そして、奇跡は起こった
「でも、バレンタインイベントって、毎年やってるらしいけど、こんな派手だった?」
「昨日、帰る時、なんかトラック来てるのはわかったけど…」
一夜にして、お祭り会場みたいな露店があるし…
「でも、授業無くて良かった!!」
「俺も…課題やってねー。」
「僕、やった!」
「どうせ、間違い多いだろ?」
俊哉くんに落とされる…
「でも、コンテストってなにやるの?」
「知らーん。普通にしてろっていってたから、いんじゃね?」
「あっ!!愛ちゃーーーんっ!!」
ちょうど、他のお友達と校門に入ってくる愛ちゃんを見つけ、手を振ったら、振り替えしてくれた。
「直樹くーんっ!!」
で、また友達と学校の中へ入っていった。
「そういや、お前と愛って、幼馴染みなんだろ?」
「うん。幼稚園の時から一緒。僕が泣くと、いつも愛ちゃんが慰めてくれたの。」
「おま、そりゃ普通逆だろ!」
ペチンッ…
優樹くんに軽くおでこを叩かれた。
グラウンドからは、なんか演歌が流れてきた。
「カラオケでもやんのか?」
「さぁ?啓祐じゃね?」
「昨日のあの子?」
「あぁ。」
どの教室も賑やかな声が聞こえる。
「お前、幾つだ?」
「わからんけど、去年の倍は、チョコがある。」
「僕もーーーっ!!」
朝、母さんと夏海から貰った2個は、別として、5個もある!!
「これも、コンテストの一部なのかな?」
「わかんないけど、幸せーーーっ!!」
教室を出て、露店を楽しみながらも、優樹くん達は、女の子達から、チョコを貰ってた。
僕も愛ちゃんから、久し振りに…
「投票券あるだろ?」
「うん。3枚貰った!」
「部門に別れて、学年とか名前とか書くだけだろ?」
「らしいな。行きますか!」
で、3人揃って投票会場へ行くと、今度は、クラス委員長の長谷川さんとすれ違って、手を振られた。
「なんか、今日珍しく女子がお前に手を振ってんな。」
「そう?」
「いつもは、愛くらいだろ?」
「愛ちゃんは、幼馴染みだからね!!優しくて、可愛い!!」
「じゃ、そこの机で名前書いて、出口手前の箱に投票してください。」
イベント実行委員の生徒が、声を張り上げて言ってた。
机に向かって、貼られた部門を見る…
「イケメン部門は、優樹くんだ。スポーツ部門は、俊哉くん。大食い部門は、僕かな?」
それぞれに名前を書いて、投票箱に入れた。
「去年と同じだ。」
「でも、今年は、部門の数が多いから、燃えるんだろうな。」
露店で買った物をグラウンドでやってる先生達のカラオケを聴きながら食べたり、色んな女の子からチョコやお菓子を貰った!!
「ほらよ!!」
俊哉くんが、どっかから紙袋を貰ってきてくれた。
「色々見ると、俺、お前に負けてるんだけど?」
「…。」
「たぶん、俺も…」
「そうかなぁ?でめ、みんなチョコだよ?僕、お菓子だもん。ハンカチも貰ったけど…」
二人の奇妙な視線を浴びながら、袋に詰めていった。
「俊哉くーん!!」
「…。」
「あっ、長谷川さんだ!!」
「俊哉?呼んでるぞ?」
「うっせーな。行くよ。」
で、俊哉くんと長谷川さんが、教室から出ていって、ちょっとしたら、紙袋を3つもって戻ってきた。
「これ!やりたくねーけど。」
「ん?」
「あぁ、長谷川?」
「うん。義理だからな!」
「ん?あぁつを!!そうゆう事か!!」
ゴソッ…
「あー、凄い!ゴディバだ!!」
「義理に、ゴディバ?スゲーな。長谷川。」
「俊哉くんのは?同じの?」
「俺…のは…」
ベリッ…ベリーーーッ…
「はっ?なんで?!えっ?!」
「嘘…」
「可愛い!!」
俊哉くんは、長谷川さんか、チロルチョコが12個入ったのを貰っていた…
ピラッ…
「俊哉?喧嘩でもしたのか?これ、落ちてた。」
「あっ!!寄越せ!!」
何が書いてあったのか知らないけど、俊哉くんちょっと安心したらしい。
「そのゴディバ、俺にも食わせろ。」
「やだね。」
「1個ならあげる!僕、愛ちゃんのあるし!!へへっ」
包装紙を綺麗に剥がして、皆で食べた。
「美味しいね。初めて食べたぁ!!」
「うん。」
「うまいな。」
コリッ…
「付き合ってんのか?長谷川と…」
「あぁ…」
「美味しい…」
それを食べて、今度は、コンテスト会場へ…
「なんだ、こりゃっ!!」
「すげー!!」
「去年より、人がいる!」
なんとなく怖くなった。
「コンテスト出場の方は、受付で…」
司会の人らしい人が、言っているのを合図にゾロゾロと受け付けにいって、それぞれの学年に分けられた壇上に上がる。
全員揃った所で、学校長の話やらクロックムッシュさんからの挨拶やらで、僕のお腹が悲鳴をあげそうだった。
「では、始めます…。1年の部から…イケメン部門…本田啓祐くん!!」
1歩前に出ると…
ヒューッ…ピィーッ…
パチパチパチパチパチパチ…
口笛や拍手が鳴り響く…
生徒会長の田辺さんが、たすきをかける。
それが、延々と各部門行われ、2年の部になった…
「では、続きまして2年の部…イケメン部門は、倉橋優樹くん!去年も1位でしたね!!スポーツ部門は、小池俊哉くん!!こちらも、昨年度スポーツ部門で1位でしたね!!さて…おやおや、凄いですよ、みなさーん。」
体育館が、少しザワついた。
¨なんだろう?なんか、凄く視線を浴びてるような?¨
「では、いきます。いかせて頂きます!!」
ゴクッ…
「優しさ部門、癒され部門、大食い部門…」
¨僕、外れたのかー。残念…¨
「えぇーーーーっ!!」
ビクンッ…
¨な、なに?さっきよりも、うるさくなったんだけど?!¨
「あれ?いませんか?相澤直樹くん?」
¨僕の名前?¨
ツンツン…
「直樹、お前だ、お前!!」
訳もわからず、前に出た。
田辺さん、たすきを何本か持って笑いながら、僕の前にたった。
「凄いね。おめでとう!!」
1本1本掛けてくれたけど…
なんで?
「では、次の頑張ってる部門…」
3年が終わるまで、立ちっぱは疲れたけど、お腹が鳴りそうだったけど、我慢した。
「では、これで本年度のバレンタインイケメンコンテストは、終わりです。皆さんに盛大な拍手を!!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ…
『いいぞー!』
『よくやった!!』
『可愛い!!』
『愛してるー!!』
というヤボッたい声を聞きながら、教室に帰ったけど…
「嬉しくなーい!!」
「お前に負けるとは…」
コンテストの影響で、購買に売ってたお菓子やらバレンタインの余り?やらで、数的には、誰よりも勝ったらしい。このクラスで!!
「すげーな。直樹。」
「わかんない。なんで?僕、こんなに太ってるよ?」
「だよなぁ?」
「あっ!!愛ちゃーん!!チョコありがとーーーっ!!」
教室に入ってきた愛ちゃんに手を振った。
紙袋を両手に持ち、家に帰るその姿は、まるで修学旅行の帰り…
クロックムッシュのオーナーが、愛ちゃんのパパってのを初めて聞いたし、いつもありがとうってお礼も言われた。
僕の帰りを待ってた夏海や母さん達は、僕が持ってた荷物を見て驚いたし、僕の話を聞いて大笑いしてた。
それからの僕の生活は、変わんない…
学校に行くと、みんなから美味しい手作りのお菓子を貰って食べてるんだけど…
段々と体重が減ってく…
「ヤバイよな?俺ら。」
「うん。」
「直樹?」
「ん?」
「お前、来年は、絶対出るなよ?」
「うん。出なーい!!愛ちゃんが、なんかそう言ってた。わかんないけど…」
ガサッ…
「美味しかったーーーっ!!」