ネルコネコ
「寝子」と呼ばれる人間が存在する。それはかつて、一生の約三分の一を睡眠活動に費やす旧時代の人類であった。
睡眠という何も生み出すことのない、言うなれば時間の浪費を取り除いてやれば経済的に発展するのではないか?
ある発展途上国の政策会議内で、その話題が切り出された。医学分野においては世界でも抜きんでて高水準ではあったが、財政難に長く苦しめられていた。
四方を海に囲まれた小さな島国であり、海産物は多種多様に恵まれている。そのため、隣接する国々から外交の提案が持ちかけられているが、この小さな島国はその誘いを断り続けている。
半世紀ほど前に、他国籍とおもわれる海賊団に襲撃を受けた島国はそれ以来、鎖国として干渉を拒んだ。
その結果、なぜか進歩する医学に反比例して、島国の資金は底をつきかけていた。この時、国の平均寿命は男女共に九十に達していた。のびのびとした環境がそうさせたのだろう。医学の発展がそうさせたのだろう。
無駄に長く生きる国民が憎くて堪らなかった政府の上層部は、ある決断を下した。
「睡眠の除去」
財政が困難ならば、働いて働いて働きまくればいい。それこそ、寝る間も惜しむ程に―