再始動5
久しぶりに主人公登場です。
「なんかそこらじゅう大変な事になってるねー」
ボクはテレビのチャンネルを変えながら、キッチンで夕飯の準備をしてる優に話しかける。
「そうねぇ、今のところライフラインに関係する施設とかは襲撃されてないみたいだけど」
テレビには某大国の国防総省の本部から、煙がたなびいてる様子が映し出されてる。
「ルディアって普段ここにいるんじゃなかったっけ?」
「確かそのはずだよー」
何故かソファーに座っている、ボクの太ももの上に頭を載せてる友里が答える。ちなみに正座してる所に頭を載せてるわけじゃないので、膝枕には含まれません。
「だいじょぶなのかね?」
『まあ、何か異常があって対処しきれなければ、泣きついてくると思いますよ。ご主人様』
「そういや守護者同士はテレパシーみたいなので連絡とれるんだっけ?」
『まあ厳密に言うとテレパシーと言うよりは、お母様経由の業務連絡みたいなものですが』
業務連絡・・・なんか世知辛いね。
「ルディアもだけど、真理ちゃんのとこだって大変なんじゃないの?」
確かに防衛隊もニュースになってたねー、でもアレはなんかもう収まったとかなんとかいってなかったっけ?
「真理ちゃんなら、すぐにでも電話かけてきそうなもんだけどね」
そんなことを話してると、キッチンの方からスパイシーな香りが漂ってくる。今日は土曜日だからカレーかなー、優も今日は休みだから手の込んだの作ってそうだし楽しみだなー。
「そろそろ出来上がるから、手洗ってサラダのボウルとか小皿用意してちょうだい」
「「はぁーい」」
ボクと友里は立ち上がると、優の後ろにある食器棚からお皿やスプーンを出して、ダイニングテーブルに並べる。
「あれー、福神漬けないや」
「あら、買ってくるの忘れちゃったかしら?そっちの棚にストックなければ無いかもだから、あきらめてちょうだい」
ボクはストック棚の方を探してみるけどやっぱりない。まあボクは無くても平気だからいいけど。
「真理ちゃんがいたら騒いでたかもねー、福神漬け大好きだからね」
そんなことしてるうちに、盛り付けられたカレーが友里によってテーブルに並べられる。みんながテーブルに着き、「「「いただきまーす」」」と食べ始める。
「んーなんだこれーおいしいー!」
「ほんとだーなんかすごい柔らかいけどしっかりしたお肉?が入ってるよ。ママこれなんのお肉?」
「んふふー今日のはねー時間があったから、牛筋を圧力なべでトロトロになるまで煮込んで、その出汁から灰汁をしっかりと取って透明なスープを作ってから、そこにお野菜入れて、また圧力なべで煮込んで、その半分の具材を潰したものにカレー粉混ぜてルーを作ってから、残り半分の具材と牛筋を一緒にして弱火でコトコト煮込んで出来たのがこのカレーよ」
すごーい!めっちゃ手間かかってるー。なんかカレーの表面が金色にキラキラしてるよ?なんかカレー専門店とかで、あのへんな形の器に入って出てくるカレーみたい。あれって昔からあるけどなんていう器なんだろうね?
「これはまさに『カレーは飲み物』って言ってもいいカレーだね!ママおかわりー」
はやっ!ボクが感動してるうちに、友里のやつ食べ終わってる!?しかもあんまり女の子が言わない方がいいと思われるカレーの認識、『カレー=飲み物』の方程式が出た!
「あらあら、そんなに焦って食べなくても無くならないわよー、寝かして二日目のカレーも食べたいからいっぱい作ったもの、うふふ」
おおー、明日は熟成カレーだね。たぶんカツカレーになると見た。さらに三日目まで行くと、カレーうどんに進化するのだけど、まあ三日目まで残るのは稀かなー。
ボクがそんな明日明後日のカレーに思いを馳せてると、『ピンポーン』と呼び鈴がなった。
「あら、こんな時間にお客さんなんて珍しいわね」
時間はまだ午後6時半。確かに今日は土曜だから郵便屋さんが来るには遅いし、宅配の不在通知が有ったわけじゃないから再配達の可能性もないはず。残る人間は真理ちゃんか友里の友達しかいないんだけど、優もおんなじこと考えてたらしく、その人物の名前が出た。
「噂をすれば、真理ちゃんかしらー?カレーの匂いを嗅ぎつけたのかしらね?」
そう言いながらパタパタとインターホンの画面を覗き込むと、そこには予想通り真理ちゃんがいたらしいので、みんなでご飯を一時中断して玄関に真理ちゃんを迎えに行く。もうほとんど家族の扱いだねー、流石我が家の長女枠は伊達じゃない。
「「「いらっしゃーい」」」
それでも一応「おかえりなさーい」と言わない辺りは、お客様扱いっぽい。
「こんばんわ・・・こんな時間にすみません。あ・・・いい匂い」
入ると同時にスンスンと鼻を鳴らして、カレーの匂いを嗅ぎつけたらしい。
「夕飯食べたの?食べてても食べるわよね?特性牛筋煮込みカレー♪」
食べてても食べるっておかしくない?まあ真理ちゃんって意外と食べるからダイジョブだと思うけど。
「なんですか?その凶悪に美味しそうな名前のカレーは、もちろんいただきます。夕飯どうしようかと考えてたんですけど、なんか今日は土曜だしカレーのような気がしてきちゃいました」
やっぱりかぎつけてたのか。
「ハイハイ♪じゃあ上着脱いで、手を洗ってきてねー」
そう言うと、優は真理ちゃんの分のカレーを盛り付けにキッチンの方に行く。真理ちゃんは、いつも自分が上着をかける所にあるハンガーに、スーツの上着を脱いでかける。スーツの上着脱ぐとワイシャツになっちゃうから、結構セクシーな感じになって目のやり場に困るんだけどね、真理ちゃんお胸が結構あるし。
友里が真理ちゃんの分のスプーンと、サラダの取り皿を用意しながら大事なことを思い出した。
「あ、真理ちゃん!大変福神漬けないんだよ!」
そういえば、さっきその話してたとこだったじゃんねー、まあ真理ちゃんも一回位無くても・・・
「あ、大丈夫です。そんなこともあろうかと、来るときにスーパー寄って買ってきました。大体この家の福神漬け、この間のカレーの時に私が食べつくしたはずなので・・・」
食べつくしたと自白したのが恥ずかしかったのか、少し頬を染めながら真理ちゃんはバッグの中から福神漬けを3パックほど出してきた。
「2パックはストックに入れといてください」
「あらあら悪いわねー、かえって気を使わせちゃったかしら」
「いえいえ、私も自分の好きなの買ってきてますし、気にしないでください」
そういうと真理ちゃんは、優が蓋つきの容器に入れ替えてきた福神漬けを、カレー皿の隅っこの方にモリモリと乗せていた。そしてカレーを口に運ぶと美味しさに感動しつつ食べていた。ちなみに四杯も食べてたよ。熟成カレーの分残るのかな・・・、まあいいけど。
みんなおなかいっぱいになって、真理ちゃんとボクはリビングでソファーに向かい合わせに座っている。キッチンの方では友里が食器を洗っていて、ダイニングテーブルでは優がコーヒーを飲んで一息ついている。
そんな真理ちゃんバックの中から、瓶の様なものを取り出してボクの前にコトリと置いた。
「ヒカルちゃんこれってなんだかわかりますか?」
ボクは瓶を目の前まで持ってきて中身を見てみると、そこには銀色の薄べったい六角形の金属片の様な物が入っていた。少し瓶を振ってみるとカラカラと底の方で転がっている。
「んーなんだかわかんないけど、なんかの部品?」
『不思議な構造体ですね、こんな小さな金属片なのにまるで生物の様な積層構造を観測できます』
「へーそうなの?生き物なの?これ」
「実は・・・これが今回基地で起きた騒動の原因といいますか、正体といいますか・・・」
なんか喉につかえた物言いだね、真理ちゃんにしては珍しい。
「じゃあコレが基地で悪さしたってこと?」
「ええ、私も偶然最初の一匹を見つけたのですけど、基地内をくまなく探したところ、捕獲出来ただけでも10匹ほどいまして、恐らく総数的には100匹くらいいたんじゃないかって・・・」
「ええー気持ち悪いねーこんなのが100匹って・・・どっから入ってきたの?」
「それがわからないんですよね。私が偶々見つけた差出人が書いてないパッケージ封筒が怪しいんですけど、それが置いてあったのを誰も気づいてないし、いつそこに置かれたのかも誰も知らなかったんです。もちろん封筒自体も調べたんですけど、指紋も何もでてこなかったんですよね。まあ厳密に言えば、私が触った時に付いた私の指紋は出てきたんですけどね。出所不明のものは素手で触るな、危険なものだったらどうするんだって、鑑識の人にめっちゃ怒られました」
よくテレビの刑事ものでも、すぐビニール袋みたいのに入れてるもんね。ああいうの刑事さんっていつでも持ってるのかね?あれはドラマの中だけの話なのかな?
「まあ、その中に入ってきたとしても、誰がそんな事したんだろうね・・・。まさか大国で起きてる騒ぎも、これが原因なのかな?」
「ひょっとするかもですけどね。まだ情報がこっちまで流れてこないので、何とも言えないんですけど・・・でもなんだか嫌な予感しません?こいつらって機械の不具合起こしたり、ハッキングみたいな事してたんですよ?」
「ハッキング・・・」
「あそこには一番操られちゃいけないモノがいるじゃないですか・・・」
「エレス、ルディアってハッキングされるのかね?」
『腐っても守護者ですからね、操られるなんてもっての外ですけど。でもあの子って割とドジっこ属性が強めなので、自分から相手の領域に意気揚々と踏み込んだ挙句返り討ちにあって、ついでに乗っ取られるなんて事になってたら、もう笑うしかないですよね、ホントに』
「うわーめんどくさそうだねー」
「ヒカルちゃん、もしルディアが乗っ取られて襲い掛かってきたらどうするんですか?」
んーどうするって言われてもなぁ・・・
「まあとりあえずスクラップにしちゃうかな?ルディアに負けるとは思わないし、むしろ負けろって言うほうが難しいと思うよ?性能の差からいってもね」
「そ、そんなに違うんですか?戦闘力」
「んーそうだねー。たぶんボクがその気になったら瞬殺できるかな、何もさせずに勝つ自信はあるね」
『過信は禁物と言いたいところですが、まあそれくらいの性能差はありますね。飛行速度だけでもあの子の五倍は出せますしね。力に至っては、所詮機械の強度ですから比べるまでもないですね』
「ところでこれってもう動かないの?」
ボクはそう言いながら、再び瓶の中身をカラカラと振ってみる。
「ええ、なんか見つけた時に侵略者研究のチームの所に調べてもらいに持ち込んだんですけど、最初はどの個体も元気よく動き回って、挑発じみた行動で所員を煽ってたらしいんですけど、一晩経ったら全部の個体が、ただの金属片になってたらしいんですよね。中の構造自体はそのまま残ってるので、さっきエレスが言ってた様に、生物の様な構造が残ってるんだと思います」
「なんか侵略者だとしたら、今までとやり方が全然違うよね・・・。なにがやりたいんだろう?主要な軍事施設の乗っ取りにしては、混乱は起こせても乗っ取れてないしね。ちょっと気持ち悪いね」
「ええ、そうですね。とりあえずまた何か進展があったら知らせますね」
「うん、わかったよー」
りんりんりん りんりんりん りんりんりんりんりんりんりん
「お?」
「たいへんにゃー!」
「アニマってばなんか久しぶりだけど語尾はそれでいいんだ?」
「そんなことはどうでもいいのにゃ!たいへんなのにゃ!!」
「なにが大変なの?」
「ルディアが敵の手に落ちたって、お母様から業務連絡がきたにゃー!!」
「「ルディアェ・・・・・・・・・・」」
ボクはフラグ回収に呆れて、真理ちゃんは口からエクトプラズムみたいなの出てた。
ルディアのスクラップは確定カナ?
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