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第98話 帰りついた学園

 「勇者パーティが帰ってきたぞおー!」


少し肌寒い朝方からはしばらくたった時間帯


聖セントラルの学園都市の魔導エレベーターから

馬車で大きな学園の正面門をくぐると

たくさんの学園の関係者が迎えにやって来ていて

詰めかけた野次馬と声援もやってくる


(ワイワイガヤガヤ・・)

そして到着した馬車からまず勇者の安否と

それからパーティメンバーの私たちの健康状態などをチェックしていた


勇者パーティの帰還というだけあって現場はものすごく騒がしい


(そりゃただの帰還ならともかく 

事件に巻き込まれちゃった報告の後だもんね・・)


・・・

馬車の窓から外の空を見るとどんよりと曇り空 

午後には雨が降るらしい


人だかりであまり見えなかったけど

他のダンジョンに探索にいっていた学生パーティも続々帰還してきていた

どうやら帰ってきた他のパーティは無事だったっぽい


世界中の規模での異常事態でこの国の上空でも

異様な赤い光のオーロラが各地で観測されたようだったけど

この学園都市内にあるダンジョンは

結界に守られてる影響なのかダンジョン内での異常はなかったらしい


それと勇者アギトは目は覚めたみたいなんだけど

体調がよくなかったようで

後続の私たちの馬車より先に早急に学園の病棟に護送されることになった


いろいろチェックされた残りの勇者パーティメンバーの私たちは

学園の中央まで馬車でそのまま移動して

報告というか事件の調書をとらされることになった


(聞いていて予想通りだけど しょうがないわね・・)



・・・・

学園中央機関 情報統制塔


報告用に手配された管制塔の大きなホール

そこに事件の詳細の情報を待つ調査員や取材班の人たちが詰めかけている


「ガヤガヤ・・」「ワイワイ・・」

「法典は勇者にあろうことか邪剣を授けたのだ・・!」」

「そんなはずはない!我々は確かに聖剣を勇者に授けた」


「では本物の聖剣はどこにあるというのだね・・!

嘘なのではないのかね・・?」


「黙れ!あれは紛れもなく

かの大英雄メリクアドラもその手に取り

かつての魔の地を切り拓いたという古の聖剣、「焦星の一振り」であるぞ

それを邪剣などと・・!軽はずみな発言は慎みたまえ・・!」


「そんなことが世に広まれば法典どころか

我が国そのものの沽券(こけん)に関わるのですぞ・・!」


(うわあ・・)

私達が会場に入る前に

すでに変な言い争いが先行して聞こえてきて騒がしい感じになっていた


(この中に入るのかあ・・)と思っていたら


「シン・・」

でも突然騒ぎがなくなって場が鎮まって

なんだろうと思ったら


(あ・・)


会場の奥の別入り口から

この都市圏から召集されて呼ばれた偉い人たちが

次々と入ってきて席についていき

その中央にはこの学園の学長先生のゼキスバード学長も座っていた


・・

ようやく入っていけそうな雰囲気になって

そこに促されて

私たち勇者パーティ組も報告のために会場に入場して揃って並ぶ


(うわあ・・なんかすごい空間だなあ)

「  」

まるでこれから裁判でも受けるみたい


ある程度先に私たちについていた監査の人たちから

大まかな情報が渡っているはずだけど

やはり報告では当事者本人の私たちの口から直接話される情報の価値が高いみたい


・・・・

・・・

席についた調査官の厳格な雰囲気の議長から調書が進行する


「前例のない事件に巻き込まれたようだが無事帰還してくれてなによりだ

さすがは我が国の勇者だ それでさっそくだが・・」


病室の勇者アギトを除いた残りのメンバーでの調書が始まる

アスラはちょっと馬車でお留守番


始めに騒動のあったダンジョンの場所の詳細や

監査の構成メンバーなどの情報が一通り話されていき

現場の解析班による念写された資料なども徐々に展開されていく

・・・


「事件のあったダンジョン入り口付近で出現したという魔物は

すぐに君たちによって倒されたのではなかったかね」


「はい 討伐しました ですがその後 

倒したはずの魔物の様子がおかしくなって

さらに私やメンバーがその時 転送の罠の魔法に巻き込まれたんです」


当事者の勇者ミトラがハキハキと

次々に事件に巻き込まれた経緯の質問に答えていく

「・・・」「・・・」


情報補佐官の人が聞き取った情報を確認して取りまとめている

「ここまでの報告通りですね・・」


「では詳細のない勇者への襲撃者についての話に移ろうと思う


襲撃者の名は「ドラグ・バルバロイ」であったと聞いている


襲撃者は煉獄の魔法使い、狂乱の炎ドラグ・バルバロイ

と呼ばれる竜人族の国際的大犯罪者であり

等級を持たない魔法使いでありながら

超位級の力を持つ魔法使いであると推定されている


ドラグ・バルバロイは4年前、聖ソウル法典の有力貴族に対し

連続誘拐事件を起こし、世界に手配され現在も行方をくらませていた


その襲撃者が勇者アギト・クロスハルトをのっとり

後にその名をドラグ・バルバロイと名乗ったのは本当かね」


「はい 本当です」


(ザワザワ・・)

会場が騒がしくなる

(本当か・・)(SS級国家犯罪の賞金首だぞ・・)

(超位級の魔法師じゃと・・!)

(勇者を乗っ取りだと・・!大事じゃないか)

(目的はやはり聖ソウル法典に所属する勇者の誘拐か・・?!)


「勇者アギトを乗っ取った手段が

偽物の聖剣であったという魔剣による、

精神干渉から身体を介しての憑依変化だったことは間違いないのだね?

この質問は目が覚めた勇者アギト君の病室でも聞かれていると思うが」


「はい 間違いありません」


(ざわ・・!)

(なんだと・・)(勇者のもつ聖剣が偽物・・!)

(馬鹿な 聖剣は大神殿で厳重に管理されているものだ・・)

(憑依じゃと まさかそんなことが)


・・・

・・

その後も質問が飛び交うたびに会場はざわめきに包まれる

全ての質問に勇者ミトラがハキハキと受け答えしていく


ほとんど立ってるだけの私


「・・・」

(こうしてみると勇者ミトラってすごく優秀みたいね

成績も苦手な属性魔法以外はすごいし・・

私たちの前では抜けたところもあるけど・・)


「なんだねこの資料の大きな長い生物はリズ君 蛇なのかね?」

(・・!)

「え それはムカデです」

「ほう・・虫かね」

「いえ ミミズかもしれません」


な、なんで私にはこんな質問が


・・・・

・・

「それで・・最後にだが 

勇者に対して襲撃を行ったドラグ・バルバロイは

勇者である君によって討伐されたのだね?」


(・・・)

「 はい 戦いの最中に敵の強大な力によってダンジョンが崩壊したり

そのせいでダンジョンの地層に埋もれていた巨大な生物の体が

一緒に出てきたりいろいろありましたが

パーティメンバーの力を借りて敵の魔剣を消滅させ 敵の術の力を解除して

魔剣が本体であった襲撃者を討伐しました」


「おおおお!」

(ザワザワ・・!)(素晴らしい・・!)

(さすがは我が国の誇る勇者だ

襲撃されたとて重犯罪者など歯牙にもかけん・・!)

(このような勇者が低ランクであったとは・・評定を改めねばな)

(重大な案件だがその襲撃者が倒されたのなら ひとまず落着だな)


それは一般的な魔法ではなく禁止魔術の類ではあるものの

憑依の術を行使可能な上位魔法師は世界に存在していて

その術はとてもリスクの高い術であることは知られていて

憑依中に憑依に使用しているコアの媒体が破壊されると憑依に失敗して

術の使用者本人は死んだも同然の廃人になると言われていた


・・・

安堵の声が広がっていく

だけど安堵に湧いている傍聴人たちの中央で

ゼキスバード学長はただ一人、

勇者ミトラの発言に眉をぴくりと上げたような仕草をした


そこに


「少しお待ちください 報告を全て鵜呑みにしてよいのですかな」


声を上げたのは法衣を着た聖ソウル法典の幹部関係者だった


「確かに重大な事件の規模であったにもかかわらず

それは大変誇らしい報告ではありますが

物的な証拠が何一つありません 


即席の現場の調査では激しい戦闘痕はあったものの

襲撃者の魔力の残塊も全く検知ができなかったとあります

さきほどの報告では聖剣とすり替えられたという魔剣も

消滅して存在しないという話ではありませんか


あまりにも不自然であります


証拠がないのなら勇者パーティが貴重な聖剣の返却を拒んで

ダンジョン内での異変に乗じて都合のいい情報をもたらした・・

という見方もないことはありません」


(・・・)

「あの聖剣は・・すり替えられたというよりは元はたぶん本物だったんです

でも敵の魔剣によって聖剣ものっとられていて

内側から強い力に浸食されて力を食い尽くされて消えてしまったんです


私の聖剣とぶつかった時に起こった共鳴は

最後に残っていた元の聖剣との共鳴だったのだと思います」


「っ・・!それ聞いたことか・・!

そもそも勇者の聖剣というのは

魔剣ごときにどうこうできるものではないのですぞ・・!

聖剣というのは魔なる存在を討ち滅ぼす偉大な聖なる光


どんな魔法であったとしても

聖剣を物理的に消滅させることは不可能・・!


やはり聖剣はまだどこかに別に隠され・・」


(ざわ・・!ざわ・・!)

異を唱えた意見に

一段と騒がしくなる会場 そこに一言



「静粛に」

ゼキスバード学長が声を挟む


すると場は一瞬で静まり返る


「勇者ミトラ・ネスライト君 かのようなことがあるだろうか」


「いいえ ありません 

実際に襲撃者と戦ってきた私とパーティメンバーの目が確たる証拠です」


「そうかね・・」


「・・・・」


(・・・)

場が静まり返った中で

ただの沈黙で異様なプレッシャーを感じる


すると


それまでの空気からガラリと変わって

ゼキスバード学長先生は厳しい顔つきからニコリと表情を崩すと


「フフフ・・これではまるで尋問会じゃな


そうではない 聞いたじゃろう 

彼女らの目が何よりの証言 報告に何も問題はない


わしは想定外の前例のない困難な襲撃事件に巻き込まれてなお

果敢に戦い抜き、勇姿を見せ

我が国の(かたき)ともいえる卑劣な魔術師に対して

見事に勝利してみせた若い勇者とその仲間たちに

称賛を送りたいと思うが・・


皆の衆はどうだろうか・・?」



「・・!」「!!」

(ざわざわ・・)


「その通り・・!」「勇者万歳!」

「我が国の誇りであるぞ!」

「オオオ・・!」



「ふむ・・ まだ多く問題は山積みだが・・今回の調書はここまでとする


勇敢な勇者パーティに敬意を」


(パチパチパチ・・!)


会場から私たちに向かって割れるような拍手が送られる

拍手と称賛の声に包まれる私達


「・・・!」

ホッとしたけど静まり返った後からの落差に

私はちょっと拍子抜けたのだった


・・・

・・

会場に拍手が鳴り響く中 

「ぐぬぬ・・」

さっき声を上げた聖ソウル法典の関係者は苦虫をかみつぶしたような顔をしていた

(ひそひそ・・)

(魔術師の討伐で勇者の名声こそ高まったが

建国にまつわる貴重な我が国の聖剣の一振りが失われてしまったことが

この公の場で認められてしまった)


(我が国の威信であり武力の象徴でもある古の聖剣は

今保管してあるものを失えばそれはもう二度と創られることはない

聖ソウル法典の大失態じゃな 責任の回避に必死なのだろう)


(自らが所属する勇者の証言じゃ 無下にすることもできんだろう)


そんな僅かな声たちを

ゼキスバード学長は黙って密かに聞いている


「・・・」

(法典も情勢の悪い今 世に対し法典の威光を示したいのだろう、

じゃが近頃はそれらが全て裏目裏目に出てしまっておるのう・・)



・・・・

「こいつは大変だぞ・・」

メモを取りながら調書が終わったので会場を後にしていく

新聞などの取材班や調査員の人たち


しばらくは取材を受けつつその場に残っていた私たちメンバー組も

「私たちも・・戻ろうか」

「そうね アギト君が目覚めたようだしそっちにもいってあげないとね」


・・

その時


((君たち・・ その場を出て誰にも見られぬように

この部屋の入口の向かいから右奥に進んで奥の壁を叩いておくれ))


「!」

私の頭の中で声がした

でもこのしゃがれた声は・・

(まさか ゼキスバード学長先生・・?)


私の隣でハッとしたような表情のミトラの様子

(ミトラも・・? ていうか私・・?)


ミトラも私の方を見て目を合わせる

でも周りを見るとその声は

私たち以外のパーティメンバーにはかかっていないぽい

ステラたちは特になにも気が付いていない顔をしていた


・・・・

・・・

「分かったわ じゃあ後でね」

私たちはステラとローラに 

後で勇者アギトの病室に向かうことを伝えて一旦はそこで別れることになった


(会場を出て向かいの右奥の廊下・・)


広い会場を出て 声を聴いたミトラと共にそこに歩いて向かう

・・

その廊下は確かに人気のない奥の方に続いていたんだけど

横が倉庫になっていて奥の壁は何もない行き止まりになっていた


「ここだよね?」

勇者ミトラがそっと壁に手を触れる


「・・・・」シーン

しかし何も起こらない


「あ!そういえば壁は叩いてって言ってた」


「ふーん じゃあ叩けばいいのね」

「リズ、お願いね」

「任せて」


叩けばいいということなのでリズはその腕を

「ガアン!」

と壁に叩きつける


「え!そんな叩かなくても」

「そうなの?」


すると・・

「うぐう・・!」

なにか呻くような声がして 壁から空間が現れた

そしてそこには人影も


これは・・え!?

この白い髭もじゃの人・・ま、まさか


「ゼキスバード学長先生!?」


現れた学長先生はリズに殴られた?おでこを抑えていた

(や、やっちゃった・・!なんでえ)


「す、すみません・・!」

とても気まずい雰囲気が流れる


ていうか私 ゼキスバード学長先生に個人で相対するの初めてなんだけど

初めてがこんなことでよかったのだろうか

ていうか こういうの学長先生が前に出てやらないでしょ普通


ゼキスバード学長先生はそれをとがめる気はないのか

「よい・・ し、静かに・・この奥についてきてくれい・・」

って

壁の奥に出現した部屋にすごすごと案内をしてくれる


(へえ・・結構奥に続いてる 

隠し部屋なのかなあ・・こんなのがあったなんて)


・・・

通路を歩きながら感心していると やがて目的の部屋についたようだった

前にいた報告会場をそのまま鏡に写して物はなくしたような 

広いけど思ったより代わり映えはしない部屋


・・

「ほお・・痛たたた・・わしが頭を殴られたのは何十年ぶりじゃろうて・・

お前のいっていた通り 元気な娘じゃな

バーゼス君の娘じゃったか あの騒がしかった頃が懐かしいのう」


隠し通路を抜けたゼキスバード学長先生が

大きな隠し部屋の横についていた窓辺のほうに声をかけた


窓辺の人影がしゃべる

「お前も無駄に齢をとってたるんでおるのではないか?

一発ならもらっておくのも教訓だろうな」


「手厳しいのう・・ワシはこの学園の学長なのじゃが」


「あっ・・!」


そこは大きな窓辺なんだけど

そこにはさらに大きい影が立って腕を組んで背もたれていて 

その姿は屈強な天狗の体つきをしていた


「オジキ・・?」


「うむ よく戻ってきたなリズ そして勇者ミトラ


 ・・さて、ここがこの学園の隠された本当の報告部屋なのだ

外部とは情報を一切遮断してある


わしもちょうど首都から戻って報告もある お前たちに話すこともな」


(わっ、犬が)

「アオウン」(タタタ)

例によって一緒にいたのだろうオジキの使い魔の白い毛並みの犬ベダジュウが

こっちにやってきてベロを出している

「わ、犬」

勇者ミトラはそこそこ大きい犬に不慣れなのかちょっと驚いていた


ゼキスバード学長先生が手前にあった席をすすめてくる

「そこの席にかけなさい 楽にしてよいからの」

・・


「改めて わしがこの学園の学長ゼキスバードじゃ

ミトラ・ネスライト君 リズ・クリスフォード君

この度のことでわしと話をしよう」


目をまた見合わせる私たち

(え、ほんとうの報告・・?いいの この大きい人?人なのかわかんないけど)

(オジキは何も言ってない・・うん 信じていいわ)

(じゃあ信じるわ)


私たちは席について

本当の私たちの襲撃の報告がはじまったのだった


・・・・


「ゼキス 確認が済んだ 通じる場所は全て遮断してある

周りも問題ないようだ さらに私から重ねがけも」

「うむ ご苦労」


この人は・・

ゼキスバード学長とオジキしかこの部屋にはいないのかと思ったけど

奥の方からもう一人先生が出てきた


普通に歩いて見えているのに

足運びの動作が違うのか全く足音もなく気配がなかった


グフタフ・アーマード魔法教授 

いつもゼキスバード学長の補佐をしていた老執事のような先生だ

冷たい氷のような雰囲気で 

入学の式典の時も学長先生の隣にいた気がする


だけどゼキスバード学長先生といるときでも丁寧な口調だった気がするけど

今は若干口調を崩している感じ これが素なのだろうか


「 」スッ・・

ゼキスバード学長が中央の椅子に座って口を開く


「さて何から話したことか・・


じゃがはじめに話を進める前にいっておこう


わしらはそこにいるリズ・クリスフォード君がおそらく持つ力のことについて

一端だけではあるが理解があるのじゃ」


「え・・!」

(私の力のことを・・?

オジキだけかと思ったら学長先生とアーマード教授も・・?)


「・・わしらがかつて若かったときは

まだ世界は荒れて今ほど安定してはおらんかった


北の大山脈を越えた紛争地帯で魔竜が暴れ回っておった頃に

わしらは特別任務に駆り出されて少数精鋭の斥候班として組んでおってな


そこの偉そうな天狗、

大楽がそのような人の目に見えぬ力を宿していたことは知っておった

大楽があまり人里では力を使いたがらんかったから 

世には知られておらんし隠しておったがの」


(オジキって学長先生には大楽って呼ばれてるんだ・・

ほんとに昔からの知り合いだったのね)


「その力は古い精霊や妖魔の一部の血統を持つ人の子が

違なる世に触れるために潜在的に持っていた力だとされ

かつての世界からは途絶え

人にはもう宿ることはないといわれた霊能に近い力、幽玄の力であり


大楽はそれを自らの血に残っていた妖魔天狗の血

隔世変異の先祖帰りの力だと見ておった


しかし近年になって他にも

この世界の魔法とは別系統と思われる、

その幽玄の性質に近い異様な力を持つ者は

世界に稀にだが報告があったのじゃ


だがそれらは不治の奇病としての報告だったのじゃ」


「不治の、奇病・・?」

(私の力って病気の一種だったの・・?)


「そうじゃ、魔力とは違う見えぬ力が本人の意思と関係なく発作を起こし

暴走し衝動のままに周りの物などを壊す

かと思えば夢遊病のような状態になって頻繁に無気力になったりもした


発病者は古い貴族の家系の嫡子に比較的多く

それらは魔力の変異による体の拒否反応からの暴走病のようなものと見られ

力といえたものではなく

有効な治療法も見つからなかった」


「大楽とて始めから幽玄の力を扱えたわけではない

若き時にその暴走病を患い、それを本人の強い生命力と気合で克服した時

はじめて力として扱えるようになったのだという


じゃがそんなことができたのは

強い肉体と耐性を持つ妖魔の先祖の血を強く引き継いでいた大楽だけじゃ


この世の力ではない幽玄の力は人には危険じゃ

大抵はその奇病に侵された者たちは幽玄の狭間に触れ 命を落としたり 

後によく謎の失踪を遂げた


世間になじめず犯罪者になる者もいたが

そうした者たちの多くは捕まり処刑され

その後の情報は厳しく統制され大半は伏せられておった」


(・・・)


「じゃがわしらは大楽のことを知っておるから

それが妙なことだと感じだしておった

故に密かに協力して調査を開始したのだが


その調査の矢先に何者かに襲われ 

大楽自身も失踪寸前になって宿していた幽玄の力を失ったのじゃ

なんとか残った力は血のつながりを持つ自分の孫に移せたようじゃが・・


力を使用した大楽ほどの使い手がやられるなど

敵戦力の情報が未知数すぎて危険じゃった

末端の戦力では対処すらできん


それでわしらは一旦は手を引くことにした

時が経ち、わしらはこの学園の運営を任される立場にもなっておった

あまり深入ったことをするのは難しくなったのじゃ


比較的自由に動ける大楽は

今も性懲りもなく首をつっこんでいるようじゃが・・


まあ今度はその力に大楽の孫が関わってしまっておるからな・・

気持ちが分からんわけでもないがの」


・・・

(な、なにこれえ 全然わかんないんだけど ていうか私にいっていいの?)

一連の話を聞いて困惑したミトラが隣のわたしに耳打ちする

そんなミトラの脳に追加で私がごちゃごちゃした情報を差し加える


風魔かざまゲンゴって知ってる? ミトラは知らないか

私と武闘大会の準決勝で戦った1個下の後輩なんだけど

このでっかい天狗の人オジキっていうんだけど その人の孫なんだよ 

その風魔ゲンゴも私と似た力を持ってるの)


(ええ なにそれ それも私にいっていいの?

ゲンゴ君かあ 選手でちらっとは見たけどそこまでは・・

準決勝の時 わたしリペアルームでボーっとしてたのよね・・)


(ええ ちゃんと見てなさいよ 勇者でしょ)

(そこに勇者は関係ないじゃない)


「これそこ おしゃべりはいいがちゃんと話を聞かぬか」


ゼキスバード学長に女子学生2人は注意のお叱りをうけてしまう

「あっ・・」

「すみません」


「そういうわけじゃ

わしらは魔の力だけではなく

この世界にはそういった未曾有の力たちが存在することだけは知っておる


そこでミトラ君なんじゃが・・今回その力を知ってしまったな?」


「え、あの・・ゼキスバード学長が今説明してくれたから

知っちゃったっていうのは」


「おお いかんいかん 配慮が足りんかったな」


「・・・

もっと踏み入らねばな 

ミトラ君、さきほどの報告の情報の一部に()()があったな」


「!!」


「慌てなくてもよい 別に罪には問われん

あれはただの世間の広報向けの報告じゃからの むしろあれが適解じゃ


例えば凶悪犯を討伐したのが勇者ではない・・

などとは広報向けではないからの」


「!・・、 あ、あの・・ ・・そうです 

襲撃犯は本当はリズが倒したんです

私は敵にやられてケガをして動けなかったんです・・」

白状するミトラ


「・・・(あ、いっちゃったわね・・正確には私ってわけでもないんだけど)」


そう あの時の敵の(とど)めは私じゃないんだな



「例えば、の話じゃが・・」


「うっ・・!」

(ミトラ・・やっぱちょっと抜けてるわね しょうがないけど)


「まあ正直なのはよいじゃろう

リズ君をかばっておったのじゃな


・・現場の痕跡はあまりにも激しすぎた 

通常の調べでは検出はできぬが

勇者による魔法の接触では起こりえない痕跡の特徴があった、と

裏で動いていた精密調査員がその分析情報を伝えてきた


暫定的ではあるが事前に現場の資料と共に報告を受けた段階で

おそらく別の異なる力同士が動いた大きな戦闘があったと

ワシらは内密に見ておった


そして報告時の同時刻に

病室の勇者アギト君にも質問をしておった


アギト・クロスハルトは襲撃者に精神と体を乗っ取られたところからは

記憶が一切ないという話じゃった


つまり・・あの隠れた空間での救助隊の発見までに

戦闘の状況を知るのは勇者であるミトラ・ネスライトと共に

同時に敵方に転送をうけたリズ・クリスフォード、

この2名のみじゃったということじゃ


そして勇者の力の聖痕ではない幾多の力の痕跡・・

それは敵方の力と

その場で対抗したというリズ君の持つ

特別な力がぶつかった戦闘だったということじゃな」


(はえー・・鋭い・・やっぱばれちゃうんだなあ)


けっこう長い間しゃべっていたので

区切りにゼキスバード学長がふう・・と一息つく



「異なる力の存在は知っておるが

わしらは込み入った事情そのものはあまり詳しくない

直接今まで関わっておった大楽の方が詳しく知っておる


失う以前の大楽の力は知っておったから

わしらはその力を持つことによって奇病を患って自由を奪われ

世間に犯罪者のように扱われるようなことは

よくは思っておらんし


そうした力を持つことになった者が不当に虐げられたり

犯罪に巻き込まれたりせぬように

ワシらが管理できる学園区内では

過干渉はせぬが最低限保護はするように取り決めておった


この国は魔法以外の異能の力に対する

風当たりが強いのじゃ・・


それはこの国に限ったことではない


古来よりこの世界の人間たちは見えている強い力よりも

目に見えぬ得体の知れぬ未知の力の存在を強く恐れ崇めてきた


法典の教えの統制の影響が強くなった今でも

密かにそれは一部の民の中に根付いておる


人間が広く魔法を持つ以前の太古から今に一部が残る、

今は滅びた星詠みの民の遺物、

「ロツグ民伝(みんでん)再臨(さいりん)乃碑(のひ)」の伝えでは

こう刻まれて恐れられておった 」


「!」

(ロツグの民の石碑・・)



「 「目に見えぬ力は大いなる不幸を呼ぶ」、と 」



(・・・)

「(不幸を呼ぶ、力・・)」



・・

「といっても本当にその力を持ちながら

この聖セントラル中央魔法学園にやってきた者は

大楽の力を直接引き継いだ大楽の孫である玄護君しかおらんかったし


リズ君においてはすでに学園に通っていて

体の弱いバーゼス君の娘を預かっているいうことでは

他の有力貴族の子息らと同様のレベルでは以前から認知はしておったが

偶然リズ君に会った大楽から密かな忠告を受けて

後に君の持つ力の特殊性が判明したというところじゃ


わしらの携わるこの学園の本分は

国を支える立派な魔法師を育て上げることもそうじゃが

この学園の門をくぐってやってきた志を持つ同年代の多様な生徒たちが

その各々の人生の春の一刻に一同に集い

のびのびと人の叡智である魔法を学び、若き日々の貴重な経験を経て

人として成長し 人生を謳歌してもらうことにある


その理念はかつてはまだ争いの中にあって

そのような環境にはなかなか恵まれなかったわしらが願った夢のようなものじゃ



勇者など例外はあるが特別な才や貴族の身分を持つからといって

わしらは特別扱いはせぬし

区分はするが他の生徒と同じように

自由にこの学園で過ごす間は学びの機会を得られるようになっておった


わしも報告だけでリズ君の力そのものを見たことはない

力を隠しているものを無理に求めたこともない


だがどうじゃろう・・

少し見せてくれんかリズ君 その力の片鱗を 」



「え・・」


「改まることはない ただわしも知っておきたかったのじゃ

リズ君が持つという力を・・


わしらは不治の奇病、暴走病として今までその力を見ておった


奇病の存在は依然として法典には禁忌とされておる


力を持つ者の存在を開示することは予期せぬ不都合に見舞われる恐れがあった

だから本人の人生のためにそれを求めることはしなかった


まあ学園の管理区内で全く何もせんという訳にもいかんから

定期的に発作などの異常がないか密かに報告だけは受けておったがの


・・

じゃがリズ君の力はすでに病からは克服した段階にあるという


今までは問題が表立ってはなかったからよかったのじゃが・・

リズ君がここでこれからも普段通り過ごしていくためにも

わしらから直接事情を把握しておきたいと思ってのう 」



(そっか・・ 大会の後にオジキが学園の上層部に協力者がいるって

いってたのはゼキスバード学長たちのことだったんだ


あの時は騒ぎにならないようにしてくれてたんだろうなあ

でもこの事件はちょっと大きかったみたいだね・・)


「・・・」

(別に私 今までこの力を

この世界で無理やり隠そうとは思ってたわけじゃないのよね


高密度のエネルギーの力は使ってなかったけど

体の動き方の捌きとかコマンドは普段から使ってたし

アスラとの連携や自分で獲得した魔法を優先して使ってただけ)


(でもこうやって いざ人前で見せるってなるとなあ・・

なんでだろう 気分っていうか乗り気が・・)


「あの・・ここで見せるんですか?」


「ここでは危険かね? 

わしらがおるからここでの守りはこの国でも最高レベルになっておる

なに 少しだけでいいのじゃ」


(少しだけ・・少しだけなら・・ね)


私は少し腕に力を込めてみる 

今は腕の腕輪は戦闘でボロボロになってしまっていたので

外して馬車の中においてあって

今は何もつけていない、そのままの私の腕


「(グッ・・)」

(あれ・・?)

乗り気ではないんだけど

もうここでイヴの力が使えるような気がする

「  」

今までは祝福の魔法が近くで使われていてそれも相対してないと

魔物がいない学園内では

ほぼ私の力って使えなかったんだけど そんな感じがする


(ゼキスバード学長が守りで祝福の魔法を使ってるの・・?

でもそんな様子もない 出会い頭に殴れるくらいだし・・

それとも前にイヴの力を開放して戦ったから制御が良くなってる・・?)


「うーん・・」

「・・?」

でも乗り気ではなかったから あんまり力は入らない


(私の力って 力以前にすごく気分によって左右されるのよね 全然安定しない)

(なら・・)


「スッ・・」

私は席から立ち上がる


「あの・・ゼキスバード先生

こう・・なんていうか 見物じゃなくて

私と戦うイメージでそこでいてもらってくれませんか?」


「! ほう・・」

リズの言葉にピクリと関心を寄せたようなゼキスバード学長



「 それは・・・このような、感じかね・・?」


(ズオオオオオオオ・・!)


「!!」


ゼキスバード学長がその世界最高レベルといわれる魔力のオーラを開放して

座ったままゆったりとした微笑みの目でリズを見る

だけど見た目にはそんなに変化はないようだった


(でもすごい・・!すごい魔力が内面に秘めてるのが分かる・・!

それにゼキスバード学長は微笑んでるけど 

ありえないプレッシャーをビリビリ感じる・・

これが本当の超位の魔法師なのね・・!)


「ゼキス・・」

そばにいたアーマード魔法教授が少し困ったような顔をする


「なに少しだけじゃ どうかね?」


(いける・・!)

リズはそのプレッシャーを感じて腕に少し力をいれる

すると


「ズズズズズ・・!!」

リズの右腕が機械化した装甲に覆われて

目の前のゼキスバード学長の力に対抗して闘気を放っていた


「ほう・・」

それを見てゼキスバード学長が少し身を乗り出して立ち上がる


(ハッ・・!ゼキスバード学長、やる気だわ・・!

これは戦闘態勢に構えて・・!)


「ズオオオオオ!」

戦闘態勢に構えてさらに対峙したリズの腕の力は膨らんで・・


「おっと いかんいかん」


「(パシュウウウ・・・)」

ゼキスバード学長から向けられた強い魔法のプレッシャーが

もうなくなっていて飛散していた


「また頭を叩かれるかと思ったわい」


(あら・・)


「ズ・・」フッ・・

リズの右腕の機械化した変化も消えて

元のリズのきれいな白い腕に戻ったのだった


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