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2 魔導師がやってきた


 突然カランとドアベルが来店を告げた。


「おういケント。納品に来たぞー」

「あ、おはようございますガイウスさん。いつもすいません」

「いやいや仕事貰ってるのは俺の方なんだが。ほら、注文と合ってるか確認してくれ」

「了解です」


 ガイウスさんから渡された品の検品を始めた。いやぁ、いつも思うがさすがの逸品。


「ところでケント、お前はいつになったら俺のことお義父さんって呼んでくれるんだ?」


 なんかとんでもないこと言い出したぞこの人。


「いやだなぁ。俺()幼女趣味じゃないですよ。ハンナちゃんのあれは大人のお兄さんに憧れてるだけですって。これから大きくなって学校に行けば、周りは同年代なんだからちゃんと好きな子ができますよ。足早い子カッコいいとか頭良い子カッコいいとか」

「うちのハンナに限ってそんなことは無い」

「そんなことありますって。だいたい何で急にそんな話になったんですか。今までそんな素振り全然無かったのに。そもそも父親って娘が興味持った男のこと嫌がりません?」


 確かにハンナちゃんには異常に懐かれてるけど。まぁ生まれた時から傍にいればそうなるよな。鳥の刷り込みみたいな。でも未就学児の幼女を成人してからそれなりに経ってる男に差し出すか? つーか完全なる犯罪だろそれ。親が斡旋しちゃダメなやつ。

 ガイウスさんが黙ったから、手を止めて顔を上げた。うわぁ、目がすっげぇ泳いでる。


「ガイウスさん?」

「──っ、あれだ、ケントを見込んでだなっ!」

「ははーん。さては、またお弟子さんに逃げられましたね?」

「いや、あれはだな!」

「今度こそはって意気込んでたのは誰でしたっけ? あれからまだ三日と経ってませんけど」

「は、はは」

「もと宮廷お抱えの天才魔導師も人の子ってことですかねぇ。こんなに教え下手なんて」


 俺はさわりだけだったけど、そんな下手くそな感じしなかったのにな。こうも毎回だと魔導師だけに通じる何かがあるのかねって。違うか。基礎が出来てる()()()()だからダメなのか。

 俺は呆れつつ、作業を再開する。


「ぐっ、だからケントに「俺は魔導師にはなれませんよ」うぐ」

「もう観念してリンナさんに人に物事を教えるやり方を聞けばいいじゃないですか。元教師なんだから教えるのは専門ですよね?」

「いや、だが」

()()とか()()とか言ってる場合じゃないですよ。師匠から受け継いだ技術は絶対に継承させなきゃいけない、って言ってたじゃないですか。ガイウスさんの気分で片付ける問題ではないっていうことですよね」


 はは。図星突かれて呻いてるや。


「あーそうだ。ミルノさんとこのリューくんなんてどうです?」

「ミルノは確か家具屋だな。そこの(せがれ)か?」

「そうそう。リンナさんがハンナちゃんと仲良しだって言ってましたよ。相手は子供なんだからリンナさんと弟子の不倫がーなんて不要なことは考えなくていいし、子供脳は柔軟だから今から教えたらいくらでも吸収できると思うし。それに今のうちから仕込めば、俺なんかよりよっぽど総魔力量が大きくなりそうですよね。まぁ素質はやってみなけりゃわからないですけど。

 あ、折角仲良しなんだしハンナちゃんのお婿さん候補にしたらいいんじゃないですか? 男ばかり三兄弟の末っ子だしちょうど良いと思「ハンナは嫁にはやらーん!!」いや、だから、お婿さんですって」


 もう、この人はこれが無ければ……いや、これが無かったらただの変人か。でも頑なじゃないところが結局魔導師なんだろうな。何だかんだ子供の弟子は一理あるかもって考え始めてるし。ガイウスさんは結構スパルタだけどリンナさんが無理はさせないだろうから、いい考えだと思うんだよね。


「よしっと、査定完了です。品質のムラも無くていつもながらいい仕事しますね。代金はどうしましょうか。いつも通り月末の振り込みにしますか?」

「いや、今回は半分現金で残りはいつも通りで頼む。あ、銀貨にしてくれ」

「わかりました。じゃあちょっと待っててくださいね」


 俺はちらりと美女に視線を向けてから裏の金庫に向かった。たぶんガイウスさんが彼女のことは見ててくれるだろ。


『すいませ~ん。ちょっと教えてもらえるかしら~?』

『うん? ああ、俺でよければ』


 あれ? なんか会話が始まった?


『それって何なの~? どうやって使うのかしら~?』

『これか? これは魔法具って言って、魔導師じゃないやつが簡単に魔法を使う道具だ。この球体はオーブで、こっちの巻物はスクロール。オーブは魔力を込めて割ることによって中に入ってる魔法が使える。スクロールは魔力を流すと予め描いてある魔法陣が現れてその魔法が使えるんだ』

『そうなの~。そのスクロールは使いきりなのかしら~?』

『いや、よっぽど下手に扱わなけりゃ10回は使えるだろうな。冒険者の奴らが言うには描き手の魔力と相性がよけりゃ20回は使えるらしい』

『なるほど~。だからスクロールの棚には人の名前が書いてあるのね~』

『そう言うことだ』

『なるほどなるほど~。説明ありがと~』


 俺が戻ると、ガイウスさんは何とも言えない顔を俺に向けた。


「なぁ、あの客はなんだ?」

「さぁ。初めてのお客さんなんで」


 ガイウスさんとカウンターで微妙なやり取りをしていたらドアベルが来店を告げた。


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