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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

教習所帰りのバス内で

 日長になったとはいえ、あたりはもうすっかり暗く、淡いオレンジの明かりがバス内を一層静かにさせている。

 講義を受け終わり、今は教習所から出ているバスで帰宅中だ。

 近年流行りのウイルスを警戒し、窓はいつだって半開きになっている。

 やぶから漂う青臭い風が車内に入ってくるが、窓は閉められない。

 鼻呼吸をしないよう意識をしながら、スマホを片手にメールを確認していた。


 また不合格の通知が来てる……。

 スマホから目を離し感傷にひたろうとした時、ふと気が付いた。

 私から3席斜め前に座っていた男性がこちらをチラチラとみている。


 はて、所内ですれ違っただろうか。

 私は周りの景色を見る振りをして、男の顔を一瞥した。


 しかしそこにいたのは知り合いではなく、また教習所内ですれ違った記憶もない、なんの接点もない人物だった。


 まさかストーカーなんてことはあるまい、そもそもそんな悪魔が付くほどの顔ではないし、きっとバスの天井に吊るされている広告でも見ているんだろう。

 私はそう考え、気にせず窓の外を眺めることにした。


 日が落ち、稜線も暗くはっきりしない車外は、周辺家屋の窓や街灯の明かりをより際立たせている。


 ……。


 しばらく眺めていたが、どうにもやぶから臭う青臭い風に鼻が耐えられない。

 換気のため、と注意書きされた窓枠のシールを無視し、私は窓を閉めた。

 車内のオレンジのライトをくっきりと反射した窓は、こちらをじっと見つめる例の男の姿もくっきりと映し出していた。


 男は先ほどのおどおどした態度とは違い、上半身を通路に乗り出し、顎を突き出すように首を伸ばしてこちらをじっと見つめている。

 瞳孔は大きく開き、瞬きもなく微動だにせず、その視線は天井の広告や車外の景色ではなく、明らかに私に対して向けられていた。


 と思ったが矢先、慌てたように男は体を翻し、こちらに背を向け小声でブツブツと言いながら足元の荷物を探る。

 男はスマホを手に取ると、それをこちらに向けてまたブツブツと何か言い始めた。


 私はまだ景色を見ているふりをして窓の反射にうつる男の様子をうかがいながら、とっさに片手で鞄の中を探った。

 筆箱の中にボールペンがあったはず。

 大学受験のために血豆ができるほど握り続けた愛用のボールペンが。

 もし男が暴力を振るうようなことがあったなら、これをもって反撃してやるぞ…と強気になることで、男への恐怖心を和らげようとしたのだ。


 その間にも男の鼻息は次第にハァハァと荒くなり、ひどく興奮しているような様相だった。

 なめまわすようにカメラを上下に動かし、たびたび額の汗を袖口で拭いながら、なるたけ足音を立てぬようへっぴり腰で、それはゆっくりとこちらに向かってくる。


 男が近づくにつれ私の背筋は凍るようで、安心しようと鞄に突っ込んだ片手が震えでうまくボールペンをとれない。

 暑くないのに恐怖心から汗が止まらず、このまま襲われたらどうしようと、また殴られたらどうしようと考えると、思わず涙があふれた。


 男はなおもレンズを向け、こちらに迫ってくる。

 いっそこのまま襲われるくらいなら、ひと思いにやつを殺してやろう。

 汗と涙でぬれた顔を上げようとした瞬間…


「お客さん、運転中は座ってください。」


「だっ、だって運転手さんよぉ、たたた確かにここに誰かいたような気がしたんだ!

 く黒い人影だってみた!

 窓が勝手にしまって、そこに誰だかわかんねぇ、バスに乗ってねぇ誰かの顔が映ってて……

 そそれで近づいてみりゃなんだ!

 有名な怪談みてぇに席がぐっしょり…」


「はぁ。」


「そんな他人事にみてぇn」

「他人事ですよ。」


「いいですか、触らぬ神に祟りなしというでしょ。

 幽霊だって『仏さん』と解釈すれば神様と一緒のようなもんだ……」


「……昔、このあたりでバスが人を轢きましてね。

 なにやらうつろな目をしたボロボロの恰好の若い人が飛びこんできたらしく……

 運転手としちゃ迷惑な話だ、向こうから飛び込んできたのに、こっちが悪くなるんだから。

 ……まぁ、何やら追い詰められてたようで、耐えがたい裏の事情がなにかあったんでしょうな、よく知らないけど。

 ……そんで運転手の対応が良くなかった。

 救急を読んだ後すぐ手持ちのカメラで引かれた人間の撮影を始めた。

 死を悟ってなを下敷きになったバスの下から、のどのつぶれたうめき声でタスケテと叫んでたそうですよ……」


「……まぁむやみにスマホを向けるなってことですな。

 あなたは特に気を付けた方がよさそうだ。」


 男はわけもわからないままだったが、ひとまず荷物を手に持ち運転手のそばの席に移動した。

 あの奇妙な席にできるだけ近づきたくなかったのだ。

 そしてスマホの録画を確認する。

 そこには青あざだらけの顔をした半裸の幽霊が薄く映っている。

「小説家になろう」そのものへの初投稿になります

専門学生時代に車の運転免許を取りに行った時の実体験2割と、空想8割のSF(少し不思議)な話です

文章としてつたない部分もあるかと思いますので、もしよろしければアドバイス等いただけますと幸いです

(✿ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

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