何故こんな事になったのか思い返す。
確か電脳世界から帰ってきて、軍曹さんに電脳世界であった事と、虫みたいなやつらに襲われたことを話して、ちょっとエネルギー使いすぎて疲れちゃったから寝たのよね・・・私。
目を覚ました時には、ほとんど施設内の虫は見つけ出したらしくて、ゴタゴタのほうはほとんど片付いてたのよね。私はバラバラになっちゃった体の部品に向かってケーブルを伸ばして、元の身体になる様に組み上げたのよね。たぶんだけど、この時にあいつらが紛れてたのよね・・・部品の中に。
組み上がった時は特に違和感も無かったんだけど、少しづつ体の自由が無くなっていく感じがして、おかしいと思った時にはすでにこの状態・・・。どうしよう、言葉も話せないし自由も利かないから、基地内の人たちに乗っ取られたことを知らせることも出来ない。
たぶんだけど、姉様たちにはすでにお母様経由で知られてる可能性がある。お母様ってば普段大雑把なくせに、こういう時だけはこまめにチェックしてて、しかも異常があるとすぐに連絡が姉妹の所にいくのよね・・・だからある意味心配はしてない。してないんだけどー、してはいないんだけどもー・・・
ただただ恥ずかしい。
そう例えば、授業参観とか見に来たであろう親に、授業中に居眠りしてただの、当てられたけど答えられなかっただの、家に帰ってきてから夕飯の時とかに家族みんなに報告されるみたいな、そういう類の恥ずかしさね。
まあ、いまさら失敗したことを悔やんでもどうしようもないので、どうせ身体は勝手に動かされてるし、暇なので今の状態でもできることを探そうかしら。
身体が動かないのは、きっと運動管理系の回路に入り込まれたからなんだろうけど、ケーブルすら自由にならないのは何でかしら?これは運動管理の回路とは別に組んだはずなんだけど・・・動かないってことは部品に紛れてたのが一匹じゃないってことかしら?なんか考えたらゾっとするわね・・・自分の体の中にたくさん紛れてる虫。
うわーやだやだー回路が繋がってたら、今すぐにでも身体をキャストオフしてバラバラにしたくなってきたわ。でも今の状態じゃそれも叶わないから、心の中で悶えるしかできないのが歯がゆい。
とりあえず視覚や聴覚の情報は入ってくるから、身体が大人しくしてる間に外と連絡を取りたいんだけど・・・んー?なんかそういえば衛星経由で一本だけ繋がってるラインがある?
これってばあの子の携帯と繋がってるラインね!そっか私ってばあの子と直通の連絡通路作っておいたんだった!ぐっじょぶ過去の私!よしよしとりあえずあの子に連絡入れて、姉さんたちにコンタクトを取ろう、そうしよう!
ルディアは心の中ではカタコトになりません。
少しばかりモチベーションが下がってます。
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