青天の霹靂
この日、僕は、朝からついていなかった。
「直樹ー、ご飯よー。」
の声で、眠い目を擦りつつ、階段を降りてる途中で…
ツルッ…ズデッ…デンッ…デンッ…
ちょうど、階段下にいた夏海に助けられながらも…
「お兄ちゃん?そこは、普通、ズダダダダッとか落ちてくるものなのに…」
「…。」
「幾ら、食べるのがすきでも、それデブ過ぎ!」
「…。」
朝から2度も落とされた…
家を出て、近くのバス停まで歩いてくと、毎朝のように同じ犬に吠えられ…
新参者?の犬には、威嚇され…
後ろから、野良猫に背中を攻撃された…
「僕、動物達に、嫌われるようなことした?」
バス停に着き、バスを並びながら待つと…
グイッ…
見知らぬふくよかなおばさんに割り込みされ、後ろで並んでる人の冷たい視線を浴びた…
¨怖そうな人だし…。一応、女性だから…¨
聞かれたら、発狂されそうな言葉である。
バスを降り、学校まで歩いてく途中で…
バシャッ…
「あいやー。すまんな、坊主。大丈夫か?」
庭掃除をしていた老人?にバケツの水をかけられたし…
制服のズボンが、ビチャビチャで…
周りから笑われた…
「えっ?なに、これ?コンテスト?」
「面白そうだろ?」
「お前の名前出しといたから。俺らも出るし!」
勝手に、名前を使われ、イケメンコンテストだかに出場?!
「棄権出来るよね?」
「いや。これは、出来ない。」
「そりゃそうだろ。バレンタイン、明日なんだから!」
「…。」
¨えっ?そういえば…¨
昨日の日曜日、朝から夏海と母さんがお菓子を作ってたのは、記憶してるし、味見させてくれた。
「でも、僕、イケメンじゃないよ?」
「いいだろ?それに、参加賞見てみろ!お前の大好きな…」
「クロックムッシュのお菓子!!コンテスト落ちても、貰えるなら出る!!」
と思わず優樹くんにつかみかかった…
僕としては、抱きついたんだけど、周りから見ると…
昼休み、ちょうど3人でお昼を食べていた。
ガラッ…
「あっ!いたぁ。俊哉くーん!!」
「愛ちゃーん!!」
愛ちゃんが、廊下の窓から教室を覗いて、手を振ってくれた。
俊哉くんが、愛ちゃんに近付いて、ちょっと話して直ぐ戻ってきた。
「今日のデザートだ。」
小さな袋から、甘い匂いがして僕の周りを包み込む…
「ケーキだ!」
「今日は、なんだ?」
ガサッ…
「…。」
「どうした?」
で、優樹くんが紙袋を覗いた。
「直樹にピッタリなケーキだ!」
笑いながら、紙袋からケーキを三つ出した。
「可愛い!熊?」
「俺には、ぶたに見えるがな。」
「俺も…。」
二人は、豚と言ってたけど、僕には熊に見えた。
モグッ…
「おいひぃー!!」
薄く切ったスポンジの中に、甘酸っぱい苺のムースが入ってるし、上は、ホワイトチョコレートでコーティングしてる!!
「共食いだ!!」
「豚が、豚を食っている。でも、旨い!」
「でしょぉ!!ほんと、美味しい!!幸せー!!」
僕が、そうやって言うと優樹くんも俊哉くんも、女みたいって笑うけど、愛ちゃんが持ってくるお菓子は、いつも美味しい!!
コンテスト出場の噂もかなり広まっていて、誰かとすれ違う度に、笑われたり、励まされたり、貶されたりしたけど…
頭の中には、クロックムッシュの事でいっぱいだった。
「参加賞、どんなお菓子かなぁ?楽しみぃ!!」
「…。」
「お前の言い方、ほんと女みてー。キモい!」
「じゃ、優樹くん達の…」
「やらん!」
「あげねーよ!」
そんな会話をしながら、帰る。
今日は、優樹くんに漫画を借りるから、いつもとは違う方向。
「しかし、今年のは、かなり分かれてるよなぁ?」
「部門?」
「…。」
「俺、今年は危ない。1年に、アイドルデビューした奴がいるから!!」
そんな話をしてたら…
「じゃ、行ってくるから。」
自転車と一緒に出てきたのが…
「あっ…。」
優樹くんが、立ち止まってその子を見た。その子もまた優樹くんを見て…
「倉橋先輩じゃないすか!」
と言った。
「誰?」
と俊哉くんに聞いたら、教えてくれたけど、わからなかった。
「じゃ、失礼します。」
頭をちょっと下げて、自転車で走りさった。
「なっ?いい男だろ?」
「確かに!!」
「そうかな?僕は、優樹くんの方が、かっこいいと思うんだけどな…」
頭いいし、運動出来るし、明るいし、怒るとちょっと怖いけど、優しい。こんな僕でも、ちゃんと接してくれる…
ポンッ…
「痛いって…」
「コンテスト楽しもうな!」
ポンッ…ポンッ…ポンッ…
「やめてー。背が縮むー!!」
優樹くんの家まで走っても、追い越される…
「じゃねぇ!!」
漫画と優樹くんのお母さんから、お土産のお菓子を貰って、家に帰った。
ガチャンッ…
「ただいま…。」
バタバタバタッ…
「お、お兄ちゃん!!コ、コンテスト出るってほんと?!」
「うん…。優樹くん達も出るし。」
僕は、参加賞目当てだから…
「お兄ちゃん!!頑張ってね!!」
「えっ?!出ても、受からないよ?」
「いんだよ!!参加することに意義があるんだから!!」
いつもは、僕の体型をバカにしたり、皮肉めいた発言しかしない夏海が、珍しく応援してくれた。
「熱でもある?」
ピタッ…
夏海のおでこに手を当てる…
「お兄ちゃんの…」
「ん?」
「お兄ちゃんの…」
「…。」
「えっちーーーーーーーっ!!」
ガターンッ…
突き飛ばされた。
今朝、階段から落ちたのにぃーー…
「なーつーみーーーっ!!」
これが、僕の1日…
今日1日で、かなりヒヤヒヤしたから、体重減ってるかな?