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騎士団の部屋で(アルバンの夜)

47話 騎士団の部屋で(晶の朝)の前夜です。

晶いわく「むっつり馬鹿」のアルバンのイケナイいちゃエロ話です。

アルバン王子の部屋と呼ばれる場所はふたつある。

【王子】と【騎士団】の部屋だ。

最近、アルバンは【騎士団】の部屋を利用している。

彼に遣える侍従達や騎士達の心境は複雑だ。


アルバンは王子なのだ。

その身分に相応しい部屋で過ごしてもらいたい。

それだけでなく王子という存在を守る為にも、王宮内の守りが固い部屋で過ごしてもらいたいのだ。

騎士達にとっても同様だ。

人柄は好ましく、共に過ごし共に戦う事に喜びを感じるが、王子が自分達と同じ建物内( といっても流石に特別室だが)で過ごされる事に、流石に畏れ多い気持ちになる。


アルバンとて、そんな彼らの気持ちは理解できる。

しかし、今は【騎士団】の部屋を利用するしかないのだ。

なぜなら。


「はあ~。気持ちよかった」


特別室に供えつけられた浴室から出てきたのは、アルバンの婚約者。

アルバン大きすぎる上着を寝間着代わりに纏った湯で温まった身体は火照っており、顔や白い肌はほのかに赤くなっている。

うなじを露にして煌めく銀髪は頭上にまとめられ、それを覆うように巻かれた髪拭い布に納められていたが、頬に貼り付いた幾すじかの髪から水滴が滴り落ちる。


「………まったく、お前は」


椅子に座って読んでいた本を脇の机に置き、こちらに来るよう手招きすれば、素直に彼女は近寄ってくる。

目の前に立った少女の髪拭い布を解けば、濡れ髪も肩へとばらけて落ちた。


「自分で身の回りの事はすると言ったのだろう?だったら、ちゃんと拭け」


小さな頭を包むように布で髪を拭けば、アキラは気持ち良さそうに身を任せてくる。

目を閉じ、ふうと息つく唇は僅かに開かれ火照って色づき誘っているかのようだ。

その唇の甘さはすでに知っている。

彼女が彼女でなくそして大人の女だったなら、少し強引でもその体を貪る事に躊躇いはなかっただろう。

だが彼女でなくば、これほど飢えを覚え、喰らい尽くしたいという欲が出るかは疑問だ。

それなのに、当の本人といえばー。


「……アルバンって、子供の世話とかうまそーだな」

「子供?……今はお前か」

「へへ。よろしく、オニーチャン」


目をつむったまま口角をあげて、子供のように髪拭きをねだる様子に、心中でため息をつく。

だが、こうして向き合う時間は心地よく、荒くかき回していた手の動きがゆるやかになっていく。

髪に含む水を拭き取るというより、手の中に納めるような小さな頭を撫でるようになっているのだが、アキラは気づいていないようだ。

それでも頭に触れられてよほど気持ちよくなったのか、次第にゆらゆらと頭がちいさく揺れ始めた。


「眠いか?」

「んーちょっと」


髪を拭くのをやめれば、目を擦ってぱちぱちさせてアルバンを真っ直ぐにみる。

やはりどこか子供らしさが抜けない目の前の少女に笑って、最後にポンと頭に手をおいた。


「じゃあ、もう寝ればいい」

「そーする」


素直にアキラは寝室へ向かう。

彼女の髪を拭いた布はしっとりとしてひんやりと手を冷やし、アルバンは浴室の脱衣場にある洗濯物入れにそれを放り込むと、再び読書に戻ろうとしてふと考える。


アキラがこの部屋を使うのも初めてではない。


当初、訓練所への往来のために部屋を使用したいとの願いを諦めさせた。

しかしいつも通り訓練後に顔を見せに来た彼女が、言葉を交わす間にことんと眠ってしまい泊めざる得ない状況になった事があってからは、結局彼女の願いを叶えた状態が続いている。

騎士団の者たちは、以前から真剣に鍛練している彼女を知り、また少なからず影響を受けていた為か、彼女の宿舎使用を黙認してくれているのは有難い。

無論、経緯や身分がどうあれ、規律を乱す事は間違いなく心苦しいが、少しこのままでいることにしたのだ。


初めて泊まった翌朝、アキラは感謝の言葉を述べてくれたが、アルバンがその時同衾を避けて簡易ベッドを運び入れたと知った途端に怒り出した。

「部屋の主なのに、それはいけない」「自分が簡易ベッドに寝るべきだった」と言うが、そんな訳にはいかないだろう。

それなのに、「面倒だから今度は同衾でいい」と何故かこれからもこの部屋を利用する事が決定されてしまった。

そして次の機会を向かえたが、やはりというかこれまた予想通りに彼女は躊躇いなく同衾をうけいれたものの、「子供のお泊まり会みたいな感じだな」と実に無邪気に笑いかけ、その振る舞いに色事の気配はなかったのだ。


あの時は結局彼女に促されるまま、互いの幼少期について語り合いそのまま眠ってしまった。

それは今日まで同様の状態が続いている。

それでも彼女がベッドに入り、自分の体が睡眠を求めるまで待ってから一緒に入っていたのだが。


「今更か」


どうあっても、彼女とは色事にならないのだ。

今は。

だが、彼女に寄り添いたいと願う事は許されるだろう。そして、彼女は側にいることを許してくれている。

ならば、全てを我慢する事はないか。


アルバンは部屋の外に控える侍従を呼び、灯りの始末を頼むと寝室に足を向けた。




月明かりに仄かに照された寝室。

大きめのベッドの右側に、うつ伏せになった小さい体がシーツを被って横たわっている。

靴を脱いでベッドの左側に座っても、彼女は反応しない。アルバンはそのままベッドに入り、半身だけ起こしてアキラの顔をのぞき込んだ。

やはり、もうすでに寝ていた。

自分の方ではなく、窓側に顔を向けているため、月光が顔をも照らしている。

美しく、愛しい顔だ。

アルバンは覗き込みながら彼女の髪を手でとき、感触を楽しんだ。

一房手に取りキスを落としたところでアキラが寝返りをうち、暖を求めるようにこちらに身を寄せて来たため喜んで抱き寄せて、自分も横たわる。


何度も彼女を抱き締めた事があるが、何度抱き締めてももっとと思ってしまう。

今宵はほんの少し進めてしまおう。


彼女の頬にキスを落とす。

寝息をたてて薄く開いた唇は魅力的だが、そこは彼女の意識がある時に同意を得た上で楽しむ事にして、その分瞼の上や額や再び頬にキスを散らした。

頭をなでて後頭部から背中へ手を滑らせた。

腰に回した腕の方の手も滑らせ、両手でアキラの体の線を追っていく。

ゆっくりとした動きは愛撫となり、「ふう……んっ」とアキラが少し息を乱した。

その様に自身の下腹部にもゾクリとした刺激をうける。


ああ、普段もこんなに素直に反応してくれたらいいのに。


程よい興奮に身を任せながら、アルバンはアキラを撫で尽くし時折軽いキスを落として愛で続ける。

愛しい女を前に、二人だけの部屋で密やかに行う悪戯。

そんな状況も刺激になって堪能していると、アキラは不意に眉間にシワを寄せて、嫌がるようにまた寝返りをうってアルバンの腕から逃れた。


アルバンは夢から覚めたように一瞬呆けたが、猫とて構いすぎれば嫌がるかと納得した。

だけど、ちょっと名残惜しくて、今度は背を向けるアキラの露になったうなじに唇を寄せて印を残す。

だが、部屋が暗くて確認できない。

そんな理由をつけて、もう一度。


「………おやすみ、アキラ」




願わくば、明日その印が残っていますように。

色事、同衾、愛撫の意味を調べ直してしまいましたよ。

微妙なエロシーンで使用して大丈夫か何故かドキドキしてしまいました。

晶の朝もこちらもテンプレですが、楽しんで頂けたら幸いです。

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