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9 ボス部屋にやってきた


 俺たちは迷宮主に20層へと送られた。


「ここが20層か。そう言や10層も似たようなでっかい扉があったな。

 なぁケント、確かここのボスは鳥型で飛んでるんだよな。ってことは基本遠距離攻撃だろ。そんで俺は何すりゃいいんだ?」


 ギムリに言われ、諦めがついた。ここまで来たならもうどうしようもないし、迷宮主には迷宮での行動が筒抜けだし。


「ギムリは魔道具(魔弓)で矢を放って欲しい。ただ、ボスは風を纏ってるからいつもと同じでやったら届かないんだ」

「うわ、話には聞いてたけどやっぱめんどくせぇ」

「いや、攻略は意外と簡単だぞ。ギムリはできるだけ接敵して矢を火属性の魔矢にして狙いは足。あ、一応魔石(予備)を渡しとく」

「は? んなことしたら風に煽られて当たる前に燃え上がるだろ」

「まぁな。でもそれが狙いなんだ」

「ケントがそう言うなら従うけどよ」


 風に火は効かないって先入観でたぶんみんな試さなかったんだろ。そもそも魔法を使ってくるモンスター相手にそんな余裕も無いだろうし、あんな相手に火矢なんか普通用意しないし、魔導師だって魔力は無尽蔵じゃないからな。

 俺だってガイウスさんに魔法の手解きを軽くでも受けてなかったら倒せなかったかも。


「爆発はしないけど危ないことには代わらないから、ノエルはとりあえずこの魔法具(スクロール)で二人を覆うようにシールドを展開してくれ。一応三本渡しとく」

「二人をって、ケントはどうするの」

「俺は別方向から魔法で仕掛ける。三人で固まってても効率悪いだろ。ヘイトも俺に向かうように調整するから、ギムリはそのつもりでよろしくな。

 で、何発か打ち込んでると風が止む間がくる。ノエルはその時を見計らって鞭で引き摺り下ろしてくれ。そうしたら俺が切りつける。知っての通り魔法よりも物理の方が効くからノエルは飛び道具が無ければ待機で、ギムリは余裕があれば岩属性の魔矢を放ってくれ。

 ある程度時間が経つとまた飛び立つが、繰り返せば確実に倒せる。まだまだ浅い20層ってだけに単調だろ?」

「確かに20層なんだけど。あの風が空中ですんなり止むなんて想像がつかないわ。でも、ケントが言うんだからそうなるんでしょうね」

「あぁ、たぶんノエルなら見えるぞ」


 ノエルが半信半疑、でも信じるって感じの顔をした。根気が必要だから信じてくれると助かるな。ギムリはハッとした顔で俺を見た。


「ちょっと待て。ケントはそれを一人でやって倒したのか?」

「ああ。引き摺り下ろしては無いけどな。代わりに叩き落としたけど」

「さっき言ってた崖を登って力技ってやつか」


 話しながらマジックボックスから双剣を取り出した。大剣はとりあえず邪魔だから仕舞っておく。あの大鹿に武器破壊されてからまたこれを使ってたし、やっぱこっちの方が長いから手に馴染む。


「うわ、ケントがわざわざそれ出すって、結構マジなやつか」

「そうね。いつも以上に気を引き締めないと」


 うん? よくわからんけど、やる気があるようでいいじゃん。気合いを入れてる二人に行けるかと聞けば、二人は静かに頷いた。




 扉を開けば迷宮の中とは思えない大空間。懐かしいな。岩が崖のように聳えてて、それを足場に使って切りつけたんだった。あの頃はソロに拘ってたんだよな。いわゆる若気の至りってやつ。今考えると非効率極まりない。

 さて、ボスはどこに居るか……


「右の、手前から数えて三つ目の岩の上に居るわ」

「さすが“銀眼姫”。じゃあ俺は左回りで近付くから、二人も手筈通りに」


 ノエルの索敵から逃れるには魔力を失くすしか無いとかバカげてるよな。能力を使うときに銀色に光る眼が一部の冒険者にカッコいいとかウケてるけど、女子としては複雑らしい。

 で、だ。攻略戦の第一弾は遠距離から魔法を放つこと。岩の上で休んでる時は風を纏って無いから。そんで、アイツ魔法耐性バカたっけぇんだよなー。だから初手はほぼ物理な岩魔法になる。その後は魔導師が風に左右され難い大火力の雷魔法を使って落とす。飛んでる間は常に風を纏ってるからな。で、地に落ちて風が無いその間に物理攻撃を叩き込むのが基本って感じ。だけど、片手で足りない程落とすにはガイウスさんが何人も必要なほど魔力が要るから攻略出来ないんだろうな。

 でもさ、実は火魔法で起こされた炎は魔法と違うから若干ダメージが入るんだなー。んでこれがまぁ嫌がらせにピッタリなのよ。モンスターだって火だるまは嫌みたいでさ。だから炎を嫌って風を止めた時が好機ってわけ。

 っと、ギムリから合図がきた。じゃあ、やりますか!


 今までのセオリーに従い俺が遠距離から岩魔法(ストーンバースト)を放てばボスが岩から舞い上がる。くっ、半分弾かれたか。でもヘイトは取れたっぽい。

 俺が近付きながら次の火魔法(フレイム)を唱えるその隙にギムリが何射か入れてる。おぉ、上手く着火したな。するとボスは標的を変えようと視線を俺から逸らした。やっぱ当たり前にそんな動きだよな。前回はソロだったから何しても百パー俺だったけど。


「ほれ、こっちだー。よそ見すんなー」


 俺の方が目立つように魔法を放てば単純に標的を俺に戻して風魔法(ウィンドカッター)で攻撃してきた。あかじめ用意してた魔法具(シールド)で軌道を逸らす。こっからはこの繰り返し。ギムリは俺の魔法とタイミングをずらして魔矢を放ち炎の火力をどんどん上げていく。言わなくても伝わるってやっぱ楽だ。


「来る!」


 何度か繰り返してるとノエルからの合図。俺は軸足に力を込める。ギムリも手を止めた。ボスの纏った風が炎と共に消えた瞬間、ノエルの鞭が伸びボスの足を捕らえた。


「──シッ」


 ノエルが地面に叩きつけた直後に俺も連撃を叩き込む。迷宮のモンスターでもボスだけは攻撃の手応えが無くて苦手だ。上のバーは減ってるが、本当にダメージ入ってるんだよな。ギムリも俺に当てないように速射してる。やっぱすげぇやりやすい。

 暫くしてボスはまた風を纏って宙に戻った。




 一連の攻撃を十数度繰り返し、今目の前でボスが光に変わり宝箱と下層への階段が現れた。


「本当に俺らだけで、本当に、倒したのか」

「信じられない」

「やっぱ三人いると楽勝だわ。こんな早く終わるなんてな」

「そ、そうか。ちなみにどんくらい早かった?」

「うーんそうだなぁ、ソロの時の二割くらいの時間か?」


 うーん。20層のボス倒して青銅の短剣(簡単に手に入る短剣)ってさぁ。やっぱアイテムがシュクロンクオリティなんだよなぁ。これなら魔石山盛りのが良かった。でもこれも今後改善されるんだろ。

 宝箱を物色してると、なんか二人が呆れた顔で俺を見てくる。


「やっぱケントは変態だな」

「変態は無いだろ」

「ねぇ、挑戦前には怖くて聞けなかったことを聞いていい? ケントは幾つの時に20層を突破したの?」

「えっと、十六って、アハハ」

「ほんっっとぉに信じられない! 四年も前じゃない! 情報提供くらいしなさいよっ!」


 ギルマスに怒られるのが嫌だったんだと弁解しながらノエルを宥めつつ、俺たちは21層へ向けて階段を下りて行った。


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