>>Fragmented memories
話の都合上分けて投稿しました。
2話連続投稿です。ご注意ください。
私はとある貴族の家に生まれた。
庶民と比べるべくもなく恵まれた生活。汚れることなかれと幼少のころから壊れ物のように育てられていた私だったけど――どうやら、私はそういう風に育てた親を失望させるくらいに、活発な性格だったらしい。
最初に実家たる館を抜け出したのはいつだっただろうか。
なぜだかわからないけど、うまく思い出せない。
そもそも、大まかな出自以外はほとんど思い出すことができない。
けれど、たった一つだけ、これだけは鮮明に思い出せる、というものがあった。
そう。
あれは、私がお忍びで護衛も連れず、一人で放蕩していた時のことだ。
見るからに怪しい連中に二人、奮闘している少年たち。彼らに加勢して、怪しい連中を追い払ったということがあった。
二人のうち一人は戦い慣れてもいないような、あどけなさの残る可愛い女の子だった。もう一人もどこか可愛らしさが同居した、けれどもかっこいい少年で、こちらは幾分か戦い慣れている様子だったのも覚えている。
女の子の方は少々深刻な問題を抱えていて、それを解決するのに少年が力を貸していた……たしか、二人の関係はそんな感じだった。
けれども、不謹慎だけど私はそんな二人に漠然とした、灰色の日常に色を付けるきっかけになりそうな何かを感じてしまって。
それで、私はその二人に少々無理やりについていくことにした。
そのあとは……もう、明確には思い出せない。
けれども、最後には大団円を迎えることができたんじゃないかな、とは思う。なぜなら、その時の出会いのことを考えているうちに、言い表せないけれどなんか温かい気持ちで心があふれそうだったから。
なぜ、記憶が思い出せないのか。それはわからない。
なぜ、こうなったのか。それもわからない。
なぜ、永い眠りから覚めたような感じがするのか。やっぱりそれもわからない。
まだそれほど時間がたったとも思えないのにもう眠くて仕方がない。
けれど、可能なら思い出せない記憶を、取り戻したいとは思う。
この白い空間にいれさえすれば、それは確実にできるはず。
根拠はないけどそんな気がしてならない。
だから、今はとりあえず休もう。そして…………目が、覚めたら、また何か思い出せないかどうか、いろいろ考えて、見よう……。
そう思ったのを最後に、わたしの意識は途絶えた。




