第1話 異世界転生キターッ!
夜遅くまでオンラインゲームで遊んでた僕、天津 拓真は高校にある教室のドアを開く。時計を見ると、ホームルームが始まる寸前だった。
「――っは!ギリ間に合った‼」
自分の席に座り眠気と戦っていると、先日僕と遊んだ親友――烏野 葵が慌てて教室に入ってきた。忙しなく机に向かう最中、彼の周りを仲の良い女子生徒が囲んだ。容姿は平凡だがサッカー部のエースで学校の成績は優秀、おまけに人望も厚い。かつて暴力や非行に溺れてた僕を救ってくれたし、まさしく”超人”と呼ぶにふさわしい男だ。
「葵の奴、すげえモテてやがる。オレもあんな風に女子に囲まれてー」
一方、僕は眼鏡をかけた地味な男だ。多少喧嘩の腕に自信はあるが、彼と比べれば大したものではない。隣の席に座るもう一人の親友、光太郎は未練がましく妄想をつぶやく。
「君だってサッカーに関しては天才だろ、光太郎。葵のせいで霞んでるだけだし、君には君の長所があるさ」
「あんがとな、拓真。はあ……異世界転生でもしたら、ああいうのが主人公になるんだろうな…」
光太郎は葵がよほど輝いているように見えるらしい。僕としては親友が人気なことは鼻が高いけど、彼の理解が浅い者には嫉妬の対象になってしまうようだ。
教室にチャイムが鳴り、数分後ガラガラとドアが開いた。普段時間をきっちり守る担任が遅刻するのは珍しいと思っていると、中に入ってきたのは褐色肌の男性だった。
「……誰だ?」
葵が疑問をこぼす。
僕達の通う学校に、あんな先生はいなかったはず。そう思っていると、その男性は指をパチンッ!と鳴らす。次の瞬間、目の前には真っ白な空間が広がっていた。
「初めまして、異世界人の諸君。私はこの世界とは異なる世界の神様だ。君たちには、異世界に行ってもらうよ。」
……今、何といった?
異世界に、行くと言った。
つまり……
「異世界転生キターっ!!」
思わず叫んでしまった。葵や光太郎、他のクラスメイトから冷めた視線を向けられるが、そんなことはどうでもいい。ずっと渇望していた異世界に転生できるんだ。嬉しいに決まってる!
『あはは、随分うれしそうだね』
頭の中に声が響く。一瞬戸惑ったが、眼鏡をクイっと上げて落ち着かせると、神様を名乗る男性が僕に語り掛けているのがわかった。一体なぜ直接口に出さないのか、疑問に思っていると、再び頭に声が送られる。
その内容は――亡くなってしまった者に憑依する形で転生するというものだった。
『つまり、元々ある肉体を乗っ取るってことですか?』
『そういうことになるね。』
テレパシーみたいに会話しながら、無言でうなづく。口頭では、特に使命はなく楽しんでほしいだとか、来たる厄災に備えろだとか、クラス全員にアナウンスしていた。
聞きたいことは山ほどあるが、それは転生後に確かめればいいこと。一刻も早く異世界に行きたい、と考えていると、目の前から神を名乗る男性やクラスメイトの姿が消え、気づけば暗闇へと移動していた。




