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23.新たな旅立ち

 翌日、俺とイスカは里の出入り口で、エルフたちに見送りをされる。


「よし、ちょっと西のほうへ行ってくるぜ!」


 目指すは他の亜人たちの里。

 聞けば、エルフの里だけでも、あと二つ三つほどあるらしい。

 他にもドワーフやハルピュイアなど、面白そうな亜人たちが西で生活している。


 その里へ行ってコンタクトを取るのが、次の俺たちの目的だ。


「王が投げっぱ過ぎる……」


 長老には徹夜で西大陸統合計画の全容を伝えてある。

 俺たちが他の里たちとお話をしている間、その土台を作ってもらうつもりだ。


「ちゃんと計画書作ったから、困ったら読んで!

 でもまあ、すぐ戻ってくるから、気にしないでいいよ!」


 竜の心臓のおかげか、不眠不休だというのに身体は元気だった。

 俺は見送りのエルフたちにぶんぶんと手を振る。


 子供エルフたちは純真に笑顔で手を振り返し、

 大人エルフたちは厄介ものがいなくなると笑顔で手を振る。


「では、他の里とのコンタクトをスムーズにするため、

 うちのイアヴァスリルを連れて行ってくれ。

 これでも里一番の才媛で、他の里でも有名だ」


 そして、なぜか昨日の脳筋エルフが出てくる。


「くっ、くくっ……、どうぞ私をお使いください。私の王様……」


 俺やイスカに負けない禍々しい魔力を纏い、

 とっても凄惨な笑みを浮かべる勇者イアさんだった。

 言葉は丁寧なものだが、例の「くくく笑い」は直っていない。


 俺の顔が一気に引き攣る。

 笑ってはいるが、何を考えているのかわかったものではない、

 くそ、セイのやつ。いらんやつ掘り起こしやがって!


「え、おまえがついてくんの……?」

「もちろんです。もしや、あれだけ情熱的な告白をしておいて、

 私を捨てるつもりなのですか……?」


 イアは顔を赤くして、じりじりと寄ってくる。

 あ、これあかんやつだ。


 俺はじりじりと後退しながら、里に並ぶエルフの面々を見回して、適当な子を選ぶ。


「チェンジ!!

 こっちの子がいいです!!」

「ふぇ!?」


 初めて会ったとき、俺を囮にして逃げたロリエルフちゃんを指差す。


「やっぱりロリコンなんだね、ジンさん! 控えめボディの私は少し安心したよ!」

「などと言ったその他もろもろの理由で、イアじゃなくて、こっちの子にして!

 長老さん! たぶん、そいつ、三人になったら襲ってくる!!

 色々な意味のどれかの意味で襲ってくる!!」


 困惑する長老とロリエルフを置いて、俺は主張を続ける。

 それを聞いたイアは、ショック受けた顔で、目の色を変える。


「つまり、私よりもそっちのほうがいいということですか?」

「端的に言うとそうなる」

「くっ、ならあの告白は嘘だったと、そういうことですか。王様……?」


 声のトーンが低くなっていく。

 しかし、それでも俺は負けずに抗う。

 とりあえず、イアを口八丁で騙しこむため、【喉】を震わせる。


「それは勘違いだ、イア! あのとき、俺の中に一切の偽りはなかった! 俺は君のように豊かな胸を持ち、腰がくびれた長身の女性が大好きだ! 本当だ、間違いない! ただ、世の中には優先順位というものがある。生きていく上で、知性ある存在は常にそれに囚われる。全てのものは平等であり、等しく愛すべきものだとは俺も思う。思う――けどっ! だけど、俺は!!」

「ジンさん得意の長文言い訳がはじまるぅー!!」

「――だけど未熟な俺は! どうしても愛の差別を身に抱えてしまっているんだ! 正味な話、君とそっちの子なら、そっちロリっ子のほうが性的興奮を覚える! ああ、未熟な俺を許してくれ、イア! ああ、わかってる! こんな小さな子どもに劣情を抱くなんて身体の機能に異常を期待しているかもしれない。人として種としての意義を失っているのかもしれない。正しき社会に真っ向から反しているのかもしれない。けどっ、――けど俺はそう思わない。本来ならばありえない? だからこそ、本当の愛が試されるんじゃないのか? 異常だからこそ、狂っているからこそ、種からの洗脳を脱している証じゃないのか? だって、ちっこいほうが可愛いんだもん! 仕方がないよね!! うん、俺は悪くない!! 現代社会の生んだ歪みのせい歪みのせい! はい、この話はもう終わり終わり! やめやめ! さあ、行こう! そっちの可愛い幼女エルフちゃんっ、俺が君を幸せにしてみせる!! あれっ、これもうイスカいらないかも!! ん、これ俺やり直せる!? まだ序盤だし、ルート変更可能じゃね!? ――っ!?」


 本音をぶちまけている途中、恐ろしい殺気が二つ襲いかかってくる。

 イアの超破壊的な拳と、イスカの神速に達した拳だ。


 しかし、俺は身の運動能力を活かしきり、その二つをかわしきって飛び退く。


「そ、そう何度も、食らうか!」


 そして、俺は地雷女である二人に対して構えを取る。

 それを見たイスカは、いやらしく笑う。


「ジンさんはそっちのちびっ子に乗り換えるのかなー?

 ま、別に私は構わないよー? けど、【呪い】はちゃんと覚えてる?」

「え、呪い?」

「通称『恋の魔法ヨソノオンナミタラコロス』ね」

「あれまじだったのかよ! あっ、今日、まだ撫で撫でしてねえ!?」


 くだんのイケメン少年のように爆死したくないので、俺は慌ててイスカの頭を撫でる。

 途中、イアの目が怖かったので、仕方なく彼女の頭も撫でる。


「ふふーひ、いい撫で撫でだね! 私の好感度が125パーに上がったよ!

 イアっちのは172パーくらいかな!?」

「イ、イスカ先生! 下げ方を教えてください!!」

「そんな都合のいいもの、あるわけないじゃん?

 ねえ、イアっち?」

「ああ、もはや私の王様への愛は永遠だ」

「おまえの愛って、なんか殺し愛の愛に聞こえるんだよ!?

 絶対おまえ、俺の血とか見たい系だろ!!」

「そ、そんなことはないぞ?

 心中イコール結婚だなんて思ってないぞ?」

「誤魔化すどころか、加速してるーーー!!

 あーやっぱりそうなんだ! そういう系なんだ!!」


 というか、いつの間にかイスカとイアの仲がよくなってることにびっくりだよ。

 なんだよ「イアっち」って、ちょっと楽しそうじゃねえか。


 結局、俺はイアの同行を断りきれず、三人で西へ向かうことになってしまう。


 とりあえず、イアのやつは里から見えなくなったあたりで埋めよう。

 さっきからちらちらと俺の腕を見て、手のひらをにぎにぎしてやがる。

 腕をもいだ感触が癖になってるとしか思えん。


 くそっ!

 ロリエルフがよかった! ロリエルフがよかったー!!


 と魂の叫びをしつつ、俺たちはエルフの里を出発する。


「さー、出発だー!!」

「しゃあない、行くか……」

「くくく……、では行きましょう。私の王様と王様」


 向かうは長老さんが教えてくれた直近の里。

 またファンタジックな森の中を進んでいく。


 そして、歩くこと数分――


「…………」

「…………」

「…………」


 ――里からも見えなくなったあたりで、

 俺は後ろについてきたイアへ襲いかかる。


「死、ねぇええええええええ――――!!」


 しかし、イアも紛れもない勇者だ。

 その超人的な反射神経で、俺の拳を避けてみせ、笑い出す。


「くっ、くくくっ、流石は王様だぁあ! 戦いに全く躊躇がない!!

 ああ、なんてかっこいい! 世界一かっこいいよ、私の王様!!」

「イアぁああああ――! おまえはここで倒す! 

 主に俺の安寧のため、生活のため! そして、次はロリエルフを貰うため!!

 あのプロポーズごとっ、おまえは闇に葬り去る!!」

「くはっ! くはははは!! やっぱり私の王様はこうでなくてはなぁああ!!

 やはりいい! 闘争はいい! 殺し合いこそが真実の愛だ!!

 勇者の衝動――以前にっ、私は王をこわしたくてこわしたくてっ、たまらないっ!!」


 そして、エルフの里編を締めるボスバトルが――始まる!



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