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出逢い

過去を変えることは出来ない。ましてや、戻ることなんて…。だからこそ、ぼくは…。

ぼくは、この広大な草原に立っていた。吹く風は心地よく、ぼくの気持ちを穏やかにしてくれる。そんな風を感じながらぼくは、身の回りのものを整理しつつため息をついていた。

「はあ…憂鬱…。」

口から出たその言葉で、さらに気分が落ちる。本当に、つくづくぼくはどうしようも無いやつだ。だけどウダウダ言ってはいられない。ぼくはぼくのやるべき事をするだけだ。

遠くから、魔物の声がする。それもかなり強いやつ。ぼくはその声の主を探すべく、声のした森の方へと走っていった。


──────


「あーあ、こんな所で死ぬなんてなぁ…。」

うちは、強大な敵を前に、膝をついていた。出来る手は全部使った。沢山の魔法を撃ったし、魔道具を使ってあいつを拘束しようともした。だけどそれは全て無駄に終わった。あいつと対峙してハッキリと分かった。うちは実力が足りない。やっぱり無謀だったんだ。なんでこのクエストを受けようって思ったんだろう、ギルドのお姉さんも止めてくれたのに…。なんで…強くなりたいって思ったんだろう…元の力が、何も無いこの状態で…!

後悔したって、どうしようも無い。過去は変えられない。うちはただ、目の前の魔物がうちを痛みなく殺してくれるよう祈ることしか出来なかった。魔物が腕を振り上げた瞬間、咄嗟に目をつぶった。

「…あ…れ?痛く…ない……?」

自分が殺されていないどころか、攻撃すらされていないのに気づいたのは、目をつぶってから数秒ほど経った後…目を開けた時の事だった。黒い壁が無くなって、目の前に広がる景色は、とても綺麗だった。魔物が眩しい炎で焼かれている。炎の音がとても心地いい。だけど疑問が浮かぶ。うちは魔法を撃っていない。撃てるほどの魔力が残っていない。そこでうちはようやく、状況を理解した。誰かに助けられたんだ…と。

うちは辺りを見渡して、助けてくれた命の恩人を探す。ピシャッ…と、液体の音がした。音のした方に目を向けると、そこに一人の少女が立っていた。

少女は、彼女の剣に着いていた血を振り払い、剣を鞘に納める。うちは、彼女に見惚れていた。彼女の肩まで伸びた美しい黒髪、星のようにキラキラと輝く黄色い瞳、彼女の一挙手一投足が美しかった。

「大丈夫?」

うちが我に返ったのは、彼女に声をかけられた時だった。うちは急に声をかけられ、びっくりしたのと同時にさっきまでジロジロ見ていたことによる申し訳なさで言葉が上手く出てこなかった。うちが狼狽えている間、彼女は真っ直ぐで冷たい瞳でうちの事を見つめている。その瞳に少し緊張しながらも答える。

「あ、全然大丈夫…です」

ミスった…!今まで全然人と話すことが無かったから変な言い方になってしまった…!あ〜、恥ずかしっ…。

「本当?なら良かったよ。」

うちが変な言い方になってしまった事を特に気にすることも無く、彼女は安心していた。先程までの冷たい瞳はどこへ行ったのかというほど優しい目だった。でも、彼女はすぐ険しい顔をして私を問い詰める。

「どうしてここに来たの?君じゃあ実力が足りない。さっきだって、殺されそうになってたでしょ?」

うちは、正論を突きつけられて思わず目を逸らしてしまった。うちだって、なんで急にあいつの討伐クエストを受けようと思ったのか分からない。ただ、漠然と強くならなきゃって意思があったんだ。

「分からない…。ただ、強くならなきゃいけないんだって…。」

思った通りの言葉にはならなかったけど、彼女は何となく理解してくれた気がした。彼女の目が、とても哀しそうな目をしていたから。

「はあ…。君みたいに強くなりたいって人、結構見かけるよ。でも、だからって一人で無謀な戦いに行くってのは良くない。強くなりたいのに命を捨てに行ってどうするのさ。」

きっと、彼女は優しいんだ。例え知らない人だろうと、死んで欲しくは無いからこうやって諭すんだろう。けど。

「うちは、早く強くなりたいんです。いや、ならなきゃいけないんです。」

うちは彼女の目を真っ直ぐ見て言う。うちの真剣な眼差しを彼女は見つめ返す。そのうち彼女はため息をついた。

「君頑固だなあ…。分かったよ、分かった。難しいクエストだろうとなんだろうと受ければいいさ。」

「ほんとですか…!?」

うちの顔が明るくなる。彼女はうちの勢いに押されたのか狼狽えながら同意してくれた。しかしすぐに付け加える。

「だけど君一人なのはやっぱり納得は出来ない。難しいクエストを受注するなら強い仲間がいないとダメだ。」

「う〜…。」

「可愛い子ぶってもダーメ。こればっかりはぼくも譲れないんだ。」

彼女はプイっと顔を背ける。頑なに譲ろうとはしないみたいだ。うちは、段々この人に腹が立っていた。出会って早々、やれ実力が足りないだー無謀だーだの、散々失礼なことを言われてピキらない人はなかなかいない。うちはそんな聖人君子じゃあない。だから、少し態度を悪くして彼女を突き放す。

「そもそも、あなたはうちの事を何も知らないですよね?うちがどこでどう死のうがうちの勝手。あなたに色々言われる筋合いはないと思うんですけど。」

うちがズバッと言ってやると、彼女は表情を変えて言った。

「へーえ、確かにどこでどう死のうが君の勝手だよ?でも、その惨たらしい死体を見せられるこっちの身にもなってみなよ。見せられるこっちは最悪の気分なんだ。だから、そう簡単に死なないでくれるかな?」

彼女の顔は笑顔だった。だけど怒りや悲しみが複雑に絡み合って、とても冷たい目だった。その感情がどこから来たものなのか、うちには分からない。けど何故か。

「はぁ〜……分かりましたよ、分かりました。もう一人で無謀なクエストに挑むのはやめます。命を簡単に捨てるようなことはしません。それでいいんでしょう?」

この人にこんな目をさせたくない…って、思ったんだ。うちの言葉を聞いた彼女は、さっきの優しい目になっていた。

「分かってもらえて嬉しいよ。ありがとう。」

「まあ、まだ生きたいんで。」

うちが素っ気なく返すと彼女は「そっか。」と一言呟く。そして、うちにとてつもないことを提案してきた、

「ところでさ、君、仲間いないだろ?どう?ぼくに着いてくる気はない?ぼくの視界の中だったら、ぼくが君を守り抜いてみせるよ。」

「…………は?」

うちは、今日一間抜けな声を出していた。

「いやいや、何言ってるんですか。さっきまで結構ドンパチやってましたよね?それがなんでいきなり勧誘になるんですか。」

うちは少し苦笑気味に答えた。彼女は純粋無垢な笑顔で答えた。

「だって、ここだけの口約束、破ろうと思えばいくらでも破れる。だからぼくが監視するんだっ。ついでに、仲間も増えて一石二鳥〜。」

この人、今日一でいい笑顔してんな…。

「それで、来るの、来ないの?早く決めてくれないと、他の仲間に報告できないからさ。」

彼女は手で電話の受話器を作って、耳に当てる。その動作に急かされながら考える。確かに、彼女は強い。けど彼女の仲間に入ったことでうちが足でまといになる可能性は極めて高い。きっと彼女の仲間たちはみんな強くてヤバい人達なんだろう。そんな中、うちが加入したら彼女の仲間たちに散々虐められて、最終的には自害を選んでしまうかもしれない。流石に自害は考えすぎだけど虐めとかは起こり得る。やっぱりここは断るしか…。

「ちなみに、ぼくの仲間は一人しかいないし、その子もとても優しい。過去に仲間を連れてった時もすぐ仲良くなってたな。」

「ふつつかものですがどうかよろしくお願いします。」

返事は即答だった。

「おっけ決まり!それじゃ、行こっか!」

彼女は意気揚々と答える。

「行くってどこに…?」

うちが少しビビりながら聞くと彼女は笑顔で答えた。

「楽しいところだよ。」

彼女が手を差し伸べる。木陰に染まったその手を、うちは握り返していた。

こんにちは!作者のゆるなめここと、ゆるるい@なめこです。月日が経つのは早いもので…気づけばこんなにも間が空いてしまいました。もうもはや投稿する気無いだろと思われるかもしれないですが、残念なことに、あります。

さて、新シリーズです。ずっとファンタジー小説を書いてみたかったんですよ〜。夢、叶ったりです。こちらは、もう比較的構想が決まっているのでゆる事務所よりも更新が早いと思います。是非、ゆる〜くお待ち頂ければ幸いです。

それでは、また次回お会いしましょう!

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