第6話 始発点
「ハッ……ハッ……ハァッ……!」
冒険者ギルドの洗礼を受けた次の日、僕は王城の周囲でランニングを始めた。
ここは剣と魔法のファンタジー世界で、人に仇名す魔物が存在し、それを倒す冒険者がいることをようやく自覚したのだ。
そして、なぜ毒を盛られたのか、王子なのに護衛の一人もついていない理由が理解できた。それは――守る価値がないからだ。
魔道具の発展しているこの国では、燃料となる魔石が大量に要る。それを落とす魔物を倒すことが必要不可欠であり、戦闘能力を持つ者が重宝される。
一方、転生前のサウザーは、戦うことを拒絶し、学問の道へと逃亡した。勉強も大事だが、王族としては民を引っ張る人物であることが望ましいため、相応の力が求められるのだ。
研究の成果でもあれば話は違ったが、あいにくそういったものは全くない。
弱いことが罪だというのなら強くなるしかない、そう思って走り込みを始めたが、ほんの数分で息が切れてしまった。
「この体……貧弱すぎる」
転生前であれば一時間以上はぶっ通しで走れたのだが、今は10分が限界。わかっていたことではあるが、やはり辛い。
それでも――強くなるためにはやらなければならない。
『ステータス……オープン』
ステータスカードを持って唱えると、空中に近未来的なディスプレイのようなものが出現した。
名前:サウザー・アトラス・イーリスフロル 16歳
ジョブ:聖騎士Lv1
生命力 15/15
魔力 84/96(+20)
攻撃力 12
防御力 17
敏捷性 9
知力 38 (+12)
【スキル】
水魔法Lv3 毒耐性Lv1 集中Lv3
【ユニークスキル】
メビウスリングLv1
【戦技】
グッドスリープ
水魔法Lv3:魔力+20 水属性の魔法が使えるようになる 〈氷のエレメント〉
毒耐性Lv1:防御力+5 毒のダメージを軽減する
集中Lv3:知力+20 集中力が上がる 〈集中切断〉
グッドスリープ:ぐっすり眠り、生命力と魔力の回復速度を上げる
メビウスリングLv1:無限の輪を宿し力を循環する
これが、現時点のステータスだ。他と比較して魔力が高いのは、王族として生まれたからだろう。スキルは【水魔法】と【集中】、【毒耐性】の3つで、二つは魔法使いとしては有用だ。……魔法使いとして、ならば。
僕のジョブは聖騎士で、文句なしの強役職だ。攻撃力と防御力が高く、前線での戦闘に向いている。
ステータスカードは冒険者ギルドでしか手に入らない。あそこで登録するのがもっと早く、それこそ幼い頃から知っていれば、剣の道を選んで真っ当に強くなれたのでは?と思ってしまう。
ユニークスキルなるものがあったが、それは転生特典だと思われる。テキストを読んだだけではさっぱりわからないが、一通り使ってみてわかった効果が現時点で二つ。それは……
・生命力を魔力に、魔力を生命力に変換する(交換レートは1:1)
・生命力が最大値を超えると、傷や体力が急速に回復する
といったものだ。
休憩がてらスキルを発動する。今やるのは当然、有り余る魔力を生命力へと変え、特訓を続けることだ。
(メビウスリング、発動!)
「ぬぐわぁぁぁあ!」
生命力が最大値を超え、肉体の修復が行われる。それは、走り続けて酷使された筋肉にも及んだ。活力がみなぎる一方、急激な再生によって筋肉が悲鳴をあげる。
数分のたうち回ったが、おかげで体はまた動くようになった。これから生き地獄を繰り返すのかと気が滅入るが、そうしなければスタートラインにすら立てない。
強くなるためには、まず体力をつけなければ。
僕は自分にそう言い聞かせ、歯を食いしばってランニングを再開した。
イーリスフロルの王族補正:魔力+50
右の()は努力して上がった分です




