再始動
ホントにひさしぶりに投稿すみません
正午過ぎ、防衛隊本部もさすがにお昼時はまったりムード。
我らが田村女史も食堂で、B定食(唐揚げ5個、ミニうどん、漬物取り放題、ライスお代わり可)を
しっかりとウエストの引き締まったお腹に収め、湯呑のお茶を余韻に浸る様に飲んでいた。
「はぁ、それにしても最近暇だなぁ…」
そんな独り言も出ちゃうくらい侵略者の活動もなく、平和な日々が続いていた。
でもそんな独り言言っちゃうからフラグも立つわけで。
ビーーーーーーーッビーーーーーーーーッビーーーーーーーーッ
突如本部全館に響き渡る緊急アラートの音。
「ぶふぅっ!!」
思わず田所女史も飲んでいたお茶を吹き出すと、何処からともなく後輩女子隊員が現れ
「先輩だいじょうぶですか!?今お拭きしますね!!」
と言いながら、持っていたハンカチで田所女史の顔を、さりげなくササっと化粧を落とさないように拭き、それをどこからか取り出したジップロックにキュっと手際よくしまい、シュシュっと紙ナプキンを引き出すとテーブルの水滴を一滴も残さないように吸い取り、同様にどこからともなく取り出したジップロックに丁寧にしまい込むと自分の内ポケットにしまい込む。
「あ、ありがとう。でも、そのジップロックどうする…」
と言い終わる前に後輩女隊員は、ピシッと良い角度のお辞儀をして、何故か小さくガッツポーズをしながら食堂を出ていくが、その後をギラギラと眼を光らせた、他の女子隊員が何人か足早に追いかけていくのを、田所女史は唖然と見送ることしかできなかった。
そしていまだに鳴り響くアラートにハッと我に返ると、湯呑を食器返却の棚に置いて、食堂のおばちゃんに「ごちそうさま!」と告げ指令室に足早に向かう。
田所女史が指令室に入ると、部屋中にあるモニターやパソコンの画面が、非常時を示すかのように赤く明滅を繰り返しており、オペレーター隊員たちが右往左往していた。
近くのパソコンに近づき、そのモニターを覗き込むと、画面には未だに異常を示すメッセージログが広がり続け、明らかにサーバーに負荷をかけていることが解る。
防衛隊にあるサーバーは流石にそんなに柔ではないけれど、それでもこの異常をどうにかしないと、何かが起きた時の対処ができなくなってしまう。
とりあえず近くの端末で操作している女子隊員に声を掛けてみる。
「ねぇ、一体何が起きてるの?」
「よくわからないんですが、突然ハッキングされたかのように全部の端末がおかしくなってしまったんです。ここって独立したシステムになってるから外からハッキングなんてできないはずなのに…」
「じゃあ内部の者の犯行ってことなの?」
「そうとしか思えないけど、ウチの隊員でここにいる人達以外でそんな器用なことできる人って、そうそういないと思うんですけど」
田所女史は思い返す。そういえば個々のオペさん以外って大体脳筋な隊員ばっかりかも、と。
「それじゃあ何が原因で…」
と周りを見回すと、デスクの上に置かれている見慣れない封筒に気が付く。田所女史はその封筒を手に取ってみるがまだ開けられていない。差出人はと表を見るが、何も書いておらず、よく見ると消印もついてなかった。不審に思い封筒の上からそっと押さえてみるが、何かが入ってるような感じではない。しばらく考えた末に近くに有ったカッターを手に取ると、スーッと封筒の入り口じゃない方を切って中を確認してみた。
「ん…?何も入ってない…?」
白い紙の上にトントンと何度かしてみるもやっぱり何も出てはこなかった。不審に思いつつしばらく封筒とにらめっこしている田所女史だが、ふと目の前のパソコンのファンの隙間に何か動くのを見つけた。じーっと見ていると何か小さなクモのようなものが這い出てきてデスクの上を移動し始めた。
「これって生き物じゃない?」
つぶやきながら田所女史はセロハンテープをビーっと切り取り、見ているこちらに気づかないクモのようなものにペタリと上から張り付ける。ソレはセロハンテープにくっ付けられてしばらくもがいていたが、田所女史の視線に気づくと、気まずそうにふいっと視線を逸らすような仕草をした。
明らかに怪しすぎる、しかもクモなのにメタリックだし。
「まさかこいつの仕業なの?ちょっとみんなきて!!」
指令室のオペさんたちに声をかけると、皆手を止めて集まってくる。
「こいつが今パソコンから出てきたから、捕まえてみたんだけど、怪しくない?」
一人の男性隊員が田所女史の持つセロハンに顔を近づけて、そこにくっついてモジモジしてるものをよく見る。
「こいつは・・・クモ?なんですか?なんか人間味があるというか銀色だし・・・」
「わからないけど、ここに怪しい空っぽの封筒があって、こいつがパソコンから出てきたのって少なくとも、無関係じゃないと思うんだけど」
「どうするんですか?こいつ」
「とりあえず、侵略者研究室に持ってって、分析してもらおうかと思って、みんなはそのまま続けつつ他にもこんな感じの怪しい虫いたら捕獲しておいて」
「「「了解です」」」
そう言って、田所女史はセロハンに所在無さげにくっついたクモに似たものを、逃がさないように注意しつつ、分析してもらうために研究室に向かった。
キリが悪かったので短めですみません。