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不遇王子は脳筋になりたい  作者: 田中恵人
プロローグ
2/14

第2話 不思議な少女

 「ここは……なんだ?」

 辺りには無限にも思える暗闇が広がっていて、自分という存在があいまいになってくる。一歩前に踏み出し、しばらく歩いていると、すすり泣く声が聞こえてきた。

 

 『どうして私ばかり……誰も私を見てくれない……。何をしたっていうのよ』

 

 近くに行くと、発生源の姿が見えた。座り込んだそれは、腰まで伸びた紫髪にヨレヨレのドレスを身に着けた美少女で、サファイアの瞳からはポロポロ涙がこぼれていた。

 他に見えるものもないため、近づいて話しかける。

 

 「やあ、ここってどこか知ってる?」

 『ふぇ⁉あなた誰⁉』

 「まあ落ち着いてよ。僕は悪い人間じゃないよ」

 『……』

 ジト目で僕を見つめていたが、やがて観念したのか、ポツポツと語り始めた。

 

 『………あのね、私、王族だったんだ。だけど、突然死んじゃって。気づいたらここにいたの』

 「なるほど、つまりここは死後の世界だと?僕死んでないんだけど」

 『そうなの?—―じゃあ、ここは私の魂の世界だと思うの。なんであなたが来たのかはわからないけど』

 どうやら今いる場所は、少女の魂の世界だと言う。僕が入ったことを不思議に思ったようで、神の計らいによって転生しに来たと伝えた。

 

 『そっか…じゃあさ、あなたが私の体に入れば、生き返るってことかな。だったら、私の代わりに生きてくれない?』

 「元よりそのつもりだけど…君は復活しないの?僕と一緒に来れば、多重人格みたいに生きれると思うんだけど」

 『……うん、いいの。生きてた時は過度な期待と失望で病みそうだったから。あなたなら私よりかはマシなんじゃないかって』


 諦めたように呟いたその時、真っ暗な空間に、光が差した。最初は遠かった光が、だんだんこちらに近づき、間もなく僕と少女を包む――はずだった。 

 立ち上がった少女が僕を光へと突き飛ばし、当人は闇の中へと消えてしまった。

 そして、光が僕一人を包むと、意識が現実へと引き戻される。先行きに不安を覚えながらも、異世界への期待に胸を躍らせる。

 次第に光が晴れ、目を開くと、最初に映ったのは、豪華な天蓋(てんがい)と、僕の顔を覗く金髪の美しい天使だった。


 「良かった……!目を覚ましましたの」

 

 ゆっくり体を起こし、対面する。日本では見たことのないほど整った容姿に、エメラルドの瞳が僕を射抜いていた。そして――あまりの美しさに、思考が停止する。やはり彼女はこの世に舞い降りた天使だと、確信した。

 

 「……。」

 「どこか痛みますか?」

 「ううん、大丈夫。セシリア、助けてくれてありがとう」

 「どういたしまして。何か欲しいものはありますか?」

 

 僕は彼女の名前を呼ぶと、すぐに僕を気遣ってくれた。とにかく今は状況を整理する時間が欲しいので、一人になりたいと伝える。

 

 「……そうだ、お腹が空いてきたから、サンドイッチを持ってきてくれるかい?」

 笑顔を浮かべて頼めば、彼女は「お水も持ってきますわ」と言って急ぎ足で部屋から出ていった。


 「相変わらず天使だったな……()にとっては初対面のはずだけど」


 今退出した彼女は、ここイーリスフロル王国随一の治癒魔法の使い手であり、【聖女】の称号を持つ。そして、この僕――第二王子サウザーの婚約者だ。

 部屋に置いてある鏡には、短く切り揃えられた紫髪に、青い瞳の男の子が写っていた。

 

 「……?暗闇で会ったのは女の子だったよな。でも体はどう見ても男。それで生きるのが嫌になったのかな?」

 

 体と心の性が一致しない、トランスジェンダーかもしれない。そりゃあ、僕に体を明け渡すよな、と納得した。

 静まり返った一室で、眉間に指を添える。眼鏡(半身)がないせいで落ち着けないが、ひとまず記憶の整理を始めた。


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