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6 ギルドにやってきた


 じゃあよろしくねと迷宮に帰った美男美女(迷宮主と迷宮精霊)。俺は大きなため息を吐いて個室を出た。アニーに留守とギムリへの伝言を頼み、冒険者ギルドへ向かおうとしたら美女はどうしたと聞かれた。転移で帰ったって言った時の顔がなんか凄かった。ワケわからん何かに化かされたって感じの顔。まぁ転移なんて使えるやつ滅多にいないもんな。ガイウスさんに教えてもらってなけりゃ俺だってそんな顔してたと思う。


 さっさと用事を済まそうとダッシュで冒険者ギルドに向かう。こんな時こそ転移を使えば楽なんだけどな。午後は迷宮に行くから流石に魔力が足んなくなる。

 ギルドは時間的に閑散としてるな。依頼を受けたやつはすでに出た感じ。居るのは事務員と酒飲みぐらいだな。こんな真っ昼間からって思うけど。ま、明日は安息日だし今日くらいいいんじゃね?

 俺は筆記机で報告の紙に記入する。近頃は基本的に依頼の紙だから変な感じ。迷宮はシュクロン、緊急度は緊急、担当はギルマス。紙を持って窓口へ行くと、ギルマスはちょうど時間が空いてるらしい。二階の応接室に通された。

 ソファに腰掛け壁際の無料の茶で喉を潤してるとギルマスが入ってくる。


「久しぶりだな、ケント」

「お久しぶりです」

「俺より家内(うち)のがよく会っとる冒険者はお前くらいだよ」

「はは。いつものご利用頂きありがとうございます」

「で、どうした。シュクロンで緊急なんて」

「実は、先ほど店にきたお客様の伝言を預かっています」

「客から伝言? 迷宮の?」


 普通に考えればそうだ。お客様から冒険者御用達の迷宮の伝言を預かるっておかしいよな。冒険者はギルドに報告すりゃいいんだから。


「ええ。シュクロンの迷宮主と名乗る方からの伝言です」


 ギルマスは質問をしたいのを堪えた感じで顎をしゃくった。


「明日から明後日にかけての深夜、層間交換を行うそうです。その際、モンスターパレードが発生するので出来れば迷宮には入らない方が良いそうです。また、スタンピードが起こってしまう可能性もあるので警戒するようにだそうです。以上が伝言で、迷宮主からこれを預かってきました。通称“不死鳥の(むくろ)”と呼ばれる物質の元になる植物だそうです」


 俺は伝言を簡潔に伝え、マジックボックスからガラスのような物質で作られたケースに納められた植物をテーブルに置いた。


「植物が燃えとる……」

「このケースから出すと一瞬で灰になり、それが俺らの知るところの不死鳥の骸らしいです。これが自分が迷宮主であることの証明になるだろうと言っていました。シュクロンの45層まで潜れば運次第にはなるそうですが、採集できるそうですよ」


 俺は言葉を切った。ギルマスが少し考えている。たぶんどんな順で質問するかを考えてるんだろう。


「この貢物があればよ、ケントがシュクロンの迷宮主に会ったってことを信じれるだろって話なんだろうな。はぁ。いろいろ聞きたいが、とりあえず層間交換は何層と何層を入れ換えるんだ」

「9層と22層だそうです」

「22ってお前! まだ誰も到達してない層じゃないか! そんなんが浅層に来たら簡単に死ぬぞ!?」

「いやー、環境が9層とはちょっと違って、あとは少し深いからモンスターがちょっと強いって話ですよ。それだって三日も経てば今の9層レベルに落ち着くみたいですから。

 あそこは確か、密林で猿系のモンスターだったかな。猿系のは集団で来られるとちょっとめんどいんですよね。でも、今の林の中を狼系のモンスターが群れて襲ってくるのと変わらないか。いや、木の上から狙ってくる猿系の方がやっぱめんどいな。どうしても密に生えた木が邪魔で視界が悪いし」

「おいケント、何でお前は22層の環境とモンスター構成を知っとるんだ?」

「……あ、えーっと、そう! 迷宮主に教えて貰いました!」


 やべっ、20層のボスの攻略に足踏みしてて情報募ってるんだった。すでに踏破してるなんてバレた日には……


「いくつだ」

「へ?」

「なぁケント。お前がいくつの時に22層まで潜ったんだ?」

「いやいや、冗談きついって。基本ソロの俺が危険を承知で20層を越えるわけないじゃん。しかもあのしょっぱいシュクロンでさぁ。はははは」

「はぁー。それで誤魔化しているつもりか? 焦って口調が素に戻っとるぞ」

「げっ」


 あ、終わった。これ、吐かないと帰れないし、絶対拳骨落とされる。怖すぎてギルマスの方向けない。無言で時間を稼いでも……無理か。


「……十六のとき」

「は、十八歳(成人)前にソロで行くなら16層までと約束しとっただろうが!!」

「ぬわぁーー! いってぇっ!!」


 くぅぅーー、痛すぎる!!

 咄嗟に歯を食いしばれたから舌は噛まなかったけどさ! 約束破った俺も悪かったけどさ!!

 先代に申し訳ないとか知らんし! つーか爺ちゃんまだ生きてるし!!


「まぁ潜っちまったもんは仕方ない。で、20層はどうやって攻略した」

「魔法で牽制しつつ、普通にただぶった切っただけ」

「はぁ。そう言えばケントの元々の二つ名は“双剣の非常識”だったな。久しぶりで忘れとったわ」

「非常識って言うな。俺にだって常識くらいあるし」

「普通に常識あるやつは未成年で未踏の地にソロで踏み入ろうとはせんだろうが。まったく、過ぎたこととは言え規約違反だぞ。なんでお前みたいなのが商売人なんてやれてんだか」

「うぐっ」


 規約違反だから報告しなかったんだ。って、下手に言い訳しようもんなら更に殴られそうだから黙っとこ。

 つーか俺のこと非常識とか言い出したヤツ誰なんだよ。いつの間にかそう呼ばれてたから知らないんだよな。創業時は地味に風評被害を受けて大変だった。今は“大剣使いの店主”とかって()()()なアダ名で呼ばれてるからいいけど。得物を変えたのが功を奏したのかもな。


「で、何処まで潜った」

「25層だ!」

「開き直るな馬鹿者!」


 結局もう一発食らって、21から25層の環境やモンスター構成やらを覚えてる限り全て報告させられヘロヘロになった。

 これからはちゃんと報告するって。俺もとっくに大人だし。


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