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第99話 報告の裏側

 ・・

ゼキスバード学長からのプレッシャーは解けて

リズの腕に込められた力も解除されて空気の落ち着いた部屋


立ち上がっていたゼキスバード学長は席に座りなおす



 「ふむ・・ふむ なるほど・・、  やはり見えんのう

グフタフ、お前は見えたか?」

「・・いやまったく」


「(ガクッ)」

(なんだ見えてないのか~)


なんと学長先生たちには私のイヴの力は見えなかった様子


「ホッホ・・、いやあ ワシも迎えが近づいたら見えるようになるかと

思っておったのじゃがのう 残念じゃ まだ境地には至らんか・・」


「お前はまだしぶとく妖怪並みに生きるだろう」

妖怪みたいな見た目のオジキがいう


(・・・)

しかし学長先生はいかにも見えてますって感じだったのになあ・・

だけど


「あ、あの 私はリズの力、見えます」

これは勇者ミトラだ

(やっぱりミトラは見えてたわね)


「ほう・・幽玄の間の力を見ることができるか

やはりミトラ君は素質のある勇者なのかもしれんな」


「大楽の力もそうだがワシらの目には残念じゃが見えんかった・・

だが目に見えずとも空間にまで及んだ異質な歪みはわしにも分かった


先ほどその腕にまとった膨大な力の渦がその力の片鱗か・・

なるほど強い力じゃ 

それならば かの襲撃者と戦えたのも納得がゆく


憶えのある大楽のものとは形はまったく違っておったが

確かにこの世界の魔法の系統にないまるで別の波動の力を感じた


そこだけは確かに似通っておるようじゃった」


(へえ・・オジキの力の形ってどんなのだったんだろうなあ

やっぱり前にゲンゴが発動したやつと似てるのかな)


「それに条件があるようじゃが

発動をした力はまぎれもなく形を形成して力として安定しておった


変異による魔力の暴走病などではない 暴走しておらん 克服しておる

きちんと力を使いこなしておる」


(そういえば・・)

「あの・・

私も体がずっと弱かった時期があって

よく無気力というか意識が安定せずにすぐ眠くなっていたんです

もしかしたらそれがその病気だったのかなって」


「ふむ・・それはどのように克服したのかの」


「ずっと寝てたら治りました・・」


「ふ、ふむ・・大楽といいこちらもあまり参考になりそうにないのう・・

いや、病気を治すのに寝るのは大事じゃがのう」


・・

でもなんだかんだ今回明らかになった私の見えない力のことについては

把握できたので前置きから話は次にうつっていく


・・

「・・例の今回の世界的ダンジョンの異常に乗じて襲撃を行った、

ドラグ・バルバロイという人物の情報は

詳細な内容は世間に公表はされておらん


先の報告でも聞いたと思うが

4年前に聖ソウル法典に深く関わる影響力のある貴族などの関係者の

連続誘拐事件を引き起こしており 広く世界に手配され


正体不明の竜人の姿をした

すさまじい煉獄の炎を操る狂乱の魔術師という世の伝聞の人物じゃった


じゃがそれだけではなく裏では「夢渡りの魔法使い」として

恐れられた異名を持つ魔法使いでもあり


狙いをつけた人物に対して

地獄の果てまで追い立てるような異様なまでの執着心を見せ


追跡の魔の手から何とか逃れた者でも

なんと夢の中でまで追い立てられて その後精神を病んだという


狂乱の炎ドラグ・バルバロイは

その扱う魔法の凄まじさから超位級の魔法力を持つとされ

法典に所属する最上位の勇者をも凌ぐ実力を隠し持っておった


そして顔をつぶされた聖ソウル法典が総力を挙げても

その正体を追うことはできなかった


情報を伏せられてはいたが 

公表できぬ被害者には王族や若い勇者も含まれておってな

だが攫われた被害者たちを取り戻すこともできなかった


だがそれほど強力な力を持ちながら

国交があり全面的に捜査に協力をした竜人族の国グラド王国にも

まったくそのような人物の情報や経歴は存在していなかった


そしてその最後の誘拐事件からは全く鳴りを潜めておって

出没情報などは一切なかったのじゃ」


(ドラグ・バルバロイ・・報告の時にもちらっと聞いたけど

4年前にもこの世界に現れていたのね


なんで今まで消えてたのかしら 

力を貯めてたとかいってたし

仮の憑依体だとあまり長くは現界はできないとか・・?


超位級の魔法・・確かにあいつは高度な魔法も使用してたけど・・

でも魔法使いとして認知されてたっていうことは

それまでの活動ではオリジンの方の力はそこまでは使っていなかったのかしら )

・・


「やつが報告されている従来型のただの魔法師ではないことは

過去の襲撃であやつが時折見せた、

古い術式の痕跡の断片的な情報から推測がされておった


そしてさらに近年は

大きな事件を引き起こしたわけではなかったが

それとは別の魔法師とみられる、

やつと同様に古い形式の術式を使い、

異様で強い力を持つと推測される所属不明

目的不明の謎の魔法師が

世界各国の重要施設内で複数例目撃がされたと記録されておる


その姿はまるで人の面相ではなく亡霊のようだったいう


近年現れ世界で暗躍する強大な力を持つ英雄レベルの謎の魔法使いたち

そしてそこに繋がりえる情報・・


何でもよい、その凶悪な魔術師ドラグ・バルバロイとの戦いの中で

君たちが少しでも気が付いたことを

正確にあらためて詳しく伝えてほしいのじゃ」



( 人外の姿をした魔法使い・・他にも裏でそういう魔法使いがいて

この襲撃はそれとも関係してるかもしれないっていうこと・・?

気が付いたこと、かあ・・)


あのドラグ・バルバロイと最初に戦ったのはミトラだった

それでミトラが先に口を開く


「気が付いたこと・・ですか

そうですね・・私は必死だったのであまりはっきりとしてないんですが・・

アギト君を乗っ取ったドラグ・バルバロイは

私とは勇者の力同士での戦いにこだわっていたように感じました 

それで・・ ・・・、・・・」

・・


「・・私からはここまでです


私は途中でその魔剣で斬られてしまって

魔剣に込められた異常の力で身動きが取れなくなって

そのまま私はやられてしまうところだったんです」


「ほうほう・・」


「それで・・今度はリズが

使い魔の子と一緒にドラグ・バルバロイと戦ったんです


すると今度はドラグ・バルバロイが本来の竜人の姿を現して

リズと激しい戦闘になりました

リズは敵を引き付けていてドラグ・バルバロイは魔剣から

それまでとは違う強力な炎の魔法を使用していて

それに対してリズがリズの力を使って応戦したんです」


「ふむ・・

では実際に戦ったというリズ君の話も聞きたいものじゃ」


話をするのが私の方に切り替わる



「はい・・その時受け止めたドラグ・バルバロイの技は・・」


私は戦闘でのドラグ・バルバロイが繰り出した強力な魔法や技のことなどを

実際見てきた体験から話していく


それは話せる、それは話せるんだけど


そのドラグ・バルバロイが襲ってきた事情とかにも触れると

それは繋がりで私の秘密というか

向こう側の世界の話もしなくてはいけなくなる


ゼキスバード学長先生たちのことは信じていいんだと思う

私のことをむやみに他言もしないと思う

実際今まで助けてくれてたんだと思う


だけど・・

今日いきなりそういう事実を突きつけられてすごく戸惑っている

私の力を見せるのもほんとは乗り気じゃなかった


このままだと説明するのに

わたしの秘密を全部打ち明けることになることを尻込みしてる


なんでだろう たぶん味方なのは分かってる

でも私の言いようのない気持ち

もっと普段から会って打ち解けて話してたら気持ちも違ってたんだろうか


・・

でもゼキスバード学長先生たちは

この学園での私の事を考えて私みたいな生徒でも

学園で学んで生活していけるように裏から助けてくれている


世界で異変が起こった中で出くわしてしまった重大な事件で

私が戸惑ってるくらいで

協力をしてくれる人たちに

私のわがままで事件の詳細を話さないわけにもいかない


(  )

だから私は深く聞かれたらゼキスバード先生には私のことを話すつもりでいた



「・・、・・それで・・その時の憑依のための力は

その前のダンジョンの入り口に現れて

勇者アギトが変身する前に倒したボスゴーレムから

吸収をしたと言っていました」


「ふむふむ・・」


私はその時のことで少し気が付いて思い返す


「あ・・そういえば ドラグ・バルバロイとは戦う前のことだったので

報告の時言っていなかったんですが

実は地下にもう一体別のボスゴーレムがいたんです」



「ふむ・・?」


私が正確な状況を説明する

「やつと戦う前の事なんですが 

私は最初からミトラと一緒にいたわけじゃなくて

1つ下の階層に転送の罠で飛ばされてたんです

後でダンジョンが崩壊して空間がつながって1つになっちゃったんですけど

その時はまだ分かれた別の空間でした


その時 私の所には入り口にいたのと同じボスゴーレムがいたんです

異様な姿で、でも未完成体のようでした

私はその時気を失ってて目が覚めた時、

一緒に飛ばされた使い魔の子がゴーレムを倒してくれてたんですが・・」


「! それは・・本当かの」

「はい 本当です・・」

その言葉を聞いてゼキスバード学長先生が目配せをする


「少し・・緊急性が高いかもしれんな」

アーマード魔法教授があごに手をあてる

(え・・?)


「しまったのう わしとしたことが

魔術師にばかりに気を取られて 別の脅威を見逃しておったとは


実はの 世界のダンジョンでの異常での報告はどれも

その入り口付近のみに

ボス級の魔物が現れたという情報だったのじゃ


その後 入り口付近の危険な魔物が討伐できたダンジョンでは

念のため封鎖がされておった が


ダンジョン産物資が重要なダンジョンでは

品物の流通や生活に困る冒険者組合や商会の声も大きくてのう

中が安全か審査もして 

安全が確認された場所では探索を再び限定的に解禁しはじめておったのじゃ


しかし・・他にも危険なボス級の魔物が潜んでいるかもしれぬとなると・・

なるほど 古い隠し空間に潜んでいたボスモンスターは

ダンジョン内を捜索しても簡単には見つからぬ


これは・・このことはいち早く国の情報部に進言をさせてもらおう

冒険者たちの探索は一部もう再開しておる


犠牲者がでてからでは遅い


話をまだ続けたかったところなのじゃが

すまんが少しここでの話は切り上げさせてもらおう 一度解散じゃ」


「は、はい・・」


「大楽、すまんが お主の話は後じゃ 後を頼む

わしらは少し出てくる」


「わかっておる」


その後 ゼキスバード学長先生とアーマード魔法教授は

国の機関に神殿の塔から情報をやり繰りして進言するために部屋を出て行った


(あ・・報告 終わっちゃった・・)


・・・


「・・・・」

その場に残された私とミトラ 


まだひそひそ声で話す

(これってひとまずは帰っていいのよね?)

(いいと思う・・)



「おぬしらも大変じゃったの」


部屋に残っていた迫力のある大きな体のいかつい天狗からの声に 

ミトラの背中がビクッとする


「怖がらずともよい このような見てくれではあるが・・」

「す、すみません・・そういう意味じゃ・・」


オジキは少しあきらめているような感じだった


そのいかつい異形の天狗の見た目の姿で

そんなことが今までたくさんあったんだろうか

私と出会った時も他の人からはそんな感じだった


オジキは続けて話す


「これはゼキスバードがおる時に話そうと思っていたのだが

お前たちにも関係があるやもしれぬからここで言っておこう


勇者ミトラ、

お前たちの臨時班のもう半分は首都の出身者であったな」


「・・アギト君たちのことですか?」


「そうだ 

ワシは首都メリカドハートで世界情勢にまつわる情報の収集と

以前に崩れたという大結界を直接わしの目で確かめに向かったのだが・・


・・

・・・・

(回想)

メリカド魔法共和国 首都メリカドハート

聖ソウル法典 古の大神殿前


「  」

地上に円状に並んでいるものとは別の石柱たち

魔法の力で上空に浮いて地上と大結界を繋ぎ支える役目を持つ

いくつかある太古の大きな石でできた柱


そのうちの一柱の傍に小さく影が映る迷彩の翼


「ふむ・・」


(柱の位置は一度補修のために引き下げたという位置からは

正確に元の場所に戻されておる

確かに出力量も以前と相違ないほどに修復されておる・・

だが・・)


「「 」

空で手をあてた柱の壁面に刻まれた薄い謎の紋様文字の一部は

その途中から以前はあった続きの部分が消失してしまっている


(・・・、この刻まれていた古い紋様文字の役割は

以前から不明なものではあった


伝記では半数はとうに剥がれ落ちてしまっていたらしいが

大英雄の時代には金の細糸でできた紋様も残っていたという


しかしその当時ですらこの紋様たちは

結界に関与する実質的な効果を全く持っておらず

解読もできないただの装飾の彫刻文字であると・・)


首都大結界を構成する石柱のもつ機能面は完全に元に戻っているものの

以前からその用途もわかっていなかった柱の古い紋様は消失したそのままで

復元は不可能なまま放置されている



(ここから「何か」が失われた・・)

「・・・・」



(  )

ふとした騒がしさから

上空から眼下の地上をみる


(・・・!)


(( ワアア・・  ))

そこには大神殿前の広場に集まる異様な民衆たち

聖ソウル法典に抗議をするレジスタンス活動をしていて

徒党を組んで声を張り上げている


「悪魔の星が復活するぞおお!!」

「法典の教えは正しくなかったのか・・!」

「なぜ正しき教えを我らに授けてくださらない・・!

このままでは災厄が訪れる・・!世界が滅んでしまう・・!」

(ガチャーン、ゴチャーン)(ワイワイザワザワ・・)


「法典は我ら民を見捨てるのか!」

「悪を滅ぼす大英雄を復活させろ!!悪を打ちのめせ!!」

「法典は大英雄の力を隠して独り占めしているのだ・・!」

「我らを救いたまえええ!!」


「ちがう!違ったんだ!悪魔の力こそが真の世界を統べる神の持つ力・・!」

「神殿の加護は本当に戻ったのですか・・!

家内がよく眠れていないんです・・!

お願いです どうかご加護を お助け下さい!」

「復活!復活!!復活!!!」

「とにかく暴れちまえ・・!!」「うえああああ!」

様々な過激な主張がごちゃごちゃになって暴徒と化している民衆たち


「「 集会を解散しなさい・・!!」」

「ぎゃああ!」「ワーワー」

そこに暴徒を取り押さえて取り締まる治安維持の武力鎮圧隊が到着して

一気に集まっていた人々が蜘蛛の子を散らすように逃げていく


「(これは・・)」

その乱れて荒れた様相を

大神殿広場の上空から姿を消して見ていた玄天斎風魔大楽


(民衆は伏せられた「災厄」がどのようなものであるかは

正確には理解しておらぬ

過剰な吹聴や煽動をする者たちの影響もあるのだろうが・・


これは異常だ

疑心に加え、心的負担による不眠に疲弊・・

ここまで抑えきれぬほどの民の不安が蔓延しておるとは  もしや・・)


(ワーワー・・)(・・・)

レジスタンスの一部が反抗して武力鎮圧隊に捕まったりしていたが

やがて大神殿前は元の静寂を取り戻す


・・

静寂に戻った広場では

以前と同じように聖ソウル法典の大神殿に参拝する人々の交流が

いつものように穏やかに行われていた


しかし最近は

このような過激な集会活動が開かれる割合が徐々に増加していたのだった


(回想が終わる)

・・・・

・・・


オジキの話を聞いているリズ

「首都はレジスタンス活動で荒れているって

確か他の先生もいってたわ・・ でもどうしてそこまで・・」



「そうじゃな 首都は荒れておるという話はわしも聞いていた


ふむ・・

少し今に至る法典にまつわる話をしておくか・・



(スう・・)

・・


その昔 聖ソウル法典は集めた英雄たちを駆使して

絶対悪であるとされる「悪魔」を討ち滅ぼして民の支持を得た・・。 



((「悪魔」と聞いてリズの頭の中にトルマドルマの地下通路で一瞬見た、

あの噴火する火山が描かれた壁画と星のような輝きの元で

赤い火の塊を持っていた炎の蛇の怪物の姿が思い浮かぶ ))


メリカドに残る

とある有名な古い悪魔の伝説の一節

・・


あるところにとても強い力を持つ火の山とその主がいました


「 「おお我らを守りし神、大いなる炎蛇ダラ・マジャラ様 

迷い子を無事に我らの元に返して頂き感謝いたします

あれは私の娘にございます」 」


「 「 よい かまわぬことだ 」 」


「 「しかしながら・・このところ

どうして貴方は荒ぶられておられるのですか

われらはとても困っています」 」


「 「 あれは我ではない お前たちは知らぬだろう

この火の山は本来荒ぶる姿こそが常

ただの気まぐれにその姿を変えているに過ぎぬもの


なればメイリクの地の人の長よ 汝のその王冠を置いてゆけ

されば我が魔法を使い 

お前の子が育つ七つの年を跨いだ翌瀬まで火の山を鎮めよう 」 」


「 「ありがたき幸せ・・」 」

・・

それから時は経ち

また火の山に人がやってきました


「 「炎蛇よ 我らに主の火の山の秘石を分けて頂きたい

金の宝物を差し出せば炎蛇は願いを叶えると聞いてはるばるやってきた」 」


「 「 先の人間たちは我の周りの物は一切として欲しがらなかったものだが

まあ構わない 石ころなどはいくらでも転がっている

好きなだけとってゆくがいい 」 」


・・

また時は経ちました


「 「炎の悪魔よ 隣国の敵は我らの国を攻めてきた

隣国の愚かな者たちは自らの国を滅ぼすほどの災いを求めている


悪魔に捧げる黄金の宝物は国中からありったけをかき集めた 


これで憎き奴らに災いを与えてほしい」 」



「 「 はて 人間はそんなものが欲しいのか

いいだろうその願いを叶え その者たちに災いを与えよう 」 」


・・・

・・

それから悪魔は願いを叶えてあげましたが

その時人間たちに捧げられた黄金の宝物は

悪魔の魔法を使い、願いを叶えても余りあるほどだったので

災いを欲しがっていた周りの人間の国にもその分の災いを与えました


それから人間は

火の山にしばらく来なくなりました

・・・


また時は経ち

火の山に悪魔を討つ強い光の勇者がやってきました


「 「 我はお前たち人間たちのことを無下にせず

望むなら幾時もその願いを叶えてきた


なぜお前たちはこの我に剣を向けるのか 」 」



「 「 悪魔よ なれば答えよう

それは我ら人の願いがお前を滅ぼすことを望んだからだ 」 」





「   」


悪魔というのはそれまで特別な存在だった

 

はるかな太古の刻からこの世界に存在し

世界の各地に点在した力場の強い土地をよく好み 

そこに住みついて縄張りとする

魔物とも人ともかけ離れた存在、

強い力を持つが実体のないこの世界に潜む古い悪霊に近い存在だとされておった


悪魔は人には理解の及ばない、人を惑わす摩訶不思議な魔法を使い、

その悪魔自身の存在も変幻自在に変え

ある時は怪物にも

またある時には人の形をした存在にもなれる悪魔もいたという


そんな超常の力をもつ悪魔たちを

密かに神として崇めていた種族も珍しくはなかった



人間はそんな得体の知れない存在の悪魔たちを恐れて避けつつ

悪魔たちを刺激しないように悪魔のいない周りの平坦な土地だけを切り開き 

細々と住む場所を徐々に広げていった


土地の住処の近くにやってきた人間たちに興味を持ち

いたずらをしたり友好的な悪魔もいたが


強い力の土地を独占して力を得ていた一部の悪魔たちの中には

魔物と混ざり合い人間に敵対心を持ち

徐々に土地に入り込んできた人間たちにその力を使って災いを引き起こして

ついには人の国を滅ぼすような気性の荒い悪魔も現れた


だが悪魔の持つ魔法に対抗できない人間は

なす術もなく嘆きながら切り開いた住み場所を引き払うしかなかった


人間側で唯一、人を統べるために強力な魔法の力を持つことを

天の星から許されたという御神の使いの一族の王は

敵討ち、悪魔の殲滅を流浪の民から嘆願されたが


所詮悪魔の心は人間には触れられぬし理解もできぬもの

教えを破り 悪魔の土地に近づきすぎた者たちが悪いと断罪し、

その国を失った人間たちを相手にしなかった



人の王は人を救わない


そういって袂を別って絶望した人間たちを救済したのが

初代教長メサイヤ・ロード・シングルアイが率いた聖ソウル法典であった


聖ソウル法典はそれまでの古い王が用いた暦を改め「新星暦」、

今の「星暦」とし 古い暦は「旧星暦」とし過去のものとした

それまで根付いていた多くの慣習の廃止を宣言し

「楽園」から天啓を受けたという、

それまでとは違う新しい教えを次々と広め


その教えの言う通りにすると

なんと人の中からも徐々に魔力に適応し

魔と戦う力、魔法を扱える者が現れ始めた


そしてその中でも特に強力な力に目覚めた者は

法典によって「勇者」「英雄」と讃えられ、 

害のある悪魔や魔物を倒しながら 時には犠牲にもなりながら

迷える人々を強く先導していったのだ


だがその一方で 

人が魔法の力に目覚め 勇者が現れ始めると

人だけではなく

それまでは魔力を生命維持に利用するだけだった魔物たちの一部が

呼応するように突然魔法に覚醒し 力を付け始め


そしてその魔物たちを束ね、

高度で強力な魔法の力を使う強い魔物の王が出現する

後に「魔禍の目覚め」といわれた超現象が起こり、

世界の各地で大きな混乱と争いが頻発したが


だがそれでも知恵を持つ人の持つ力は

世代をかけて大きく進化していき 争いと混乱の中でも勢力を広げ


ついに大英雄

人の手が出せなかった強い土地の悪魔や

魔物の王をもうち滅ぼせるだけの力を持った勇者や

魔法使いの英雄が現れるようになった


そうして遂に

聖ソウル法典は大英雄の力を結集し

全ての悪魔の討伐に成功し 悪魔の持っていた土地を奪還したのだ 」


・・・

(は、はえ~・・すごいスケールが壮大な話・・

でもそれだとイタズラだけだったり

友好的だったっていう悪魔も全部残らず討伐しちゃったんだなあ・・)



「・・故に悪事を行う悪魔はもう存在しない、

民は法典を信仰し、

勇者や英雄たちの偉大な魔法を崇めれば

世界は平和であり続け安全であるという教えを押し広めてきた


だが民の風習レベルでは時代に訪れた病苦や飢えなどの災いを

人は度々あの恐ろしい悪魔が姿を変えたものだと話に伝え

法典の教えが浸透しても

悪魔という存在だけは民の心に根強く残り続けたのだ 


そうしてそれが・・今となって

不安を煽り立てる者たちが別の意となっていた風習上の悪魔の存在を

滅ぼした過去の伝承の悪魔たちと同一視した主張を始めたのだ 」


・・


(・・・)

「・・それが首都が荒れている原因・・?

それだと過去の滅んだ絶対悪の悪魔がまだ身近にいるかもしれなくて

法典は嘘をついているっていう言い分になるの・・?」


「そうじゃな・・それに近い主張をして暴動が頻発しておる


首都では聖ソウル法典の反体制派の過激派の騒動は一旦は鎮圧して

その後は一見は何事もなかったように事態は収まっておった


だが・・わしの目には分かった


見た目には分からぬが

水面下では以前の首都の人々の様子とは違っておった


少しづつ・・人々の中に世界に対する不信不安の芽、

・・悪意の力が根付き始めておる


煽動をする過激派も一旦は息をひそめてやり過ごしておるだけじゃ

根本的解決には至っておらん


聖ソウル法典の上層部も以前とは変わっておった

以前のように取次ができん 話もいくつか通じないことがあった


以前の影響力を持つ人物の任が解かれたり

法典の威光、武力を支える有力な魔法師や勇者の失踪が相次いでおる


そして今回の世界の異常・・ 得体のしれぬ何かが動き出しておる」



「・・今はあまり戻らぬほうがいいが

この学園にやってきた首都組の留学生は契約上、

いずれ近いうちには首都メリカドハートに戻らねばならん


情勢不安や体調不良などを理由に

ここに留保することもできんことはないがな


被害をこうむった者の側ではあるが

特に勇者組は聖ソウル法典の本部で問詰められることになるだろう


気を付けるのじゃ・・ 帰る者たちにはそのように伝えよ」



「わ、わかりました・・」


「それから・・」

オジキはまた勇者ミトラの方を見て少し考えこむような仕草をする


「うーむ これもここで伝えておくか


以前に孫から聞いていた行方不明と思わしき上位の冒険者の詳細だが

それらの者たちの行方不明の捜索はとうに打ち切られておった


正確には「行方不明」といった扱いからは変わっておった


「殿堂入り」を果たした英雄級の冒険者として名誉が与えられて

「楽園」へと無事渡ったと記されておったのだ


最近になって「殿堂入り」を果たしたSランク冒険者のリストも

追加されておった


そして直近のその中には

Sランク勇者の「ブライト・ネス」の名をはじめ

何名かの最上位冒険者の名も連ねて明記されていた」



それを聞かされたミトラが驚く


「え・・? 「殿堂入り」や「楽園」のことって

勇者の人間にだけ伝えられる重要機密・・ですよね


どうしてオジキさんが・・


それに勇者ブライト・ネス君は私の遠い親戚の家系の勇者で

すごい才能ですでにSランク級の勇者ではあるけれど 

まだ勇者としては研鑽期間中の若い男の子だって・・」



「今の世代の勇者にはそう伝えられておるのかもしれんが

古くから続く貴族の当主やその子息は

自らの血族を支えてきた魔法やその知識を大事に守っておるものでな


過去の古い検閲前から受け継いだ知識を密かに持っている者も珍しくはないのだ


そしてワシはこの世界の裏事情である「楽園」についても

事情があって調べ続けておったのじゃ


ワシは魔法師の等級位を持っておらんから

殿堂入りの条件は満たしてはおらんが その領域に近い魔法師ではあるのでな

その辺りの事情は多少は通じておる


ただ妙なのは

通常は楽園に渡れるように認められた冒険者の情報は

聖ソウル法典の掟によって徹底的に伏せられ

渡りに使われるという場所も聖なる地として法典によって握られて

極秘とされる


だが本人の声明などは

殿堂入りの歴代の書物に刻まれて残されているものなのだが

近年のものはまるで途切れたようにそれが現存しておらん


さらにいうと

その最近になって楽園に渡ったという「勇者ブライト・ネス」は

記録が残されないことを予期して

密かに周囲の人間に「一度見てすぐに戻る」と伝えておったそうだ


だが姿が戻ったという情報は一切なく 未だ兆候も見られてはいない」

・・



「え・・ 戻らなかったっていうことは

やっぱり他に人たちと同じように「楽園」に馴染んでしまったんじゃ・・


戻ると言って戻らなかった人っていうのは過去に他にも例があるみたいで


それに、楽園は素晴らしい場所だから・・」


(え・・?)

ミトラの反応を聞いてリズは違和感を覚える

まるでミトラが一瞬、別の遠くの人間になってしまったように感じた


「ミトラはその「楽園」っていうのが どんなところなのか知ってるの?」


「え、いや よくわからないけど・・

素晴らしいところだって みんな言ってたし 

祈りの時間の時に法典の人もそうだって

自分にとっての理想の上位の世界がそこにあるんだって


だから魔法を極めるような人はみんなそこを目指すって・・」



「ミトラはそれを自分の目で確かめたことがあるの?」


「私は魔法使いとしてまだ未熟だから それを見たりはできない・・わよ」


(・・・)

「未熟な人は見れないのなら 他の人だって確かめれてはないわよね


自分の目で見てないものが どうして絶対に素晴らしいところだって、

理想の上位の世界があるって信じられるの?」



「え・・それは・・、なんでだったんだろう・・

言われてみればそうよね・・


でも私は昔からそう思ってたの・・たぶん他の人もそうだと思う


それに昔そこから戻ってきた人も

素晴らしい場所だっていってたって・・」


「・・その昔に戻ってきた人って・・、誰なの?」


「・・・わからない 

法典の人がそういう人がいたって言ってたの・・」


「・・・」

「・・・・」


割り込んで言葉数の少なくなってしまった私たちの代わりに

オジキが続ける


「楽園から戻ってきたという者は法典だけではなく

国にも正式に記録は存在しておる」


「え」


「といってもそれはかなり昔の人間になるが・・

それに楽園に関する情報をその者が話したわけでもない


ワシがまだ若かった時代の人間だ


その男は「シルバー・マクラガン」という優れた魔物の調教師の男で

魔法使いとしての実力で殿堂入りを正式に認められ 

自身が特に気に入っていたという

盲目の使い魔の一体と共に楽園に旅立った十年後、

なぜか今の世界で魔物領の端でひとりで暮らしているところを

偶然冒険者によって発見された


だがその男シルバー・マクラガンは

自分の名前を忘れるほど耄碌しており、

一緒に男と楽園に渡ったという盲目の使い魔の方は連れてはおらず

渡ってきたはずの楽園のことを尋ねても

()()()()を間違えた」とだけ答えて まるで会話が成立しなかったという


それを伝え知った法典側はなんとかその男を法典に招き入れたかったようだが

その男の魔法の力だけは健在で全て跳ねのけられたようだ


そのうちに男が暮らしていたうち捨てられた小屋の中で一人で

衰弱して死んでいたところが発見されて 

その記録は終わっていたが・・ 」


「・・・」

(ふーん・・じゃあそのシルバー・マクラガンて人って

その目が見えない使い魔とは楽園で別れちゃったのかなあ・・)



「・・

そしてこちらは伝承に近いが


大昔の大英雄の時代 

かつて世界から閉じる前の楽園は

その行き来が比較的自由に行われていた時代があったという


そこでは かつて失われた古代魔導文字や広い定義の祝福魔法を

古の英雄神たる存在から直接教わることができたといわれておる


楽園が魔法師にとっての

至高の場所であると法典に根強く今に伝えられているのは

そういった過去の伝承の文化の影響もあるのだ」


「そうなのね・・」


「まあ今の「楽園」がどのようになっておるかは

今のこの世界におる人間には本当の意味では分からぬだろう


何処かにあるその向こう側へと

本当に渡った人間でなくてはな・・」



(行方不明になった人たちは

みんなその楽園っていうところに渡った・・?

でもその一部の人たちの姿?はオリジンのあの画面の中で戦わされていた・・

何かが隠されてる・・?なにか都合が悪くてそう書かれたの・・?)


・・・

オジキともう少し事件後の勇者アギトやミトラの容態などの話をして 

話は一旦そこで終わり


「ハッハッ・・」(タッタッタ)

今まで私たちが大事な話を聞いている間も欠伸をして

近くの床で伏せてぐうたらして過ごしていたオジキの使い魔の駄獣犬

そんなベダジュウがスックと立って尻尾を振りながら

私たちの先の廊下に歩き出す


「帰るならそれについていくがよい」

オジキがそれがこの部屋の帰りの案内だ、と教えてくれる


オジキはその後も あの隠し部屋に残り続けるそうで

私たちは先にその部屋を後にしたのだった


・・・・

・・・

長い隠し通路を通って

隠れた壁から抜け出すように私たちは元の廊下の位置に出てきた


「ヘッヘ・・」(タタ・・)

私たちを出口まで先導していた使い魔ベダジュウは

私たちが隠し部屋から抜けた後はすぐ元のオジキの所に戻るのか

舌を出しながら足早に去っていったのだった


(シュイン・・)

私たちが出た後には

通ってきた廊下の部分はただの元の壁に戻っていた

・・


「ふう・・」()

ミトラが立ったまま少しバランスを崩して私の肩に少し寄りかかる


「ミトラ・・」

「ごめんなさい ちょっとずっと私 緊張してたから・・」

「そうね・・」


「どうする?ミトラ 少し休んでいく?」


「ううん 休んでる暇なんてないわ 

アギト君たちのところにお見舞いに行ってあげましょ」


「そうだったわね じゃあいきましょ」

「うん」


・・・・・

・・・


勇者アギトが療養している隔離病棟にて


「コンコン」

私たちは看護婦さんに案内されてその部屋を訪ねる


広い部屋に一つだけあったベッドには

目が覚めた勇者アギトが半身だけを起こして座っていた

・・


(・・・)

「・・、 2人とも・・来てくれてありがとう

でも僕は、君たちに合わせる顔がないよ・・・」


勇者アギトはベッドで思い詰めていたのだろうか

やつれていて目元に深い隈ができていた


「何言ってるの 元気出しなさいよ勇者でしょ」


「そうよアギト君 みんな無事だったんだからよかったじゃない」


「そう、だね・・」


目が覚めた勇者アギトと少し話をすると


私たちの報告のことで時間が結構経ってたようで

先に勇者アギトの見舞いに来ていたステラとローラは

天気が悪くなる前に

馬車に置いてきた荷物とかを整理する作業のために離れたらしい


先においてあったお見舞い品のりんごやオレンジのようなフルーツが

手は付けられずにベッドの横の机に置いてあった


「・・・」

あまり会話のない私たち

やつれて元気のない勇者アギトがわずかに口を開く


「聞いたよ・・

今は・・治っているようだけど、 君たちはひどい傷を負っていたんだってね


僕はあの時からの記憶がない・・

でも僕の記憶が途切れた時から、

僕が自分を失って 

君にそこであの後 僕が何をしたのかを考えだすと、夜も眠れないんだ・・」


(・・・)

「・・それはアギト君じゃないし

アギト君のせいじゃないでしょ・・気にしないでよ」


勇者アギトは首を振る

「・・いや・・あそこまで敵にいいように利用されてしまったのは

まぎれもなく それまで力に頼った僕の、弱さだったんだ・・」


「・・たしかにアギト君は操られてて私に襲ってきたわ

けどそこからは私もアギト君とは意識を離して戦ってたわ


私とリズで頑張ってなんとかなったのよ


せっかくあのおぞましい魔剣の呪縛からも解けたんだし 

アギト君も元気出してよ」


私も一言いれておく

「そうよ 気にすることはないわ

わたしもあなたの顔面に咄嗟にものすごいハイキックを浴びせたのよ 

正直今あなたの顔を見てなんともなってなくてホッとしたわ」


「え・・そうなのかい・・? 顔面を・・?」


ミトラに続けてリズの発言にちょっと勇者アギトがぎょっとした顔になって

顎から頬のラインの辺りを手で確かめるように触りだす


(このイケメン顔を私の蹴りで整形することにならなくて

ほんとよかったわね

学園にいる女学生ファンに泣かれるところだったわ)


少しだけ空気が緩んで なごやかになる


・・・


「・・ありがとう 

君たちに言われると少し気持ちが落ち着いたよ・・


どうだろう 君たちもそこにあるフルーツを食べていかないかい?

せっかくもらったけど僕だけで全部食べるほど食欲があるわけじゃないんだ」


そこにはお見舞いの品の美味しそうなフルーツたち


「あらいいの? 私たち前に用事があったからそういう見舞い品とか

全然用意してないんだけど」


「全然かまわないよ」


「じゃあ私が魔法で果物を切り分けるわね」

意気揚々とミトラが果物を切り分ける係に名乗りを挙げる


「ブシャアア!」

「あっ・・!」


オレンジのような果物がまるまる1個

つぶれてジュースになって病室の床に散らばる

(あ、もったいない・・)


「ミトラ・・果物ジュースにするならちゃんと容器に入れないと」


「ジュースにするつもりじゃなかったわよ・・!

ちゃんと切り分けるつもりだったのに・・!」


「・・・っ」

「ふふっ・・ははは・・」

(あっ・・)

・・

勇者アギトはあの戦いの後 はじめて自分で笑うことができたようだった


・・・

(モグモグ・・)

「うん なかなか美味しいわね 高いやつねこれは」

「私もそうだと思う」


その後 私たちは一緒に切り分けたフルーツを食べている


ミトラが懲りずに次のフルーツの切り分けに挑戦しようとしたところ

勇者アギトが

「ちょっと僕に貸してよ」って

ミトラと違って器用にフルーツを切り分けてくれた


ていうか魔法じゃなくて

魔法の道具入れから普通に果物ナイフを出してお皿に切り分けてくれた

その後 果物は冷えてなかったんだけど

これは魔法ですぐに冷やしてくれて すごく食べやすくて美味しかった


・・

食べ終わった食器などをミトラと一緒に一旦病室の外に持って出す

廊下の窓の方を見ると

(あら・・)


・・・

「(パラパラ・・)」

午後から降るといわれていた雨がもう降り出していた


「あら・・あとで馬車の荷物持って帰ろうかと思ってたんだけど

これは明日からがいいかしらね

それにだいぶ時間もたっちゃったし 私そろそろ行かないと

アスラも馬車のところに乗せたままなのよ」


「それは・・いけないわね アスラちゃんも寂しがってそうだし

すぐ行ってあげないとね


だけど・・リズ

私、もうちょっとここに残ることにするわ


アギト君 元気になったみたいだけど少しまだ無理してる気がする

もう少し隣にいて元気づけてあげたくて・・」


(ミトラ・・いろいろあったしね・・)

「わかったわ じゃあ私先に帰るわね しっかりね 

あとミトラもしっかり休むのよ」


「うん オジキさんから言われたことは・・私からアギト君に話すわ

 じゃあねリズ」


「じゃあね・・」


ミトラは勇者アギトのいる病室に再び看病するために戻っていった

私はそのミトラの後ろ姿を見送る


こうして私たちは病棟で別れたのだった


・・・・

・・・

(ザアザア・・)


雨降りの学園の広いまっすぐの道 

病棟を出る時に貸してもらった傘をさして歩くリズ


今は馬車から連れてきたアスラも一緒だ

濡れないように前でアスラを抱えて 一緒に傘の取っ手を持って支えている


・・・・

その少し前


馬車のところにアスラを迎えに行った時は だいぶ放置してしまったから

アスラが不機嫌になってるかなって思ったけど


「キャッキャ」「おらおら」 (・・!)

馬車の中でまだ一緒にいたローラが遊んでくれていて

楽しくやっていたようだった

・・

話を聞くと

ステラの方は濡れるのが嫌だから雨が降る前にさっさと荷物をまとめて

作業をサボり気味のローラは放って

もう学園にある寮の部屋に一人で戻ったらしい

ステラらしいっていうか


「これどうするのリズ?」

ローラが馬車に積んであるリズのでっかいリュックを指さす


「さすがにこれは傘に入りきらなくて濡れちゃうから明日にしようかなって」

「それがいいね 馬車の本体はまだしばらく貸し切りみたいだから

それまで自由にしてていいわ」


それでリズはリュックの中から

邪魔にならない手持ちのものだけ持って帰ることにする

(これは・・)

戦闘でボロボロになってしまったリズの腕輪が鈍く銀色に光っていた


(でもこれは確か魔力を通していけば元の形に修復されるのよね

今のうちにつけておいて 魔力を通しながら直していこうっと

寝ながらでも腕につけてたら直ると思うのよね)


リズはそのボロボロになった腕輪を付けにくかったけど

なんとかして無理やり右腕に装着する


「アスラのことありがとうね ローラ」

「いいって」

ローラにアスラの面倒を見てくれたお礼をいう


「じゃあなー リズ アスラ」

「うん じゃあね」

「じゃあね~」

ローラと別れを告げて


リズはアスラのことを抱っこして傘をさして 

だんだん激しくなってきた雨の降る道をその場から歩き出したのだった



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