第13話 学園案内
入学式兼始業式を終え、僕はヤタガラスに学内を案内することになった。
セシリアは久しぶりに会った友人たちと話に花を咲かせていたので、暇になったのだ。
「サウザー、お前には友達いないのか?」
「まあそうだね。去年は王子のコネに縋る輩が接触してきたけど、半年もすれば離れていったよ」
「そ、そうか…」
気まずい空気になってしまったが、僕としては全く気にしていない。何せ”親友”の偉大さを知っているからこそ、上辺だけの関係に価値はないと言い切れる。その考え方、王子としてはどうなの?とは思うけど。
そんな心の内を知らないヤタガラスは、話題を変えてきた。
「……なあ、私の制服姿、似合ってるか?」
今のヤタガラスは紺色のブレザーに同じ色のロングスカート、そして背中の黒翼という、ひと昔前のスケバンみたいな恰好だ。
全体的に暗めな色合いだが、制服を押し上げる双丘が女性らしさを主張している。
「確かオーダーメイドの制服なんだっけ?君の個性がよく表れていて、とても似合っているよ」
「そ……それほどでも……ないこともない」
「どっちだよ」
てっきり容姿について褒められ慣れていると思ってたが、想像以上に恥ずかしがっていた。先程とは別の意味で気まずい雰囲気になりそうだったので、場所を変えることにした。
校舎の中に入り、人がいなさそうな教室へと足を踏み入れる。
「ここが教室だね。クラスごとに分けられていて、基本的に朝のホームルームとか、イベントの通達などが行われるよ。まあ、僕たち2年生は専門性の高い授業が多いから、ホームルーム以外ではほとんど使わないかな」
「この学園って3年制なんだっけ?あと2年は毎朝集まらなきゃいけないんだろ。面倒くさいな」
「クラスメイトの交流の場だからねぇ……」
確かに、朝早く起きて集まっても、授業があるのは午後、なんてこともあるしね。そういう時はサボればいいと思うのは僕だけかな?
教室を出て渡り廊下を歩いていく。この学園は結構広く、先程兄さんがいた噴水広場の他に、辺り一面に広がる花壇とか、それを眺めながら紅茶を飲むためのガゼボなどが点在している。
毒を盛られてからはもう二度と紅茶は飲みたくないな……いい感じの緑茶とか探してみようかな。
「ここが講義棟だね。教養科目とかの座って受けるタイプの授業は大抵ここで行われる。ただ、3階からは錬金術や魔道具、エンチャント等の実習があって、かなり人気があるんだ」
「前二つはうちの国にもあるな。けど、エンチャントって何だ?」
「武器や防具に施す特殊な強化技法だね。…お、そろそろ実習室に着くよ」
錬金術の実験室に入ると、薬品特有の匂いが鼻腔を刺激する。実験中の先生に話を聞くと、今年はポーションがアツいらしい。
「君は編入生だと聞いた。錬金術を究めてみないかね?」
「遠慮しとくわ。昔かじったことがあるけど、私にそっち方面の才能はなかったからなー。」
「そうかね…君からは並々ならぬ素質を感じるが……仕方がない。やる気のない者に勧めるわけにはいかぬ。興味が出たら私を訪ねるといい」
先生の名刺をもらい、錬金術の実験室を後にした。そのまま魔道具、エンチャントの実験室にも顔を出したが、ここでもヤタガラスは勧誘された。まだ履修する授業が決まってないので返事は保留にしたが、どの先生も期待していることがわかった。
「君、ここまで熱心に誘われるなんて……滅多にないことだよ?」
「私もびっくりしてる。本国じゃ軽視されてた技術が、ここイーリスフロル王国では重要視されてるってことだろうしな」
「それもあるだろうけど……君、ゼノビアで錬金術やってたんだって?その話詳しく聞かせて」
「……それはまた今度な」
どうも道端で話すような話題ではないようだ。ならセシリアも交えてメイフラワー家で聞くべきだろう。
その話は聞き流し、講義棟から出た。
その後、運動場や旧校舎を軽く見て回り、セシリアを迎えに行くことにした。




