表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/25

6.物語の終わりはいつもそう

 多かれ少なかれ、人は抑圧されて生きている。


 ただ、その抑圧の対象は人によって様々だ。

 生まれ持った才覚が違えば、沸き起こる衝動も違ってくるからだ。


 食べるのが好きな人もいれば、寝るのが好きな人もいる。

 歌うのが好きな人もいれば、運動が好きな人もいる。

 善いことが好きな人もいれば、悪いことが好きな人もいる。


 けれど、その衝動のままに生きていくことはできない。

 他人に迷惑をかけてはならないからだ。

 それが人の社会。共同生活の掟だから。


 自分を律することが出来ず、衝動のままに生きる人間は粛清される。

 いや、自然と排他されると言ったほうが適切かもしれない。


 だから少年は衝動を抑えて生きてきた。

 社会の矛盾への怒りに蓋をして、湧き上がる熱情に冷水を浴びせ続けてきた。


 そうしなければ、少年は生きていけなかった。

 少年が生まれた世界は、そういう世界だと思い知ったから――

 もう、そうするしかなかった――。


 けれど、その日、少年は生まれ変わった。

 もう昨日までの少年とは違う。

 運命の少女と出会い、少年は少年の枷を外すことに成功した。


 少年が迷い込んだ世界は、そういう世界だと教えてもらったから――!

 もう、そうするしかなかった――!


 導かれるように、心の底から少年は笑う。


 心臓に穴が空いて、胸の吹き抜けからどこまでも開放されていくような感覚。

 まとわりついていたしがらみと重み、その全てが解け、ふわりと身体が空に浮いていくような感覚。

 踏み抜いたアクセルのまま、風を切り裂いて走り抜くような感覚。

 どこまでもどこまでも、自由に自由に、何をしても何を叫んでも許され、感覚のままに生きることを許される――


 これはそういう物語。

 少年が少年のままに生きる物語。




 それが【逆接系因果解放分子アウルゲルミル・ハティーファクター】による、

 【異世界汚染神話一章ミッドガルド・ザ・フィンブルローグ】。





 ――ただ、視点を変えてしまえば、


 これは異世界で生きる少年が、いかに異世界から排他されるかまでの物語でもある。


 この物語の最後には無残な死が待ち受けている。

 少年と少女は、そう遠くない未来に死ぬ。

 排他されるとはそういうことだ。


 少年は希望を糧にする特異点。

 ゆえに、本来ならば彼に救世主以外の道はなかった。

 少女は絶望を糧にする特異点。

 ゆえに、本来ならば彼女に支配者以外の道はなかった。


 この二人は互いの糧を互いに分け合うことが出来た。

 そのシステムが二人を自由にした。

 ゆえに、この時代に魔王も勇者も現れない。


 もちろん、どちらかが欠ければ、どちらかが世界を傾ける【現象】と化すのは間違いないだろう。世界を汚染する災厄そのものとなるだろう。誰もがそれを予感していた。


 だから、二人は一緒に殺される。

 同じ時刻、同じ場所、同じ死因で、同じ表情で――二人は死ぬ。

 

 だけど、二人は二人がいれば、もう何もいらなかった。

 お互いにそう【呪い】をかけた。

 二人は死ぬまで繋いだ手を離さない。


 愛していた人々に背中から剣で刺されようと、

 二人は最後まで笑って見せる。


 なぜなら、少年は死の間際、全ての前言を【逆接】するからだ。


 呪われた少女の運命を【逆接】させる。

 これはそれだけの物語。

 【逆接】の物語がいま、始まる――


未完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ