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【完結】捨てられ令嬢ですが、後悔するのはそちらですよ? 〜冷酷な王子が私にだけ甘々です〜  作者: 鬱沢色素


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16・彼に渡すプレゼント

「どうしよう……やっぱり、失礼なことを言ってしまったんじゃ……」


 執務室から出て、急に後悔と怖さが押し寄せてきた。


 今はまだ戸惑いの方が大きいけど、ライナス殿下からプレゼントを頂くことは嬉しい。それは間違いない。

 なのに他の人ではなく、あなたが選んでくれたプレゼントがいい……なんて、彼に失礼すぎだ。


「謝りにいくべきかな? でも、どうやって謝れ──いえ、感謝の気持ちを伝えれば……」

「アリシア様?」


 ぶつぶつ呟きながら廊下を歩いていると、向こうからミレーユさんがやってきた。


「ミレーユさん……」


 私もそう彼女の名前を呼んで、立ち止まる。


「ライナス殿下には、もうお会いになられたんですか?」

「はい。それで……今日もプレゼントを頂きまして」


 そう言いながら、私はミレーユさんに彼からもらった指輪を見せる。


「わあ〜! 蒼瑠璃(そうるり)じゃないですか!」


 すると一目見て分かったのか、ミレーユさんが声を弾ませる。


「知っているんですか?」

「はい! とても高価な指輪です! 永遠の絆を誓うため、男性から女性に贈られるのだとか」

「殿下もそうおっしゃられていました」

「それをわざわざ贈るなんて、殿下も意外とロマンチストですね〜! アリシア様と殿下にぴったりだと思いますよ!」


 両手の指を組んで、うっとりとした顔をするミレーユさん。


「はい、とても有り難いです」

「そう言う割には今のアリシア様、浮かない顔をしているようですが?」


 さすがミレーユさん……私の考えなんてお見通しみたいだ。


 どうしよう。私の悩みを打ち明けても、彼女を困らせるだけんじゃ……。


 そう思いかけるが、一人で処理出来る気がしない。このまま、ごちゃごちゃ悩むだけだろう。


「実は……」


 意を決して、私は先ほどの執務室でのやり取りをミレーユさんに話した。


「なるほど……」


 話を聞き、ミレーユさんは顎に手を当て、一頻り考える。


「確かに、毎日プレゼントをもらっても、有り難さが薄れてしまうかもしれませんね。アリシア様が戸惑うのも仕方がありません」

「でしょう? でも、理由はそれだけではないんです」

「というと?」


 目を丸くするミレーユさんに、私は話を続ける。


「私は……ライナス殿下にもらってばかりだなと思いまして」

「え?」

「プレゼントだけではありません。毎日着る服やお食事だって……全て、なに不自由なくやらせてもらっています。なのに私はもらってばかりで、なにもお返しが出来ていません」


 それが悩みの本質。


 実家で虐げられていた期間が長かったためだろうか、少し親切にされるとすぐにお返しをしないといけない気分になる。


 私から出来ることは少ないけれど、せめてライナス殿下にも同じように喜んでほしかった。


「アリシア様は、とても謙虚な方なんですね。服や食事についても、殿下の婚約者なら当然受けるべきものです。あなたが罪悪感を抱く必要はないんですよ」


 私を安心させるように、ふんわりと微笑むミレーユさん。


「ですが、お返し……というのは良い手かもしれませんね。そんなことをしたら、今でも溺愛一直線なライナス殿下が、さらに溶けてしまいそうなくらいに甘々になりますよ」

「甘々……かはともかく、ミレーユさんがそう言ってくれて、安心しました。ですが、どうお返しすればいいんでしょうか? 出来れば、形あるものをプレゼントをしたいと思うんですが」

「イヤリングとか、どうですか? 魔導具もいいかもしれません。どちらも、殿下は喜んでくれると思います」

「あまり、お金は使いたくないといいますか……」


 婚約者になるにあたって、定期的に私的に使うためのお金を給付してもらえることになっている。


 だけど今まで、そんな経験はなかったし、もらってもなにに使えばいいか分からない。


 それに、もしもの時のためになるべく節約したいからね。

 少額ならともかく、城の予算から割り当てられたお金を使ってプレゼントを買うのも、なんとなく違う気がしたのだ。


「とはいえ、粗末なものを贈っても、殿下は喜ばないでしょう。なにをプレゼントすればいいんでしょう?」

「そもそもアリシア様からのプレゼントだったら、殿下はなんでも喜ぶと思いますが……そうですね……」


 二人でうーんうーんと頭を悩ませいていたが、ミレーユさんが突然「そうだ」と手を打ち。


「アリシア様、裁縫は出来ますか?」

「はい、人並みなら」


 なにせ、実家では散々やらされていたのだ。一人で黙々と作業をするあの時間は、それなりに好きだった。


「洗濯や掃除も完璧でしたので、もしやと思っていましたが……よかったです。それならば、ライナス殿下のためにお手製の服やハンカチを作って、贈ればいいんじゃないでしょうか?」

「お手製の……ですか」


 それはいいかもしれない。


 自分で編むなら、お金もそれほどかからないだろう。

 手作りというのも真心がこもっていそうで、プレゼントとして最適な気がする。


「そうですね……私、ライナス殿下のために服を編みます! 気に入ってくれるかは、分かりませんが」

「絶対に気に入ってくれますよ! だって愛しの婚約者からの手作りですよ? 仮にライナス殿下でなくても、喜ばない男性はいないですってば!」


 決意する私の背中を、ミレーユさんが押してくれた。


 そうと決まれば、まずは裁縫道具と材料だ。


 裁縫道具はお城の中で余っているものを使わせてもらえるかもしれないけど……材料は自分で調達したい。

 勝手に外出したら怒られそうだし……そのためにはまず、編み物の材料を買いに行くために、ライナス殿下の許可を取りにいかなければ。


 どんなものを作るか決めてから、明日にでも彼に聞きに行こう。

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