第12話 始業式
僕がサウザーに転生してから1か月、学園の始業式が始まった。
大通りには紺色の制服に身を包んだ生徒やその保護者、護衛達や家紋の描かれた馬車でごった返していた。そんな様子を馬車の窓から眺めていると、向かいの席に座るセシリアがあくびをかみ殺す。
「ふあ……今年も保護者がいますわね」
「そうだね。…ところで、何で始業式と入学式が同じ日なんだろ?」
「――その方が人数が集まるからじゃね?」
運転席からヤタガラスの声が届く。護衛として外で待機しているにも関わらず呑気に話しかけてくる姿は、仕事中という自覚が欠けているように感じる。
そういや、現在は国を出て冒険者をやってるみたいだが、コイツは元々魔族の国ゼノビアの姫君なんだった。なら、従者の振る舞い方なんて知らなくて当然だろう。
等と考えている間に、校門へと着いたようだ。
王立カメラート学園。
王族貴族が主に通う学び舎で、騎士や魔導師、文官、など、就職を見据えたカリキュラムが組まれている。
この学園の最大の特徴は、成績に身分が反映されないことだ。
王族だから忖度する、平民だから単位を落とされる、等の理不尽な制度が撤廃され、身分を問わず競い合う環境となっているのだ。
…まあ、学園内だろうと、身分の壁がなくなるわけではない。それを「身分差はなく皆平等」とかいう勘違いする輩が後を絶たない。
「……ん?何か騒がしいな」
美しい噴水がある広場に人だかりができていたので、野次馬根性で見に行くことに。
そこには、新入生と思わしき足を擦りむいた桃髪の女子生徒と、それにハンカチを渡す金髪の貴公子の姿があった。
男は手当てを済ませた後、女をお姫様抱っこの態勢で持ち上げ、校舎へと向かった。
周りに集まっていた生徒らは、「さすがは王太子殿下」と持て囃していた。明らかなサクラに思わずため息をつく。
「何やってんだよ、兄さん」
「へ?あれがお前の兄貴なのか?歳同じっぽいけど」
「母親が違うからね。兄さんの方が数日早く生まれたんだよ」
「なるほど理解。…なあ、パット見新入生を助ける良い男に見えたんだが、何か問題なのか?」
「レオナルド殿下には婚約者がいますわ。それなのに他の女性に手を差し伸べることは、本来あまり良いことではなくってよ」
ヤタガラスの疑問にセシリアが答える。…が、意味は理解しても納得はしてなさそうだ。
まあ、「その程度で?」とは僕も思うことはあるけど、兄さんの婚約者からしたらたまったもんじゃないだろう。
散り散りになった生徒達を横切り、始業式兼入学式の会場へと足を運ぶ。
学園長の眠たくなる話を聞き流していると、新入生代表のスピーチが始まった。
「サウザー様、起きてくださいまし。イングリッド様がスピーチしてますわ」
「何?それは寝てる場合じゃないね」
セシリアに揺すられ、視線を正面に戻す。壇上に立ち、今後の抱負や目的等を語る姿は、王族としての覇気を感じさせた。
一通り話し終えた後、僕は惜しみない拍手を送った。それにつられセシリアやヤタガラス、そして始業式に参加する生徒達によって彼女を讃えるよう拍手が鳴り響いた。
中には教師も混じっていて、今後の彼女は安泰だろうと確信した。
いやあ……兄として誇らしいね。僕も王族として、自らを誇りに思えるよう頑張ろう。




