それは見事な・・・
だいぶ暖かくなりましたねー(*´∀`)
「それで・・・真理ちゃんはなんでそんな格好に?」
徳田家のリビングにて皆の視線が床に向けられている。
「ね、ねえねえママ。なんで真理ちゃん床に倒れてるの?」
事態の異常さを感じとり、友里が優にヒソヒソと小声で聞いている。
「これはね、五体投地と言って自身の全てを投げうって、神様にお祈りするときにするポーズよ・・・。それにしてもこの大地との一体感・・・見事としか言いようがないわ」
ナゼか微妙な緊張感で盛り上がってる二人だけど、ここリビングであって、地面じゃないから大地とは一体になってないよね?なんてツッコミは口に出さず、とりあえずこんな状況を作り出してる張本人様に声をかける。
「真理ちゃん真理ちゃん、何で五体投地?してるの?」
ピクッと少しお尻の筋肉が動いて、床に突っ伏しているため、見えない顔の辺りからくぐもった声が聞こえる。
「・・・すみません、ヒカルちゃん。私は本来お友達としてこの家の出入りを許されているのであって、防衛隊としてこんなお願いをしに来ていい立場で無いことは解っているのです。だけど、今の非常事態ではそんなことも言ってられない状況なので直接お伺いしてお願いしに来た訳なのです。本当に申し訳ありません」
なにやら大変な事が起きてるみたいだけど、真理ちゃん今更そんなこと気にしてたんだー。
あいかわらずの真面目さだなぁ。
「もー真理ちゃん、そんな昔に言った事まだ気にしてたんだ?もう付き合い結構長くなってるんだから家族みたいなものでしょ?」
「そうだよ、もうウチの長女ポジは真理ちゃんのモノだよっ」
「そうよぉ、ホンと今更よね。ヒカルちゃんの守るリストにはちゃんと入ってるわよね」
なんだ、その守るリストって。
真理ちゃんがガバッと体を起こしてボクの方を見る。
長いこと突っ伏してたせいかオデコが赤くなってるけど、笑っちゃいけない、本人はいたって大真面目だもの、ぷフッ。
「だ、だけど今回ばっかりは本当に何が起こるかわからなくて・・・もしかしたらまた沖縄のときみたいな事が起きたらと思うと・・・」
あークラゲの時のねー、まあおかげでボクは絶対に死なないってことがわかったんだけどねー。
「え?またあのおっきいのが出そうなの?」
真理ちゃんの沖縄と言う言葉に、現地でクラゲを見た友里が反応する。
「わかりません、だけど今富士山頂に現れた磁力場の規模から計算された出口の直径は500mなんです。何が出てくるかは全く想像ができません」
真理ちゃんはカバンから取り出したタブレットに写し出された、富士山頂に出現した漏斗状のワイヤーフレームを見せながら、説明してくれる。
「そのおっきいナニかと戦わせなきゃいけないから、あんな格好してたのねぇ」
「い、いえ。今回の作戦はその『ナニか』が出てくる前に磁力場を乱して穴を繋がらないようにしようと言う作戦なので、まだ戦いまでは想定してません」
「え?そうなの?」
「はい、それに出てきた時点できっと守護者としての使命で動かざるえないでしょうし。だからその前になんとしても潰したいのです」
なるほどー、でもなんでボク?
「その、磁場を乱すのはわかったけどなんでボクなの?」
「それはですね、磁力場の大きさとそれを妨害するための装置を作ってる時間が無いからです。磁力場の規模は数キロにも及ぶので、生半可な機械ではそんな広範囲に磁場を作り出すのが無理なので、ヒカルちゃんならなんとかできちゃうかなーみたいな?」
「すごい投げっぱなしジャーマン的な依頼だねー」
まあ、磁力場って言うくらいだから、空の精霊力の雷とか何かでどうにかなりそうな気はしないでもないけどね。
「ちなみにタイムリミットみたいなのってあるの?」
あるなら急がないとね。
「いえ・・・その辺りが全くわからないんです。すでにホール的な形状にはなってるので、何時何処と繋がってもおかしくは無いのですが、いまだ動きが無いのが逆に不気味と言うかなんと言うかな状態なんです」
「じゃあひょっとしたら、今こうやってる間にもナニか出てくるかもしれないし、ずっと出てこないままなのかも知れないってこと?」
「まあ後者は無いと思いますけど・・・あれだけの規模で現象を起こしてるわけですから」
「まあ、このままにしとくのも気持ち悪いから、出てくる前に邪魔して穴を消しちゃおうってことだよね」
「はい、そんな感じです。・・・できますか?」
「まあ、やったことないから出来るって断言できるわけじゃないけど・・・エレス、シミュレート出来る?」
『はいご主人様。地の精霊と空の精霊を使って逆位相の磁力場を形成してぶつければ、89%の確率で消滅させることが可能かと思われます』
「89%・・・なんでそんな微妙な確率なんです?」
100%なんてなかなか言えないけど、89%は確かに微妙かも?真理ちゃんの不安も解らないでもない。
『それはですね、相殺させてる時に穴が繋がってしまう事があるかも知れないからです。刺激をしたために穴が繋がったという結果も計算されましたので』
なるほどー触らぬ神ってわけじゃないけど、そういう可能性もあるんだねー、ってことは向こうにいる相手はそれを狙って停滞してるって感じなのかな?
「じゃ、じゃあ何もしない方がいいって事ですか?」
『いえいえ、あくまで可能性の話なので。それで何もせず出てこられたらそれこそ目も当てられません』
「エレスはどうしたらいいと思いますか?」
『私はシミュレート結果からあらゆる可能性を考えただけですので、決定を求められてもお答えできませんが、それでも対消滅させられる可能性の方がかなり高いですし、もしナニかが出てきたとしても近くにいる分対処しやすいかと』
「そうだねーまあどっちにしても何もしないわけにはいかないもんねー、取り合えずいってみよっか、富士山頂に」
そう言いながらボクはガッシと真理ちゃんの肩を掴む。
「へ?え?ど、どうやって行く感じですかね?」
「ん?勿論飛んで?あ、二人はお留守番ねー、危ないことあるかもだし」
「あ、あれ?私は心配されてない感じですか?」
「えー真理ちゃん一応防衛隊だし?」
「一応じゃないですよ!ちゃんとした防衛隊ですよ!?」
「じゃぁなにも問題なっしんぐぅー」
そう言ってボクは庭に向かって、なにやら騒いでる真理ちゃんをズルズルと引きずっていくのだった。
がんばって続き書きますので、よろしくお願いします。