トンネルを抜けるとそこは・・・
ほんとに間が空いてしまってすいませぬー。
もうひとつの方も全然書けません。
心配げに見上げる真理ちゃんの顔が、どんどんと遠ざかっていく。
そして入れ替わるように、周りに響き渡るジェットエンジンの激しい音。
『お勤め御苦労様です』
そしてボクだけに聴こえる周波数で、呼び掛けてくるいつものパイロットのメンバーたち。
あれ?でも変だなー今の声ホm・・・副隊長の声みたいだったけど・・・。
良く見たら隊長機いないし、なんかあったのかな。
『あーい、お疲れさまー。ところで隊長さんの姿が見えないけどなんかあったの?』
心なしか副隊長他みんなの間に緊張が走る。
『いや・・・ええとなんと申しましょうか・・・』
いつも理路整然と話す副隊長さんにしては、歯切れの悪い答え方。
なんか事故でも起こしたのかな?
『どしたの?訓練中に事故でも起こしたの?でもそんなことニュースにもなってなかったし、ひょっとして病気で入院とかしてる!?』
ボクの問いかけにしばらく沈黙が流れる。
そして、副隊長さんが重々しくその口を開いた。
『最初に言っておきますけど、けしてヒカルさんが悪いわけじゃありませんからね。今から話す内容はその事を頭に置いて聞いてください。実はですね・・・』
え?なに?ボクのせいじゃないって言ってるけど、ボクのせいじゃないってことは明らかにボクが関わってるってことじゃないの?
緊張から思わずボクの喉がごくりと鳴ってしまう。
『隊長は失恋のショックから鬱になってしまい、ただいま隊のメンタルヘルスケア部署にて、治療中なのです』
・・・へ?失恋?そんな鬱になっちゃうほどスゴイ恋愛してたんだ?隊長さん。
っていうかメンタルヘルスケアって・・・やっぱり国の機関と一緒で心の病にかかる人が多いのかなぁ、割りと好き勝手やってるように見えるけど。
でも、ボクがそんな隊長さんのプライベートなとこに、関わってる事って無いよねぇ、やっぱり。
『そんな事があったんだね・・・そんなにひどい振られ方したの?っていうかみんな知ってるんだ?その相手の人とか』
『???いや、みんな知ってるというか、その場に居合わせたと言うか・・・いきなり相手の旦那さんが出てきたと言うか結婚してたというか?』
『え?不倫?隊長さんないわーそれはダメだよー。相手が結婚してるの知らなかったならまあしょうがないかって感じだけどサー。不倫は結局みんな不幸になるもん。うん』
『あの・・・ヒカルさん』
『なぁに?』
『なんか忘れちゃってるみたいですけど、隊長のお相手は貴女なんですが・・・』
おうふ。
すっかり忘れてた!!そっか!焼肉屋の時のアレのことか!
『えーと・・・忘れてないヨ?』
『完全に忘れてましたよね?そのなんとも言えない間は』
『う・・・じゃあ、やっぱりボクのせいなんじゃ・・・』
『いえ、だからアレに関しては、勝手に自分だけ盛り上がって、本当の事が分かって自滅しただけなので、最初に言いましたようにヒカルさんのせいでは、ほぼありません』
『ほらーほぼって言ってるじゃんー遠回しにボクのせいもちょっぴりあるって言ってるもんー』
だいたい隊長さんボクの事そんなに好きだったの?好かれてるのは告白されたから分かってたけど、そのあとの行動はボクを引かせる一方だったけど?
『いえ、ヒカルさんのせいと言うよりは、旦那さんのせいですかね』
『へ?旦那さんって正臣の事?」
確かにあの時正臣に助けて貰ったけど・・・その後にあった色々のせいで、隊長さんのことすっかり頭から無くなっちゃってたんだよねぇ、悪いとは思うけどさ。
『そう、その正臣様がカッコ良すぎたのがいけなかったんです。これがまだ付け入る隙のありそうな相手なら良かったのですが、パッと見からその後出てくまでの行動だけでも、とてもじゃ有りませんがウチの隊長が敵う訳ありません。私ですら思わず抱かれたいと思ってしまうほどでしたっ』
やヴぁい、攻めの副隊長が受けに転じる程とは・・・正臣・・・恐ろしい子。
ボクは思わず某長期連載中の演劇漫画のように、白眼になった気分だった。
『・・・あなた達、あの時どうも私にルディアを押し付けると思ったら、陰でこそこそとヒカルちゃんを連れ出してたのね。うらやm・・・じゃなかった、懲罰モノね』
『『『た、田所女史!!?』』』
『何を驚いてるんですか、この周波数は私達しか使えないけど、私達にとってはオープン回線と変わらないんですから聞いてて当然でしょう?』
『『『ごもっともです。ハイ』』』
『そんなことより貴方達待機中のハズでしょ?なんでソコにいるのよ』
『ハッ、ヒカルさんだけに危ない事はさせられません。私達も一緒に追従したく、許可を頂きたいです』
『そんなこと許可できる訳『ダメだよ絶対ついてきちゃ』ヒカルちゃん!?』
真理ちゃんが説教し始める前にボクが被せぎみに、ついてくることを否定する。
『しかしヒカルさんは強くても女性です。防衛隊の意地にかけて一人でなんか行かせられません』
『そんなちっちゃい意地は捨てて。ボクだから行けるんだよ。戦闘機が無ければ飛ぶことも出来ないでしょ?あなたたちは』
少しきつめの言い方になっちゃったけど、そうしないとついてきちゃうもんね。
『そうです。貴方達なんて足手まといにしかならないんだから、ヒカルちゃんの心配するなんておこがましいにも程があります。このピーーーー共が!』
『『『ぐっはぁっ!!』』』
真理ちゃんからの、ボクより数段上のきっついお言葉をいただいて、哀れな戦闘機乗り達はすごすごと待機場所に戻っていった。
『ヒカルちゃん、ホンとにあの馬鹿達が邪魔してスミマセン。彼らも遊びじゃないことは分かってると思うんですけど』
『だいじょぶだよ。ありがとね、真理ちゃん。あの人たちなりに心配してくれてたんでしょ、ふふ。まあ割りと緊張も解れたしありがとって言っといて』
『ヒカルちゃんでも緊張なんてするんですね、ふふ。なんか意外です』
『そりゃあ、ボクだって身体はこんなんなっちゃったけど、心は小市民のつもりだよー』
『アハハ小市民って・・・ないない、ないですって』
『もぅ、ひどいなぁ。帰ってきたらひどいんだからね』
『ふふ、そうですよ。ちゃんと帰ってきて、私にお仕置きしてくださいね。ふふ♪』
お仕置きってなんかエロいなぁ。
『おっけーわかったよ。優にきっついのしてもらうから覚悟しといてよね』
『えっ!?奥様のですか??それはダメです!なんか私普通の女の子に戻れなくなっちゃいそうで怖いですもん!』
『ふーんだ、知らないよー。ふふーじゃあ行ってくるね』
『え?あ、ハイ!お気をつけて!!』
見えないかも知れないけど、ボクは真理ちゃんの方に手をフリフリ磁力線が消えてる淵に辿り着く。
「さーって、どうなってるのかなぁ?」
『気を付けてくださいご主人様、観測は続けてますが嫌な予感しかしません。境界線まであと20m程です』
視角上に広がった磁力を表すワイヤーフレームも、確かにそこでぷっつりと切れてる。
「こうやって見上げてる景色はなんにもおかしくないのにねー、この先にホンとに別の次元なんて有るの?」
『モノは試しで何か撃ち込んでみたらどうですか?』
「おお、さすがエレス、ナイスアイディアー。確かにいきなり体ごと突っ込まなくてもいいじゃんね。よかったー言ってくれて。ボク普通に越えようとしてたもん」
『そんなちょっと抜けてるとこも嫌いじゃないですよ。ご主人様』
「むぅー、そんなにどじっ子じゃないもん。んじゃ取り合えず質量の無い火の玉でも投げてみようー」
『おおー頑張ってくださいご主人様』
ボクは右手を空に向けて精霊力を集める。
「ボクにみんなの精霊力をちょっとづつ分けて!」
『ご主人様?いつもそんな事言って・・・あ!』
ボクは3mくらいになった火の玉を投げつけるモーションにはいる。
「くらえっ!元○だ『言わせませんよ!?ダメですよ!そういうのは!!』
「えーせっかくいい感じだったのにー」
『普通にさっさと投げてください。まったく・・・』
「はーい、わかったよーだ」
ちょっと不貞腐れてボクはぽいっと無造作に火の玉を、境界線に向かって投げつける。
ひゅーっと空に向かって飛んでいく火の玉。
ワイヤーフレームが途絶えてる境界線に重なると、その接触面と思わしき部分から玉が欠けていき、最後には「ぽひゅっ」と可愛らしいとも思える音を残して、完全に消えていった。
「おおー消えちゃったねー」
『消えましたね。では次は何か投擲できる様な物質に鎖でも付けて、引っ張って戻してみましょうか』
「んーりょーかい」
ちょっと大きめの返しが付いた槍を生成すると、持ち手の端っこのほうに、炭素ワイヤーをくっつける。
『槍と言うよりは銛って感じですね』
「あーそうかも。なんか引っ掛かるかなぁ?」
『こんなとこで敵か味方かも分からないモノを釣らないでくださいね?ご主人様』
「いくらなんでも釣れないってー」
ボクは振りかぶると勢い良く投擲する。
勢いが良すぎたのか、空気との摩擦で槍は先端を赤熱化させながら境界線に飛んでいった。
今度は火の玉よりもかなり高速で突っ込んだので一瞬で消えちゃったけど、その端にはボクの左手から生成され続けてる炭素ワイヤーが繋がってる。
ワイヤーは左手からしゅるしゅるとどんどん延び続けて、全然止まる様子が無い。
『・・・ご主人様。そろそろ引き戻したほうが良くないですか?かなり延びてますので戻すの大変かと』
確かにもう1km以上は延びてるかもしれない。
「まあ、そんなに大変じゃないけど戻してみようか」
ボクが延び続けていたワイヤーを止めると、槍がまだ飛び続けていたのか、ピンっと張り詰める。
延ばした時の逆手順で、分解しながら巻き取っていく。
ワイヤーはどんどん巻き取られて槍の重みが、その先端に感じ取れる。
「うん、向こうに行っても消えちゃってる訳じゃ無いみたいだね。ワイヤーもどんどん境界線越えて出てきてるし」
『じゃあさっきの火の玉は何処までも飛んでいってしまったんですかね?それとも何かにぶつかって弾けた?』
「きっとまだ飛び続けてるんじゃないの?なんか居たとしたら、槍だってそいつに刺さっちゃうかもだし」
『なるほどそれもそうですね。流石はご主人様です。そろそろ槍も戻って来そうですね』
「そーだねー結構巻き取った・・・しっ!?」
そこまで言いかけたところで、急に槍が重くなったと思ったら、今度は逆に引っ張られ始めた。
『!?ご主人様っワイヤーを切断してください!!』
ボクは答えるよりも速く左手のワイヤーを切ろうとしたけど、引っ張る力はそんなボクらの考えを読むかの様に、一瞬で引っ張り込まれて、あっさりと境界線を越えてしまっていた。
あー失敗したーせめて加速状態にしとくんだった。
一瞬で引き込まれて青空から一転、暗闇の拡がる空間を見渡しながら思ったのだった。
次回はもうひとつの方を更新しないとかも。
いつも読んでくれてる皆様ありがとーございます。
頑張って書きますので、ブクマか評価いただけると、やる気スイッチがオンになるかもです。