ある日のボク
短編です
※閲覧注意:今回の内容は不快な思いをする方もいらっしゃるかと思いますので、閲覧注意です!
ふと、部屋の片隅に置いたレジ袋が気になった。
「あれ・・・これ」
持ち上げてみると少し重い。中身は・・・生もの?ちょっと匂う。
袋の外側に、日付が黒のマジックペンで書かれている。明らかにボクの字。あぁ、記憶が少しずつ甦る。
三週間ほど前、小分けにしたんだった。そのうちの一つだ。
昨日までに全部食べきったと思ってたけど、まだ残ってたんだ。しかも、冷蔵庫に入れてたと思ってたんだけど、なぜか外に出てる。
記憶を引っ張り出すと、昨日のボクが、冷蔵庫から出した・・・かもしれない。
ずっと同じものを食べてたから、最後のはどう処理しようかと考えて、冷蔵庫から出して、そのまま出勤したんだっけ。あぁ~。もったいない。
夏で外出するときは空調切っちゃうから、まぁ当然と言えば当然だよね・・・。せっかく内臓を抜いてもらって、食用サイズに加工してもらったのに。
・・・一応、ね。
袋を開けると、いわゆる異臭と呼ばれるほどの強烈なにおいが部屋に充満した。
うわぁ・・・これはやばい・・・。でも、熟成の進んだ肉と思えば・・・・いやいや、普通に食べてもこれはお腹壊すよねぇ。
あぁぁ、こまったな・・・捨てたくはないんだよなぁ・・・。でもこれは確実に体調を崩す。
頭の中の天秤がゆらゆらと揺れる。どうしようかなぁ。
仏壇の上の彼の写真が目に付いた。
「ねぇ、どう思う?ボクとしては、食べてあげたいんだけど、体調崩したら会社の人に迷惑かかっちゃうし、ついこの間、有休使い切っちゃったんだよねぇ・・・」
もちろん写真だから返事は無いんだけど、その写真の彼と目が合った。あぁ、やっぱり君もそう思う?無駄にするのは良くないよね、ボクが食べたいと思ったから、わざわざ腐りやすい内臓を抜いてもらったんだもんねぇ。
あぁ、でも、心臓、あれだけは、処理してもらったその日に、加工場で食べさせてもらったんだよね。やっぱり鮮度が命だからさぁ。あれは美味しかった。今でも思い出すと涎が出てくるよ。
あぁ、いかんいかん、またトリップしてしまっていた。いつも君に、言われていたよね、勝手にボクの世界に入るなって。またやっちゃった。
君がボスを怒らせたって聞いた時は、海に沈められちゃうんじゃないかって思ってヒヤヒヤしたんだよ。でも、君を捕まえたのがボスでよかった。他の人だったら確実に海に沈められてたよ。でもボスはボクの事大好きだから、ボクの言うことはすぐに聞いてくれるんだ。興味本位だったけど、普通の会社で普通に稼いでみたいって言ったらソレも許してくれたし。なんだかんだでボスは良い人だよ。怒らせたのはまずかったけど。
最期の時に君と目が合ったのに、目を逸らしてごめんね。ボクに縋りついてくる君の目が今で忘れられないんだ。でも大丈夫。君は今ボクの中で生きているよ。今までよりももっと近くで、もっと深く、ボクの一部として、一緒に生きていこうね。
あぁ、そう思うと、ちょっと傷んだだけなら、今まで通り処理してしまおうかな。大丈夫、ボク、結構胃腸は強い方なんだ。君を強く感じられると思えば、体調を崩すくらいなんてことないよ。
会社はもしかしたら休まないといけないかもしれないけど。ボスがきっとどうにかしてくれるよ。大丈夫。
最後の部位は、どう処理しようかな。
——一つのカタチ——
これを表す言葉を私は一つしか知らない。




