禁煙
最後になったタバコをくゆらせながら、俺はのんびりと空を見上げていた。
たばこ税がバカ高くなってしまい、いよいよ俺は禁煙することに決めた。
思えば、タバコとは長い付き合いだ。
大学にはいってしばらくし、20が過ぎたころ、俺は初めての煙草を吸った。
苦くて咽て、だも、俺も大人になったんだという、謎の充実感の味がした。
もっとも、肺にはかなりのダメージを与えるので、本当は吸うべきではないのだろう。
だけど、俺はすっかりと煙草の虜となっていた。
以来30年。
結婚、出産、育児と経験して、今では子供も20歳。
俺がたばこを小さい時から吸っている影響か、あまりタバコに抵抗はないようだ。
だが、金がもったいないと言って、吸ってはいない。
俺もそれでいいと言い続けている。
だから、俺もこれで禁煙だ。
最後の煙草の煙が、白い翼となって空へと吸い込まれると、灰皿へと押しつける。
「やっと、お別れだな」
長い間、お世話になりましたと、心の中で煙草盆に言った。