第11話 学園準備
セシリアに僕が異世界人の魂が入っていると伝えてから2週間が経った。
あの日以降、僕は邸宅にて鍛錬を欠かさず行い、それに感化されたセシリアも別メニューで鍛え出した。僕は無事に【鉄の拳】スキルに加え、【格闘術】と【剣術】スキルを習得した。この短期間でスキルを3つも得られることは珍しいとヤタガラスからお墨付きをもらった。
「はっ!」
セシリアの凛とした声が響く。その手には弓が握られており、放たれた矢が的に命中した。的には既に数本の矢が命中していて、練習の成果が出ていた。
「よそ見すんな!」
僕の眼前に大鎌の刃が迫る。慌ててしゃがんで躱し、2撃目を防ぐため剣を前に突き出し、受け止める。
「ぐあっ……!」
しかし、身体能力の差が大きいのか、体が後方に吹き飛ばされた。地面に手をついて受け身をとり、剣を構え直す。手加減はしているのだろうが、圧倒的に格上のヤタガラスを相手に全く敵わない。それでも、めげずに立ち上がって斬りかかる。
攻撃を受け流され、また吹き飛ばされる。そんなことを繰り返していると、メイフラワー家の騎士が昼食の時間だと告げた。
体にできたアザを魔法で冷やし、傷に包帯を巻いて出血を止める。セシリアに治してもらえば済む話なのだが、ヤタガラス曰く『自然治癒することで得るスキルがある』とのことで、応急手当をササっと済ませ邸宅に戻る。
「わたくしなら一瞬で治せるのに…ヤタガラス、いい加減に治させてください!」
「そうは言うが……学園が再開すればこんな風に鍛えられなくなるぞ。私は生徒じゃないし、今しかやらんから安心しろ」
「……。」
何だか険悪な雰囲気な中、メイフラワー公爵が待つ食卓へと座り、昼食を摂り始める。すべて食べ終えると、同席していたメイフラワー公爵が「用件がある」と言い残し執務室へ向かった。
僕たちも後を追いソファに腰かけると、一通の手紙がヤタガラスへ渡された。
高級な封筒には、自らの尾を飲み込む大蛇が刻まれていた。
「これって…私は国を出てきたはずなんだが、今更何の用なんだ?」
ヒラヒラと見せてきたそれには、ヤタガラスの故郷、『魔族の国ゼノビア』の国紋だった。これを送ることが出来るのは、向こうの王族だけのはず。どんな内容なのかとワクワクしていると、乱雑に破られた中身を見てフリーズした。
気になったので、手紙をひょいっと奪い取り確認した。
「あっ…」
「何々、『レイブン・アーク・ゼノビア、イーリスフロル王国の学園に編入し、人間と魔族の橋渡し役を務めよ。同じ年の王子と友誼を結ぶといいのじゃ!』だってさ」
「「「………」」」
手紙の内容を聞いた僕、セシリア、ヤタガラスの3人の間に沈黙が流れる。そして――
「「はああああ⁉」」
静かな部屋に、動揺の叫びが響き渡った。
「ヤタガラス、君僕と同い年なのかよ⁉」
「末尾のゼノビアって…貴女、向こうの王族でしたの⁉」
「そんな大したことじゃないだろ。…てか私、勉強できないぞ!?」
「ゴホンッ!」
阿鼻叫喚といった様子を見かねて、メイフラワー公爵が咳払いをする。第三者ならぬ第四者の介入によって、落ち着きを取り戻した。
「内容は把握したようだね。彼女は婿殿の護衛として雇ったが、学園内には生徒か関係者しか入れない。そこで、君も生徒になれば護衛任務を継続できると思ってね。向こうの王から打診がきたのは予想外だけど…ああ、学費や教材については用意してあるから、編入試験まで一週間、励むといい」
編入試験、と聞き、ヤタガラスの顔が青く染まる。余程学力に自身がないのか、がっくりとうなだれた。
とはいえ、僕が勉強を見てやれば問題ないだろう。
「貴女の勉強はわたくしが見ますわ。覚悟なさい!」
「…お手柔らかにお願いします」
自分の護衛が外国の姫君で、しかも同じ学園に通う。セシリアという可愛い婚約者がいなければ舞い上がりそうなシチュエーションだ。
ベッドから始まった異世界生活だったが、これから学園が舞台となる。一体どんな未来が待っているのかと、期待に胸が膨らむ。
そんな中、メイフラワー公爵は今後の波乱を想像し、やれやれと首を振った。
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