表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/25

21.ラストバトル ~ジンさんの主張~

 たった数時間というハイスピードで、

 襲撃から勝利――そして占領までこぎつけた俺たちだった。


 だが、魔力不足の問題は依然として解決していない。

 希望と絶望を両方摂取しなければならないとはわかっている。

 しかし、現状のエルフの里からは、それを望むべくもない。

 もちろん、エルフの里からは厄ネタなんてものは出てこなかった。


 その結果、俺が新たに考えた魔力回復計画は――


「――で、演説かー。うーん」


 イスカは少し不満そうにしながらも、渋々と協力してくれるようだ。

 これから俺が行うのは『演説』――『扇動』とも言う。

 上手く行けば、これで魔力回復の土壌は作れるはずだ。

 それに足る情報は、長老の館で収集し終えた。


「ああ、ここを俺たちの魔力補給地点にする。

 そのために里を国に建て替える――!」

「そして、東の人類どもに復讐するための第一歩にするんだね……!」

「いや、とりあえず人並みの生活へ戻る第一歩だよ……?」

「えー」

「えー、じゃない! そう簡単に人類虐殺なんてできると思うな!」


 死活問題を改善したいだけの俺と違い、イスカは好戦的なことこの上ない。


 魔王っぽい話をしつつ、俺たちは里の中心へとエルフたちを集結させる。

 丁度、エルフ全員が収容できる大庭があったので、そこに全員を並ばせた。

 もちろん、【喉】を使って、その周囲にモンスターを配置している。


 俺は大きく息を吸って、木製の高台からエルフたちに宣言する。


「――エルフたちよ! よく聞け!」


 彼らは逃げられない。

 俺の【喉】から震える声を聞くしかない。

 まさしく、【永遠唱室ディストピアリア】の真骨頂が発揮される状況だった。


「今日、このときをもって、この村は我が王国の傘下に入った!!

 これからおまえたちは我々の魔王軍の栄養源となるべく、

 その感情を贄として捧げ続けることになるのだ!!」


 おまえたちは餌だと冷酷に伝える。

 にやりと悪っぽく笑うのも忘れない。


 対し、一人のエルフが声を大にして言い返す。


「贄だと、ふざけるな! 俺たちエルフはおまえらなんぞに屈するものか!!」


 その声を聞き、さらにくくっと悪く悪く笑う。

 幸い、くくく笑いはイアからラーニング済みだ。


「くくっ、無駄な足掻きを。じきに、屈するしかなくなるというのにな。

 我が友、魔王イスカは絶望を糧にする魔法使いである。ゆえに――」

「――魔法使いである! であるが、魔王ではなく女神である!

 そこ間違えないように!」


 隣で腕を組んで仁王立ちしていたイスカが割り込む。

 魔王だけは心外という顔だった。


「え、え? イスカ、女神でいくのか?」

「いくよ! もしくは聖女!!」


 そういえば、魔王と呼んでいるのは俺だけだった。

 イスカ自身は女神か聖女がいいらしい。


 途端に魔王のロールプレイが危うくなる俺だった。

 『演説』の予定も大きく変わる。

 味方のせいで崩れかける。


「き、貴様らエルフは我らが女神兼聖女イスカの糧となるべく、

 永遠に絶望し続けることになるのだ――!」


 女神で聖女なのに、なんで絶望やねん。

 自分で言ってて、その矛盾っぷりに悲しくなる。


 もちろん、エルフたちは自称女神に対して怒り狂う。


「何が女神だ! この悪魔が! いや、卑しき魔女めが!!」

「ふざけるな! 女神など畏れ多い!! 訂正しろ!」

「魔女は焼け死ね! 呪われろ!!」


 凄まじい大ブーイングを受けて、俺は女神路線は不可能だと判断する。

 

「うーん、やっぱ無理だろ?

 俺ら魔王以外の何者でもないって。もしくは邪神あたり」

「えー? でも、私ってば、すごい我慢したよ?

 今回は掛け値なしに女神だと思うんだけど……。

 死人を出すことなく占領した手腕をもっと評価してくれもいいのに……

 地下室の子らとか、誰も解体されてないんだよ?

 本当はエルフの神経とか脳みそとか欲しかったのに……」


 今回の侵略、イスカにとっては最大限の慈悲を施したようだ。

 本気で褒めてほしそうだ。しかたなく、俺はイスカの頭を撫で撫でする。


「ああ、その地下室もだ!! おまえら、女のエルフたちに何をした!!」

「くくっ、あの地下室で何が起こったか……。

 それは言えんなぁ……。この場では口にはできんよ……」


 恥ずかしすぎる。

 いま思えば童貞であることを歌いながら踊ってたとか、自殺モノである。

 端のほうに座っている地下室にいた美人エルフさんたちの目が痛い。


「く、口にはできんだと! 慰みものにしたのか、キサマァ!!

 卑劣なニンゲンどもめ! あの場には幼い娘もいたのだぞ!」

「い、いや、しねえよ! そこまでしねえよ! 

 そういうこと言うなよ! 嬉々としてやっちゃう子がいるんだからこっち!」

「ふひひ……、そういう阿鼻叫喚で酒池肉林なエルフの里もいいかもね……。

 人の心の皮がはがれ、ひりひりの剥き出しの感情を舐めとる毎日も楽しそう……」

「ほらぁ! 俺よりも全然魔王っぽいこと言って、満面の笑みじゃん! 

 そこの君っ、退場! ちょっとノリよすぎるよ、君!! 

 へい、スラりん! そいつボッシュート!」


 【喉】を使って、囲んでいるモンスターの一匹に指示を出す。

 勇敢な男エルフさんが一人、人型のスライムにずりずりとひきずられていく。

 そして、茂みに引き込まれ、悲鳴と共に静かとなった。


 それにより、周囲のエルフたちは顔は青くして静かになる。


「ごほんっ。話は途中だ。最後まで我々の話を聞くように……」


 俺は厳粛に話を続ける。

 いまのように何度も話の腰を折られるのは避けたい。


「よろしい。話には続きがあります。

 こっちの魔王っぽい子は絶望を糧にしますが、俺は違います。

 真っ当な人間ですので、『希望』を糧にする魔法使いです。

 ですので、君たちには『絶望』があったり『希望』があったり、

 バランスの良い生活を送ってもらいたいと思っています」


 ようやく、俺は本題に入る。

 しかし、エルフたちは困惑している。何を言っているのかわからない様子だ。


「えーっと、つまり、隠遁生活なんてやめようぜ? ってことです。

 ぶっちゃけると、せっかく占領したのに、おまえら旨みがなさすぎるんだよ……。

 イスカ、いま魔力回復はどのくらい……?」

「里崩壊の絶望なのに、まだ一割もいってないねー。

 全回復まで何年かかることやら。

 とにかくエルフって、感情の揺れが小さいよねー」

「頑張って占領したのに、魔力回復的に不味すぎる! 

 こんなんじゃ、いつまでたっても俺たちの魔力が溜まらないだろ!

 どうせおまえら、薄らとこれでエルフ族も終わりかーって諦めてるだろ!?

 諦観してるだろ? なんで、そこで諦めるんだよ! もっと反骨しろよ!!

 セイから聞いたけど、基本的におまえら頭おかしいって!

 なんで、遊び盛りの子供を里ん中に閉じ込めんの!?

 そりゃ、誰だって外へ抜け出したくなるわ!!

 俺たちとセイたちが出会ったのも必然だって!!

 生活のほうも調べてびっくりしたよ!

 水と日光浴が中心の食事生活って、おまえら植物か!

 エルフ族大半の趣味が体操と祈祷って、おまえらおじいちゃんか!

 駄目! 駄目駄目駄目! もっと熱くなれよ! 

 なにその現代っ子のサトリ世代みたいな冷めっぷり! 

 シニカルな高校二年生みたいな思考は恥ずかしいからやめろよ!

 もっともっと絶望とか希望とかちゃんと持とうぜ! 生きてるんだからさぁ!

 幸い、俺たち希望も絶望も魔力に変えられるから、

 どっちかだけに偏らせなくてもいいんだよ!

 どっちかでいいとか、まじ簡単だろ!

 なのに、その簡単なことがおまえらできてねええええ!!

 もっと感情を表に出して、もっと人生を謳歌しろよ!

 一度しかない人生なんだから! じゃないと俺たちが困るんだよ! 

 MP回復もなしの休憩地点とか、5Gの宿屋にも劣るんだよ!

 ――と、いうことで! 我ら『大天使イスカ王国』の行事を発表します!」


 息継ぎなしで俺の不満を吐き出し、すぐにイスカへ指示を出す。

 イスカは用意していた木の板を高台に掲げ、

 俺はそこに書かれた文字を読み上げる。


「はい! ババァアアーーーーン! よーく見てくださいね!!

 戦争に負けたおまえらに拒否権ないから、ちゃんと覚えるように!!

 奴隷のように、いまから言うことに従えよ!?

 おまえらの冷めた感情を動かすために、必死になって考えました!

 これでおまえらも今日からリア充! エルフの里リア充改造計画!!

 まず! 週に一度の合コン式飲み会を実施します! 

 無理なら、とにかく仲良い人と食事しろ! 一人で食事終わらせるな!!

 で、月に一度の祝祭! そして、季節に一度のオリンピックも導入!

 まずはこれが基本! この三つを中心に、スケジュール詰めていくからな!

 はいっ、次は年表を見ましょう! 一定間隔毎に行事あるからね!

 歌唱大会、料理大会、狩猟大会、手芸大会、宝くじ大会、ビンゴ大会!

 そんなのまだ序の口! 球技から陸上競技まで取り入れてくぜ!?

 とりあえず、子供たちはサッカーしようぜ! ルールは俺が教えるから!!

 次にバスケットにバレー、これのネットとゴールは俺が作る!!

 野球あたりは道具の数がいるから、おまえらも手伝え!!

 そこらの基本競技を抑えたら、上級競技もいくからな!!

 本命はやっぱり、血沸くスポーツ! あ、もちろん男女と年齢別はするから!

 ラグビーあたりを乗り越えたら、すぐにボクシング、柔道、フェンシング!!

 剣道弓道も入れて、おまえらの基礎能力向上させるから!!

 ぶっちゃけおまえら弱すぎ! 魔法頼りすぎ! なにより、頭悪すぎ!!

 いや、回転は速いけど、無駄が多すぎ! 戦闘ロジックが足りない!!

 競争心がないから、勝ちに行く卑怯な思考が全くできてないんだよ!!

 俺らにさっくり負けるんだよ!

 だから、盤上競技も完備させる! ボードゲームは俺が作る! 

 チェス、オセロ、将棋、ここらはすぐに用意できる!!

 全体見れるようになったら、戦術も鋭くなるから! たぶん!

 マージャンやポーカーで駆け引きと読み合いも覚えろ!

 もちろん世界観に合わせて、魔力を使った競争も作るぜ!

 俺が考える! 魔法と科学合わさった系の遊び、超考える!!

 あと経済の活性化のためにも貨幣も造ります! ただ元締めは俺です!

 それに並行して算術や簿記、経済経営論のテストの場も設けます!

 でも、こういう勉強っぽいのはいらいらするから、ここからは各自自由でいいよ!

 子供受け悪いしね! こういうの! みんなが楽しめるようにするのが重要!!

 その内誰かが手を出すだろ! 物好きで向いてるやつが政治すればいい!!

 最後に、チーム分け、エリア分け、年代分けして、争わせまくるからな!

 そーしーてっ、年に一度の総決算大会! 一年の成果を出し合って楽しめ!!

 さあ、いがみ合え! 争えー、争えー! 感情を育てろ!

 まあ、結局はそこに収束するわけだ! とにかく感情を育てろ!!

 おまえらは色んなゲーム教えてもらって楽しい!

 俺とイスカは魔力回復が加速して嬉しい! WinWinだよね!?

 総じて言えば、寂れたつまらない人生だけはやめろ!!

 その穏やかな水面みなものような精神っ、禁止! 禁止な!」

 

 早口で説明を終える。

 それを聞いたエルフたちはざわめく。

 こんな雑な説明では一割も理解することはできないだろう。


 ただ、俺の熱意だけは伝わっているはずだ。

 単語単語の意味はわからずとも、

 やらんとしていることの一端は感じ取っているはずだ。


 恐る恐るとエルフたちは疑問の声をあげる。


「な、何を言っているんだおまえたちは……」

「わけのわからないことを……」


 しかし、その声へかぶせるように俺は叫ぶ。


「もっと活気ある里に変えてやるって言ってるんだよ!!」


 もちろん、それを聞いたエルフたちは拒否する。


「そ、そんなもの、我らには必要ない!

 森の民は欲を持たず、誰とも争わず、静かに生きる! 

 それが何百年も前から伝わっている教えなのだ!」

「そうだ! 我らの伝統の何も知らぬものに、とやかく言われる覚えはない!」


 様々なブーイングが飛び交う。

 しかし、それは予測済みだ。


「ああ、知ってる。セイからも聞いたし、村長さんの家を漁って裏も取った。

 確かに、おまえらエルフはそういう生き物らしいな」

「そうだ。我らは生まれたときからそうなっている。

 穏やかな心を持ち、自然と共存して生きるのがエルフ!

 おまえの言うような競争心は我らの敵なのだ!

 心に闇が巣食い、破滅を招く!」


 一人の大人のエルフが代表して俺を追い詰めにくる。

 だが、俺は引くことなく言い返す。

 ただ、まだ【逆接】でぐちゃぐちゃにはしない。

 元々俺はこういう屁理屈合戦に強い。


「生まれたときから!? 嘘つくな! そう決め付けてるだけだろうが!!

 少なくとも、子どものエルフたちは違うように見えるぜ!?

 俺とイスカは、今日、外の世界へ憧れ飛び出したエルフの子供たちと出会った!

 聞けば、閉鎖的な里に飽き飽きして、飛び出したらしいじゃねえか!

 生まれたばかりの子供はっ、エルフの本能はっ、違うんじゃないのか!?」

「いや、それは子どもだから、そうなのであって、

 一人前のエルフならば、そんなことはない……!」

「子どもだからとか大人だからとかで差別して恥ずかしくないのか、エルフ!!

 子どもだって立派な一個人だ、なんでその意見を汲んでやらない! 

 聞いてやらない! そのせいで、セイとかおまえらを裏切るはめになったんだぞ!

 その差別をニンゲンたちにやられてっ、

 おまえらは拗ねて森に引きこもっているんだろうが!

 なのに、なぜおまえたちがその差別を身内で繰り返す!?」


 セイたち子供を利用して、話を潰しにかかる。

 当のセイは苦笑いをして、首を振る。


「いや、僕は裏切ってないよー?

 そう見えるかもしれないけど、裏切ってはないからー……。

 でも、もう言っても無駄だよね。うん、知ってた」


 諦めたた様子でセイは笑う。

 だが、他の大人エルフたちと違って、そこには『希望』がある。

 口ではツンツンしていながらも、セイは内心俺にデレている。


 俺は『希望』の察知には敏感だ。

 子供心ながらも、セイが俺に期待しているのはわかっている。

 里が変わることに『希望』を持っている。


 ならば、大元帥である俺は、家臣の期待に全力で応えるだけ――!


「エルフたち! 本当にそれでいいのか!? 

 子どもたちは狭い世界で生きるのを嫌がってた!

 外の世界で冒険したがっていた! 

 夢と好奇心を抱いてっ、感情のままに里から抜け出そうとした!

 なあ、おまえたちも、昔はそうだったんじゃないのか!? 

 けど、村の教えに押しつぶされて、周りの意見に流されて、

 大人になってしまった! 諦めさせられてしまった! 好奇心を夢を、潰された!

 だから、おまえたちもやられたことを繰り返し、子どもの心を押し潰す!

 恥ずかしくないのか! エルフの心はそんなにも狭く、さもしいのか!?」


 侮辱にも近い言葉となり、黙っていたエルフたちも顔を変える。


「魔女どもが、好き勝手を――!」

「我らが伝統を愚弄するのか――!」


 けれど、その声には俺は負けない。

 この【喉】がある限り、声で負けるわけがない。


「本当に? 本当に、そのエルフの伝統は正しいのか?

 俺はそうは思わない。だって、エルフの子供たちは外を求めてるんだぜ?

 いわばエルフの生まれながらの本能が、それを選択してるんだぜ?

 なのに、なぜ内にこもるような伝統ができたんだ?

 なら、その伝統が生まれたのはいつだ? 経緯は? 意味は?

 考えてみろよ。

 伝統があったからニンゲンに排他されたのか?

 それとも、ニンゲンに排他されたからこういう伝統ができたのか?

 思考停止をして現状維持するのは、おまえらエルフの悪い癖だ!

 だから、こんなところに追いやられる! もっと自分自身で考えてみろ!!

 身体もなければ生きてもない『伝統の教え』なんてものに騙されるな!!

 そんなやつっ、どこにもいない! どこにもいないんだ!!

 死人の考えたルールじゃなくて、生きてるおまえらの希望を言えよ!」


 その【喉】から放たれた声は、大声ではなかったがエルフたち全員へと染み込む。


「くっ……」


 幾人かのエルフが、少しだけうめき声をあげた。


 だが、まだまだ足りない。

 まだ――ほとんどのエルフの感情は、全く動いていない。


「先入観を取り払おうぜ! もちろん、それが難しいのはわかってる!

 俺だってさっきまで、エルフだからどうせ陵辱待ちだろ――

 なんて馬鹿な先入観に取り付かれていた。

 他にも色々な先入観が生きている限り付き纏うさ。昔の俺は

 人として生まれたからには、良心を大切にしようと暗示にかかっていた。

 社会に貢献することこそ、人の義務だって教育された。

 東大ってちょーかっけー、入ったらモテモテだろって自然に思っていた。

 けど、違う! それは違うんだってイスカに教えてもらった!

 東大に入ればモテるなんて、よく考えればあれ嘘だ! 結局は顔だ!

 確かにそれが正義で、一番合理的だった時代もあったろう!

 しかし、時代は移り変わる! 最善の選択肢はっ、常に変動し続ける!

 どの次元のどの世界も一緒だ! この里だって変わり続けている!!

 俺は『社会の人間としての俺』じゃなく『ジンとしての俺』に気づけた!

 だから、俺はおまえらにも気づいてほしいんだ!

 世界はこんなにも広くて美しくて色鮮やかだってことを!

 おまえたちも『エルフの里の自分』じゃなく『ありのままの自分』に気づこうぜ!

 広くて美しくて色鮮やかな世界へ飛び出してみたくないか!?

 この里の英雄であるイアさんは、エルフには似つかわしくない衝動を持っていた!

 斥候は見ただろ!? エルフでも、あんなにも激しい衝動があるんだ!

 それに気づくことが生きるってことなんだ! それが本当の幸せじゃないのか!?

 ――っ!! そして、そのヒントは子供たちが持っているはずなんだ!

 まだ何の力にも圧されていない真っ白な精神にこそ、教えを乞うべきなんだ!!」


 叫ぶ途中、俺はエルフの反応を確認するのも忘れない。

 エルフたちの中でざわざわとしている集団があった。

 最も心が動いてくれていたのは、やはり子供たちだった。


 セイを初めとして、子供エルフは俺に期待し始めていた。

 輝いた目で俺を見ている子がいた。

 もちろん、大人エルフは子供たちに「騙されるな」と言う。


 俺は突破口を見つけ、少し浮かれ、演説を加速させていく。


「だから子供たちを見習って、少しは変わろうぜ! 外へ飛び出そうぜ!

 とにかく、閉鎖的な里はなし! なしだっ、なしなし!

 もうやめようぜ、そうやってひっそりと生きるの!!

 正直、その鎖国スタイルって、ぶっちゃけると死亡フラグなんだよ!

 歴史的に見て、ろくな結末ならないから、なしなしなし!

 そこのガキんちょらの将来考えるだけで欝になるわ!

 ぜってー他種族に惨敗して奴隷種族に転落コースだっての!

 というか地図見る限り、もうそれ寸前だからな!?

 おまえらちゃんと世界地図見てる!?

 もしかして、長老エルフしか外の地図見られないのか!?

 言っとくけど、あと少ししたら、東の人間たちはここまで領土広げてくるからな!

 そうなったら、即刻地獄! ほんとにエルフ陵辱編が始まる!

 そういう不幸なやつ、お腹痛くなるからやめてくんない!?」

「私はお腹一杯になるけどね!」


 なぜか、イスカに邪魔される。

 とはいえ、いいところで区切られた。

 長老エルフの館で見つけた地図を広げたのを見て、エルフはざわついている。


「ニンゲンの言うことなど信用できるものか――」「そう簡単に変わることなどできるはずが――」「魔女どもがっ、侵略しておきながら好き勝手を――」「だが確かに我らの領土は、年々狭まって――」


 少しずつだが、場が混沌としてきた。

 プラスもマイナスも、希望も絶望も、いい感じに混ざってきた。


 ここだ! 勝機はここだ!

 【喉】を全力で解放して、【逆接】し続けてやる!!


「おまえらは少し前の俺だ! 形のないものにおびえ、ありもしない恐怖に対策し、意味のない我慢を続け、袋小路へ向かって逃避し続ける! ああ、確かに伝統に従っていれば、エルフの社会は保たれる! それこそ、エルフにとっての義務であり幸せだろうな! ああっ、わかる! その気持ち、確かにわかるさ! 変わるのは怖い! 現状維持は心地良い! きっと誰かが変えてくれる! 一人では動けない! ――けどっ、けど! 子供のころは違っただろ! このエルフ文化の矛盾を感じなかったか!? 里の造りに違和感はなかったか!? 教えが理不尽だと思わなかったか!? 外の世界に憧れなかったか!? 一人でも、どこまでも冒険できると思わなかったか!? そういうときが、おまえたちにもあったはずだ! それを少し思い出すだけでいいんだ! 大人になって間違えるのが恥ずかしいのはわかるさ!! ――けどっ、けど! 間違えないよう間違えないよう保身に走る姿がかっこいいと思うのか!? 中身のない笑いを見せ付け合って安心するだけの関係が幸せか!? おまえたちのやっていることは全部中身がないと思わないのか!? ああ、わかってる。俺だってわかってるさ。俺の言っていることは絵空事、綺麗事、子供の理論だって。俺が滑稽に見えるよな、恥晒しに見えるよな、哀れに見えるよな! ああ、それは間違っていない。俺は滑稽で、恥さらしで、哀れだ! ――けどっ、けど! いまの俺は生きてるって心の底から言える! 滑稽にはなりたくなくて、恥はかきたくなて、可哀想なものを見る目を向けられたくなくて、おまえたちのように生きていたときの俺は、死んでいるのと同じだった! か細い呼吸で、目立たないように目立たないように植物のごとく生きてた! 種族という群れに飲み込まれ、俺という個人なんて存在は生きてなかった!! 何も前に進んじゃいなかった!! ――けどっ、けど! おまえらもそれで本当にいいのか!? そんな人生で本当にいいのか!? 少なくとも俺はっ、そんなお前たちを見たくない! だから、俺は叫んでるんだ! 俺はいくらでも笑われてもいい! 俺は希望あるおまえたちが見たいんだ! おまえたちが変わってくれるなら、俺は何だって叫ぶぜ!! もちろん、社会っていうのはそう簡単に変えていいものじゃない。伝統というのは誇りであり信念。形がないとわかっていても、それでも敬うべき過去の偉人たちの教えの集大成。その対価に多くの血が流れ、悲しみだけが残るかもしれない。わかってる。わかってる――けど!!」


 【喉】は最高潮に震えている。

 情熱が炎となって、脈打っている。

 よくわからない魔力とやらを全て注ぎ込むならば、いまだ!


「――けど、それでもっ、俺はァ!! おまえたちを扇動する! おまえらが立ち上がるまで、叫び続ける! 心から願う! おまえらが大事に大事に守ってる心のうちにあるものを引っ張り出すまで、ずっと言い続ける! 心配するなっ、俺が保証する! 俺に任せろ! おまえエルフたちの世界は変わる! 俺が人間らしく生きるのをやめて、自分らしく生きることを決めたように! 誰の世界だって絶対に変わる! だから、おまえらもエルフらしくに囚われるのはやめて、自分らしくを見つけようぜ! せっかくの長い人生だ! もっともっと楽しく幸せにやっていこうぜ!? なあ――!!」


 ざわめきは膨らんでいく。

 俺の【喉】の力は、一方的に洗脳することはできない。

 けれど、きっかけを与えることはできる。

 染み込ませる手助けはしてくれる。


 そして――


「し、しかし、里が活性化し領土が広がったとしても、ニンゲンに目をつけられる。

 見つかれば、排斥される……! 自殺行為だ……!」


 とうとう、俺の話を検討する意見が一つ出る。


「そんな心配は必要ない! 必要ないんだよ!!

 そのときは俺とイスカが戦うに決まってるだろ! 

 俺とイスカが占領したんだ! いま、俺とイスカが王だ!

 自領を侵す敵がいるのならば!

 王である俺たちで何とかしてやるに決まってる!!

 ニンゲンとやらがおまえらを排斥しようとしたら、俺らが戦う!!」


 俺は自らの戦力であるモンスターに咆哮をあげさせる。

 エルフたちの迷いは加速する。

 

「おまえたちはニンゲンなのに、ニンゲンと戦うのか?」

「いや、ニンゲンとは明らかに違う。この瘴気は……」

「しかし、絶対におまえらが守るという保障なんてない……!」

「か、勝てるのか? おまえたちならばニンゲンに……」


 そこへ俺は畳み掛ける。

 いつか騙りかけられた言葉で、彼らに語りかける。


「戦うに決まってる! 俺たちの力は知ってるだろ!

 俺たちならば、おまえたちを排斥しようとする人間を殺してみせる!

 国ごと、ぶっ殺してやる! それが俺たちを王にするということ!

 見ろっ、俺はそうするだけの力と邪悪をかね揃えている! 

 だから、おまえたちエルフは戦っていい! 自由に生きていいんだ!!

 もう遠慮しなくていいんだ……!!

 だから正直に、心の欲するままに、魂が叫ぶ声を、俺に聞かせてくれ!!」


 その叫びを聞き、大人エルフたちは唖然としていた。

 一瞬だけ静寂が里を支配する。


 その静けさを切り裂き、一人の子どもは言う。


「ぼ、僕はニンゲン(?)の兄ちゃんの言っていることわかる気がする……」


 そして、エルフ同士の言い争いが始まる。


「なにを馬鹿な……、あのニンゲンの無責任さがわからないのか……?」

「けど、大人たちと違って、心の底から飾りない言葉だ!

 兄ちゃんは嘘をついてない! 兄ちゃんは心を覆い隠してない!

 なにより、たったの一言も迷ってない!!」

「あれは何も考えていないと言うんだ……!」

「大人たちと全然違う! 兄ちゃんは本音で向き合ってくれてる!!」


 その最中、一人の子供が俺に聞く。


「もう閉じこもっていなくてもいいの!?」


 俺は間髪入れず、その期待に応える。


「鎖国、駄目絶対! 敗戦フラグだからな!」

「これからは外に出て遊んでもいいの!?」

「森の外の島の外の世界の外までっ、今日から毎日冒険しようぜ!」

「海にまで行ってもいいの!?」

「ときは大海賊時代だ! 秘宝は妄想で補え!!」


 子供たちは俺を理解してくれようとしていた。

 ニンゲンやエルフなんて種ではなく、俺という個人と話してくれていた。

 それが堪らなく嬉しかった。


 少しずつエルフたちの意見が変わっていく。

 流れが俺のほうへときているのがわかる。

 子供たちに釣られ、大人たちも少しだけ俺に寄ってきていた。


 ざわめきが最高潮に達していく。

 賛成と否定が入り乱れ、興奮と静止が飛び交う。

 もはや、ここに水面のような精神を宿していたエルフなどいない。


「――ふひっ。まっ、60点かな。ジンさん、あとは私がやるね」


 それを見て、イスカは笑い、俺の前へと出た。

 ならば、演説はここまでだ。

 そして、その採点の可否を問う。


「60点、なら――」

「――ギリギリ及第点。魔力のほうも、いまのお話でギリギリ溜まったよ。

 よくエルフたちの心を動かしたね。

 希望だけでも絶望だけでもなく、私たちの存在をも認めさせた。

 残りは私に任せて。あと40点くらいなら、力と絶望でまかなえるから」


 そう言ってイスカはぱちんと指を鳴らした。

 それと同時に、地響きがエルフの里に鳴り響く。


 そして現れるのは魔獣。

 俺を一度殺した破壊の意思が恐竜の形を取ったかのような化け物。

 その魔獣は一匹だけでない。

 十に近い魔獣が木々の間から顔を出し、その獰猛なあぎとを大きく開ける。


「な、この魔獣は――!?」


 エルフたちは怯え竦む。


「壊れた結界ってこの魔獣を抑制するためのものだったんでしょ?

 ねえ、これからどうやって、魔獣たちに対抗するの?」

「そ、それは――」

「私かジンさんがいないと、全員食われるってこと。

 ちゃんと、わかってる?」


 イスカは悪く悪く笑う。

 その姿は、どう言い訳しようと魔王そのもの。

 これから訪れる絶望を否応なく頭に浮かばせる笑みだ。


 俺たちを否定していたエルフたちは息を呑んで黙り込む。

 そして、次の瞬間、魔獣は吼えた。

 いまにも食いかからんと、里の中へと侵入しようとする。


 魔獣の恐ろしさを知っているエルフたちは悲鳴をあげて怯えた。


「ふひっ、ふひひ! 『絶望』と『希望』が合い混ざって、丁度良い感じ!

 いまなら、十分!」


 イスカは身の魔力を回転させる。

 俺が転換した『希望』の魔力、イスカが転換した『絶望』の魔力。

 二種の魔力をかき混ぜ、膨大な魔力を膨らませる。


 そして、魔力を調理する独特な歌を叫ぶ。


「いっくよー、大魔法発動! 

《かーえーれ! かーえーれ! かーえーれーーー!》

 ――精霊結界『喧嘩腰のやつはお帰りくださいバリアー』!!」


 発動する魔法は、結界の魔法。

 壁のような光の津波が里の中心から、外へと向かって広がる。

 その結界は俺たちやエルフには作用しない。


 弾くのは魔獣だけだ。

 あえて俺が【喉】でコントロールしていない凶暴なモンスターだけを、

 『喧嘩腰のやつはお帰りくださいバリアー』は外へと押し出していく。


 一瞬にして全ての魔獣は里の外へ弾き飛ばされた。

 

 結界展開は成功だ。


 もし、この結界を張ることができなければ、

 もし、それ以前に結界のための魔力すら溜まらなければ、

 俺たちはエルフたちを絶望に落として虐殺するしかなかった。

 どうせ死ぬ命なら、有効利用するしかなかった。


 だが、その選択肢は消えた。

 これで俺たちは最善の選択肢を取れる。


「この結界は……! そ、そんな馬鹿な――」


 エルフたちは展開された結界を見て驚く。

 それをイスカは自慢しながら胸を張る。


「君らの結界の残骸見て、ぱくったよ!」

「ぱ、ぱくった……? 我らエルフが、何年もかけて作る魔法結界だぞ……?」

「うん。まじまじ。

 これでも世界に一人のレベルの魔法使いだからねーっ、私!」

「世界に一人……? まさか、おまえは、あの――!?」

「そんなことどうでもいいから、ちゃんと私の話を――」

「そんなこととはなんだ! その結界が本当ならば、『西』の大地に住むエルフにとって念願の――」

「ああ、そんなことより・・・・・・・聞け! 愚かで矮小なるエルフどもよ!

 これで私たちのさじ加減一つで、おまえらは絶滅するとわかったか!

 捕食死はすっごい辛いぞー! 本気で辛いぞー!!

 ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと支配されろー!!」


 エルフの言うことなどお構いなしに、イスカは自分の言いたいことを言う。


「お、脅すのか……!?」

「んー? 当たり前じゃん?

 君らが『伝統』や『教え』なんで力で無理やり子供たちを抑えつけようとするなら、

 私らも暴力で君らを抑えつけるのも当然のことだよねー?

 これが嫌なら、君らもそういうのやめたら?」


 当たり前のように、ざっくりとイスカは大人たちを責める。

 その正論を前に、多くのエルフが言葉を失った。


「ふひひっ! そう変な顔しないで、もっと楽に考えなよ!

 私たちに支配されることは悪いことばっかりじゃないって!

 むしろ、私たちのおかげで、おまえらの長年の悩みが解決する!

 おまえらを脅かす魔獣なんて、ジンさんがちょちょいのちょい!

 周りのモンスターたちのように仲間にしてくれるかもよ!

 代償はちょっと、お祭りするだけ! 何迷ってんのか、本気でわかんないな!!

 私たち、本当に君らが楽しくやってくれたら、それでいいんだから!!」


 脅しに脅したあと、イスカは逃げ道を与える。


「ほ、本当に、何も求めないのか……?」


 エルフたちにすがりつかせる。


「私たちが求めるものは、おまえたちの心の高鳴り! 里の活性化!

 希望と絶望がほどよくミックスされた感情――のみ!

 正直、何も求めてないのと同じだよね!」


 そして、端的に要求を提示し直す。

 再度提示された条件は、先ほどの脅しもあってか、

 誰も容易には跳ね除けることができない。


 返答したのは批判していたエルフたちでなく、

 先ほど地下室にいた非戦闘員の女エルフたちだった。


「あのー……、たぶんですけど、そこの二人とも、

 そんなに悪い子じゃないと思います」

「ちょっと頭おかしいとは思うけど……、

 何というか、悪ガキ二人――? って感じです。

 何より、お二人は先に対価をくれました。

 結界を張ってくれましたよ……?」


 彼女らの評価は穏やかなものだ。

 俺の情けない姿を見ているせいかもしれない。


「ふふーひひひ! そうだね! 

 もうバリアー張っちゃったから、絶対に従ってもらうよ!

 貴様らにはー、希望と絶望の間を永遠に彷徨ってもらうー!」


 イスカは彼女らの話に乗る。

 ようやく、子供以外の賛同者を得た。


 俺は好機だと感じ、最後の手札を切る。


「セイ! まず、おまえが先導しろ!」

「え? 僕がですか? ん、んー、仕方ないか……」


 驚きながらも、セイは渋々とイスカの前で膝を突き、かしずく。


「えーっと、そのー……、

 その強大なる魔力で、里を守って頂き感謝します。我が王たちよ。

 このセイリィン・アルセイクス、王たちに仕えることを誓います。

 少なくとも、僕の友達たちは王を歓迎しますよ。ようこそ、エルフの里へ」


 先導し、扇動する。

 セイに釣られ、次々と子供エルフたちは声を上げる。


「二人が王様でいいよ! あの凄い結界、張りなおしてくれたんだから!!」

「流石、王様! あのセイリィンにここまでさせるなんて!」

「王様! 外に連れてって! 一緒なら安全だよね!」

「王様! 王様! 王様!!」


 続いて、地下室にいた女エルフたちも声をあげる。


「まあ、あのヘタレな王様なら、酷いことにはならないでしょ」

「悪い子じゃないのは、なんとなくわかるわ……」

「何より、一人も死人出ていないからね……」

「結界まで直してもらったし……」


 俺たちを支持する声が、ゆっくりと伝播していく。

 そして、一人の年老いたエルフが、俺たちの前へと出てくる。


「ニンゲン……、代表して詳しく話をさせて欲しい……」

「ニンゲンじゃなくて王っ、もしくは女神様か聖女様って呼ぶように!!」


 イスカは容赦なく、呼び方を強制させる。


「ぐぬう……。王よ、今一度条件を確認させて欲しい……」


 それに厳格そうなエルフは従った。

 それを見て、周囲に動揺が走った。


「長老まで……、あのニンゲンに……」


 どうやら、長老さんだったようだ。

 里の重要人物が折れたことで、一気に周囲の流れは変わる。


「くそっ、仕方がないのか……。ニンゲンに……」

「いや、あれニンゲンじゃないだろ。もっと違う何かだと思うが……」

「悪い話じゃない。ただ、少し明るくなれって話だ」

「どうせ、限界ギリギリの生活だったんだ。構うものか」


 大人エルフたちも流れに迎合している。

 選択を突きつける最良のタイミングだと思った。

 俺はイスカと共に並び、腕を組み、高らかに宣言する。

 自らが王であることを。


「俺とイスカを王と認める者はかしずけ! 

 認めんやつはもう面倒なので、結界の外に放り出すから!!」


 こういう脅しは余り好きではない。

 できれば誠実な訴えだけで、暴力なしで認めてもらいたかった。


 その言葉を聞いた人々は、この場からでも見える結界の外の魔獣を見て、

 顔を歪ませながらも膝を突いていく。


 ほぼ全員がかしずいたのを見て、俺は演説を締める。


「ああ! たったいま、『大天使イスカ王国』は建国された!

 おまえたちは記念すべき【始まりの民】だ! 

 エルフなどニンゲンなど関係なく、おまえたちそのものを俺は歓迎する!

 新たな神話の礎となることを、誇りに思うがいい!!」


 俺の【喉】から漏れた叫びが里中に響いた。


 同時に、エルフたちの歓声が少しだけ上がった。特に子供たちの声は大きい。

 もちろん、多くのエルフたちの顔は苦渋に染まっている。

 ただ、不満に染まりながらも、確かにかしずき、王を認めている。


 ――たった一人も失うことなく、王であることを認めさせた瞬間だった。


 奇跡でも感動劇でもなく、稚拙な叫びと暴力による茶番。

 だが、確かにここへ新たな国の足跡が生まれたのは間違いなかった。

 エルフの里とは全く性質が逆の国の始まり――


 そして、それがこの腐敗した異世界での俺の役目だと直感した瞬間だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ