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最大級の危機

1ヶ月以上空いてしまったです。

申し訳ありません。

 エレスとちょっと微妙な空気になりながら、ボクは出口のある方向を目指した。

 まぁ目指したって言うよりも、左手首から伸びている炭素ワイヤーを巻きとりながら進んでるんだけどね。


 出口が近いのか、ワイヤーが虚空のある場所からぷっつりと切れている。

 あそこからを境に地球側に出られると思うと、少しばかりホッとした気持ちになる。


 境界線まであと数十メートル位まで来たところで、背筋を何か冷たいものが通りすぎた気がして、ボクは後ろを振り返った。

 そこには相も変わらずこちら側の、真っ暗な景色が広がっている。

 ・・・いや、なんか暗いっていうよりも黒い?


『ご主人様、大変です。先程地平線で動いていた個体と、同種らしき生物がこちらに急速に近づきつつあります』


 どうやらボクが黒いと感じたのは気のせいじゃ無かったらしい。

 あまりの巨大さに、輪郭が視界に収まりきらなかっただけみたい。


「あのでっかいのも加速空間で動けるってこと?」


『ええ、先程の餓鬼モドキよりも遅いのですが、動けるようです。ただ何せサイズが違いすぎますので、此方が指先を動かす程度の動きでも、あのサイズになると数十メートルから百メートル程の動きになると思われます』


 こっちもそれなりのスピードで動いてるのに、闇の顎から放たれる圧力は変わることがなく、それどころか増し増しになってる位だ。


「これ・・・このまま地球側に出たらあいつも一緒に来ちゃうよね?」


『恐らくは。あれだけの質量ですから止まるのも困難かと思われます』


 やばいじゃん!なんとしても止めなきゃだけど、これだけのサイズ差だと、もう人間とアリンコどころじゃなくて象とアリンコ位じゃないかな・・・攻撃効くの?


『恐らく精霊力を使わない質量兵器などの攻撃では、あの巨体ですと蚊が刺したほどにも感じないと思われます』

 

「精霊力使ったら止められる?」


『・・・すみません、使っても微妙な気がしてきました』


 ダメじゃん!とりあえず追い付かれそうなこの状態を何とかしなきゃ・・・。

 

「エレス、もっと加速するよ!とにかく追い付かれないうちに向こう側に行かないと」


 ボクはスーツに外骨格を纏わせて強化して、更に加速状態のギアを上げるために能力値を、500倍まで一気に引き上げる。


「くうっ・・・!!」


 身体中の筋繊維が悲鳴を上げるかのような痛みが、一瞬身体を駆け抜ける。


『ご主人様!大丈夫ですか!?ああっでもその苦しげな表情もまたご主人様の魅力を一層引き立てますねっハァハァ』


「こんな時でもホンとブレないな!」


 でもツッコミのせいかどうかわかんないけど、少しばかり痛みが和らいだ気がする。


『わ、私はこれを狙ったんですヨ?』


「絶対嘘だ!最後疑問系になってるもん!」


 初めて500倍まで上げてみたけど周りが暗いせいでよくわからない・・・でも加速状態特有の粘度が高い液体の中を動くような状態が、更に粘っこい感じになった気がする。

 迫っていた巨大な影も徐々に離れてることから、流石の体格差でも200倍の差は埋められないらしい。

 さっきまで遠く感じられた境界線も、すぐそこにある。


 ボクは勢いよく地球側に飛び出す。


 途端に飛び込んでくる色鮮やかな景色に、少し目眩を覚えつつも、再び境界線を睨み付けて精霊力を集める。


 ・・・あれ?いつもみたいに精霊さんたちが集まってこないよ?なんで??


『それはですね。いつものように精霊力を纏った状態で加速状態に入らずに、言わば精霊の真空地帯で加速状態に入ってしまったため、精霊とのタイムラグが出てしまっているのです』


「えーっと、って言うことは?」


『一旦加速状態を解く必要があります』


「じゃあ、一旦倍率下げ・・・」


『それはしない方が賢明かと思われます』


「なんで・・・あーそう言うこと!?」


『そうです。解いた瞬間に境界線を越えてヤツは飛び出して来ると思われます』


 だよねー、アイツ加速状態でも近づいて来たんだもんね。

 これって詰んでない?もう打つ手無くない?


「例えば一瞬加速状態を解いて精霊を呼んで、すぐまた加速状態に入るっていうのはダメかな?」


『恐らくその一瞬でヤツは出てきます。それにヤツを置き去りにする倍率まで一瞬で上げるなんて、身体にかかる負担が大きすぎてお勧めすることはできません』


「それでもやらなきゃ・・・」


『それにその一瞬で集まる程度の精霊力では、境界線の磁力場を打ち消すほどの強い力は望めません』


「打つ手なしってこと・・・?」


『私が迂闊でした。向こう側のことなど気にせずに、さっさとご主人様にこちらから磁力場を打ち消してもらっていれば・・・』


「エレスのせいじゃないよ、ボクだって向こう側があんなだって判った時に、近寄らないでさっさと戻って壊しとけば良かったんだ」


 ボクは富士山の麓の辺り、恐らく真理ちゃんがいるであろう付近をチラッと見て申し訳ない気持ちになる。


『ご主人様、どうせならダメ元で提案が有ります』


「ダメ元ってスゴいな!どんな案なの?」


『加速状態を解いて精霊力を集めて一気に磁力場を打ち消して、境界線を消してしまう方法はどうでしょうか』


「でもそれだとアイツが・・・」


『ええ出てくるでしょう。しかし境界線が閉じたら、いくらヤツでも首チョンパ出来るんじゃないでしょうか!名付けて"次元首チョンパ!"です』


「ネーミングセンスが壊滅的だね!まあその首が落ちたら富士山頂も壊滅的なダメージ受けそうだけどね。ちなみにアイツ首だけで生きてるってことないよね?」


『・・・まあもし、それでも生きてたとしても、体ごと来なければなんとでもなりそうな気がしませんか?』


「ははは・・・まあどっちみちいまの状態じゃ詰んでる訳だしやるだけのことはやってみよっか」


 とりあえず、飛び出してきたヤツにいきなりぶちかまされたらたまらないので、境界線の下からちょっと外れた所に移動する。


「ここら辺ならダイジョブかなー、よし!倍率下げるよ」


『私は精霊力運用のプログラムを用意します。ご主人様、集めるのは空の精霊力でお願いします』


「りょーかい!」


 少しづつ倍率を下げていくと、少し薄暗く感じていた周りの景色が少しづつ明るくなっていく。

 それと共に、境界線の向こう側から物凄い圧力を感じとることができた。

 空間が悲鳴を上げてるんじゃないかと思うような、震動が肌を震わせる。

 

 そしてヤツがついに境界線を越えてこちらに現れた。


 太陽の光に照らされたヤツは、此方に来てもやっぱり漆黒のままで、黒いガスのようなものが全体を覆っている。

 顔?だけだろうけど、その直径は200mはあるだろうか、そりゃ体がなんキロにもなっちゃうわけだよ。

 眼と思われる感覚器官が横に四つほど並んでいて、其々がギョロギョロと別の方向を見てるみたいだ。

 先端から顔の中ほどまで裂けた口らしきものは歯も何も見当たらないけど、鯨でも丸飲み出来ちゃいそうなサイズだ。

 

 おっと、悠長に観察してる場合じゃなかった。


 ボクは空の精霊力に意識を集中させて、これでもかって言うくらいに高めていく。

 外骨格が紫色に染まって、身体中を紫電が駆け巡る。


「はあああああああぁぁぁぁぁっ!!」


『プログラムをスタートさせます』


 ボクの周りに、よく漫画とかである積層型魔方陣みたいなものが浮かび上がる。

 そして体から迸る紫電が地表に、影響を与え初めて砂のようなものが空中に漂い始めた。


「これは砂鉄?」


『そうです、電流を操作して砂鉄で大きいコイルを作って磁力場を形成します』


「スゴいね!よくそんな方法思い付いたね」


『はい、某電磁砲のビリビリ女子の能力を参考にしてます』


 ああ、そういえば砂鉄操ってたなぁ・・・。


 だけどそんな大きい動きをしてるボクらを、ヤツが見逃すわけ無かった。


 4つ眼のひとつと目が合っちゃった。


 ヤツの口が微妙に笑みの形に歪んだ気がする。


「やばっ・・・」


 っと思った一瞬でヤツはその口を大きく開けて、ボクを飲み込もうと目の前まで迫って来ていた。


 これは、ダメかもーと思ったときだった。


 ヤツがピタリと止まった。


 その全身(顔だけだけど)から煙のようなものが出始めて、苦し気に太陽の方を見つめた気がした。


 そしてその体表から闇を纏っていたようなガスの様なものが消え去り、その下から骨に皮を張り付けたような、本体が現れる。

 病的に青白い皮膚は、太陽の光を受けるとみるみるうちに、赤く焼けただれていき、やがて炭化し始めたのかひび割れてボロボロになっていく。


「日の光に弱いってこと?今まで平気だったのに・・・」


『恐らくは磁力線の影響をうけた境界線の下にいる間は平気だったのでしょう。ご主人様に気づいて向かってきたため、その下から出てしまったのが運のつきだったようですね』


 なるほど、ヤツは今にも死んじゃいそうなくらいに弱々しく、境界線の向こう側へと引っ込み始めた。


「エレス!一気にいくよ!」


『はい、ご主人様!いつでもおっけぃです』


 ボクを取り巻いていた砂鉄がバネのような形に綺麗にならび始める。


 ヤツは、一秒もこちらに居たくないと思ったのか、すでに鼻先が向こう側へと消えていくところだった。


「いくよっ!豪雷電磁嵐!!(テスラテンペスト)


 体から迸る紫電が空を染め上げていく。


『磁力線可視化します』


 富士山の上にあった漏斗状の磁力線を現すワイヤーフレームが、ボクの技で産み出された磁力嵐に、歪められてちぎれ始める。

 そして嵐が収まると空にあった磁力場は綺麗さっぱり消え去っていた。


「一件落着・・・かな?」


『首チョンパ・・・できませんでしたね』


「・・・・・・そんなにしたかったの?」


『技名付けましたのに・・・』


「・・・・・・」



 とりあえず、地上に降りて真理ちゃんに説明しなきゃね。



 地上に降りると、そこは大惨事だった。


 そう、ボクの起こした電磁嵐で、防衛隊の機器が軒並みイカれたらしい。


「いいんですっ気にしないでください!ヒカルちゃんは世界を守るためにやったことですからっ!こんな何億なんて被害のうちに入りませんよっあははははははははははははははははははははははははははははぁー~~~~・・・」


 真理ちゃん、目が笑ってないよ、怖いよう。


 どうやら、ボクが作った磁力嵐は想定してた磁力の数十倍だったらしい。

 人体に影響がなくてよかったー。


 約一名カツラが磁力で剥ぎ取られちゃったお偉いさんが居たみたいだけど・・・怪我(毛が)なくて良かったね。



これからもがんばって更新しますです。

なるべく早めに・・・。

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